2014年09月12日

特定不正行為の告発の受付等

今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

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3 特定不正行為の告発の受付等

3−1 告発の受付体制

@ 研究・配分機関は、特定不正行為に関する告発(当該研究・配分機関の職員による告発のみならず、外部の者によるものを含む。以下同じ。)を受け付け、又は告発の意思を明示しない相談を受ける窓口(以下「受付窓口」という。)を設置しておくものとする。

なお、このことは必ずしも新たに部署を設けることを意味しない。

また、受付窓口について、客観性や透明性を向上する観点から、外部の機関に業務委託することも可能とする。


A 研究・配分機関は、設置する受付窓口について、その名称、場所、連絡先、受付の方法などを定め、当該研究・配分機関内外に周知する。


B 研究・配分機関は、告発者が告発の方法を書面、電話、FAX、電子メール、面談など自由に選択できるように受付窓口の体制を整える。


C 研究・配分機関は、告発の受付や調査・事実確認(以下単に「調査」という。)を行う者が自己との利害関係を持つ事案に関与しないよう取り計らう。


D 告発の受付から調査に至るまでの体制について、研究・配分機関はその責任者として例えば理事、副学長等適切な地位にある者を指定し、必要な組織を構築して企画・整備・運営する。







3−2 告発の取扱い

@ 告発は、受付窓口に対する書面、電話、FAX、電子メール、面談などを通じて、研究・配分機関に直接行われるべきものとする。



A 原則として、告発は顕名により行われ、特定不正行為を行ったとする研究者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明示され、かつ不正とする科学的な合理性のある理由が示されているもののみを受け付ける。



B Aにかかわらず、匿名による告発があった場合、研究・配分機関は告発の内容に応じ、顕名の告発があった場合に準じた取扱いをすることができる。



C 告発があった研究・配分機関が調査を行うべき機関に該当しないときは、「4−1 調査を行う機関」により調査機関に該当する研究・配分機関に当該告発を回付する。

回付された研究・配分機関は当該研究・配分機関に告発があったものとして当該告発を取り扱う。

また、「4−1 調査を行う機関」により、告発があった研究・配分機関に加え、ほかにも調査を行う研究・配分機関が想定される場合は、告発を受けた研究・配分機関は該当する研究・配分機関に当該告発について通知する。



D 書面による告発など、受付窓口が受け付けたか否かを告発者が知り得ない方法による告発がなされた場合は、研究・配分機関は告発者(匿名の告発者を除く。

ただし、調査結果が出る前に告発者の氏名が判明した後は顕名による告発者として取り扱う。以下同じ。)に、告発を受け付けたことを通知する。



E 告発の意思を明示しない相談については、相談を受けた機関はその内容に応じ、告発に準じてその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めた場合は、相談者に対して告発の意思があるか否か確認するものとする。



F 特定不正行為が行われようとしている、又は特定不正行為を求められているという告発・相談については、告発・相談を受けた機関はその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めたときは、被告発者に警告を行うものとする。

ただし、告発・相談を受けた機関は、当該機関が被告発者の所属する研究機関でないときは、被告発者の所属する研究機関に事案を回付することができる。

被告発者の所属する研究機関でない機関が警告を行った場合は、当該機関は被告発者の所属する研究機関に警告の内容等について通知する。





3−3 告発者・被告発者の取扱い

@ 告発を受け付ける場合、個室で面談したり、電話や電子メールなどを窓口の担当職員以外は見聞できないようにしたりするなど、告発内容や告発者(「3−2 告発の取扱い」E及びFにおける相談者を含む。以下「3−3告発者・被告発者の取扱い」において同じ。)の秘密を守るため適切な方法を講じなければならない。



A 研究・配分機関は、受付窓口に寄せられた告発の告発者、被告発者、告発内容及び調査内容について、調査結果の公表まで、告発者及び被告発者の意に反して調査関係者以外に漏えいしないよう、関係者の秘密保持を徹底する。



