2014年02月21日

慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン

今週は「腎性貧血」の治験を見ます。

●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinsei-hinketsu-chiryouyaku-guideline.pdf


●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinseihinketsu-qa.pdf


●慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
     ↓
http://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/290/2008年版 日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」(全文).pdf

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今日は腎性貧血治療のガイドラインを見ます。
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第1章 腎性貧血の診断と基準および治療

1) 健常人の生理的なヘモグロビン(Hb)値は年齢,性,人種などにより異なる.

従って貧血の診断基準はこれらの要因を考慮して設定する必要がある


2) 貧血の診断基準値としてはHb 値を用いるべきである(積極的推奨).


3) 貧血の診断に際しては,貧血をきたすさまざまな疾患を鑑別する必要がある.

その際,平均赤血球容積(MCV)による分類が有用である(意見).


4) 腎性貧血の主因は腎障害に伴うエリスロポエチン(EPO)の産生低下であり,これ以外に貧血の原因疾患が認められない時に初めて診断される.

保存期慢性腎臓病(ND)患者では血中EPO濃度の測定が有用なことがある

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ちなみにこの分野での略語として下記の言葉は覚えておいたほうがいいかもしれません。

●ACD:anemia of chronic disease :慢性疾患に伴う貧血

●ACE:angiotensin converting enzyme :アンジオテンシン変換酵素

●Ccr:creatinine clearance:クレアチニンクリアランス

●CKD:chronic kidney disease :慢性腎臓病

●EPO:erythropoietin:エリスロポエチン

●ESA:erythropoiesis stimulating agent:赤血球造血刺激因子製剤

●HD:hemodialysis :血液透析

●HDF:hemodiafiltration :血液透析濾過

●ND:non-dialysis:保存期慢性腎臓病

●PD:peritoneal dialysis:腹膜透析




さて、腎性貧血治療のガイドラインの中では「腎性貧血」は次のように定義されています。
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1) 腎性貧血とは,腎障害による腎でのEPO産生能の低下による貧血をいう.

2) 腎性貧血には,赤血球寿命の短縮,造血細胞のEPO反応性の低下,栄養障害,血液透析(HD)患者における回路内残血などの要因も含まれる.

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今さらながら、ですがEPOとは何かを見てみましょう。

EPOとはエリスロポエチンの略で、エリスロポエチンとは、赤血球の産生を促進するホルモン。

分子量は約34000、165個のアミノ酸から構成されている。

血液中のエリスロポエチンは、貧血、赤血球増加症などの鑑別診断に用いられる。





さて、腎性貧血治療のガイドラインの中ではどのような治療方法を推奨されているのでしょうか?
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4.腎性貧血の治療

1) 腎性貧血の診断が確定し,投与基準を満たす場合にはESA療法を開始すべきである(積極的推奨).

2) 造血に必要な鉄剤の投与を併用すべきである(積極的推奨).

3) 維持HD 患者では,透析液の清浄化に努め,十分な透析を行う(積極的推奨).

4) 栄養障害や炎症を伴う患者に対しては,これらに対する積極的な治療を行うべきである(積極的推奨).

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まずは「エスポー」や「エポジン」のようなESAを利用し、鉄製剤を併用するということでしょうか。


どの程度のESA治療を行うべきか、も下記のように推薦しています。
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【HD 患者】

1) HD 患者に対するESA 療法の目標Hb 値は,週初め(前透析中2 日後)のHD 前の仰臥位採血による値で Hb 値 10〜11 g/dL を推奨する(推奨※).

但し,Hb 値 12 g/dL を超える場合を減量・休薬基準とする(意見※).


2) ESA の投与開始基準は,腎性貧血と診断され,複数回の検査で Hb値10 g/dL 未満となった時点とする(意見※).


3) 活動性の高い比較的若年者では目標 Hb値11〜12 g/dL を推奨する(意見※).

但し,Hb値13g/dL を超える場合を減量・休薬基準とする(意見※).

また,ESA投与開始基準は,複数回の検査で Hb 値 11 g/dL 未満となった時点とする(意見※).




【PD 患者およびND 患者】

1) PD 患者および ND 患者に対する ESA療法の目標 Hb値は,11 g/dL 以上を推奨する(推奨※).

Hb 値 13 g/dL を超える場合は減量・休薬を考慮する(意見※).


2) ESA の投与開始基準は,腎性貧血と診断され,複数回の検査で Hb値11 g/dL 未満となった時点とする(意見※).


3) 但し,重篤な心・血管系疾患の既往や合併のある患者,あるいは医学的に必要のある患者にはHb 値 12 g/dL を超える場合に減量・休薬を考慮する(推奨※).

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目安はヘモグロビン量なのですね。

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2014年02月20日

臨床評価方法に関するガイドラインに対する質疑応答集(Q&A)

今週は「腎性貧血」の治験を見ます。

●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinsei-hinketsu-chiryouyaku-guideline.pdf


●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinseihinketsu-qa.pdf


●慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
     ↓
http://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/290/2008年版 日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」(全文).pdf

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今日はQ&Aをみます。
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Ql

既承認の全ての腎性貧血治療薬に対して切替え維持試験が必要か。



Al

必ずしも、当該被験薬の開発時に既承認の全ての腎性貧血治療薬に対して切替え維持試験を実施する必要はなく、臨床現場において当該被験薬への切替えが想定される既承認の腎性貧血治療薬のうち、代表的な薬剤に対して、切替え維持試験を実施することで差し支えない。

ただし、当該被験薬への切替えが想定される既承認の腎性貧血治療薬の中に、効果の持続性等の違いにより、切替え後の治験薬の用法・用量等について、他剤からの切替え時と異なる設定が必要になる可能性がある薬剤が存在する場合には、当該薬剤に対して別途切替え維持試験を実施する必要がある。

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うむ。

「切替え維持試験」は当該被験薬への切替えが想定される既承認の代表的な薬だけでいいみたいですね。







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Q3

対象患者として、「導入後3ヶ月以上経過した安定期の透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者」とされているが、透析導入直後の患者について、臨床試験の対象とする必要はないのか。




A3

透析導入直後の患者は、病態の変動が大きく、適切な有効性及び安全性の評価ができない可能性があるため、用法及び用量を検討する試験や比較試験では除外する必要がある。

ただし、透析導入直後の患者を対象とした非盲検試験等を実施して、当該患者に対する被験薬の有効性や安全性について確認しておくことが望ましい。

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透析導入直後の患者は、病態の変動が大きいことが予想されるので、治験では除外されるようです。

もちろん、それとは別途、透析導入直後の患者を対象とした非盲検試験等が望ましいとなっています。





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Q4

長期投与試験の症例数について、「6ヶ月以上の投与例が300例以上、1年以上の投与例100例以上が望ましい」とされているが、透析中の患者及び保存期の患者それぞれについて、当該症例数を確保する必要があるのか。



A4

透析中の患者と保存期の患者では病態が異なるため、原則として、それぞれの患者群について、6ヶ月以上の投与例300例以上、及び1年以上の投与例100例以上の症例数を確保し、長期投与時の安全性、有効性を確認する必要がある。

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長期投与試験においても「透析中の患者」と「保存期の患者」は別に実施するよう求められています。


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2014年02月19日

腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン(3)

今週は「腎性貧血」の治験を見ます。

●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinsei-hinketsu-chiryouyaku-guideline.pdf


●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinseihinketsu-qa.pdf


●慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
     ↓
http://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/290/2008年版 日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」(全文).pdf

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今日もまずは臨床評価ガイドラインより。

フェーズ3の目的です。
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4.第V相試験(検証的試験)

1)目的

第V相試験は、後期第U相試験により明確にされた用法及び用量に基づいて、被験薬の有効性を検証し安全性を確認するが、原則として、標準薬に対する非劣性若しくは同等性、又は、プラセボに対する優越性を検証する。



4)試験デザイン

最新の腎性貧血治療ガイドラインに従い、透析施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者に分けて、標準薬又は必要に応じてプラセボを対照とし、原則として無作為化二重盲検法を用いた並行群間比較試験を行う。

ヘモグロビン値等により必要に応じて増量・減量・休薬のルールを決める。


(2)投与期間

投与期間は治験薬の薬理学的及び薬物動態学的特性により定めるが、ヘモグロビン値上昇及び維持が確認可能な24週間以上が望ましい。



(5)対照薬

標準薬又は必要に応じてプラセボを用いる。

標準薬の選択にあたっては、わが国で広く用いられ、臨床評価が確立しているものとする。

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腎性貧血治療薬の治験のフェーズ3ですが、やっぱり「透析施行中の患者」と「保存期慢性腎臓病の患者」に分けて治験を実施しますね。

投与期間は24週間(ほぼ6か月)が推奨されています。


長期投与試験は他の分野の治験と同じです。
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5.長期投与試験

長期投与試験では、被験薬の長期投与の安全性及び有効性の確認が重要である。

長期投与試験は、後期第U相試験以降に実施される。

1)目的

被験薬の安全性及び有効性をより多数例において、また長期にわたって検討する。

(1)投与量

後期第U相試験で有効と判定された用法及び用量を用いる。

(2)投与期間

6ヶ月以上の投与期間が必要である。

(3)症例数

6ヶ月以上の投与例が300例以上、1年以上の投与例100例以上が望ましい(平成7年5月24日付け薬審第592号厚生省薬務局審査課長通知「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について」を参照すること)。

(4)観察項目

U-1-3)に示す観察項目を参考として検討する。

透析患者では原則として透析条件を一定とするが、試験期間が長期間となることを考慮し、臨床的、倫理的に必要な場合等には適切な範囲で変更することは可能である。

自覚症状は、少なくとも4週間間隔で評価し、適当な間隔で臨床検査を行い異常の有無を調査する。

通常は非盲検非対照試験であり、対照薬は不要であるが、対照薬として標準薬を用いる場合、その選択にあたっては、わが国で広く用いられ、臨床評価が確立しているものとする。

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その他に「高齢者」や「小児」に対する治験も検討するよう、求められています。

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2014年02月18日

腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン(2)

今週は「腎性貧血」の治験を見ます。

●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」
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http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinsei-hinketsu-chiryouyaku-guideline.pdf


●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
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http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinseihinketsu-qa.pdf


●慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
     ↓
http://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/290/2008年版 日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」(全文).pdf

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まずは臨床評価ガイドラインです。
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(1)対象患者選択基準

腎性貧血の診断基準に適合し、ヘモグロビン値が最新の腎性貧血治療ガイドラインにおける投与開始基準を満たしている透析施行中の患者及び保存期慢性腎臓病の患者を対象とする。

a) 導入後3ヶ月以上経過した安定期の透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者

b) 保存期慢性腎臓病の患者

上記、a)あるいはb)について治験対象として選択された場合はそれぞれの性別、年齢、体重、身長、原疾患、透析歴、合併症、既往歴等を記録する。

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被験者は「透析施行中の患者」と「保存期慢性腎臓病の患者」ですね。



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3)観察項目

(1)腎性貧血改善効果を示す指標

ヘモグロビン値等


(2)身体所見及び臨床検査

脈拍数、血圧等の身体所見を記録する。

胸部レントゲン検査、心電図検査、赤血球系パラメータを含む血液学検査、鉄代謝関連検査、腎機能検査等を治験薬に応じて実施する。

異常が生じた場合には、必要な処置をして追跡検査及び観察を行う。

(3)自覚症状及び他覚所見の改善

(4)薬物動態

必要に応じて治験薬の血中濃度を経時的に測定し、薬物動態と腎性貧血に対する有効血中濃度を推定する。

(5)安全性

有害事象発現の有無、程度や臨床検査所見により安全性を検討する。

治験薬使用との関連が懸念される治療開始後の急激な血圧変化、アレルギー反応等に注意する。


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腎性とはいえ「貧血」ですので、主要評価項目は「ヘモグロビン値」ですね。



「腎性貧血治療薬の臨床試験(治験)」については、珍しく長期投与試験への患者の移行が記載されています。
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治験終了から発売までの期間において治験参加者に対して必要に応じて別途、長期継続投与試験を実施する等、実薬提供の救済措置を講じることも考慮する。

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「腎性貧血治療薬の臨床試験(治験)」に関わらず、確かな治療薬が無かったり、治験薬が非常によく効いている患者さんに対しては、その治験薬が承認されて「新薬」として患者に渡るまでの間、「長期投与試験」という形をとって、救済措置を行うことが多々あります。



フェーズ1は通常どおり実施します。


腎性貧血治療薬の治験のフェーズ2はどうでしょう?
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3−1 前期第U相試験(探索的試験)

1)目的

前期第U相試験は、被験薬を探索的に腎性貧血患者に投与する段階であり、被験薬の有効性、用量反応の初期的推測、投与回数及び安全性について検討する。

2)治験責任医師等及び治験実施医療機関

腎性貧血の診療経験豊富な臨床医が、臨床薬理学に精通した者と協力して行う。

また、被験者に対する十分な観察と管理ができ、緊急時にも十分な対処のできる複数の医療機関で行われなければならない。

3)被験者

最新の腎性貧血治療ガイドラインを参考に設定した対象患者選択基準を満たす腎性貧血患者を対象とする。

なお、初期の試験であるため、十分な情報が得られるよう頻繁に観察できる患者であることが必要である。

4)試験デザイン

最新の腎性貧血治療ガイドラインに従い、透析施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者に分けて、用量漸増デザイン等を用いた用量比較試験を行う。

一定の観察期間(原則として1〜2週間)をおいた後、治験薬を投与し、必要な項目を観察する。


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前に書きましたが、被験者を「透析施行中の患者」と「保存期慢性腎臓病の患者」とに分けて治験を実施する必要があります。


後期第U相試験はどうするんでしょう?
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3−2 後期第U相試験(用量反応試験)

4)試験デザイン

最新の腎性貧血治療ガイドラインに従い、透析施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者に分けて、原則として無作為化二重盲検法を用いた並行群間比較試験を行う。

一定の観察期間(原則として1〜2週間)をおいた後、治験薬を投与し、必要な項目を観察する。

(1)投与量

前期第U相試験の成績に基づいて、適当と推定された範囲の用法及び用量(3用量以上の比較試験が望ましい)を用いる。

必要に応じてプラセボ等を対照として用いる。

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まぁ、割と普通のデザインでよいのですね。

ただ、ウォッシュアウトあるいはベースとなる期間を設けています。(一定の観察期間(原則として1〜2週間)をおいた後、治験薬を投与し、必要な項目を観察する。)

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2014年02月15日

今週は「腎性貧血治療薬」の治験を見ます

今週は「腎性貧血治療薬」の治験を見ます。

●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinsei-hinketsu-chiryouyaku-guideline.pdf


●「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
     ↓
http://www.pmda.go.jp/kijunsakusei/file/guideline/new_drug/jinseihinketsu-qa.pdf


●慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
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http://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/290/2008年版 日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」(全文).pdf

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さて、そもそも「腎性貧血」とはどのような病気でしょうか?

腎臓は様々なホルモンを分泌しています。

そのひとつに赤血球をつくるはたらきを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。

腎臓のはらたきが低下すると腎臓からのエリスロポエチンの分泌が減り、赤血球をつくる能力が低下することで貧血になります。

このようにしておこる貧血を「腎性貧血」といいます。

すなわち、腎機能低下に伴い腎でのエリスロポエチン産生量が低下し、生理的なヘモグロビン値を維持できない状態で、貧血の原因疾患が腎機能障害以外に認められない場合に診断されます。

本邦における腎性貧血患者数は、日本人では血清クレアチニン2mg/dL未満、GFR30mL/min以上の患者でも腎性貧血があることを考慮すると、基礎疾患である慢性腎臓病患者数から30万人以上と推測される。




では、まず「腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」から。

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●U 臨床試験における評価方法に関する基本的考え方

透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者及び保存期慢性腎臓病の患者における腎性貧血を対象として、腎性貧血改善効果(ヘモグロビン値等)を主要評価項目として有効性の評価を行う。

腎性貧血治療における真の最終目標は生命予後やQOLの改善である。

しかしながら、長期間の観察を必要とするため、腎性貧血治療薬の臨床評価にはヘモグロビン値等を用いることが多いので、これに準ずる。


1.評価方法の選択

開発された薬剤の期待される薬効及び投与目的を明確にし、それを客観的に評価し得る評価項目を選択する。

試験方法としては、臨床推奨用量の決定及び既承認の腎性貧血治療薬との比較を行う。

なお、被験薬の有効性、安全性を示し、更に試験方法の妥当性を検討するため、後期第U相試験(用量反応試験)又は第V相試験(検証的試験)のいずれか又は両者において必要に応じてプラセボ又は既承認の腎性貧血治療薬等の実薬を対照とした無作為化二重盲検比較試験を行う。

被験薬の使用期間、用法及び用量は、被験薬の性質、腎機能、透析方法等に依存するものであり、試験デザインについてはそれぞれの被験薬の特徴を生かして、透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者で別々に設定する。

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まず、主要評価項目としては本来ならば「生命予後やQOLの改善」なのですが、それでは長期間の観察が必要なので、治験では腎性貧血改善効果(ヘモグロビン値等)を見るのですね。

さらに、「透析(血液透析又は腹膜透析)施行中の患者と保存期慢性腎臓病の患者で別々に設定する」という点が重要です。



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(1)切替え維持試験

腎性貧血患者では、既承認の腎性貧血治療薬で治療されている患者が多いことから、被験薬に切り替えて治療する場合の用法、用量、有効性及び安全性を検討する必要がある。

本試験では、既承認の腎性貧血治療薬によりヘモグロビン値が安定して維持されている患者を対象に、既承認薬から被験薬へ切り替えた後のヘモグロビン値が切り替える前と同様に目標の範囲内に安定して維持されるかを検討する。

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なるほど、通常の治療から治験に変わった時にヘモグロビンがどうなるか?を見る試験が「切替え維持試験」というようです。




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(2)貧血改善試験

被験薬の貧血改善効果を検討する場合には、投与開始初期の用法、用量、有効性及び安全性を確認する必要がある。

本試験では、未治療又は既承認薬を一定期間ウォッシュアウトした患者を対象に被験薬の使用を開始し、ヘモグロビン値の上昇により貧血改善効果を検討する。

また、最新の腎性貧血治療ガイドライン等を参考にヘモグロビン値の急激な上昇がないように、被験薬の薬物動態及び薬力学的反応の関係から投与量を注意深く設定する。

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上記の「改善試験」は通常の治験と同じでウォッシュアウトした患者に対して被験薬を投与し、ヘモグロビンが上昇するかどうかを見る試験ですね。



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