2014年11月21日

コンパニオン診断薬の用語解説

今週は下記のガイドラインを見ていきます。

『コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について』
    ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/companion/companion20131226.pdf


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4. 用語解説

・バイオマーカー(Biomarker)

正常な生物学的過程、発病過程、及び/又は治療的介入等への反応を示す指標として測定可能な特性。



・臨床的有用性(Clinical utility)

本ガイダンスでは、コンパニオン診断薬を用いたバイオマーカーの測定がもたらす、医薬品の有効性又は安全性の向上のこと。

すなわち、医薬品のベネフィット・リスクバランスを向上させる、コンパニオン診断薬の価値のこと。



・バイオマーカーの適格性(Biomarker qualification)

本ガイダンスでは、当該バイオマーカーが医薬品投与後の反応等を適切に反映し得ると判断され、医薬品投与に際して、その使用が支持されるというバイオマーカーの性質のこと。

ICH E16 ガイドラインを参照すること。



・分析法バリデーション(Analytical test validation)

ある分析法において、適切な精度管理等が行われ、分析対象物を的確に測定し、期待される結果が高い再現性で得られることを検証することで、使用目的に適った信頼できる分析法であることを立証すること。



・臨床的バリデーション(Clinical test validation)

感度(疾患又は表現型があるときの陽性率)、特異度(疾患又は表現型がないときの陰性率)等の情報に基づいて、疾患又は表現型の有無等を正確に予測できる分析法であることを立証すること。



・臨床的カットオフ値(Clinical cut-off)

本ガイダンスでは、医薬品の投与に際して、医薬品のベネフィット・リスクバランスを考慮してバイオマーカー陽性又は陰性と判定する範囲を区切る値。

この臨床的カットオフ値により分けられた集団に対して、投与の判断がされることになる。



・同等性の評価に関する試験 (同等性試験)(Concordance study)

体外診断薬の検出(測定)精度を担保するために、適切な対照体外診断薬(基準的測定法又は臨床試験で用いられた測定法等)と当該体外診断薬の判定一致率又は測定結果の同等性を評価する試験。




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「コンパニオン診断薬及び関連する医薬品の開発に関する技術的ガイダンス」に関するQ&A


Q1: 「バイオマーカー陽性」が患者選択の対象として記載されているが、品目によっては陰性例を選択する可能性もある(例えば抗EGFR 抗体におけるKRAS 遺伝子変異等)。

本ガイダンスでは、あるバイオマーカーの測定結果に基づき、陽性例を対象患者とすることを前提として記載しているが、陰性例を対象とする場合は逆に読み替えることでよいか。

A1: その理解でよい。






Q2: 検証的臨床試験とは、第V相無作為化比較試験のことを指すのか。

A2: 本ガイダンスでは、検証的臨床試験とは、原則として第V相無作為化比較試験のことを指すが、第V相無作為化比較試験の実施が困難等の理由により、例えば、第U相試験が承認申請データパッケージにおける最も重要な試験となった場合には、当該第U相試験のことを指す場合がある。





Q3: 「可能な限りすべての登録被験者」とは、陽性・陰性を問わず、診断を行ったすべての者という意味でよいか。

また、登録被験者からのデータとは、陽性・陰性両者のデータという理解でよいか。

A3: その理解でよい。陽性・陰性両者のデータが必要である。






Q4: 医薬品の臨床試験を実施する際に、使用するコンパニオン診断薬の分析法バリデーションは具体的にどこまで確認されていればよいか。


A4: 医薬品の臨床試験の実施に際し、当該臨床試験本来の目的を達成するために必要な分析法バリデーションの項目(真度、精度、測定範囲、分析的カットオフ値等)が適切であることが確認されていればよいと考える。

また、反応特異性、検体に関する情報、アッセイ条件等は、医薬品の臨床試験実施前に、ある程度の範囲で検討されていることが必要と考える。

なお、個別の事例について判断に迷う場合は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)に相談することが望ましい。






Q5: 医薬品とコンパニオン診断薬の同時開発の際に用いる臨床検体の取扱い及び既存試験で採取された検体をレトロスペクティブに再使用する場合の注意すべき点を示していただきたい。


