2014年04月18日

臨床研究のデータ改ざん防止策は?

今週はディオバン問題・ディオバン事件に対する報告書を見ていきます。

この報告書の中から、特に皆さんにお読み頂きたいところを抽出しました。

ほとんど、報告書をコピペしているだけですので、「これぐらいの報告書なら自分で読むよ」という方は、今週はスキップしてください。

なお、下記の抽出部分は報告書のほんの一部ですので、正しく理解するためには、全文をお読みくださいね。


ディオバン問題・ディオバン事件に対する報告書
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●高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)
平成26 年4月11 日高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会
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http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000043426.pdf


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臨床研究のデータ改ざん防止策は?
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B データ改ざん防止体制の構築

臨床研究の質の確保の観点から、臨床研究の実施機関の長又は研究責任者は以下の諸事項についての対応を十分検討すべきである。


ア. 担当者が内部・外部の者であるかにかかわらず、特定の者に統計解析等の重要業務が偏在することのないよう配慮すること。また、研究チーム内で十分な議論やチェックができるような透明性確保に配慮すること。

イ. データ管理センターなど、研究チームとは別途の第三者的組織でデータマネージメントを専属で行う組織を設けるなど、データ管理を適切に行うこと 。

ウ. 倫理審査委員会等における審査に際しては、臨床研究開始前に、個々の臨床研究の実施体制についても十分確認させ、利益相反上の問題だけでなく、臨床研究の質の確保の観点からも、実施体制の妥当性について検討すること。


臨床研究の実施機関の長においては、臨床研究の開始前にデータ管理が適切に行えるよう、医師や臨床研究コーディネーター、生物統計の専門家などの必要な人材確保・組織体制整備に努める必要がある。

国は、臨床研究の実施機関が必要な人材を確保できるよう、臨床研究にかかる人材の育成に一層努めるべきである。

特に、臨床研究中核病院など、臨床研究の実施基盤整備・拠点化を適切に進め、当該病院を中心とした関連医療機関との連携を通じ、臨床研究の質の向上や人材育成を推進すべきである。

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大事なことはデータ改ざん防止策としてのシステムとそこにいる人材の育成、人材の確保ですね。




臨床研究関連資料の保存は?
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C 臨床研究関連資料の保管義務

今回の事案を通じ、臨床研究関連資料の保管責任者及び保管すべき年数があらかじめ決められていないことが明らかになった。

また、最近になって関連資料が廃棄された事例が見られた。

国は、臨床研究関連資料の保管責任者を明確化するとともに、保管すべき資料の種類及び保管年数についても明確化し、臨床研究の実施機関の長にその遵守を求めるべきである。

また、研究者の異動や退職があることから、異動等に伴い臨床研究関連資料が移管・廃棄されることのないよう、臨床研究の実施機関の長は、このような場合の資料を保管管理する体制・ルールをあらかじめ決めておくべきである。

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治験をやっている身にとって「臨床研究関連資料の保管責任者及び保管すべき年数があらかじめ決められていない」というのは驚きです。

「記録がないというのはやってないということ」ですからね。




研究者や組織の自覚について。
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(4) その他(対応が必要な主な事項)

●臨床研究倫理指針の適合性に関する自己点検が適時適切に行われていないこと。

●今回の事案の存在又はその疑いが生じた場合の大学による調査について、その迅速性や調査内容に大きな差が見られること。


今回の事案について、関連5大学は、いずれも外部からの指摘に基づき調査が開始されている。

今般の臨床研究実施から事案の存在が明らかになるまでに長期間要しているのは、各大学の自己点検能力が脆弱であることが一因と考えられる。

後述のとおり、今般の事案を受け、厚生労働省及び文部科学省は、臨床研究を実施する主な機関を対象に自己点検を実施するよう要請しているが、そもそも自己点検については臨床研究倫理指針に規定されているものである。

本来、自己点検は定期的に実施するとともに、今般のような事案発生に際しては、同様の事案がないかについて、積極的に自己点検行うべきである。



今回の臨床研究事案が判明した際の各大学としての調査については、その迅速性や内容が大きく異なるとの印象を受けた。

指針違反に関する事案その他データのねつ造など臨床研究の信頼性を揺るがす事案の存在又は疑いが生じた場合、臨床研究の実施機関の長は、直ちに調査委員会を立ち上げ早急に調査を実施するとともに、必要な対応方策を講じる必要がある。

「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)(平成19年2月15日文部科学大臣決定・平成26年2月18日改正)」によると、迅速な全容解明のため、不正調査の期限を原則210日以内と定めているところ、これらの調査についても、遅くともこれを一つの目処に調査を実施すべきである。

また、臨床研究の実施機関の長は、調査委員会に外部有識者の参画を求めるだけでなく、調査の中心的役割を依頼するなど、第三者性を十分確保すべきである。

また、臨床研究の実施機関の外部に調査を委託することも併せて検討するべきである。

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●研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)
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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/008/houkoku/07020815.htm




「報告書」の結論です。
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第四 むすびに

(1) 今回の事案にかかる臨床研究の企画立案について、大学側研究者に特定の医学的研究課題の解明を目的としたとは考えられない動機が認められること。

臨床研究について大学側に十分な実施体制が整っていないにもかかわらず、研究者が研究を開始した例が認められること。

本来の目的が曖昧な状況で研究を実施することにより、医学的研究以外の意図を有する者が関与する隙を与えた可能性があったこと。

このような状況で行われる臨床研究は、研究者としての倫理に反しているのみならず、本来行ってはならないものであり、特に被験者保護の観点からは看過できない問題であること。

また、大学側研究者の利益相反管理がずさんであったこと。


(2) 大学内の倫理審査委員会が事案発生の歯止めとして機能していないこと。

今回の事案発生については、大規模臨床研究にあたって不可欠な統計解析者などの人材を外部からの労務提供に依存するなど、大学及び大学側研究者における臨床研究の基本的実施体制が脆弱であったことが原因となっていると考えられること。

また、今回の臨床研究事案にかかるデータの信頼性は大学間で異なるものであり、事案が判明した際の大学における調査の迅速性や内容についても大学間で大きく異なること。

さらに、ノバルティス社元社員の各研究への関与の度合いも大学によって大きく異なること。

これらは大学の臨床研究に対するガバナンスの適切性を示すものと考えられたこと。



(3) 今回の臨床研究事案のノバルティス社の関与については、元社員一個人が関与していたというよりは、実態としてはノバルティス社として今回の事案に関与していたと判断すべきものであること。

ノバルティス社が今般の事案に対して提供した奨学寄附金は、スポンサーとしての役割を果たすものであり、奨学寄附金本来の趣旨と異なるものであること。

ノバルティス社からの長期間にわたる多額の資金提供及び労務提供は、営業を含めた同社の業務の一環として行われたものと考えられること。

同時期にスイス本社が関与した海外臨床研究については利益相反について適切に言及されており、スイス本社の透明性確保に関する方針は日本法人において適用されておらず、ノバルティス本社の日本法人に対するガバナンスが機能していないこと。

また、日本法人の内部におけるガバナンスにも問題があったこと。


以上の状況を踏まえ、本検討委員会は、臨床研究の質の担保及び被験者保護並びに研究者の利益相反管理、研究支援に係る製薬企業の透明性確保等の観点から、これらを担保するための法制度等の必要性について、国は平成26年秋を目処に検討を進めることを提案した。

またこれと並行して、現在検討中の臨床研究倫理指針の見直しにおいて必要な対応を図ること、さらに、権限を有する者による本件事案の実態解明をすすめて、厳しい対応を図ることなどを提案した。


中間とりまとめの公表後もなお、臨床研究等においてデータが適切に取り扱われていないのではないかと疑われる報告が複数報告されており、また、今回の事案等を受け、厚生労働省及び文部科学省が連名で行った自主点検の結果を見ても、臨床研究倫理指針に違反する事例は複数報告されている。

本事案は必ずしも過去の課題とは言えない。

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上記に「ガバナンス」という言葉が何度か出てきますね。

「ガバナンス」とは「統治」のこと。

ガバナンスは組織や社会に関与するメンバーが主体的に関与を行なう、意思決定、合意形成のシステム。

企業の不正行為の防止と競争力・収益力の向上を総合的にとらえ、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営の仕組みですね。



繰り返しますが、今回の事件は、日本の臨床研究の信頼回復どころか臨床研究の質を飛躍的に向上させる絶好のチャンスです。

問題は『規則』ではなく『臨床研究者自身』です。



下記に参考資料をあげておきます。


●「医系大学・研究機関・病院のCOI(利益相反)マネージメントガイドライン(一般社団法人全国医学部長病院長会議(平成25 年11 月15 日))」
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http://www.ajmc.jp/pdf/coi26-2-24.pdf



●「臨床研究にかかる利益相反(COI)マネージメントの意義と透明性確保について(日本学術会議臨床医学委員会臨床研究分科会(平成25 年12 月20 日))」
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http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t183-1.pdf



●「我が国の研究者主導臨床試験に係る問題点と今後の対応策(日本学術会議・科学研究における健全性の向上に関する検討委員会・臨床試験制度検討分科会(平成26 年3 月27 日))」
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http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t140327.pdf



●「医師の職業倫理指針〔改訂版〕(公益社団法人日本医師会(平成20 年6 月))」
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http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20080910_1.pdf


2014年04月17日

今後の「倫理審査委員会」のあり方は?

今週はディオバン問題・ディオバン事件に対する報告書を見ていきます。

この報告書の中から、特に皆さんにお読み頂きたいところを抽出しました。

ほとんど、報告書をコピペしているだけですので、「これぐらいの報告書なら自分で読むよ」という方は、今週はスキップしてください。

なお、下記の抽出部分は報告書のほんの一部ですので、正しく理解するためには、全文をお読みくださいね。


ディオバン問題・ディオバン事件に対する報告書
   ↓
●高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)
平成26 年4月11 日高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会
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http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000043426.pdf


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「倫理審査委員会」の役割は?
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(2) 臨床研究の質の確保と被験者保護(対応が必要な主な事実関係)

●今般の事案は医学的研究課題の解明に向けられたものと言えない可能性があること。

●データ管理が不適切であり、また意図的に操作され、誤った結論を導いたこと。

●臨床研究の実施責任者としての対応が不十分であること。

●倫理審査委員会が歯止めとならなかったこと。

●検証を後から行おうとしても資料がすでに廃棄されていたこと。

●研究者の被験者保護の視点が十分でないこと。



@ 倫理審査委員会の機能強化及び透明性確保

今回の事案発生とその結果責任については、大学側の臨床研究の実施責任者の責任もさることながら、各大学の倫理審査委員会がなんら歯止めとなった形跡が見あたらない。

また、その記録も十分保存されていなかった。

本来、倫理審査委員会は、倫理的・科学的観点から個別研究計画の妥当性を検証し、もって被験者保護を担う重要な機関である。

今回の事案については、医学的研究課題の解明に向けられたものと言えない可能性があった。

このことから、倫理審査委員会においては、臨床研究の目的が適切であるかについても十分確認の上、その実施を認めるべきである。

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「倫理審査委員会」は「臨床研究の目的が適切であるか否か」も検討すべきなんですね。





では、今後の「倫理審査委員会」のあり方は?
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今回の事案を踏まえ、臨床研究の実施機関の長は、手順書の整備や必要な知識経験を有する人員が確保されているかなど、倫理審査委員会として必要な体制を有しているか、早急に点検すべきである。

また、倫理審査委員会のさらなる機能強化及び独立性確保を図るため、関係者は以下の方策について検討するべきである。

ア. 国は、他の模範となるような倫理審査委員会の認定などを通じ、倫理審査委員会の全般的な機能の向上を図ること。

イ. 臨床研究の実施機関の長は、倫理審査委員会の委員構成として外部有識者を確保するとともに、個別の審査を行う際、外部有識者を参加させること。

ウ. 臨床研究の実施機関の長は、他の研究機関と共同で設置した共同倫理審査委員会や上述の認定倫理審査委員会を活用させること。これらを通じ、倫理審査委員会の集約化を図ること。

エ. 臨床研究の実施機関の長は、倫理審査委員会及び利益相反委員会との間で連携協力をさせること。また、倫理審査委員会及び利益相反委員会においては、個別の臨床研究における利益相反の状況を把握し、必要に応じ、研究実施体制の第三者性確保を求めるなど、情報開示以外の適切な対応についても講じること。

オ. 国は、公的な補助を行う際に、今後見直される臨床研究倫理指針について、その遵守を条件とすること。

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「研究者」の教育は?
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A 研究責任者等の責務の明確化と教育・研修の徹底

これまでも臨床研究の実施機関の長に対しては研究に携わる者への教育・研修の機会確保を求めるとともに、臨床研究に携わる者は必要な教育・研修を受けるべきことを求めているが、今後はさらに教育・研修の内容、頻度等について明確化し教育・研修の徹底を図るべきである。

また、大学における医学教育等の中でも、臨床研究の必要性及び配慮すべき倫理性・安全性確保など、臨床研究実施に当たり必要な事項について、学生等への教育機会を適切に設けるべきである。

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「これまでも」訴え続けたにも限らず、今回の事件が起きたのですから、この際、ドラスティックな改革が必要でしょう。

臨床研究者の条件として教育受講時間を設けるとか、認定制度にするとかね。

2014年04月16日

ディオバン事件に見る組織のリスク管理

今週はディオバン問題に対する報告書を見ていきます。

この報告書の中から、特に皆さんにお読み頂きたいところを抽出しました。

ほとんど、報告書をコピペしているだけですので、「これぐらいの報告書なら自分で読むよ」という方は、今週はスキップしてください。

なお、下記の抽出部分は報告書のほんの一部ですので、正しく理解するためには、全文をお読みくださいね。


ディオバン問題に対する報告書
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●高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)
平成26 年4月11 日高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会
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http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000043426.pdf


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さらに、さらに、報告書を見ます。
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(5) 臨床研究の質の確保及び被験者保護に関する問題点


上記のほか、臨床研究の質の確保及び被験者保護に関し、以下の問題点が見られた。


●大学側研究者、特に臨床研究の責任者について、データの信頼性確保や統計解析の方法、被験者保護や利益相反などの臨床研究の基本的ルールに対する理解が十分であったか、研究組織についての管理能力が十分であったか、さらに、そもそも科学者としての良心に従って研究を行っていたか、などいずれも疑問がある。


●今回の臨床研究実施に当たり、大学の倫理審査委員会による審査がなされているが、なんら歯止めとなっていない。その記録も残されていない。


●データの信憑性に関して検証を行おうとしても、多くの関係資料がすでに廃棄されていた。


●多額の研究資金が提供されているにもかかわらず、大学側研究責任者を中心としたデータ管理体制が適切に構築されていない。また、実際にデータ管理が不十分であった。

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上記に「データの信頼性確保や統計解析の方法、被験者保護や利益相反などの臨床研究の基本的ルールに対する理解が十分であったか」とありますね。

『臨床研究』を実施する人は『治験』の経験が十分(少なくともプロトコルを10本以上)にある人に限ってはどうでしょう?

あと、「そもそも科学者としての良心に従って研究を行っていたか」とあります。

これは、古くて新しい問題というか、永遠のテーマです。

科学者としての良心を育てるにはどうしたいいのでしょうか? (「ピノキオ」のアニメを観てもらう?^^;)


「倫理審査委員会が歯止めになっていない」というのが悲しい・・・・・・。




さて、『組織のリスク管理』です。
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(6) その他

今回、本検討委員会は、高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する5大学全ての調査結果について報告を受けた。

その結果、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学及び滋賀医科大学の3大学については、データの操作又は恣意性が否定できないとしている。

名古屋大学については、恣意的なデータ操作はなかったとした。

また、千葉大学については、現時点ではデータ操作は見当たらないとしたものの、資料の多くがすでに廃棄され、大学での調査範囲が限定的であり、平成25年(2013 年)末の第4回検討委員会開催時点においても第三者調査が開始されていなかった。

このように、今回の臨床研究事案にかかるデータの信頼性は大学間で異なるものであったが、事案が判明した際の大学における調査の迅速性や内容は大学間で大きく異なるとの印象を受けた。

今回の事案は、研究開始からすでに十年程度経過しているものであり、調査に一定の困難が伴うことに理解はするが、このような事案が生じた際に迅速かつ適切な対応がとれることは、大学の臨床研究に関するガバナンスの適切性を示すものであり、臨床研究実施機関としての能力を反映する一つの要因となりうるものと思われた。

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問題が発生してしまった場合の対応が組織によって異なります。

組織の人材の問題でもあります。

また、組織のリスク管理、組織のリスクマネジメントシステムの問題です。

あなたの会社、組織で、もし、自分たち自身に問題があった場合、それを自らが解明するシステムがありますか?






さて、今回のディオバン問題は臨床研究を立て直す、いい機会です。

この際、徹底的に臨床研究の方法を検討し、根本的に再構築する絶好のチャンスです。

薬事法もGCPもヘルシンキ宣言も同じような過程を経て、改訂されてきました。

サリドマイド事件、SMON、ソリブジン事件、HIV薬害、C型肝炎・・・・


それでは、どのような再発防止策があるのでしょうか?
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3.対応が必要な事実関係と再発防止策

「今回の事案が起こった背景、原因と問題点」を元に、本検討委員会は再発防止策として以下のとおりとりまとめた。

国及び臨床研究に携わる者は、互いに連携し、早急に対応・検討を進めるべきである。

国は、これらの諸事項を規定する法制度について検討すべきである。

我が国の臨床研究に対する信頼回復のためには早急な対応が必要であり、そのための法制度についての検討に当たっては、下記(1)に記載のとおり様々な影響等を十分考慮の上、本年秋を目処に検討を進めるべきである。また、並行して、現在検討中の臨床研究倫理指針の見直しの一環として必要な対応を図るべきである。



(1) 信頼回復のための法制度の必要性

本検討委員会では、研究の質の担保及び被験者保護並びに研究者の利益相反管理、研究支援に係る製薬企業の透明性確保等の観点から、これらを担保するための法制度等の必要性についても検討を行った。

現状の臨床研究倫理指針については、厚生労働大臣告示として、各臨床研究実施機関及びその関係者に遵守を求めてきたところであるが、当該指針の遵守状況に関する監視機能は現状設けられておらず、指針に違反した場合の研究者等に対する罰則は設けられていない。

また、我が国では医薬品の承認申請を目的とした治験については国際的に整合化された「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(いわゆるICH-GCP ( Good Clinical Practice))」の遵守について薬事法を根拠に求めているが、治験以外の臨床研究については薬事法の対象とされておらず、未承認医薬品に対する臨床研究であってもその対象となっていない。

また、欧米では臨床研究の中でも未承認の医薬品を用いた臨床研究については治験であるか否かを問わずICH−GCP の遵守を求めているが、その比較において、我が国での臨床研究の質の確保・被験者保護等に対する現状の法令の位置づけは、臨床研究の研究者に対する拘束力として脆弱であり、米国の研究公正局ORI(Office of Research Integrity)や被験者保護局OHRP(Office for Human Research Protections)を参考にしつつ、臨床研究の実施機関等に対する公的な監視機能の構築や、指針に違反した者を公表してはどうかといった考え方もある。


その一方で、臨床研究に対する規制を厳しくした場合の影響についても十分考慮する必要がある。

例えば、薬物を用いるあらゆる臨床研究実施に当たりICH-GCP の遵守を求めるとなると、人材確保とその継続的雇用を含め、そのコストは従来以上のものとなり、臨床研究実施機関におけるさらなる費用負担が一般に困難な現状を考慮すると、規制強化により、治療指針策定に必要な臨床研究など、我が国で必要な臨床研究が実施できなくなる恐れがある。

実際、過去に欧州においてICH-GCP の遵守を新たに求めたところ、遵守を求める前に比べて臨床研究実施件数が減少したとの報告がある(Trials 2012, 13:53)。

そのため、現在、欧州においては臨床研究に対する規制の見直しが進められている。


また、臨床研究に対する規制の仕組みについては欧米間でも異なっている。


米国ではIND(Investigational New Drug)制度として、未承認薬等の臨床研究実施に際し、承認目的であるか否かに関わらず、試験責任者がFDA(米国食品医薬品局)に対し必要書類とともにあらかじめ届出を行う制度が存在する。

また、既に承認された医薬品であって適応外の効能に関する臨床研究についても、IND 制度の対象とされているが、一部IND 制度の対象外となるものもある。

一方、欧州では、一般にIND 制度に該当する仕組みのほかに、被験者保護を目的とした臨床研究全般を包括的に規制する法律が存在する。

例えば、今回の事案は、ディオバンの薬事法上の承認後に実施された臨床研究であり、米国ではIND 制度の対象外とみられ、仮に我が国で臨床研究を法的に規制するとした場合、どのような仕組が適切かの検討も必要である。



本検討委員会としては、薬物を用いる臨床研究の実施に当たりICH-GCPの遵守を求めることや、臨床研究全般を対象とする新たな法律を作り臨床研究の実施機関や研究者等に対する法的拘束力を確保すること、公的な監視機能を新たに構築することは、臨床研究の質の確保や被験者保護の観点から有効であると考える。

我が国の臨床研究に対する信頼回復のためには早急な対応が必要であり、そのための法制度に係る検討について、国は、臨床研究の実施機関等に対する影響をも考慮したうえで、本年秋を目処に検討を進めるべきである。

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上記に「薬物を用いるあらゆる臨床研究実施に当たりICH-GCP の遵守を求めるとなると、人材確保とその継続的雇用を含め、そのコストは従来以上のものとなり、臨床研究実施機関におけるさらなる費用負担が一般に困難な現状を考慮すると、規制強化により、治療指針策定に必要な臨床研究など、我が国で必要な臨床研究が実施できなくなる恐れがある。」とありますが、こんなの放っておけばいいのです。

以前、「医薬品ができるまで」のブログにも書きましたが、ルールが厳しくなったら、ついてこれない人・組織・研究は消えればいいのです。
     ↓
http://chiken-imod.seesaa.net/article/392923478.html


「本年秋を目処に検討を進めるべきである」と最後にありますね。

期待します。


2014年04月15日

誰が、データを改ざんしたのか?

今週はディオバン問題に対する報告書を見ていきます。

この報告書の中から、特に皆さんにお読み頂きたいところを抽出しました。

ほとんど、報告書をコピペしているだけですので、「これぐらいの報告書なら自分で読むよ」という方は、今週はスキップしてください。

なお、下記の抽出部分は報告書のほんの一部ですので、正しく理解するためには、全文をお読みくださいね。


ディオバン問題に対する報告書
   ↓
●高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)
平成26 年4月11 日高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000043426.pdf


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「報告書」から
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平成15年(2003 年)制定の「臨床研究に関する倫理指針」(厚生労働大臣告示、以下「臨床研究倫理指針」という。)」において研究者による利益相反管理の必要性を求めていたにも関わらず、大学側研究者における利益相反の管理に関する対応はずさんであった。

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利益相反ですね。

そもそも、「利益相反行為(Conflict of Interest:COI)」とはわかりやすく言うと、依頼者からの業務依頼があった場合、中立の立場で仕事を行わなければならない者が、自己や第三者の利益を図り、依頼者の利益を損なう行為のことである。

COIとは、具体的には、外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。

公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる。


まぁ、早い話し、何か臨床研究をやった場合、特定の企業(特に研究の対象になる薬物を販売している製薬会社)から、資金を得ていますか?ということを明確にするということですね。


なお、平成15年(2003 年)制定の「臨床研究に関する倫理指針」
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http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf



報告書を見ましょう。
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特に大学側研究責任者については、当該元社員がノバルティス社の社員であることを臨床研究開始の当初から認識していたか、研究の途中段階で認識していた可能性が極めて高く、それにもかかわらず関連する論文に利益相反に関する適切な記載を行っていない。

研究の途中段階でプロトコールや患者同意説明に関連する文書の変更がなされているにもかかわらず、倫理審査委員会での記録が見当たらず、適切に審議がなされたか不明である。

また、利益相反の適切な開示を行うよう倫理審査委員会が指摘した形跡も確認できない。

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上記で注意すべきは「プロトコールや患者同意説明に関連する文書の変更がなされているにもかかわらず、倫理審査委員会での記録が見当たらず、適切に審議がなされたか不明」という点ですね。

治験では、ちょっと考えられない事態です。

こわいな。

やっぱり、早急に医師主導の臨床研究もGCP準拠にすべきでしょう。






さて、報告書は続きます。
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大学側研究責任者が利益相反に関する適切な開示の必要性を認識しておらず、結果として対応が不十分であった可能性もあるが、臨床研究に際しての実施体制が脆弱であったことが影響を及ぼした可能性もあると考えられた。

すなわち、統計解析担当者などの大規模臨床研究に必要な人材を外部からの労務提供に大きく依存して開始したため、研究チーム内でその対応や分析内容について十分な議論や批判ができなかったおそれがある。

また、後になって当該統計解析担当者が製薬企業関係者であることが判明し、臨床研究の信頼性に重大な影響が及ぶことを大学側研究責任者が認識したとしても、そのままなし崩しに臨床研究を継続せざるを得なかったものと考えられた。

いずれにせよ、大学、大学側研究者及びノバルティス社双方において、利益相反状態を適切に把握し、管理する組織・機能がないと考えられた。

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上記でこわいのは「大規模臨床研究に必要な人材を外部からの労務提供に大きく依存」せざるを得ない、現在の大学(やネットワーク)側の研究体制です。

そもそも、そんなところで、研究をやってはいけないのでは?

それに、ノバルティスから多額の研究費を貰っていたなら、そのお金で人材を雇えばいいんですよね。そうじゃない?

もし、外部からの人材に依存しないと研究ができないということならば、その研究に対して第三者的な立場の人たちを派遣してもらとか、委託するとか、でしょうね。







では、誰が、データを改ざんしたのか?
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(4) データを操作した者とその意図

今回の事案のうち、京都府立医科大学及び東京慈恵会医科大学の事案については、データの操作が行われていることが大学の調査結果により判明した。

この点に関し、大学側は、大学側研究者はデータ管理・統計解析業務の十分な知識経験がなかったこと及び元社員がデータ解析を行った証拠資料が存在することから、その者によるデータ操作が疑われるといった趣旨を述べている。

これに対して、ノバルティス社側は、社内調査に基づき「元社員がデータ操作に関与した証拠はない」とし、また「会社として元社員にデータ操作を指示した形跡は見られない」と述べている。

ノバルティス社の元社員によると、大学側研究者に統計解析の専門家がいなかったことから、大学側からの要請に応じデータの一部を渡されてデータ解析を行ったことは事実だが、データ管理には関わっておらず、データ操作などできる立場にはなかったと述べている。

大学側研究者の主張は、自分たちに大規模臨床研究の前提となる統計解析等の能力が欠けていたにもかかわらず、臨床研究を行ったことを意味するものである。

本来、このような大規模臨床研究を実施するのであれば、研究責任者の管理体制の下で、データ管理者、統計解析担当者などが適切な対応を図っているはずであり、データ操作が行われたとすれば、この管理体制に何らかの問題があったためである。

大学側研究者は、データ操作に関わっていなかったことについての積極的な説明責任を負っている。

本事案において、大学側研究者は、本来大学側研究者の責任において管理すべきデータが、何故元社員によって操作され得たのかについて何らの説明をしていない。


今回のデータ操作による結果に対する責任のみならず、我が国の医学界に対する信頼性が低下したことに対する責任は、ノバルティス社及び関係大学(大学側研究者を含む。)の双方で負うべきと考える。


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結局、究極の問題は、未だに、データを捏造・改変したのが誰なのかが分からない、とういことですね。

実は、データを捏造したのが誰か分からない、という状況そのものが、研究体制、システムの根源的な問題を表しています。

治験では『監査証跡』等が残りますから、そのようなことは起こりにくいと思います。


2014年04月12日

「ディオバン事件」に関する報告書

今週はディオバン問題(ディオバン事件)に対する報告書を見ていきます。

この報告書の中から、特に皆さんにお読み頂きたいところを抽出しました。

ほとんど、報告書をコピペしているだけですので、「これぐらいの報告書なら自分で読むよ」という方は、今週はスキップしてください。

なお、下記の抽出部分は報告書のほんの一部ですので、正しく理解するためには、全文をお読みくださいね。


ディオバン問題に対する報告書
   ↓
●高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)
平成26 年4月11 日高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000043426.pdf


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そもそも、今回のディオバン事件はどのように起こったのでしょうか?

その背景や原因はどこにあったのでしょうか?

それを見ていきましょう。
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2.今回の事案が起こった背景、原因と問題点

今回の事案が起こった主な背景・原因と問題点等を整理すると以下のとおりである。


(1) 臨床研究の企画立案

ディオバンが我が国で承認された平成12年(2000 年)当時、一般に、製薬企業による医薬品開発は高血圧症や高脂血症などの比較的患者数が多い疾患を中心に進められており、このような領域における市場獲得競争は内外で激しいものであったと考えられる。

このような状況の下で、どの製薬企業も自社製品に関して他社の同種同効薬との差別化につながりうる新たな科学的根拠を得ることができれば販売競争を優位に進められると考えたことは十分想定されるところである。



一方、大学等の研究機関においては、この時期、同種同効薬が数多く流通する疾患領域において、EBM (Evidence-based medicine)に基づく標準的治療法の整理・検討がすすめられた。

このような状況下で、国内外の研究機関で種々の大規模臨床研究が開始され、前向きランダム化オープンエンドポイント盲検化試験(PROBE 法)などの新たな試験デザインが行われるなどの状況にあったところであり、研究功績を上げる観点からこのような大規模臨床研究を実施したいと考える研究者が現われることは十分ありうることであった。


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まず、高血圧治療薬は過酷な競争状況下にあって、各製薬会社とも自社の製品の「差別化」(多剤よりも優位である)をはかっていた、ということですね。

さらに、日本では20年ぐらい前から言われ始めたEBM(EBMとはEvidence-based medicine:根拠に基づく医療)の流れにありました。

そこで、製薬会社はこぞって「EBM」のために、臨床研究に力を注いだ(臨床研究を実施してくれる医師に資金を注いだ)わけです。

もちろん、根拠の無い医療・治療はよくないのですが、そのEBMが当時から日本では「ブーム」のようになってしまっていたんですね。

EBMは「ブーム」ではなく「学術的意義」。

なんでもかんでもEBMのためですから、と言えば、予算が取れた、あるいは「EBMのためですから」と言った人の心を安心させる、あるいは、そう言われると納得してしまうというよくない傾向にありました。
(今も、そのような点があることは否めない。)

EBMという言葉だけが独り歩きし、本当のEvidenceを得るための科学的手法、医学的意義、倫理的な観点が失われてしまっています。(今も。)


『製薬会社』も『研究者(医師)』もEBMを求めており、そんなところから、両者の利害が一致してしまったわけです。


ところで、そもそもEvidence-based medicine:根拠に基づく医療とは何でしょう?
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(Wikipedia より)

「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」("conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence") 医療のあり方をさす。

エビデンス(臨床結果)に基づく医療とも呼ぶ。

治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、専門誌や学会で公表された過去の臨床結果や論文などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とも共に方針を決めることを心がける。


「根拠に基づいた医療」の発祥の地のアメリカでは勤務医の臨床結果(治療結果や珍しい症状のケーススタディなど)が論文として医学誌に発表され、業績として評価される制度が整っているため、膨大な数の医療データが医療現場から生産・蓄積され治療現場に活用されている。

このため治療法が日進月歩で進化するため、医者は常に自らの専門の分野の最新の情報を、関連の医学誌を購読することで熟知していなければならない。

また、これを怠って最新の治療を行わず患者の容態が満足な結果に終わらなかった場合は、患者から訴訟で賠償を請求されるというだけでなく、このような医学誌を参照とすることで適切な治療が行われていたか、裁判で客観的に判断されるという側面を持つ。



人体の生理反応や治療の効果・副作用には再現性は必ずしも認められず、同じ治療でも患者によって結果は異なる。

しかしすべての医療行為は、目の前の患者にとって最良の結果をもたらすために医学的判断に基づいて選択されなければならない。

最良の治療法を選ぶ方法論として従来は生理学的原則・知識が重視され、不足の部分を医療者の経験や権威者の推奨が補ってきた。


●生理学的判断の例

「心筋梗塞後に薬で不整脈を減らすことができれば、不整脈による死亡を減らすことができるはずだ」



●権威の例

「この治療法は当大学で100例以上の良好な成績を収めており、関連病院にも勧めている」



●個人的経験の例

「私の経験では、ホルモン補充療法はどうやら心疾患を減らすようだ。同僚もそう言っている」



●根拠に基づいた医療

「医学誌の救急医療ジャーナルの2005年9月刊行の論文によれば心筋梗塞後の治療法Aの250件と治療法Bの50件の比較調査では治療法Bの方が不整脈による死亡は8%ほど低いと言う結果であった。ただし同雑誌2008年の4月の論文における追跡調査では50歳以上の患者の場合は逆に治療法Aの方が2%ほど死亡率は低いとの結果である。この患者は高齢であるので生存率の観点からは治療法Aが最適な選択である。ただし治療法Aはホルモン補充療法であり、これには他の副作用が報告されている。よって治療法AとBの生存率およびもろもろの副作用の可能性を患者に掲示したのち最終的に治療法を選択するのは患者である。」(患者に選択権を与えるのはインフォームド・コンセントに基づく医療で根拠に基づいた医療とは直接の関係はない。)


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治療法などの選択となる根拠は「正しい方法論に基づいた観察や実験に求めるべきである」という主張が現れた。

カナダのマクマスター大学でDavid Sackettらにより提唱されたこの動きは1990年にGordon GuyattによりEBM(Evidence-based Medicine)と名づけられ、文献への初出は1992年。

日本では根拠に基づいた医療、中国語では、循証医学、実証医学、証拠医学などと訳される。

EBMはこのように、通常行われている診療行為を科学的な視点で再評価(「批判的吟味」と呼ばれる)した上で、患者の問題を解決する手法と位置づけられ、外部のエビデンス(=科学的根拠)を目の前の患者にどのように適用するかに最も関心がある。

「根拠に基づいた医療」に則った考え方は徐々に浸透し、有効な臨床結果を集積した論文集や教科書が出版されるようになった。

当初は臨床結果の情報による裏づけが十分な治療法はごく少数しかなかったが、現在では3割を超えたという報告もあり、医療機関における治療方法の差も縮まってきている。

またEBMの手順を経て過去にデータが得られない疑問は即ち臨床研究の対象となる潜在性を秘めており、EBMは臨床研究の普及にも大きな役割を果たしている。

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うむ。「EBMは臨床研究の普及にも大きな役割」を果たしているんですね。





さて、さらに報告書は続いています。
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今回の事案に関し、ノバルティス社は、同社からの奨学寄附金について、各大学における今回の研究事案の支援に用いられることを意図及び期待していたと公表資料に記載している。

他方、大学側研究者における臨床研究の企画立案について、大規模臨床研究を立案した京都府立医科大学及び東京慈恵会医科大学の研究責任者はいずれも「新たな主任教授として着任し、自らの講座立ち上げ当初であったことから関係者間の結束を強化したい
との考え方に基づき実施した」旨説明しているが、さらに臨床研究の対象医薬品をディオバンにしなければならない特段の理由についても述べておらず、いかなる医学的研究課題を解明するためにこのような医師主導の臨床研究を企画立案したかについて明示していない。


このように、今回の事案にかかる臨床研究の企画立案について、ノバルティス社側には、自社製品の販売戦略という動機付けが認められ、他方で大学側研究者には新しい大規模臨床研究の実施にあたり、特定の医学的研究課題の解明を目的としたと考えられない動機付けが認められる。

医学的研究課題の解明に向けられたものとは言えない臨床研究は、本来行ってはならないものであり、特に被験者保護の観点から問題がある。また、本来の目的が曖昧な状況で研究を実施することにより、医学的研究以外の意図等を有する者が関与する隙を与えた可能性がある。

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上記の中でのキーワードは「医学的研究課題の解明に向けられたものとは言えない臨床研究」ですね。

そもそも、どのような『医学的研究課題』があるのかを明確にしないために、つまり、臨床研究の意義を深く考慮せずに、製薬会社と研究者の利害の一致で、臨床研究が始まってしまったようです。

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