2014年01月10日

リーダーに必要は能力


●●● 今週は「問題を解決リーダーとは」を見ていきます。

4.コミュニケーション力

「三つの情報ギャップ」を防ぐ法

問題解決型リーダーの第四の経営スキルは、「コミュニケーション力」である。

すなわち、言葉を通じて情報を相手に伝える過程を意味する。

これまでの筆者の調査では、日本企業の部課長等の中間管理者は平均的に一日の時間のうち50〜60%をコミュニケーションにあて、そのうち70%が内部、30%が外部との連絡になっている。

さらに会社内部とのコミュニケーションのうち60%が部下と、30%が上司と、10%が同僚その他との対話に使われている。

職場でのコミュニケーションがいかに重要な役割を果たしているのかがわかる。



コミュニケーションでは、言うまでもなく、伝えたい情報が相手に正確に伝わることが基本となる。

これは簡単なように見えるが、実は大変難しい。

それはなぜであろうか。


一般に情報の伝達には三つの情報ギャップがあると言われている。

第一は「コミュニケーション・ギャップ」(意思伝達ギャップ)、二つ目は「コンセプチュアル・ギャップ」(意味概念ギャップ)、そして三つ目は「コンテクスト・ギャップ」(因果関係ギャップ)である。

一つ目のコミュニケーション・ギャップは、情報が言葉によって伝達される過程で、その内容の誤差が拡大していくことを意味する。

これは簡単な実験で理解できる。

たとえばあるクラスに学生が20人いたとしよう。

一番目の学生にある情報(たとえば「三人が富士山に登った」)を口頭で伝え、それを二番目以降の学生に次々と口頭で伝えるように指示する。

そして最後の20番目の学生に前の学生から聞いた内容を発表させる。

すると、富士山ではなく「富士市へ遠足に行った」というように大きくずれてしまうのだ。

この情報ギャップは伝言していく人数が増えれば増えるほど大きくなる。



二つ目のコンセプチュアル・ギャップは、対話者双方が頭に描く情報内容の違いを意味する。

たとえば「雪だるま」を日本人に描いてもらうと、ほとんどの日本人が大小二つの円を描くはずである。

ところが、同じ「雪だるま」を米国人に描いてもらうと、大中小の三つの円による雪だるまを描く。

これがコンセプチュアル・ギャップの一例だ。

つまり、「雪だるま」という単語ひとつをとっても、そこから思い描く形が日本人と米国人とでは違うため、意思疎通がうまく出来ないことになる。
 


三つ目のコンテクスト・ギャップは、物事の背景にある因果関係の捉え方の違いを意味する。

たとえば、長い間外国に滞在していた駐在員が帰国して会社の会議に出席すると、同僚たちの話している内容がよく理解できないことがある。

いわゆる「駐在員ボケ」である。

コミュニケーションでは情報が言葉どおりに伝達されても、相手がその情報の背後にある因果関係を理解(共有)していないと、正確には伝わらない。



コミュニケーションには、このような三つの情報ギャップが必然的に伴う。

したがってリーダーはメンバーとの対話において、情報ギャップをなくするような方法を意図的に行わなければならない。


コミュニケーション・ギャップを防ぐには、口頭による説明の場合、伝えたい概念を書類にまとめ、それを読みながら説明する。

また質疑応答によって伝えたい内容が伝わったかどうかを確認することは不可欠である。


コンセプチュアル・ギャップを防ぐには、伝えたい情報の中の重要な項目について、その概念を形で表すことも効果的である。

最近はカタカナで英語を表現することが多いが、カタカナ表現のあとにカッコでその意味を説明する。

たとえば「コミット(約束)する」ように表現して、こちらの意図を正確に表すことが必要である。




コンテクストについては、伝えたい情報の「背景となっている因果関係」を十分に説明して、その目的(what)を、なぜ(why)行うかという関連情報を理解させる。

これは職場のコミュニケーションでは特に重要である。

リーダーから見て、こんな初歩的なことは十分理解されているだろうと判断される内容でも、伝えたい情報に関連することは要約して説明することだ。


以上のように、リーダーはコミュニケーションにおける情報ギャップを防ぐために、細心の注意を払う必要がある。




5.人間関係力

●「人望」とは何か

問題解決型リーダーの第五の経営スキルは、「人間関係力」である。

生身の人間の「こころ」を動かすには、メンバーのほうが進んでリーダーの説明を納得し、自主的に行動を起こすようでなければならない。

たとえば、「Aさんは信頼できる人だから、あの人の言うことは間違いない」ということがある。

そこにはAさんと関係者の間に強い信頼に基づいた人間関係が存在し、Aさんには「人望」があると言われる。



いったいAさんとはどんな人であろうか。

Aさんと関係者の間に強い信頼関係があり、Aさんに「人望がある」ということは、過去にAさんと関係者間において、Aさんも満足し、そして関係者も満足した問題解決(ウイン・ウイン型問題解決)が行われた実績があることを意味している。

そして、それを基礎にして現在でも相互の信頼関係が継続している。

仮にAさんと関係者の関係がゼロ・サム関係であるとしたら、それは一般に言う「裏切られた」関係であり、Aさんとは二度と付き合いたいとは思わないだろう。

このような信頼関係は、当然、リーダーと部下との間にも当てはまる。

信頼関係のある職場環境とは、リーダーと部下との間にも当てはまる。

信頼関係のある職場環境とは、リーダーと部下との間にウイン・ウイン関係が存在し、リーダーと部下が積極的に協力関係を維持発展している関係にあることを意味する。

リーダーには、このようなエンジンを起動させるために、ウイン・ウイン関係にもとづく協力関係を維持発展させる技術が必要なのである。

これが「人間関係力」である。



6.チーム運営力

●プロ集団のチームの特性

問題解決型リーダーの第六の経営スキルは、「チーム運営力」である。

組織とは、二人以上の人間の集まりを意味する。

なぜ複数の人間が必要なのかといえば、それは一人ではとうてい解決不可能な問題を解決するためだ。

とりわけ戦略的な課題を解決するためには組織内あるいは組織横断的な「チーム」が編成される。

それは目に見える形であるか否かを問わないが、いずれにせよ、そのチームはプロの専門家集団によって構成される。


例えば、四人のチームメンバーはおのおの異なる専門領域のプロによって構成されている。

いま、このチームで非日常的な問題を解決する場合を想定しよう。

四人はそれぞれ過去に似たような案件の問題解決で取得したノウハウ情報を、チーム内のディスカッションを通じて交換する。

つまり情報共有化である。

そして、さらなる議論による情報の高度化の過程を経て、問題解決情報が創造され、そして的確な問題解決が行われる。

それによって、一人では困難な問題もチームで解決することができる。

プロによる問題解決は、それが複雑で困難な問題であればあるほど、その問題解決後の彼らの満足度は大きい。

リーダーはそのようなプロの自己実現の機会を常に提供し、チームを活性化させるような運営能力が必要となる。


そして、チームにおけるリーダーとメンバーはヨコ関係にあるため、リーダーの積極的なリーダーシップによって、リーダーと部下や部下同士の間に信頼関係が創られることが基本となる。

プロ集団を統括するチームの運営には、これまでに見た五つのスキルをすべて活用し、プロのメンバーが満足できる、すなわち自己実現が可能になるような条件設定が必要となる。



一般に、プロは自己の専門性に強い自信と誇りを持つ。

それゆえに自己主張も強く、利害関係に敏感である。

そして、その利害関係は単に金銭等の経済的条件を超えて、自己の信念や価値観を含めたより高度で複雑な側面を持つ。

たとえば「面子を失う」ような扱いを受けると、彼らは強く反発する。

自説を曲げない意固地さも持ち、時にそれは「孤立」につながる。

これは欧米でも同じだ。


「losing face」という表現があるように、たとえばリーダーがメンバーを人前で叱責したとすると、例えメンバーに責任があったとしても、リーダーは「配慮が足りない」とみなされ失格の烙印を押される。

チーム運営は不可能と評価され、リーダー交代となるのである。
 

そのようなプロ集団の運営のためにはすべてのスキルが必要だと述べたが、なかでも重要なのはウイン・ウイン型問題解決力である。

これがチーム運営を成功させる鍵となる。



●プロ集団にはなぜウイン・ウイン型リーダーシップが必要か


プロ集団を運営するためには、もちろん人間関係力は必要であるが、比較の視点からすれば、ウイン・ウイン型問題解決力のほうが優先されることがわかる。

そこに、問題解決型リーダーシップが必要とされる理由がある。

別の言い方をすれば、オーケストラの指揮者のようなリーダーシップが求められるのだ。

指揮者はまさに、楽器演奏者という、異なる専門領域を持ったプロ集団を統率するリーダーである。

オーケストラでは、各楽器が奏でる特色ある音色を指揮者が統合することによて、単独の楽器では創りえない素晴らしい音色が生みだされる。

それは指揮者と楽員間の相互の信頼関係がなければ実現しない。

このオーケストラの指揮者と楽員との関係のように、問題解決型リーダーはプロのメンバーの異なる意見を聞き、それを統合して問題解決を行う。

それにはリーダーとプロのメンバー間の信頼関係の「きづな」がないと実現しない。



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2014年01月09日

説得の基本は「理路整然とした説明」


●●● 今週は「問題を解決リーダーとは」を見ていきます。

2.説得力

説得の基本は「理路整然とした説明」
 

問題解決型リーダーシップの第二の経営スキルは、「説得スキル」である。

「説得」とは、互いに異なる意見を持っている当事者(たとえばXとY)の間で、その一方(X)が他方(Y)に対して、対話によって相互の共通点を認識させ、その共通点を基礎に新しい協力関係が創られるプロセスを言う。
 
「説得」は、まず理解、ついで納得、そして協力へという過程を踏む。

つまりXとYの両者が対立する関係よりも、互いに協力関係に進んだほうが両者にとってプラスになることを納得させるのである。


XとYの両者が非協力(no/no)の状況では無論のこと、一方が協力(yes)、他方が非協力(no)でも成果は生まれない。

両者がある成果を得ようとするならば、両者がともに協力関係(yes/yes)に到達する以外には他に方法がないことを理解させ、協力関係を実現させる。

その一連のプロセスが「説得」なのである。




説得を可能にするには、まず情報を「理路整然」と説明することから始まる。

つまり、伝えたい内容を相手が理解できるように整理し、それを相手の考え方に合わせて説明するのである。

それが問題解決型の説得スキルであり、具体的には、次の四つの段階を踏んで行われる。

@ まず、解決すべき問題点を明確にする。

A 次にその問題点を解決する代替案を可能な限り用意する。

B そして、その代替案について、短所と長所を分けて説明する。

C 最後に結論として、代替案の中から問題を解決するために最良の案を選び、その理由を説明する。



このような四つの段階を経て行われる説明方法は、異なる意見や価値観を持っている相手を説得する方法として最も効果的である。

欧米ではこの方法が一般的であり、ビジネススクールの実習では、こうしたプロセスを習得するために徹底的訓練が行われる。
 


問題解決型の説得では、異なる意見を持っている相手に対して上の四つの段階を踏んで説明する。

そして、その説明の過程で、当事者双方が基本的には同じ考えであるのに、実は「代替案の長所と短所の見方」の相違が原因で反対していたということが判明する場合がよく起こる。

そうして、妥協点を見出すのが難しいと思われた問題が解決するケースが多いのである。




3.客観的要因分析

問題を属人的要因と峻別すべし

問題解決型リーダーシップの第三のスキルは、問題・課題の客観的要因を分析する技術である。

日常のビジネスの問題をウイン・ウイン型で解決するためには、その基礎として、問題や課題の客観的要因と担当者の個人的属性の問題とを明確に峻別して考えることが必要である。

その過程は次の四つにまとめられる。

●第一に、リーダーはある問題の客観的要因と担当者の属人的条件を分けて分析し、おのおのの解を区別して問題を考える。

●第二に、その客観的条件を基礎にして、ある特定問題の関係者(仮に二人とする)の双方が満足するウイン・ウイン型の問題解決を行う。

つまり当事者相互の利益が得られるような補完条件(BATNA)を創造する。
 
●第三に、異なる利害や価値観を持つ関係者が相互に満足できる解決が行われることによって、関係者間に信頼関係が生まれる。
 

●そして第四に、それを基礎にして新たな人間関係が発展する。

すなわち、リーダーの「人間関係力」がより深まる。


明日へ続く
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2014年01月08日

ウイン・ウイン型問題解決力

●●● 今週は「問題を解決リーダーとは」を見ていきます。

1.ウイン・ウイン型問題解決力

ウイン・ウイン型問題解決力とは、さまざまな交渉において、当事者の双方が「ウイン」=満足する解決を言う。

リーダーは職場運営において、まずこうした能力が要請される。

とりわけプロの専門家としてのメンバーの協力を引き出し、指導するには、これまでのように上司やその上位上司、あるいは一部のメンバーだけが満足し、他には不満足を強いるような問題解決は通用しない。

ビジネスを遂行する上で「ウイン・ウイン型問題解決」を図るには、まず、その背景になる経営戦略が明確にされていなければならない。

そもそも「戦略」とは、ある限られた資源を活用し、問題解決を図っていく考え方の「組み合わせ」を意味する。

それには四つの条件が伴う。

第一に、その組み合わせの「整合性」(integration)である。

第二に、その内容が遂行者に納得できるものになっていること(reasonability)。

第三に、時間軸がはっきりしていること(time span)。

そして第四の条件は「コンティンジェンシイ(contingency=偶発性)対応」である。

以上のうち、とくに重要な条件は、コンティンジェンシイ対応である。

「偶発的事態」に対応するという意味で、リスク管理策と言ってもよい。

現在のビジネスにおいては計画通り進まない場合が多い。

とすれば、最初の計画の段階からその場合を考慮して、最初からその対応策を戦略の中に組み込むことが必要となる。
 



経営戦略における資源すなわち「経営資源」には、通常、ヒト、モノ、カネの三つが挙げられる。

しかし21世紀においては、それに「情報」「時間」「問題解決技術」の三つを加え、合計六つの経営資源を明確に意識する必要がある。
 
「情報」資源の重要性はすでに周知の通りだが、一般に日本語で言う「情報」は英語のinformationすなわち「一般情報」であって、その中にはデータも含まれる。

この一般情報で企業が差別化を図ることは難しい。

企業にとって真に必要なのは、仕事を遂行するなかで得られる「ノウハウ情報」、言い換えれば「問題解決型情報」(インテリジェンス)である。

つまり、一般情報を、ある特定目的の解決のために組み合わせた内容を意味する。




経営資源としての「時間」は、組織による問題解決を行う速さを意味する。

ある問題(ビジネス上の課題)に回答を出すために、企業Aは三日、企業Bは五日かかったとする。

当然、企業Aの問題解決力が優れており、ビジネス上も優位に立つ。

したがって、いかに速く、的確なビジネスを行うかという問題、すなわち経営資源としての「時間」が重要になるのである。
 




「問題解決技術」は、モノやサービスを生産する技術よりもさらに広い概念だ。

ヒト、モノ、カネ、時間という資源を統合して、組織がいかに速く、的確な「問題解決型情報」を創っていけるかという技術である。

これもまた重要な経営資源と言ってよい。
 
こうした経営戦略の枠組みをしっかり認識したうえで、いよいよ「ウイン・ウイン型問題解決力」の実際に踏み込んでいこう。



●●● 事例 ●●●

日本企業A社は印刷業を営んでいる。

A社は競争力強化のため新式の高性能機導入を企画し、旧式印刷機一台を売って購入資金の一部に当てたいと考えて買い手を探していた。
 
最近、中国で買い手のB社が見つかった。

見積もりは機械本体価格と技術指導料は別立てにして提出。

両者の会談の席上、中国B社から印刷機本体価格を二割引するように要求があった。

さらに話し合いの結果、B社は技術指導もしてほしいという希望を持っていることが判明した。

そこで日本のA社から、値引きの代わりとして、当初の機械価格に技術指導料も含めるという代替案を出したところ、B社は承諾し、A社の提示価格で契約が成立した。



明日へ続く


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2014年01月07日

コンフリクト(conflict)に対処する

●●● 今週は「問題を解決リーダーとは」を見ていきます。

●コンフリクト(conflict)に対処する


相反する意見、態度、要求などが存在し、互いに譲らずに緊張状態が生じること。対立、軋轢。


いかなる組織においてもコンフリクトは避けられないが、コンフリクトにはマイナス面だけでなく、プラス面もある。

プラス面としては、互いに競い合うことで意欲が高まる、相互の意見交換の過程で相手への理解が深まる、

その過程において自己の考えを明確にして当初のアイデアを発展させたり、新たな視点や本質的な問題が発見できることが挙げられる。


マイナス面は、不快感を味わう、非効率なコミュニケーションが増える、情報が正しく伝達されず意思決定に歪みが生じる、などがある。

ハーバード・ビジネス・スクールのジェームズ・ウェアとルイス・バーンズは、個人間のコンフリクトに対処するには、まず状況をよく理解し、状況そのものを変えるか、当事者の態度や対応を変える必要があるとしている。

その具体的な方法として、交渉、制御、(建設的)対峙を挙げている。

また、コンフリクトを理解するための視点として、現象面から本質的問題の把握までを以下の4点にまとめている。


@ コンフリクトが個人および組織に及ぼしている効果コンフリクトにはプラスの効果もマイナスの効果もある。

対策を打つ前に、どちらの効果がより強く表れているかを分析する。



A コンフリクトのパターンコンフリクトの最初のきっかけとなる行動に対して、どのような対応を示し、そこからどのようにコンフリクトが深まったのかというパターンをつかむ。

これにより、コンフリクトの根本原因と対処の糸口が見えてくることが多い。



B 実質的問題と感情的問題コンフリクトは多くの場合、実質的問題と感情的問題という2つの異なる問題から生じる。

実質的問題とは、経営方針や実行手順、役割と責任といった事業運営上の意見の食い違いによるものだ。

一方、感情的問題とは、当事者が互いに相手に抱いている個人的な認識や感情によるものだ。

組織では感情的問題を表に出しにくいため、しばしば実質的問題にすりかえられることがある。

逆に、最初は実質的問題であったのに、対立点が個人的感情に由来するのではないかと当事者が疑い始め、感情的問題に転換して解決が難しくなる場合もある。



C コンフリクトの根底にある要因コンフリクトが生じる要因として、外部要因と個人的要因が考えられる。

外部要因は時間的制約、予算制約、資源配分、業績へのプレッシャーなど、個人的要因は対抗意識、相性、仕事上のスタイル、ストレスの許容度などだ。

通常、コンフリクトの原因は複数存在し、それらが複雑に絡み合っていることが多い。

対立が深まるにつれ、最初の原因とは関係ないものが原因となることもある。



上記を理解したうえで、コンフリクトに対処しよう。


●問題解決型リーダー「六つの経営スキル」


基本的条件は「誠実性」

われわれが行うビジネスは、大きく二つに分けられる。

一つは、日常の決められた業務を決められた手順で処理できるものであり、もう一つは、ある時突然に起こる非日常的な応用問題の解決を迫られる場合である。

どちらも重要な仕事だ。

前者では上司は今まで見たようにマネジメントとしての役割が求められる。

後者には企業変革に関わる課題も含まれるが、そこではより的確なリーダーシップが求められる。
 
われわれの関心は、二つ目の「非日常的な応用問題や課題を速く、しかも的確に解決するために、いかにリーダーシップが発揮されなければならないか」という問題にある。

そこで、最も重要なことは、プロ集団の意見の違いや利害関係の対立をどのようにして調整し、的確に問題解決を図るかという点である。

しかし、ひとくちに「対立する利害関係の調整」といっても実際に行うのはきわめて難しい。

そこでここでは「問題解決型リーダー」として磨くべき六つの経営スキル(技術。技能)を紹介するが、その前に大前提としてリーダーに求められる基本的条件を挙げておきたい。



「上司」という言葉から、さまざまなタイプが連想されるだろう。

人柄について言えば、何事も命令一下、「俺について来い」とばかりに力で引っ張っていくタイプと、いつも柔和な笑顔で、自身の結論は言わずに部下の意見に耳を傾け、その自主的な判断を尊重するタイプという、二つの典型に分けることができよう。

前者が「命令型」、後者が「温情型」である。
 
部下としてどちらを選ぶかと言えば、「温情型」をとる人が多いかもしれない。

しかし生産性や目標設定という意味ではどちらがいいとは一概に言えない。

また、どちらかに峻別できないリーダーもいるだろうし、一人のリーダーが両者を使い分ける場合もある。

ただし、問題解決に当たって、いずれのタイプのリーダーにも必要とされる基本的条件がある。

それは、「誠実性」(integrity)である。


では、「誠実性」とは何か。

英語のintegrityはかなり幅広い概念であり、正直や勤勉、努力という意味も含まれる。

ここでは、「人の話をよく聞き、問題の本質を客観的にとらえる努力と忍耐力」と定義しておく。

すなわち、ある問題の客観的条件が析出されるまで不断の努力と忍耐を惜しまない強い意志を備えた人柄である。

そのような努力と忍耐によってはじめて、利害関係の対立する関係者がそれぞれ満足できるような「解」(「ウイン・ウイン型問題解決」)を創造することが可能になる。

その姿勢がなければ、どんなにテクニックを磨いたとしても、真の問題解決は導き出せないのである。



次に、問題解決型リーダーシップは六つの経営スキルによって構成される。

すなわち、@ウイン・ウイン型問題解決力、A説得力、B客観的要因分析力、Cコミュニケーション力、D人間関係力、Eチーム運営力−である。

これら六つの経営スキルはリーダーが日常のビジネスを推進する具体的方法であり、各スキルは各々相互に作用し合い、それらが全体として問題解決型リーダーシップとして統合される。


明日へ続く

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2014年01月04日

問題を解決できるリーダーになる方法

●●● 今週は「問題を解決リーダーとは」を見ていきます。

出来る上司とは


上司のリーダーシップが職場に与える影響

●上司に対するポジティブな認識:X型リーダー

・ 上司は、仕事の計画を立ててくれる。

・ 上司は、部下の提案が実現できるように第三者に働きかけてくれる。

・ 上司は、部下も満足できるような問題解決をしてくれる。

・ 上司は、新しい手法で問題解決を図る。



●上司に対するネガティブな認識:Y型リーダー

・ 今の上司から仕事の上で学ぶものは何もない。

・ 今の上司は好きになれない。

・ 上司は暗に「脅し」と思えるような指示の仕方をすることがある。

・ 上司との価値観の相違から生じるギャップを埋めるのは難しい。



X型リーダーは、部下の意見を尊重して意思決定し、新しい経営手法も積極的に導入して、部下も満足する問題解決を行うタイプである。

これを「問題解決型リーダー」とする。


一方、Y型リーダーは、独断専行し、時に「脅し」的指示も行って部下から嫌われ、両者の間には埋めがたい価値観のギャップがあるタイプである。

これを「ギャップ型リーダー」とする。

さて、あなたはどちらのリーダーだろうか? どちらのリーダーになろうとしているだろうか? どちらのリーダーになりたいだろうか。





●リーダーシップとマネジメントの違いを見分ける

リーダーシップとマネジメントの違い

(イ) 役割分担の違い

鉄道会社に例えてみると、上位者には「原野に鉄道のレールを敷く役割」と敷かれたレールの上を時間を守り安全に「列車を運行する役割」が求められる。

前者がリーダーシップであり、後者がマネジメントである。


リーダーは、組織の変革や方向付けという「新しい未開拓の分野」を切り拓く役割を担い、それに伴うリスクを負う。

一方マネジメントは、決められた方向性と規則に則して、組織を管理運営してビジネスを行う。

従って両者を育成する方法も異なってくる。

たとえば、リーダー教育としては「戦略提携シミュレーション」によって経営戦略を策定する教育事例があり、それは「刻々と変化する経営環境のもとで、リーダーとしていかに的確な意思決定を、しかも速く行うのか」という厳しい訓練を行う内容になっている。

それによってより新しいリーダーへの意識改革が可能となるのである。

一方マネジメント教育としては、毎日のビジネス、すなわち利害関係の調整を目的とした「コンフリクト・マネジメント」の教育事例がある。


(ロ) 社会的責任の大きさと内容の違い

現在の組織は、たとえば、役員クラス、部長クラス、課長クラスというように、各職位に対応して責任範囲が決められている。

そして上位の職位ほど社会的責任も大きくなる。

たとえば代表取締役は会社を代表してその社会的責任を負い、一日の時間の100%を会社を率いるリーダーシップに割かれるのが普通であり、部長クラス、課長クラスと守備範囲が狭くなるにつれて、その割合が小さくなり、同時に社会的責任も小さく内容も異なってくる。

反対に、職位が下がるにつれてマネジメントの比率が高まる。


(明日へ続く)
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