A5: 既存試験の実施計画書中に臨床検体採取の旨が記載され、治験審査委員会又は倫理審査委員会の審査で承認を受けた上で、被験者の同意が適切に取得されていれば、原則として再測定時の再同意は不要であり、連結可能性を保持している場合、被験者の求めに応じて成績開示可能とすることが望ましい。

なお、同等性試験を行う場合、陽性一致率及び陰性一致率の両方の評価が重要となるため、陽性検体、陰性検体の両方を適切に保管しておくことが必要である。

また、同等性試験の倫理性及び信頼性は十分に担保されている必要があるため、同等性試験で使用する検体の入手法、保存方法及び試験への適用に関し、特に下記の項目について、その詳細及び妥当性について検討すべきと考える。


@ 同等性試験の実施に際し、当該試験で使用する検体の入手法、治験審査委員会又は倫理審査委員会の審査の承認、被験者の同意が得られていることが明確になっていること。

A 臨床検体が使用されていることが明確になっていること。

また、当該検体を採取した被験者に係る臨床情報、検体調製方法、保存方法等の検体の背景が明確になっていること。

B 検体を入手した施設、研究責任者、試験実施期間等の試験の実施背景が明確になっていること。

また、ヒト検体を用いた試験での検証が現在の倫理指針等を遵守して実施されたものであることが明確になっていること。





Q6: 「臨床試験に組み入れられた被験者」について、必ずしも日本人でなくともよいか。

A6: 検体採取時期並びに病変の質、固定状態及び保存状態等の観点から検体が適切に管理されていることを前提に、外国人の被験者の検体を用いることも可能である。

なお、日本人に特有の遺伝子変異・発現等を示すバイオマーカーや、外的環境因子が大きく影響を及ぼすバイオマーカー等については、その限りではないので、留意されたい。




Q7: 臨床試験以外の検体を用いて、同等性試験を実施しなくてはいけない場合の具体的な事例とは、どのような場合のことか。

A7: 例えば、検体採取して速やかに検査すべき性質の体外診断薬の場合、すなわち保存検体で検査するのが困難な場合が該当すると考える。

具体的には、末梢血等の細胞を用いたFACS 解析に用いるキット等がある。





Q8: コンパニオン診断薬の場合、「陽性一致率及び陰性一致率とも良好な成績を示す」とされているが、具体的にどのようなものが想定されるのか。

また、評価時の留意点は何か。


A8: 一般的な体外診断薬は、当該診断薬による診断結果のみではなく、他の関連する検査結果や臨床症状等に基づいて総合的に診断及び治療法が判断される位置付けとして使用される。

一方で、コンパニオン診断薬による診断結果は、医薬品の投与可否の判断との関連性が極めて高く、当該診断薬による診断結果のみに基づき投与可否が判断される場合も考えられる。

したがって、コンパニオン診断薬の同等性試験については、医薬品の有効性及び安全性を担保する位置付け、医薬品の投与可否の判断を決定付ける位置付けで使用されることを考慮し、一般的な体外診断薬の同等性試験を行う場合よりも、より良好な一致率を評価基準とすることが望ましい。

なお、同等性試験の良好な一致率の評価基準については、医薬品の特徴(重篤な副作用があるか等)、体外診断薬の測定原理等を鑑み個別に判断されるため、具体的な一致率の目安が示されるものではなく、上記の点を考慮し適切な一致率の評価基準を検討すべきと考える。

また、体外診断薬の同等性評価において、不一致例については、その理由を科学的な解析で検討し、当該診断薬の性能の限界を明らかにした上で、判定精度を担保するために必要な点があれば添付文書上に注意喚起する必要がある。






Q9: 分析法バリデーションに関する評価として使用されている用語について、体外診断薬の製造販売承認申請における取扱いを示した「体外診断用医薬品の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」(平成17 年2 月16 日付け薬食機発第0216005 号。以下「留意事項通知」という。)に照らして、解説頂きたい。

Aは略(実際の通知をご覧ください。)




Q10: 本ガイダンスは「開発に関する技術的ガイダンス」とされているが、「コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項」(平成25 年7 月1 日付け薬食審査発0701 第10 号)等の関連通知との位置づけを示していただきたい。

A10: 本ガイダンスは、コンパニオン診断薬と医薬品の同時開発について、現時点での規制や事例を踏まえてPMDA のコンセプト(概念)を示した文書であり、必ずしも本ガイダンスに示す方法の固守を求めるものではない。