B 調査事案が漏えいした場合、研究・配分機関は告発者及び被告発者の了解を得て、調査中にかかわらず調査事案について公に説明することができる。

ただし、告発者又は被告発者の責により漏えいした場合は、当人の了解は不要とする。



C 研究・配分機関は、悪意(被告発者を陥れるため、又は被告発者が行う研究を妨害するためなど、専ら被告発者に何らかの損害を与えることや被告発者が所属する機関・組織等に不利益を与えることを目的とする意思。以下同じ。)に基づく告発を防止するため、告発は原則として顕名によるもののみ受け付けることや、告発には不正とする科学的な合理性のある理由を示すことが必要であること、告発者に調査に協力を求める場合があること、調査の結果、悪意に基づく告発であったことが判明した場合は、氏名の公表や懲戒処分、刑事告発があり得ることなどを当該研究・配分機関内外にあらかじめ周知する。



D 研究・配分機関は、悪意に基づく告発であることが判明しない限り、単に告発したことを理由に、告発者に対し、解雇、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。



E 研究・配分機関は、相当な理由なしに、単に告発がなされたことのみをもって、被告発者の研究活動を部分的又は全面的に禁止したり、解雇、降格、減給その他不利益な取扱いをしたりしてはならない。





3−4 告発の受付によらないものの取扱い

@ 「3−2 告発の取扱い」Eによる告発の意思を明示しない相談について、告発の意思表示がなされない場合にも、研究・配分機関の判断でその事案の調査を開始することができる。



A 学会等の科学コミュニティや報道により特定不正行為の疑いが指摘された場合は、当該特定不正行為を指摘された者が所属する研究機関に告発があった場合に準じた取扱いをすることができる。



B 特定不正行為の疑いがインターネット上に掲載されている(特定不正行為を行ったとする研究者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明示され、かつ不正とする科学的な合理性のある理由が示されている場合に限る。)ことを、当該特定不正行為を指摘された者が所属する研究機関が確認した場合、当該研究機関に告発があった場合に準じた取扱いをすることができる。


(次週へ続く)



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2014年09月11日

研究活動における特定不正行為への対応

今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
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http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

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第3節 研究活動における特定不正行為への対応



1 対象とする研究活動及び不正行為等

本節で対象とする研究活動、研究者及び不正行為は、以下のとおりとする。



(1)対象とする研究活動

本節で対象とする研究活動は、競争的資金等、国立大学法人や文部科学省所管の独立行政法人に対する運営費交付金、私学助成等の基盤的経費その他の文部科学省の予算の配分又は措置により行われる全ての研究活動である。



(2)対象とする研究者

本節で対象とする研究者は、上記(1)の研究活動を行っている研究者である。



(3)対象とする不正行為(特定不正行為)

本節で対象とする不正行為は、故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用である(以下「特定不正行為」という。)※ 6。


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※ 6「競争的資金の適正な執行に関する指針」(平成17 年9月9日競争的資金に関する関係府省連絡会申し合わせ。平成24 年10 月17 日改正)では、研究上の不正行為への対応に関して、競争的資金による研究論文・報告書等に「捏造、改ざん及び盗用」があったと認定された場合、競争的資金の返還及び応募資格の制限等の措置を講ずることとしている。

このことから、本節で対象とする不正行為(特定不正行為)は、特別委員会報告書と同様に「捏造、改ざん及び盗用」に限定している。

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@ 捏造

存在しないデータ、研究結果等を作成すること。


A 改ざん

研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。


B 盗用

他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。



なお、研究機関における研究活動の不正行為への対応に関するルールづくりは、上記(1)から(3)までの対象に限定するものではない。

例えば、研究活動に関しては他府省又は企業からの受託研究等による研究活動など研究費のいかんを問わず対象にすべきである。





2 研究・配分機関における規程・体制の整備及び公表

研究・配分機関においては、本節を踏まえて、研究活動における特定不正行為の疑惑が生じたときの調査手続や方法等に関する規程や仕組み・体制等を適切に整備することが求められる。

規程や体制の整備の際、特に、研究活動における不正行為に対応するための責任者を明確にし、責任者の役割や責任の範囲を定めること、告発者を含む関係者の秘密保持の徹底や告発後の具体的な手続を明確にすること、研究活動における特定不正行為の疑惑が生じた事案について本調査の実施の決定その他の報告を当該事案に係る配分機関等及び文部科学省に行うよう規定すること、特定不正行為の疑惑に関し公表する調査結果の内容(項目等)を定めることが求められる。


規程や体制の整備の状況については、当該研究・配分機関の内外に公表するものとする。


研究機関においては、不正行為に対応するための体制整備の一環として、一定の権限を有する「研究倫理教育責任者」を部局単位で設置し、組織を挙げて、広く研究活動に関わる者を対象として研究倫理教育を定期的に行うことが求められる。




<<研究・配分機関が実施する事項>>

○研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑が生じたときの調査手続や方法等に関する規程等を適切に整備し、これを公表すること

○その際、

・研究・配分機関は、研究活動における不正行為に対応するための責任者を明確にし責任者の役割や責任の範囲を定めること

・研究・配分機関は、告発者を含む関係者の秘密保持の徹底や告発後の具体的な手続を明確にすること

・研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑が生じた事案について本調査の実施の決定その他の報告を当該事案に係る配分機関等及び文部科学省に行うよう規定すること

・研究・配分機関は、特定不正行為の疑惑に関し公表する調査結果の内容(項目等)を定めること

・研究機関は、「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること【再掲】



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2014年09月10日

不正行為の事前防止のための取組

今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

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第2節 不正行為の事前防止のための取組

1 不正行為を抑止する環境整備

(1)研究倫理教育の実施による研究者倫理の向上

不正行為を事前に防止し、公正な研究活動を推進するためには、研究機関において、研究者等に求められる倫理規範を修得等させるための教育(以下「研究倫理教育」という。)を確実に実施することなどにより、研究者倫理を向上させることがまず重要である。

研究倫理教育の実施に当たっては、研究者の基本的責任、研究活動に対する姿勢などの研究者の行動規範のみならず、研究分野の特性に応じ、例えば、研究データとなる実験・観察ノート等の記録媒体の作成(作成方法等を含む。)・保管や実験試料・試薬の保存、論文作成の際の各研究者間における役割分担・責任関係の明確化など、研究活動に関して守るべき作法についての知識や技術を研究者等に修得・習熟させることが必要である。


研究倫理教育の実施に当たっては、各研究機関では、それぞれ所属する研究者に加え、将来研究者を目指す人材や研究支援人材など、広く研究活動に関わる者を対象に実施する必要がある。

例えば、諸外国や民間企業からの研究者や留学生などが研究機関において一時的に共同研究を行う場合であっても、当該研究機関において研究倫理教育を受講できるよう配慮する必要がある。

さらに、近年、産学官連携の深化に伴い、学生等が共同研究や技術移転活動に参画する機会も増えてきていることから、大学の教職員や研究者のみならず、研究活動に関わる学生等が、実際に起こり得る課題に対応できるような判断力を養うために、利益相反の考え方や守秘義務についても知識として修得することが重要である。





このため、研究機関においては、「研究倫理教育責任者」の設置※ 5などの必要な体制整備を図り、所属する研究者、研究支援人材など、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施することにより、研究者等に研究者倫理に関する知識を定着、更新させることが求められる。



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※ 5「研究倫理教育責任者」の設置については「第3節 2 研究・配分機関における規程・体制の整備及び公表」を参照のこと。


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このような自律性を高める取組は、学生や若手研究者の研究活動を指導する立場の研究者が自ら積極的に取り組むべきである。

研究機関全体として、研究倫理教育を徹底し研究者としての規範意識を向上していくため、このような指導的立場の研究者に対しても、一定期間ごとに研究倫理教育に関するプログラムを履修させることが適切である。



