(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)
(2)研修の限界と経験の重要性
(3)ITを駆使しよう・ITは賢く使おう!
(4)治験のリスクマネジメントを考える
(5)自分で考える。自立する。自分の判断に基づいて行動する。(釜石の奇蹟)
今日の話題は(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)です。
第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議のサイトに当日の発表資料の一部が公開された。
●第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録
その中に「ALCOA実践セミナー」がある。
この「ALCOA実践セミナー」を見て、思ったのだが、やっぱり、アルコアについて理解・実践することって、大変だなということ。
このブログには簡単なアクセス解析のサービスがついていて、それを見ると、どんなキーワードで検索されて、この「ホーライ製薬」のブログにたどり着いたかが分かるようになっている。
それによると、圧倒的に「ALCOA」関係なのだ。
たとえば「ALCOA」「alcoa」「アルコア」「ALCOAとは」「ALCOA 治験」というキーワードだ。
確かに、グーグルで「alcoa 治験」を検索すると、このブログが一番、最初にヒットする。
話がちょっと横道にそれるけれど、グーグルの検索でさ、そのサイトの中身の適切さとか正確さも反映した検索結果が出ると便利だよね。
と書いたけれど、これは難しい。
何故ならば、例えばアインシュタインのE=mC2は適切で正しいと言える(今のところ)。
でも、このブログに書いているalcoaの説明が適切か、とか、正しいか、という判断は読む人によって違う。
「こんな説明、正しくない!」とか「あまい!」と思う人もいるだろうし、中には「これでいいんじゃないの」と思って頂いている人もいらっしゃるかもしれない。
何が正しいのか、適切なのか、というのは読んだ人の判断に負うところが多いから、グーグルでサイトの中身の適切性まで判断した検索結果を出すのは難しいよね。
だけど、そのうち、そういうことも判断できるアイデアや技術やアルゴリズムが出てくるかもしれない。
グーグルが出始めた時に、どういうサイトを上位に表示されるかのひとつの判断に「どれだけの数のサイトからリンクが張られているか」という基準があった。
そういう基準も、そのサイトの適切さの一種の判断にはなりうる。
ちなみに、大昔、まだネットの黎明期に、他人のサイトにリンクを張る場合は、その方にメールで連絡しましょう、それがネットのエチケット(ネチケット)です、なんて言われていた。
ところが、グーグルができてからは、「リンクフリー。連絡は不要」と書かれたサイトが多くなった。
それは、グーグルの上位に表示されたいからだね。
グーグルの検索結果の3ページ目以降は「ネット上に存在しないも同じ」と僕は思っている。
グーグルの検索結果の4ページ以降も調べる人って、多分、少ないだろうから。
「無人島の鳥は存在しない」なのだ。
横道が長くなりましたが、alcoaに戻ります。
alcoaを考える時に忘れてはいけないことは、alcoaの原則は、それだけ(原則だけ)が独立して存在しているわけではないということ。
alcoaの原則は、治験で言うならば、CRF(症例報告書)に記載されたデータの信頼性と正確さを保証するためにあることを忘れてはいけない。
CRFの記録のオリジナルはどれ?と連携させて考えないといけない。
必ず、それに連携して考える。
そこを忘れて、「alcoaとは」だけを考えると、どんどん深みにはまって、思考の迷路に入ってしまう。
何が何だか訳が分からなくなる。
CRFに記載されるデータに影響を与えると考えられるならば記録類で、その中でも、これが最初に記録される資料だなと思えたら、それがオリジナルだ。
たとえば、上記の「ALCOA実践セミナー」の資料の14ページ目に「集中測定の速報結果のFAX」と「最終版としてまとまったものが郵送」されてきた場合、どちらに医師のサインと日付がいるの?というものがある。
僕は、「速報」は暫定的で、測定機関が正式に証明できるのは郵送されてくる報告書ならば、そちら(郵送された報告書)にサインと日付があればいいと思う。
速報はあくまでも「参考」だからだ。
ここまではalcoaはCRFのデータの信頼性のため、という観点で述べてきたけれど、これを拡大して、治験のシステムの信頼性まで拡大すべきだと僕は思う。
たとえば、「治験薬管理表」を確認・訂正した場合は確認・訂正者のサインと日付が欲しいし、測定機器のメンテナンス記録を確認・訂正する場合も同様だ。
さらにさらに、こういうことって、治験に限らず、病院のシステムそのものにも必要なのではないだろうか。
医療が適切に提供されているシステムの中に組み込まれてもいいはずだ。
僕は弁護士ではないので、詳しくは分からないけれど、医療事故等でカルテやその他の諸々の医療に関する記録で「誰が、いつ確認・訂正したか分からない」ことがあるとまずくない?
全ての記録に誰が、いつ確認・訂正したのか、とか、誰が、いつ医学的判断したのか、ということの説明が医療裁判なんかでは要求されるんじゃないだろうか。
そういうことに対するリスクマネジメントとして、医療全体に、あるいは病院というシステムにalcoaの考え方を導入すべきだ。(もうしているのかな?)
僕はかつてGMPの世界で働いていたけれど、この世界では、全ての作業記録、分析作業記録等にサインと日付が必要だ。
このサインは簡単に、例えば、僕はイニシャルのATをくずして、ひと筆で書けるようにしていた。
だから、全ての書類にサインするとしても、1回につき1秒で済む。
ドイツ系製薬会社でGMP関係の仕事をしていた時は、SOPの承認欄として表紙にもちろん部長(ドイツ人)のサインが有ったが、そのドイツ人のボスは、SOPの全てのページに、自分のサインとして、「J」の一文字をサインしていた。
●第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録の中の講演4:原資料マネジメントのあり方 −Global監査の観点から−の9ページ目の最下段に「イニシャルや簡略署名を使用しては?」という記載がある。
まさに、そのとおりです。
なお、この「原資料マネジメントのあり方」の資料はよく読みましょう。
「原資料」と「原データ」についての考え方が分かります。
また、以下のスライドも熟読しましょう。
●原資料マネジメントを再考する 〜質保証と効率の両立〜「総括」
さらに、同じ会議録に●不毛なお仕事にさようなら:安全性を理解して仕事にメリハリをつけよう!という資料がある。
この資料では「有害事象」についての考え方が特に素晴らしい。
この資料は若い人ほど、是非、読んでほしい。
これからの治験を変えるのは「あなた」だからだ。
蛇足ですが、「alcoa」も時間が立てば、ごく「普通」のことのように習慣化されると思う。
それも「形式」としてではなく「実践」として。
何故、そんなことが言えるかというと、どんな新しい「概念」も、最初は混乱がつきものだが、みんなが苦労すればするほど、定着することを身を持って知っているからだ。
今から10年ほど前、僕は日本QA研究会(JSQA)の「2−C」グループの幹事をやっていた。
そのグループの活動は「システム監査の技法」について検討することだった。
ICH-GCPが導入され「システム監査」という言葉が初めて、日本の治験の現場に登場した。
いったい、何をどうすればシステム監査なるものができるのか、現場は混乱した。
いろんな考え方が、治験依頼者ごとにあった。
それらを整理するような作業を「2−C」グループで2年間、検討し、システム監査の効果的なやり方を提案した。
活動の最後に、JSQAのGCP部会の人を集めて、当時としては画期的なことだったけれど、活動グループが主催して、「システム監査について」のパネルディスカッションをやった。
それから10年。
今では、ほとんどの会社の監査部署は「システム監査」を「普通」にやっている。
きっと、いつかは「alcoa」も「普通」に「実践」している時代が来ると僕は信じている。
蛇足の蛇足ですが、このJSQAの「2−C」グループの人たちとは、今でも1年に何回か、「飲み会」をやっている。
一緒に苦労すると結束力が高まるものだ。
ちなみに今、JSQAでは下記の活動をやっているようです。
↓
http://www.jsqa.com/whats/Theme_GCP_20120830.pdf
●医薬品ができるまで(治験に関する話題)
●ホーライ製薬のfacebook
https://twitter.com/horai_japan
●ホーライのツイッター
https://twitter.com/horai_japan
●週刊「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
●日刊「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
●塚田 淳彦 (ホーライ) facebook
http://www.facebook.com/atsuhiko.tsukada
ラベル:アルコア