また、本ガイダンスに記載した内容に該当しない事例については、PMDA と適切に相談することを推奨するとともに、新たな事例を踏まえて本ガイダンスの見直しを適切に行う。






Q11: 医薬品とコンパニオン診断薬が同時期に申請された場合、医療現場での同時利用を目指した、審査タイムラインを提示していただきたい。

A11: 同時承認を目指した審査タイムラインについては、通常、医薬品は初回面談から専門協議までの期間に提示する。

コンパニオン診断薬については、総審査期間が規定されていないため医薬品と同様に提示することは困難であるが、コンパニオン診断薬の申請企業が医薬品の審査タイムラインに合わせて照会の回答等を行う等医薬品の審査期間に準じた対応を行うことを約する場合には、医薬品の審査タイムラインに合わせて対応していくこととしている。

医薬品及び体外診断薬の申請者双方は、十分な連携の下で申請業務を行っていただきたい。




以上


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2014年11月19日

前向きな検証的臨床試験実施に際しての留意点

今週は下記のガイドラインを見ていきます。

『コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について』
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http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/companion/companion20131226.pdf


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2.1.3. 前向きな検証的臨床試験実施に際しての留意点

2.1.1.に示したように、検証的臨床試験の実施前にバイオマーカー陰性例を対象に含めた検討が行われていることを前提に、バイオマーカー陽性例を対象とした無作為化比較試験を計画することが考えられるが、試験計画時点までに得られている非臨床及び臨床データ等を踏まえた上で、適切な試験デザインを選択する必要がある。


例えば、バイオマーカー陰性例を対象に含めた事前の探索的な検討により、バイオマーカー陰性例に対しても有用性が期待され、バイオマーカー陽性例とは別集団としてバイオマーカー陰性例を引き続き開発対象と考える場合等、バイオマーカー陽性例及び陰性例の双方を対象とする試験を実施することも考えられる。

その場合、試験全体集団、バイオマーカー陽性例及び陰性例のそれぞれの集団において解析結果が得られるため、無作為化及び盲検化の方法等の試験計画、並びに結果解釈を踏まえた適切な解析計画(仮説設定、症例数設計、多重性の調整等)を事前に治験実施計画書に規定しておく必要がある。





2.2. 医薬品開発とコンパニオン診断薬のバリデーション実施時期

バリデーションが不十分なコンパニオン診断薬を用いて臨床試験を実施した場合には、投与対象患者を適切に特定できない等、試験本来の目的が達せられない可能性がある。

検証的試験の実施に当たっては、一定の分析法バリデーション及び患者の特定に利用するバイオマーカーの臨床的カットオフ値等の臨床的バリデーションが行われたものであって、原則として承認申請を目的としたコンパニオン診断薬を使用すべきである。


ただし、症例数が極めて限られる等の理由により、探索的試験の結果に基づいて事前に臨床的カットオフ値を設定することが困難な場合には、検証的試験実施前にその試験デザイン等についてPMDA と相談することが望ましい。


また、臨床的カットオフ値の妥当性等の臨床的バリデーションについては主に医薬品の承認審査において、また分析法バリデーションについては主にコンパニオン診断薬の承認審査において、それぞれ評価するが、医薬品の承認審査に際しては、コンパニオン診断薬の臨床的カットオフ値の妥当性等について、その根拠を示して説明することが求められる。


医薬品の申請者及びコンパニオン診断薬の申請者は、それぞれの承認申請に際して互いに連携・協力する必要がある。

なお、分析法バリデーションに関する留意点については、「3.3. コンパニオン診断薬の分析法バリデーション」を参照のこと。





3. コンパニオン診断薬の評価

バイオマーカーを利用して医薬品の投与対象患者を特定する場合、当該医薬品の有効性及び安全性については、コンパニオン診断薬の性能に直接的な影響を受ける。

本項においては、コンパニオン診断薬の開発時の主な留意事項として、コンパニオン診断薬の臨床的意義、同等性の評価に関する試験、及び分析法バリデーションについて述べる。




3.1. コンパニオン診断薬の臨床的意義

コンパニオン診断薬の臨床的意義及び臨床的カットオフ値の評価については、原則として、当該コンパニオン診断薬に基づき特定された患者を対象とした医薬品の臨床試験成績を用いて行われるため、コンパニオン診断薬を開発する企業は、これらの情報を当該医薬品企業等からあらかじめ入手するなど、お互いに連携・協力する必要がある。

なお、承認申請の際、コンパニオン診断薬の臨床的意義、臨床的カットオフ値については、当該臨床試験に用いた治験薬の名称、試験名、試験方法及び試験結果の概要等に関する情報を含めた、当該医薬品の臨床試験成績の概要を用いて説明することで差し支えない。





3.2. コンパニオン診断薬の同等性評価に関する試験(同等性試験)

3.2.1. 同等性試験の必要性に関する基本的考え方

検証的臨床試験において承認申請予定のコンパニオン診断薬が用いられたケース以外の場合には、臨床試験で使用した測定法と、申請予定のコンパニオン診断薬との同等性を評価する必要がある。

また、比較対照として設定できる標準的な方法(公的機関 注1、標準化機関注2が採用している基準的な方法等)がある場合は、コンパニオン診断薬による判定又は測定結果の妥当性について評価することを目的に、原則として、当該方法とコンパニオン診断薬の間での同等性試験を実施する必要がある。

この場合、公的機関、標準化機関、関連学会等で規定されている操作、判定方法及び性能の規格等を踏まえ、科学的に妥当な対照法を選択する必要がある。



3.2.2. 同等性試験を行う際の留意事項

コンパニオン診断薬の同等性試験に際しては、関連する医薬品の臨床試験に組み入れられた被験者から採取された検体を使用することが基本と考える。

しかしながら、何らかの理由により臨床試験に組み入れられた被験者の検体を使用することが困難な場合、検体採取時期並びに病変の質、固定状態及び保存状態等の観点から検体が適切に管理されていることを前提に、当該臨床試験と同等の選択基準で採取・保存された被験者検体を用いて同等性試験を別途実施することも考えられる。

このような場合には事前にPMDA に相談することが望ましい。

同等性試験では検出域及び測定可能域を把握する必要があり、特にカットオフ値3近辺や測定下限値付近における判定結果の一致率及び測定値の同等性評価が重要である。

医薬品の臨床試験で採取された検体のみでこれらを評価することが難しい場合には、当該臨床試験とは別途、同等性試験を実施する必要がある。

また、コンパニオン診断薬の場合は、その性能が関連する医薬品の有効性及び安全性に直接的な影響を与えることから、原則、陽性一致率及び陰性一致率とも良好な成績を示すこと、及び不一致例に対する十分な科学的考察が求められる。


一方で、品目の特徴によっては、陽性一致率又は陰性一致率が良好でないが受け入れ可能な場合も考えられるため、同等性試験成績の臨床的評価が難しい場合については、PMDA に相談することが望ましい。

コンパニオン診断薬として適切と判断するために必要な陽性一致率又は陰性一致率については、対象疾患の性質や対象患者数(現実的に検証可能な症例数)、信頼区間等を踏まえて検討する必要があり、その妥当性については、PMDA に相談することが望ましい。
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1 : 世界保健機関(WHO)等

2 : 国際合同トレーサビリティー委員会(JCTLM)、臨床・検査標準委員会(CLSI)、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)等

3 :この場合は分析的カットオフ値 または/および 臨床的カットオフ値のことを指す。



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2014年11月18日

コンパニオン診断薬に関連する医薬品開発時の臨床試験

今週は下記のガイドラインを見ていきます。

『コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について』
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http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/companion/companion20131226.pdf


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1.3. 適用範囲

本ガイダンスは、課長通知に示されるコンパニオン診断薬及び関連する医薬品を適用範囲とする。

なお、本ガイダンスの2.1.では、これまでに得られている知見等を踏まえて主にコンパニオン診断薬を用いて医薬品の投与対象患者を特定する場合を想定しており、また2.1.1.及び2.1.3.では、その中でも分子標的薬等の事例を想定している。

しかし、これらの考え方は、記載された事例以外の場合、すなわち医薬品の用法・用量の最適化や投与中止の判断を目的としたコンパニオン診断薬等についても適用可能と考える。




1.4. 基本的考え方

バイオマーカーを測定するコンパニオン診断薬の承認申請に際しては、当該コンパニオン診断薬の性能を担保したデータが必要であり、またコンパニオン診断薬に関連する医薬品の承認申請に際しては、性能が担保されたコンパニオン診断薬により投与対象患者を特定する際の臨床的有用性を示すデータ等が必要である。




2. コンパニオン診断薬に関連する医薬品開発時の臨床試験

2.1. バイオマーカーによる患者特定に関する留意点

これまでに得られている知見等を踏まえ、主にバイオマーカーを用いて投与対象患者を特定する医薬品の臨床試験に際して、特に留意すべき点について以下に述べる。

なお、以下に記されているバイオマーカー陽性又は陰性については、臨床的カットオフ値を踏まえて判定された結果を示している。



2.1.1. 分子標的薬等における開発早期のバイオマーカー陰性例の取扱い

疾病に関わる特定のバイオマーカーを標的とした医薬品、すなわち分子標的薬等を開発する際、コンパニオン診断薬によるバイオマーカーの測定結果に基づき、例えば、その投与対象を陽性例のみに絞る場合等がある。

分子標的薬等については、理論上は、バイオマーカー陽性例で当該医薬品のより高い有用性が期待されるが、バイオマーカー陰性例を開発早期の段階から除外した場合、バイオマーカーの臨床的カットオフ値の妥当性を判断するためのデータが得られない、又は当該医薬品の投与が有用となる対象患者集団が的確に特定されたか否かを判断できないなど、バイオマーカー陽性例と陰性例でのベネフィット・リスクバランスの違いについて比較検討することが困難となる。



したがって、早期の段階から陰性例の検討の必要性を視野に入れた医薬品の開発戦略を立てることが重要であり、例えば探索的な用量反応性試験等の医薬品開発早期の臨床試験において、原則としてバイオマーカー陽性例及び陰性例の双方を臨床試験に組み入れて検討すべきである。

ただし、非臨床試験又は臨床試験データ(後ろ向きの解析結果も含む)などから、バイオマーカー陰性例に対して当該医薬品の有効性が示される可能性が極めて低い場合、又は毒性が強い医薬品であり投与対象が広範で不合理なリスクにさらされ安全性に関する懸念が強く示唆される場合など、バイオマーカー陰性例を臨床試験に組み込むべきでない相当の理由がある場合はこの限りではない。

なお、各臨床試験の段階におけるバイオマーカー陰性例の取扱いに関しては、当該臨床試験開始時までに得られている情報に基づいて検討する必要があり、試験デザインの検討にあたってはPMDA と相談することが望ましい。







2.1.2. 前向きな検証的臨床試験実施の必要性について

バイオマーカーに関連した医薬品の有効性の検証及び安全性の検討を行う際には、通常の医薬品と同様、原則として前向きな無作為化比較試験を実施する必要がある。

また、当該医薬品の開発においてバイオマーカーの適格性を検討する必要がある場合、過去に実施された臨床試験の保存試料等を用いて後ろ向きの解析を行うことがある。

このような検討は推奨されるものであるが、後ろ向きのバイオマーカーの解析結果は探索的な検討に留まることから、後ろ向きの解析結果からバイオマーカー陽性例のみに対する有用性が示唆された場合には、別途、当該バイオマーカー陽性例を対象とした前向きな無作為化比較試験を実施することが望ましい。


また、前向きな無作為化比較試験の実施に際しては、医薬品の有効性を検証することだけではなく、バイオマーカーの適格性についても併せて検討できるよう試験デザインを工夫することが望ましい。


一方で、前向きな無作為化比較試験の実施が困難な場合として、例えば以下に示す


3 つの場合が挙げられる。

@ 安全性に関連するバイオマーカーについて、極めて重篤な有害事象に関連することが示唆されている場合など、前向きな無作為化比較試験によるバイオマーカーの適格性検証が倫理的観点から困難な場合。

A 有効性に関連するバイオマーカーであっても、バイオマーカーを用いて対象患者を限定することにより、症例数の観点から無作為化比較試験の実施が極めて困難となる等、前向きな無作為化比較試験によりバイオマーカーの適格性を検証することが困難又は適切でない場合。

B 後ろ向きの解析結果が以下の状況であることを考慮した場合など、後ろ向きの解析であることによるバイアスの可能性等を考慮しても、当該後ろ向きの解析結果等を主体としたバイオマーカーの評価が許容できる場合。

適切に計画・実施された無作為化比較試験を対象とし、原則として可能な限りすべての登録被験者からデータが得られていること

一定の分析法バリデーションが実施された測定法を用いていることバイオマーカーに関する適切な仮説及び統計解析が、データを解析する前に定義されていること多重性の調整等、統計学的に適切な解析が計画・実施されていること



上記の4 つの状況に該当する独立した複数の試験結果から一貫性のある解析結果が得られていること

いずれにしても、このような場合には、後ろ向きの解析に基づく開発の進め方などについてPMDA と相談することが望ましい。


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2014年11月15日

コンパニオン診断薬とは?

今週は下記のガイドラインを見ていきます。

『コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について』
    ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/companion/companion20131226.pdf

事務連絡
平成25年12月26日
厚生労働省医薬食品局審査管理課


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コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の取扱いについては、「コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について」(平成25 年7月1日付け薬食審査発0701 第10 号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)等において示されているところですが、今般、独立行政法人医薬品医療機器総合機構は、コンパニオン診断薬及び関連する医薬品を開発する際の考え方や留意点を記した技術的ガイダンス及びそのQ&A について別添1及び別添2として取りまとめましたので、報告します。

なお、本ガイダンス及びQ&A は、現時点の科学的知見に基づく基本的考え方を取りまとめたものであり、必ずしもこれらに示した方法を固守するよう求めるものではありません。




1.1. 背景

科学技術の発展によりヒトゲノムやプロテオーム解析が進展することなどに伴い、疾病に関わる生体内分子の特定や解析が進んできている。

現状では、悪性腫瘍の増殖等に関連する標的分子が特定されつつあり、その発現や変異等を前提とした医薬品の開発研究等、生体内分子すなわちバイオマーカーを活用して医薬品の投与対象患者を特定するなどの、いわゆる個別化医療が近年進展してきている。


そのような中で、「国民の健康寿命の延伸」等の観点から平成25 年6 月14 日に閣議決定した「日本再興戦略」の「戦略市場創造プラン」において個別化医療の推進について言及されるなど、政府としても積極的に取り組む姿勢が示されている。

個別化医療の中でも、疾患等に関連するバイオマーカーを利用して医薬品の投与対象患者を特定する場合、当該医薬品使用の前提として体外診断用医薬品(以下「体外診断薬」という。)を使用することとなるが、このような治療薬の選択等に用いられることにより個別化医療に資する体外診断薬を「コンパニオン診断薬」と呼ぶ。


当該医薬品の有効性及び安全性は、コンパニオン診断薬の性能に直接的な影響を受けるものである。

したがって、当該医薬品の有効性及び安全性並びにそのコンパニオン診断薬の性能を確保しつつ、当該医薬品及びコンパニオン診断薬を医療現場で同時に利用可能とするためには、医薬品及びコンパニオン診断薬双方の開発者が開発の留意点を共有して適切な連携を図るとともに、承認審査に際しても必要な連携を図ることが重要である。


コンパニオン診断薬に関する基本的考え方については、「コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について」(平成25 年7 月1 日付け薬食審査発0701 第10 号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知。以下「課長通知」という。)及び「コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品に関する質疑応答集(Q&A)について」(平成25 年7 月1 日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡)に示されている。



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●コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について
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http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/companion-ryuui.pdf



●コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項(PDF形式)PDF形式質疑応答集(Q&A)
   ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/companion-ryuui.pdf


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1.2. 目的

本ガイダンスは、バイオマーカーに関連した医薬品及びコンパニオン診断薬の開発にあたり、双方の開発者がそれぞれの開発に際して留意すべき点など、現時点における具体的な技術的事項を整理することで、当該医薬品及びコンパニオン診断薬のより円滑な開発及び承認審査の実施を目指すものである。

具体的には、コンパニオン診断薬に関連する医薬品の臨床試験に関する留意点及びコンパニオン診断薬のバリデーション実施時期などに関する考え方、並びにコンパニオン診断薬の臨床的意義及び同等性の評価に関する試験の考え方などについて示す。

なお、承認審査にあたっては、必ずしも本ガイダンスに示す方法の固守を求めるものではなく、これら医薬品又はコンパニオン診断薬の開発者等は、必要に応じて個別に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)と適時適切に相談することが望ましい。

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