特に、大学においては、研究者のみならず、学生の研究者倫理に関する規範意識を徹底していくため、各大学の教育研究上の目的及び専攻分野の特性に応じて、学生に対する研究倫理教育の実施を推進していくことが求められる。

具体的には、大学院生に対しては、専攻分野の特性に応じて、研究者倫理に関する知識及び技術を身に付けられるよう、教育課程内外を問わず、適切な機会を設けていくことが求められる。

また、学部段階からも、専攻分野の特性に応じて、学生が研究者倫理に関する基礎的素養を修得できるよう、研究倫理教育を受けることができるように配慮することが求められる。



配分機関においては、所管する競争的資金等の配分により行われる研究活動に参画する全ての研究者に研究倫理教育に関するプログラムを履修させ、例えば履修証明などを提出させることで研究倫理教育の受講を確実に確認していくこと、研究倫理教育責任者の知識・能力の向上のための支援その他の研究倫理教育の普及・定着や高度化に関する取組が求められる。



<<研究機関が実施する事項>>

○「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること



<<大学が実施する事項>>

○学生の研究者倫理に関する規範意識を徹底していくため、各大学の教育研究上の目的及び専攻分野の特性に応じて、学生に対する研究倫理教育の実施を推進すること



<<配分機関が実施する事項>>

○所管する競争的資金等の配分により行われる研究活動に参画する全ての研究者に研究倫理教育に関するプログラムを履修させ、研究倫理教育責任者の知識・能力の向上のための支援その他の研究倫理教育の普及・定着や高度化に関する取組を実施すること






(2)研究機関における一定期間の研究データの保存・開示

「第1節 2 研究成果の発表」のとおり、研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。

したがって、故意による研究データの破棄や不適切な管理による紛失は、責任ある研究行為とは言えず、決して許されない。

研究データを一定期間保存し、適切に管理、開示することにより、研究成果の第三者による検証可能性を確保することは、不正行為の抑止や、研究者が万一不正行為の疑いを受けた場合にその自己防衛に資することのみならず、研究成果を広く科学コミュニティの間で共有する上でも有益である。

このことから、研究機関において、研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義務付ける旨の規程を設け、その適切かつ実効的な運用を行うことが必要である。

なお、保存又は開示するべき研究データの具体的な内容やその期間、方法、開示する相手先については、データの性質や研究分野の特性等を踏まえることが適切である。




<<研究機関が実施する事項>>

○研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義務付ける規程を整備し、その適切かつ実効的な運用を行うこと



2 不正事案の一覧化公開

「第3節 4 特定不正行為の告発に係る事案の調査」のとおり、特定不正行為(次節で規定する「特定不正行為」をいう。

以下「2 不正事案の一覧化公開」において同じ。)が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果が公表されることになる。

文部科学省では、特定不正行為が行われたと確認された事案について、その概要及び研究・配分機関における対応などを一覧化して公開する。

これにより、閲覧した者が不正行為の抑止や不正行為が発覚した場合の対応にいかすことが期待できる。



<<文部科学省が実施する事項>>

○特定不正行為が行われたと確認された事案について、その概要及び研究・配分機関における対応などを一覧化して公開すること


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2014年09月09日

研究活動の不正行為に関する基本的考え方

今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

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第1節 研究活動の不正行為に関する基本的考え方


1 研究活動

研究活動とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等によって知り得た事実やデータを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為である。

その際、科学研究とは、そもそも仮説と検証の循環により発展していくものであり、仮説が後に否定されるものであったとしても、当該仮説そのものが科学的価値を持ち得るものであるということを忘れてはならない。




2 研究成果の発表

研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。

科学研究による人類共通の知的資産の構築が健全に行われるには、研究活動に対する研究者の誠実さを前提とした、研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。

研究成果の発表は、このチェックシステムへの参入の意味を持つものであり、多くが論文発表という形で行われ、また、論文の書き方(データ・資料の開示、論理の展開、結論の提示等の仕方)に一定の作法が要求されるのはその表れである。






3 研究活動における不正行為

研究活動における不正行為とは、研究者倫理に背馳(はいち)し、上記1及び2において、その本質ないし本来の趣旨を歪め、科学コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為にほかならない。

具体的には、得られたデータや結果の捏造、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用が、不正行為に該当する。


このほか、他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなどが不正行為として認識されるようになってきている。

こうした行為は、研究の立案・計画・実施・成果の取りまとめの各過程においてなされる可能性がある。

このうち、例えば「二重投稿」については、科学への信頼を致命的に傷つける「捏造、改ざん及び盗用」とは異なるものの、論文及び学術誌の原著性を損ない、論文の著作権の帰属に関する問題や研究実績の不当な水増しにもつながり得る研究者倫理に反する行為として、多くの学協会や学術誌の投稿規程等において禁止されている。

このような状況を踏まえ、具体的にどのような行為が、二重投稿や不適切なオーサーシップなどの研究者倫理に反する行為に当たるのかについては、科学コミュニティにおいて、各研究分野において不正行為が疑われた事例や国際的な動向等を踏まえて、学協会の倫理規程や行動規範、学術誌の投稿規程等で明確にし、当該行為が発覚した場合の対応方針を示していくことが強く望まれる。


なお、新たな研究成果により従来の仮説や研究成果が否定されることは、研究活動の本質でもあって、科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであったとしても、それは不正行為には当たらない。




4 不正行為に対する基本姿勢

研究活動における不正行為は、研究活動とその成果発表の本質に反するものであるという意味において、科学そのものに対する背信行為であり、また、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げるものであることから、研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。

また、不正行為は、研究者の科学者としての存在意義を自ら否定するものであり、自己破壊につながるものでもある。


これらのことを個々の研究者はもとより、科学コミュニティや研究機関、配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない。

なお、不正行為への対応の取組が厳正なものでなければならないことは当然であるが、学問の自由を侵すものとなってはならないことはもとより、大胆な仮説の発表が抑制されるなど、研究を萎縮させるものとなってはならず、むしろ不正への対応が研究を活性化させるものであるという本来の趣旨を忘れてはならない。





5 研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律と研究機関の管理責任


(1)研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律

不正行為に対する対応は、研究者の倫理と社会的責任の問題として、その防止と併せ、まずは研究者自らの規律、及び科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。

自律・自浄作用の強化は、例えば、大学で言えば研究室・教室単位から学科・専攻、更に学部・研究科などあらゆるレベルにおいて重要な課題として認識されなければならない。

このような研究者の自己規律を前提としつつ、科学コミュニティは全体として、各研究者から公表された研究成果を厳正に吟味・評価することを通じて、人類共通の知的資産の蓄積過程に対して、品質管理を徹底していくという、極めて重い責務を遂行しなければならない。

その際、若手研究者を育てる指導者自身が、この自律・自己規律ということを理解し、若手研究者や学生にきちんと教育していくことが重要であり、このこと自体が指導者自身の自己規律でもある。

このように指導者、若手研究者及び学生が自律・自己規律を理解することは、研究活動を通じた人材育成・教育を行う上での大前提になることを全ての研究者は心に銘記すべきである。

また、複数の研究者等による共同研究の実施や論文作成の際、個々の研究者間の役割分担・責任を互いに明確化すべきことは、研究活動を行う大前提の問題、かつ研究者の自己規律の問題として全ての研究者に認識される必要がある。







(2)研究機関の管理責任

研究者は研究活動の本質を理解し、それに基づく作法や研究者倫理を身に付けていることが当然の前提とされているが、研究者を目指す学生や若手研究者の中には、これらがどういうものであるかということについて十分な教育を受けていない、又はそのことについて研究指導に当たるべき研究者の中には、その責務を十分に自覚していない者が少なからずあるように見受けられる。

また、不正行為が起きる背景には、競争的環境の急速な進展、研究分野の細分化や専門性の深化、研究活動体制の複雑化・多様化の結果、科学コミュニティにおける問題として自浄作用が働きにくくなっている、との指摘もある。


このような指摘等の背景には、これまで不正行為の防止に係る対応が専ら個々の研究者の自己規律と責任のみに委ねられている側面が強かったことが考えられる。

今後は、研究者自身の規律や科学コミュニティの自律を基本としながらも、研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることにより、不正行為が起こりにくい環境がつくられるよう対応の強化を図る必要がある。

特に、研究機関において、組織としての責任体制の確立による管理責任の明確化や不正行為を事前に防止する取組を推進すべきである※ 4。


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※ 4研究活動の不正行為に対する研究者、研究機関の責任については、本ガイドラインに添付した「参考資料1」を参照のこと。
    ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/09/03/1351568_03_1.pdf

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また、研究者や研究支援人材、学生、外国人といった研究活動を行う人材の多様化、共同研究体制の複雑化が進展していることを踏まえ、研究機関においては、共同研究における個々の研究者等がそれぞれの役割分担・責任を明確化することや、複数の研究者による研究活動の全容を把握・管理する立場にある代表研究者が研究活動や研究成果を適切に確認していくことを促すとともに、若手研究者等が自立した研究活動を遂行できるよう適切な支援・助言等がなされる環境整備(メンターの配置等)を行うことが望ましい。研究機関においては、このような適切な研究体制が確保されるよう、実効的な取組を推進すべきである。



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2014年09月06日

研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン

「デング熱」について。
   ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%86%B1


デング熱の国内感染症例について(第七報)
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000056755.html

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今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の決定について
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351568.htm




研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

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はじめに

(本ガイドラインの目的と策定の背景)

本ガイドラインは、研究活動の不正行為に対する基本的考え方を明らかにした上で、研究活動における不正行為を抑止する研究者、科学コミュニティ及び研究機関の取組を促しつつ、文部科学省、配分機関及び研究機関が研究者による不正行為に適切に対応するため、それぞれの機関が整備すべき事項等について指針を示すものである※ 1。


※ 1公的研究費の適正な管理については「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19 年2月15 日文部科学大臣決定。平成26 年2月18 日改正)を参照のこと。
     ↓
http://www.mext.go.jp/a_menu/kansa/houkoku/1343831.htm



科学研究における不正行為は、真実の探求を積み重ね、新たな知を創造していく営みである科学の本質に反するものであり、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げ、冒涜するものであって、許すことのできないものである。

このような科学に対する背信行為は、研究者の存在意義を自ら否定することを意味し、科学コミュニティとしての信頼を失わせるものである。

科学研究の実施は社会からの信頼と負託の上に成り立っており、もし、こうした信頼や負託が薄れたり失われたりすれば、科学研究そのものがよって立つ基盤が崩れることになることを研究に携わる者は皆自覚しなければならない。

厳しい財政事情にもかかわらず、未来への先行投資として、国民の信頼と負託を受けて国費による研究開発を進めていることからも、研究活動の公正性の確保がより一層強く求められる。



また、今日の科学研究が限りなく専門化を深め複雑かつ多様な研究方法・手段を駆使して行われる結果、科学的成果・知見が飛躍的に増大していく反面、研究者同士でさえ、互いに研究活動の実態を把握しにくい状況となっていることからも、研究者が公正に研究を進めることが従来以上に重要になってきている。

このため、「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて −研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書−」(平成18 年8月8日科学技術・学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会。以下「特別委員会報告書」という。)が策定され、文部科学省では、関係機関に対して特別委員会報告書を踏まえた厳格な対応を求めてきた。


しかしながら、研究活動における不正行為の事案が後を絶たず、昨今、これらの不正行為が社会的に大きく取り上げられる事態となっていることを背景に、文部科学省では、平成25 年8月、「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」を設置し、今後の対応策について集中的に検討を行い、同年9月に取りまとめを公表した。



これを受け、科学技術・学術政策局に設置された「「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直し・運用改善等に関する協力者会議」では、研究機関が組織を挙げて、研究活動における不正行為に対応し、特にその事前防止に努め、公正な研究活動を推進することが、我が国の研究活動の質の担保や科学に対する信頼の向上にも資する、という認識に立ち、特別委員会報告書の見直し・運用改善の在り方や、研究倫理教育の強化を図る上での方策を中心に検討を重ね、平成26 年2月3日に審議の結果を取りまとめたところである。



本ガイドラインは、これらの検討等を踏まえ新たに策定するものであり、研究活動における不正行為への対応は、研究者自らの規律や研究機関、科学コミュニティの自律に基づく自浄作用によるべきものである、との特別委員会報告書の基本認識を踏襲した上で、これまで個々の研究者の自己責任のみに委ねられている側面が強かったことを踏まえ、今後は、研究者自身の規律や科学コミュニティの自律を基本としながらも、研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることにより、対応の強化を図ることを基本的な方針としている。


本ガイドラインに沿って、研究機関においては、研究活動の不正行為に対応する適切な仕組みを整えること、また、配分機関においては、競争的資金等の公募要領や委託契約書等に本ガイドラインの内容を反映させること等により、研究活動における不正行為への対応等について実効ある取組が一層推進されることを強く求めるものである。




(適用)

本ガイドラインは平成27年4月1日から適用する。

第3節及び第4節については、平成27年度当初予算以降(継続を含む。)における文部科学省の予算の配分又は措置により行われる全ての研究活動を対象とする。

なお、平成27年3月31日までを本ガイドラインの適用のための集中改革期間とし、関係機関において実効性のある運用に向けた準備を集中的に進める。




(用語の定義)

本ガイドラインにおいて用いる用語の定義について示す。

(1)競争的資金等

文部科学省又は文部科学省が所管する独立行政法人から配分される競争的資金を中心とした公募型の研究資金


(2)研究機関

上記(1)の競争的資金等、国立大学法人や文部科学省所管の独立行政法人に対する運営費交付金、私学助成等の基盤的経費その他の文部科学省の予算の配分又は措置により、所属する研究者が研究活動を行っている全ての機関(大学、高等専門学校、大学共同利用機関、独立行政法人、国及び地方公共団体の試験研究機関、企業、公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人、一般財団法人、特例民法法人等)



(3)配分機関

上記(2)の研究機関に対して、上記(1)の競争的資金等の配分をする機関(文部科学省※ 2、文部科学省が所管する独立行政法人)



(4)研究・配分機関

上記(2)の研究機関及び上記(3)の配分機関


(5)配分機関等

上記(2)の研究機関に対して、競争的資金等、基盤的経費その他の文部科学省の予算の配分又は措置をする機関(文部科学省※ 3、文部科学省が所管する独立行政法人)


*******************

※ 2「配分機関」における文部科学省は、それぞれの競争的資金等を所管する課室を示す。

※ 3「配分機関等」における文部科学省は、それぞれの競争的資金等又は基盤的経費を所管する課室を示す。

*******************



(6)管理条件

文部科学省が、調査の結果、研究機関の体制整備等の状況について不備を認める場合、当該研究機関に対し、改善事項及びその履行期限を示した競争的資金の交付継続の条件






(留意点)

各節に示す内容は、それぞれの機関の性格や規模、コストやリソース等を考慮して実効性のある対策として実施されることが必要である。

また、企業において、会社法(平成17 年法律第86号)等に基づく内部統制システムの整備の一環として規程等が既に設けられ、対策が実施されている場合や、大学等において、コンプライアンス関連の規程等により、本ガイドラインの内容を包括する体制等が整備されている場合は、本ガイドラインにおける対策をそれらに明確に位置付けた上で本ガイドラインを適用することを可能とする。


posted by ホーライ at 10:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究活動における不正行為 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする