2014年10月11日

「臨床研究に関する倫理指針」の改正案に関する意見募集の結果について(3)

今週も先々週に続き、下記のパブリックコメントのQ&Aを見ていきます。


●「臨床研究に関する倫理指針」の改正案に関する意見募集の結果について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495080030&Mode=2


ただし、パブリックコメントを反映させた「臨床研究に関する倫理指針」の(案)が出ているのですが、変更履歴が残っているし、まだまだ、紆余曲折しそうなので、正式に出たら、またみます。
    ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000060614.pdf



それと、検討されている先生方の間では「監査」は不要なんじゃないか、という意見がありますね。(ICH-GCPでは監査は必須でないためもあるし、人材確保の問題もあるし、作業が過剰だという意見もある。)
    ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000060615.pdf


「『人を対象とした医学系研究に関する倫理指針』に対するパブリック・コメント等への対応」
    ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000060691.pdf



「監査に関する規定の削除の必要性について」
    ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000060692.pdf


ということで、先々週の続きのパブリックコメントの続きです。


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生体臓器移植で、標準的とはいえない方法の場合、生きている人から臓器を摘出する行為は、「介入」の定義のうち「ア」の、「通常の診療を超えた医療行為を研究として実施するもの」といえるのでしょうか。

生きている人からの研究目的の臓器摘出は、摘出される人にとって「医療行為」といえるのかどうか、法的根拠とともに解説を示していただきたいと思います。







個別に具体的な検討が必要と考えています。

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臨床研究と疫学研究の差異が不明瞭である。

これまでの議事録、QA集を読んでもどちらに該当するのか判断に迷うことがある。

そもそも疫学的な方法を用いない臨床研究はありえないし、「臨床」の定義もあいまいである。

学際的な研究が増加するにつれ混乱が広がることが予想される。

米国のcommon ruleの対象は、「医学研究」「臨床研究」に限定されず「人を対象とした研究」である。

わが国でも「臨床研究」「疫学研究」「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」等に関する倫理指針を別個にさだめずに、人を対象とする研究全体を包括する倫理指針を作成し、細則のなかで個々に特有な運用指針を定めるようにしていただきたい







2つの指針の一体化等は次の改正時の検討課題です。

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薬物の適応外使用、適応外の手術を行う研究は、臨床研究に関する倫理指針の対象となるのか、薬事法の対象となるのか。

この場合の検査・治療の費用は保険診療としてよいのか、あるいは研究目的なので療担規則からは保険請求の範囲外となるのか。

例として、IgA腎症に対するステロイドパルス療法、扁桃腺摘除術の有用性を評価するため無作為対照試験を計画した場合はどうなるだろうか。

IgA腎症に対するステロイドパルス療法は保険適応外である。

IgA腎症に対する扁桃腺摘除術も保険適応外である。

この研究を実施するにあたって参照すべき倫理指針は臨床研究に関する倫理指針でよいか。

薬事法にも準拠すべきか。

研究ではあるが、clinical equiposeが成立しており、患者に対する治療効果を期待して実施している行為であるため費用は保険診療の範囲で請求してよいと考えるがどうか。

一方、IgA腎症の患者を対象にレジストリーを作成、治療選択は担当医の判断に任せるとし、その後の予後を追跡調査する場合、「当該方法の有効性・安全性を評価するため、診療録等診療情報を収集・集計して行う観察研究(「疫学研究に関する倫理指針」についてのQ&A:Q1-7)」に該当し、疫学研究に関する倫理指針の対象になると考えられ、臨床研究に関する倫理指針の対象外となるのか。







薬事法上の適応拡大を目的とした臨床試験以外は本指針の対象であると考えられます。

適応外での医薬品等の保険との併用については高度医療その他適切な手続きなどによるものです。

対象については疫学指針のQAの通りです。



posted by ホーライ at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月03日

「人を対象とする研究」とは?

今週も先週に続き、下記のパブリックコメントのQ&Aを見ていきます。


●「臨床研究に関する倫理指針」の改正案に関する意見募集の結果について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495080030&Mode=2


いつものとおり気になる点だけピックアップしています。

是非、全文を読まれることをお勧めします。

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1.「臨床研究に関する倫理指針」の改正案の概要(案)において、『「介入を伴う研究」における「介入」とは、「予防、診断、治療、看護ケア、リハビリテーション等について、(ア)通常の診療を超えた医療行為を研究として実施するもの』とある。

ここでいう「通常の診療を超えた医療行為を研究として実施するもの」とは、医療法第1条の2「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。」にいう「医療」の範囲内で行われるものと解してよいのか、あるいは、同条にいう「医療」の範囲を超えた行為を研究として実施する、という意味であるのか、明確でない。

細則またはQ&A等で、法理論的根拠とともに明確に示していただきたい。







QA等で対応を検討させていただきます。

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2.医療法第1条の4では、「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第1条の2に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。」とある。

「介入研究」において、例えば、効果・安全性が全く未確認の製造物を世界で初めて患者に投与する行為(first-in-human試験)は、医療法第1条の4に違反することにならないのかどうか、明確でない。細則またはQ&A等で、法理論的根拠とともに明確に示していただきたい。







医療法には抵触しないものと考えますが、御指摘の点について今後の検討課題とさせていただきます。

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3.健康人を対象として研究目的で医薬品・未承認の製造物を人体に投与する行為が、臨床研究として行われている実情があるが、このような行為についても、医療法第1条の2、医療法第1条の4に照らし適法と言えるのか否か。細則またはQ&A等で、法理論的根拠とともに明確に示していただきたい。

医療法以外の法令に照らし適法と言える場合には、その法的根拠をお示しいただきたい。







医療法には抵触しないものと考えますが、御指摘の点について今後の検討課題とさせていただきます。

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【倫理指針外】として、「疫学研究に関する倫理指針」との一体化の検討が示されておりますが、現在発令されている種々の指針類ではカバーできない「人を対象とする研究」があると思われます。

それは、社会科学分野における研究などです。

この領域の研究は、採血や試料採取といった人体に対する直接的な侵襲を伴うものではありませんが、例えばインタビュー調査の質問内容や聞き方によっては、被験者の精神面への悪影響を及ぼす可能性は十分に想定できるものです。

このような研究も含めた倫理審査ができるよう、将来的には、「人を対象とする研究」を一元的に扱う指針、又は法律の策定が必要ではないかと考えます。







2つの指針の一体化等は次の改正時の検討課題です。

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現在、製薬企業から依頼される使用成績調査・特定使用成績調査には、「薬事法第14条の4及び第14条の6に規定されている再審査・再評価の際に提出すべき資料の収集のために実施する調査」以外に、下記の調査があります。

(1) 再審査・再評価に係わらない調査(総合機構に調査基本計画書及び調査実施計画書等が提出されていないもの)

(2) 薬事法第14条の4及び第14条の6に規定されている再審査・再評価の際に提出すべき資料の収集のために実施する調査であるが、

@ 再審査・再評価期間が終了している。

A 介入や実験的項目が実施要綱に定められている。(日常診療では行なわれない評価方法や検査項目等が実施要綱に定められている)

B 患者情報や生体資料或いは画像情報等が調査依頼者、総合機構及び厚生労働省以外の第三者へ提供されることが実施要綱に定められている。

C 製薬企業以外の研究者等により調査結果が学会発表や論文として公表される。

D 保険診療以外の費用が発生する。


上記(1)及び(2)の調査についても、調査を依頼する製薬企業としては、省令GPSPに従い、調査実施医療機関との契約締結は必須だが、本臨床研究に関する倫理指針の適用対象(範囲)となるのか、あるいは、どこまで適用されるか等、本倫理指針における位置付けを明確にする必要があるのではないか。







本指針は薬事法における規制等の他の規制の対象となる研究調査は対象としていません。

薬事法の下で実施される研究かどうか、研究の実施時点で依頼者等とよく相談をいただき、対象とならないものであれば、本指針又は疫学研究に関する倫理指針等の関連指針を遵守してください。

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未承認の医薬品・医療機器を使う研究に公的健康保険を併用できるよう臨床研究を法制化すべきとの研究者からの要望があったのに対し、これが退けられ、公的健康保険の併用が可能な「高度医療評価制度」について追加記載されている。

行政指導により医薬品・医療機器を使う介入研究につき登録公開を義務づけるのであれば、登録公開されている研究であって高度医療評価制度に申請されていない未承認の医薬品・医療機器を使用する臨床研究について、行政的にいかなる対応をするのかを検討の上、指針に明記すべきである。







医療保険を併用したい者は高度医療評価制度に申請することとされています。

医療保険の対応は指針本文とは独立したものです。

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現在、本邦における臨床試験で最も不明確なのは適応外使用の問題であると考える。

特に髄芽腫等の小児悪性腫瘍の大量化学療法に使用されているブズルファン、サイオテパ、メルファランに関しては投与環境の整備もなく、効果的であるという海外のデータを引用する形で、公に臨床試験が進んでいる事実が厳然として存在している。

「臨床試験に関する治療指針」を改正する際に、臨床試験における薬剤の適応外使用に関する指針を細目の形で示せないか。







適応外使用の問題については、医学薬学上公知のデータによる承認申請等、様々な対策を行っています。

厚生労働省医政局研究開発振興課にお問い合わせ下さい。

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「臨床研究の倫理指針に関する専門医委員会において、関係者に対して要請する事項」の(6) 厚生労働省は倫理審査委員会の委員について研修・教育の機会を提供する。

(7) 厚生労働省は、現在利用可能なe-learningに係る情報の普及・啓発に努めるについて、治験についても同様の扱いとされることを望む。







治験・臨床研究と共通の事業として行っています。

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臨床研究倫理指針を遵守した研究においては、高度医療評価制度の適用対象となる研究だけでなく、全ての臨床研究において保険診療との併用を可としていただきたい。

またGCP同様、被験者協力費、被験者募集広告についても可としていただきたい。

臨床研究基盤の整備のためには治験同様の環境が必要と考える。







保険併用については高度医療評価制度により現行制度に基づいて対応をお願いしています。

臨床研究基盤の整備に努めてまいります。

なお、医療機関が臨床研究の被験者募集を行うことは可能と解されます。

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「臨床研究の倫理指針に関する専門委員会において、関係者に対して要請する事項について」の「(8) 被験者の補償に関する保険について」のBに関して、補償を行うための健康被害と臨床研究の因果関係については、第三者の判断が行われるべき旨が記載されているが、倫理審査委員会の責務として規定すべきと考える。

一方で、これは「補償を行うための健康被害と臨床研究の因果関係」であって、その他の有害事象(重篤を含む)には適用されないことを確認したい。

因果関係判断をすべて倫理審査委員会が行うことは、実務的にも困難であり、またGCPとの不整合も問題となる。

また、健康被害と臨床研究との因果関係の判断を、倫理審査委員会が行うのが困難であるのなら、厚生労働省からの委託機関にてその機能を有する仕組みを設け、利用可能とすることが望ましいと考える。







貴見のとおりです。厚労省からの委託機関については今後の検討課題といたします。

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現在、臨床研究で用いる有効成分含有物(以下、臨床研究薬)および対象薬については、薬事法上での取扱いの規定がないため、

1.臨床研究薬として、どの程度の非臨床のデータがあればよいか

2.どの程度の施設での製造であれば認められるのか

3.国内製造及び国外製造の臨床研究薬の授受はどの様に行えば合法的であるか

等についての基準がありません。


倫理委員会での審議においても、判断基準がまったくない状態であり、今回の改正で、倫理委員会が改正の内容に従って、厳密に解釈をして、臨床研究薬についても治験薬と同等のレベルまで求める事になりかねず、臨床研究の進行に大きなブレーキをかける可能性があります。

そのような事態に陥らないようにする配慮が必要と考えます。

(要望)

上記、1,2,3についてのガイドラインを出していただきたい。







医薬品等の提供については、個々の事例毎の対応を検討することになります。

倫理審査委員会の機能については、今後の検討課題とさせていただきます。

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ヘルシンキ宣言には「利益相反」情報をIRBに報告することになっています。

臨床研究を行う際にも必須にすべき。







倫理審査委員会の資料として利益相反に関するものが規定されています。

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●ヘルシンキ宣言

22.人間を対象とする各研究の計画と実施内容は、研究計画書に明示され正当化されていなければならない。

研究計画書には関連する倫理的配慮について明記され、また本宣言の原則がどのように取り入れられてきたかを示すべきである。

計画書は、資金提供、スポンサー、研究組織との関わり、起こり得る利益相反、被験者に対する報奨ならびに研究参加の結果として損害を受けた被験者の治療および/または補償の条項に関する情報を含むべきである。

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臨床研究を実施するにおいて、データの信頼性に着目した場合、「臨床研究に関する倫理指針」第2章研究者等の責務等の1条2項細則臨床研究計画書の記載すべき事項中に、GCP上に記載のある「原資料の閲覧に関する事項」、「記録(データを含む。)の保存に関する事項」等がない。

また、モニタリングの実施、監査等、データをモニタリングする業務に関する記載がない。

以上のことから、これらを規定していない状態で実施されたものについて、データの信頼性が治験と同等であるとは言いがたい。

よって、これらの記載を加えることを考えます。







今後の検討課題といたします。

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薬事法上の「治験」については、必要な動物実験が厳しく定められていますが、「臨床研究」では、全く新しい製剤を、トランスレーショナル・リサーチと称して患者に投与する場合に、どのような動物実験が必要なのか、まったく検討されていません。

TGN1412の後、イギリスでは特別な作用機序を持った新規の製剤については特別な管理体制を設けました。

日本でも、せめてそのような新規の製剤だけは、当局が管理する体制にすべきだと思います。







今後の検討課題といたします。

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「今後の検討課題」が山積みです。(ホーライ)


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2014年10月02日

「臨床研究に関する倫理指針」の「法制化」について

今週も先週に続き、下記のパブリックコメントのQ&Aを見ていきます。

●「臨床研究に関する倫理指針」の改正案に関する意見募集の結果について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495080030&Mode=2


いつものとおり気になる点だけピックアップしています。

是非、全文を読まれることをお勧めします。

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改正指針の完全実施までに、半年から1年程度の猶予期間を設けていただきたいと思います。

特に、補償保険費用の支払体制を作るには時間が必要ではないかと思われます。







施行期日については補償保険の提供可能時期も踏まえて対応します。

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ICH-GCPではSponsorが保険を準備するように記述されている。

本指針では、「いかなる臨床研究も、臨床研究機関の長の責任の下で実施されることを確保し」と記述されている。

保険加入を責務とする場合、ICH-GCPでいうSponsorとしての「臨床研究機関の長」が保険契約主体となることが妥当と考える。







臨床研究機関の長が研究者を代表して加入することも想定されます。

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企業等が依頼者とならない「非治験」の臨床研究が多数実施されている現状では、公的資金による研究支援の充実が不可欠である。

指針の改定に伴い、競争的研究費制度の弾力的な運用を進める必要がある。







公的研究資金の弾力化を推進します。

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あくまでもこの指針内での定義であることは承知するが、「観察研究」と「疫学研究」に分けて指針を区別するのは、臨床研究の常識から理解が得られにくい。

「疫学研究を含まない」の記述は削除可能と思われる。







2つの指針の一体化等は次の改正時の検討課題です。

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今回の改正に当たって、本指針が各医療施設において、どのように遂行されているか厚生労働省のどの管轄部門が管理・運営するのか明らかにしてほしい。

また、それらを公表してほしい。







今後の検討課題とさせていただきます。

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利益相反に関連して伝える事柄を「ヘルシンキ宣言」等に従って具体的に示すべきです。

例えば、研究資金源などは必ず明記するべきことだと思います。







御指摘のとおりだと考えます。事例等を今後蓄積してまいります

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臨床研究の規制については、専門委員会において、法制化すべきとの意見が寄せられたが、一方で、法制化すべきでない、あるいは法制化について慎重であるべき、と考える専門家等からの意見聴取がなされておらず、審議が著しく不公正であった。

また、現在の臨床研究に関する倫理指針は、その他の倫理指針および薬事法に基づくGCPによって規制されるもの「以外」の研究を規制することを意図したものであり、そのように適応範囲が限定されている倫理指針の改正をめぐる議論において、単独で、その他多くの研究にまで影響が及ぶような法制化の問題について議論するのは、指針の改正手続きとして明らかにおかしい。

仮に法制化について議論するのであれば、別の機会をあらたに設けて、研究倫理の専門家等も委員に交えるなどの適切な対応を取った上で、賛成・反対の両方の立場から公正な議論を行う必要があるであろう。


さらに、法制化のメリットだけが強調されると、法制化による弊害が見えなくなる。

例えば、ひとたび法律として定められたならば、今後その問題点や修正の必要な点が生じる度に国会審議にかける必要がでてくる。

聖書のように引き合いに出されるヘルシンキ宣言においてさえも、1964年の初版が採択されて以来、すでに4回もの修正が加えられ、今現在5回目の修正が審議されている。

また、米国の45CFR46についても、例えば「ヒト被験者」の定義についていうならば、(1)生存する者のみが「ヒト被験者」であり、死者のデータや試料を用いた研究は、そもそも同法が適用されない、(2)被験者個人を特定することが可能な情報を含まない限りにおいては、例え生存する者を用いた研究を実施したとしても、やはり同法の適用は受けない、といった重大な問題点を有することが専門家から指摘されているものの、いまだ修正等は行われていない。

この事実は、法制化の後で修正に応じることの困難さはいずれの国に於いても同じであることを如実に物語っている。

これらの例からも明らかであるように、時代の変化や倫理的観点の変遷に常に柔軟に対応するためには、「法」という静的体系をとるのが最善かどうかは非常に疑わしいといえる。

倫理や倫理観というものは、法よりも常に動的な営みであり、またそうあるべきである。







法制化に関する意見については、様々な意見を検討して慎重に対応します。

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今般の改正の方向性は、論文を国際誌に投稿し業績を積むことを志向する研究者にとっては好ましいが、臨床研究の結果を、承認申請データとして活用し国全体としての開発力を高めようと志向する研究者にとっては、書類業務や曖昧な義務が膨大となる一方で結果が実用化に結びつかないという意味で好ましくないと考える。

iPS細胞、ES細胞、その他の幹細胞研究、分子イメージングなど、国策として推進され、侵襲性の高い研究の成果が実用化に結びつくようにするためには、諸外国と同水準の法的管理体制に置くことが必要不可欠であり、この観点からも今後法制化についての検討を継続すべきである。







法制化に関する意見については、様々な意見を検討して慎重に対応します。

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なるほど、「法制化」には、こんな、いろんな課題があるのか。このブログには記載しませんでしたが、「法制化」には賛否両論でしたね。(ホーライ)


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2014年10月01日

「介入を伴う研究」と「観察研究」

今週も先週に続き、下記のパブリックコメントのQ&Aを見ていきます。


●「臨床研究に関する倫理指針」の改正案に関する意見募集の結果について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495080030&Mode=2


いつものとおり気になる点だけピックアップしています。

是非、全文を読まれることをお勧めします。

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被験者に対する説明文書に記載しなければならない事項を、「介入を伴う研究」「観察研究」ごとに明示すべきである。

「介入を伴う研究」「観察研究」のいずれにおいても、「当該研究が試験を目的とするものであること」を、説明同意文書に記載すべき項目として加えるべきである。

臨床研究は患者の治療を研究対象とすることから、研究と治療の区別が曖昧になる危険性がある。

患者は医師が「常に患者の最善の利益のために行動」することを期待するものであるから、そこに「試験」という意図が持ち込まれる場合は、それを知らされ納得の上で研究に参加しなければならない。








インフォームドコンセントは、御指摘の趣旨です。

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人体より採取された試料を用いない観察研究についてはインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも必要としない、とされるようである。

しかし、個人情報保護法の実質的な規定が除外される学術研究機関における学術研究以外については、同意のない個人情報の目的外利用は同法の違反となる。

従って、研究実施についての情報公開のみでは目的外利用は正当化されないことを、指針に細則として明確に注記すべきである。

これを明記しない限り、法令違反を行政が意図せず推奨する結果となるおそれがある。







個人情報の保護に関する法律(最終改正・平成15年7月16日法律第119号)により、「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者 学術研究の用に供する目的」は、同法の適用が除外されていますが、これに当たらない機関については、同法の対象となります。

本指針前文においても入念的に同法の遵守を求めているところから、そのような臨床研究機関に対して、あえて重複する細則を追加する必要はないものと考えます。

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インフォームド・コンセントで観察研究の場合、研究が侵襲性を有しないとは、一般臨床で採取された組織や血液の余剰分や、採血時に余分に採血する場合もはいるのか。







採血は侵襲にあたると解されます。

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侵襲性を有しない観察研究には文書同意を必要としないとするのは、現行の指針より後退することを意味しないでしょうか。

「被験者への説明の内容及び被験者が同意したことに係る記録を作成しなければならない」ということは、文書同意を取ることが不可能な状況ではないわけですから、原則として文書同意は必要とするべきです。







疫学研究に関する倫理指針との整合性を考慮しています。

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16歳以上の場合であっても倫理審査委員会が承認し、臨床研究機関の長が許可した場合には、当該被験者本人からインフォームド・コンセントが可能とあるが、今後GCPにおいても同様の改訂を期待する。







被験者が未成年者の場合のインフォームド・コンセントの取扱いについて、基本的に現行の指針の取扱いを変更しないこととしました。

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「研究開始前に人体から採取された試料の利用については、原則、被験者の同意を得ることとするが、同意の取得ができない場合であっても、以下のいずれかに該当する場合には、倫理審査委員会の承認及び臨床研究機関の長の許可を得たときに限り、利用することができる。」とあるが、「同意の取得が出来ない場合」とはどのような場面を想定しているのか解説が必要と考えます。







被験者が過去に血液などを提供し、被験者本人の所在が不明な場合などが例としてあげられます。

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2-「「第5 試料等及び他の機関での利用について」(2)他の機関の試料等の利用について

他の機関の試料等の利用について、倫理審査委員会の承認に加えて、法人の代表者、行政機関の長等の許可を得なければならないとしたら、不必要に長大な時間と多大な労力を費やすことになる。

倫理審査委員会と当該研究機関の長の承認で十分ではないのか。







本改定においては、様々な研究機関の形態を考慮して、「組織の代表者等の許可を得なければならない。」としていますが、意味としてはご指摘のような倫理審査委員会と臨床研究機関の長の承認ということになります。

ご指摘踏まえまして、「組織の代表者等」の役割につきましては、臨床研究機関の長等に委任できるよう修正を行っています。


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2-「「第5 試料等及び他の機関での利用について」(2)他の機関の試料等の利用Aの(ア)について

試料等は患者のものであることから、臨床研究機関の長への報告のみでは不十分であると考える。

少なくとも倫理審査委員会の承認が必要ではないか?







疫学研究に関する倫理指針第4の3の(1)の@の規定を取り入れたものであり、疫学研究に関する倫理指針で採用されたものと同様の基準としてあります。

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「個人の尊厳」は全て「人間の尊厳」に変更した理由を説明願いたい。







個人個人に対する尊厳のみならず、医学研究は人間としての尊厳に配慮するものである趣旨の記載としています。


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「個人の尊厳」と「人間の尊厳」の違いがいまいち、よく分かりません。(ホーライ)

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2014年09月30日

倫理審査委員会の要件及び責務

今週も先週に続き、下記のパブリックコメントのQ&Aを見ていきます。


●「臨床研究に関する倫理指針」の改正案に関する意見募集の結果について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495080030&Mode=2


いつものとおり気になる点だけピックアップしています。

是非、全文を読まれることをお勧めします。

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倫理審査委員会について、類似の委員会をこの指針に適合する倫理審査委員会に再編成することで対応可能であることが規定されているが、GCPとほぼ同様であることから、GCPにおける治験審査委員会での審議を可能とする。としてもよいのではないか。

一方で倫理審査委員会の要件及び責務をGCPと同様に規定しても差し支えないのではないか。

それができない場合には、薬食審査発第0326001号(平成20年3月26日)の運用通知改正にて示された下記についても盛り込むことを検討いただきたい。

A 「実施医療機関の長が設置した治験審査委員会」には、改正前のGCP省令第27条第1項第1号及び第5号に掲げる治験審査委員会が含まれることから、実施医療機関の長は、複数の医療機関の長が共同で設置した治験審査委員会及び他の医療機関の長が設置した治験審査委員会に調査審議を行わせることができること。







GCPにおけるIRBとは規定が異なるが、GCPと本指針の双方の規定を満たすものであれば、治験と臨床研究を一つの委員会で審査することは可能です。

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倫理審査については、いわゆる「中央(セントラル)委員会」への審議の付託が可能となる改定案となっています。

この方向性は、多施設共同研究の実施基盤として重要と考えます。

しかし、重篤な有害事象等による補償や、過誤等による賠償等の問題が発生した場合の責任主体等についてより詳細なシミュレーションを実施しない限り、指針の運用にあたり解釈の混乱が生じる可能性があります。







責任主体は実施臨床研究機関、研究者となります。

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今、倫理審査委員会の質が問われていますが、これは単に理念上の問題ではなく、質の高い倫理審査委員会で承認されていない研究は世界に通用せず、国際共同研究ができなくなってきています。

日本には約3000の倫理審査委員会があると推定されますが、このような乱立状態は避けなければなりません。

委員の教育・研修をきちんと行い、審査能力を常に磨いている委員会のみ国が認定し、そうでない委員会は廃止して、質の高い倫理審査委員会に審議を集中させるべきです。







倫理審査委員会は外部のものも利用できることとする一方で、報告義務、当局の実地調査を規定し、水準の向上を図ることとしています。

これにより、倫理審査委員会の集約化等の意見や動きに対応することも可能になると考えているところです。

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都合で委員会に出席できない委員は、採決権はないとしても、意見を述べることができるようにするべきです。

意見があれば事前に提出してもらい、委員会で参考意見として取り上げるべきです。







各施設の運用での判断が必要です。

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委員の要件について、一人で複数の要件を満たすと見なしてもよいか、一人の委員は一つの要件しか満たさないとみなすべきか明記する必要があると考えられます。

さらに、同じ機関内、あるいは別の機関において、倫理審査委員会の委員を兼任できるかどうか、及び委員の利益相反の開示の方針について考え方を示す必要があると考えます。







現場で様々な運用があり、画一的な見解はありません。

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介入研究は、その性質からも、かならず倫理審査委員会の審査を受けねばならないものと思われますが、観察研究につきましては、施設内の特定の担当部門において、倫理審査委員会への付議の要否を事前に審査させるなどした交通整理が必要なのではないでしょうか。

事実、疫学指針では、このような規定があり、倫理審査委員会があらかじめ指名する者がこのような判断をすることができるようになっております(「疫学研究に関する倫理指針」第1-4-(3)参照)。

そもそも、このような混乱が起こりますのは、臨床研究倫理指針における臨床研究の定義のためのように思えてなりません。

本指針では、「医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって…」とされていますが、疾病原因や病態の解明を目的とした介入研究は極めて稀であります。

一方、多くのこの目的の基礎系研究は観察研究であり、また、介入研究にくらべ膨大な数の研究がこれまで行われ、また現在も行われています。

臨床研究を「診断方法及び治療方法の改善を目的とした医学系研究で、介入研究であるもの」(狭義の臨床研究)と定義しなおすか、もしくは、観察研究に配慮した交通整理の方途を与えるか、どちらかの対応が求められているものと思われます。







「あらかじめ指名する者による倫理審査委員会の付議の要否の判断」を改正に追加いたします。

また、今回の指針の改正は疫学研究に関する倫理指針との整合性をとったものとなっています。

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倫理審査委員会を、臨床研究機関の長の判断で自由に外部に依頼していいようにしてしまったことには、大きな問題があると思います。

倫理委員会の教育・研修や、情報公開だけでは十分でありません。

他の機関から依頼を受けて審査をすることのできる倫理審査委員会の条件、基準を設けて、認定を受けた倫理審査委員会だけが、依頼を受けられるようにするべきだと思います。







厚労省等が報告を受け、さらに実地調査等を行うことが出来る内容としており、倫理審査委員会に対するチェック機能を高め、質的な向上を図るものです。

教育研修については、行政が強制するものではなく、質的な向上が現場で図られるようご協力をお願いするものです。

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指針改正の専門委員会で、市民団体に所属している専門委員の方から、倫理審査委員会の委員の候補となる市民をプールして研修を行い委員に推薦するシステムが紹介されていましたが、これがなぜ全く無視されてしまったのかわかりません。

これはとてもよいシステムなので採用すべきだと思います。

採用しないのなら、その理由を改正指針公表時に示してください。







市民団体に属する委員からの提言については、改正指針に対応し、実証研究として実施される予定です。

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これ(↑)。へぇ〜〜!です。

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本指針を適切に運用するためには、倫理審査委員個人の「質」を担保することが必要だと思います。

臨床研究を十分に理解している人が委員にならないと、意味のない議論がなされることもあるので、倫理審査委員になるための条件を示すべきだと思います。

東京大学の生命・医療倫理教育研究センターでは、その人材育成のために生命・医療倫理学入門コース(CBEL)等が開催されています。

私自身もかつてそれに参加して初めて、倫理審査を行うということの意義を学ぶことができました。

研究者に対する責務と同様に、研究者が提案する研究計画を審査する人の資質条件をも明確にすべきだと思います。

そして、倫理審査委員も評価を受けるべきだと思います。

倫理審査する人もされる人もお互いに公平な評価を受けることで初めて、臨床研究全般の倫理と科学的質を高めることにつながるのではないでしょうか。

指針の整備と連動した倫理審査委員の質向上に向けた事業展開を期待します。








教育、啓発活動の進展と併せて、今後の課題とさせていただきます。

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医薬品(GCP対象外)等または食品(疫学研究)等の製造販売業者が医療機関に臨床試験を依頼する場合、「主たる研究機関」に製造販売業者、「分担研究機関」に医療機関が該当すると考え、製造販売業者が他の倫理委員会の承認を受けている場合には医療機関は迅速審査を行うことができる、と解釈して問題ないのか。








主たる研究機関が医薬品等の製造販売業者と解されるものではありません。


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教育って大変なんだよね。(ホーライ)

posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする