2012年11月03日

(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)

今週は「治験に関する徒然なるままに」です。


(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)

(2)研修の限界と経験の重要性

(3)ITを駆使しよう・ITは賢く使おう!

(4)治験のリスクマネジメントを考える

(5)自分で考える。自立する。自分の判断に基づいて行動する。(釜石の奇蹟)



今日の話題は(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)です。


第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議のサイトに当日の発表資料の一部が公開された。

第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録

その中に「ALCOA実践セミナー」がある。

この「ALCOA実践セミナー」を見て、思ったのだが、やっぱり、アルコアについて理解・実践することって、大変だなということ。

このブログには簡単なアクセス解析のサービスがついていて、それを見ると、どんなキーワードで検索されて、この「ホーライ製薬」のブログにたどり着いたかが分かるようになっている。

それによると、圧倒的に「ALCOA」関係なのだ。

たとえば「ALCOA」「alcoa」「アルコア」「ALCOAとは」「ALCOA 治験」というキーワードだ。

確かに、グーグルで「alcoa 治験」を検索すると、このブログが一番、最初にヒットする。



話がちょっと横道にそれるけれど、グーグルの検索でさ、そのサイトの中身の適切さとか正確さも反映した検索結果が出ると便利だよね。

と書いたけれど、これは難しい。


何故ならば、例えばアインシュタインのE=mC2は適切で正しいと言える(今のところ)。

でも、このブログに書いているalcoaの説明が適切か、とか、正しいか、という判断は読む人によって違う。

「こんな説明、正しくない!」とか「あまい!」と思う人もいるだろうし、中には「これでいいんじゃないの」と思って頂いている人もいらっしゃるかもしれない。

何が正しいのか、適切なのか、というのは読んだ人の判断に負うところが多いから、グーグルでサイトの中身の適切性まで判断した検索結果を出すのは難しいよね。

だけど、そのうち、そういうことも判断できるアイデアや技術やアルゴリズムが出てくるかもしれない。


グーグルが出始めた時に、どういうサイトを上位に表示されるかのひとつの判断に「どれだけの数のサイトからリンクが張られているか」という基準があった。

そういう基準も、そのサイトの適切さの一種の判断にはなりうる。

ちなみに、大昔、まだネットの黎明期に、他人のサイトにリンクを張る場合は、その方にメールで連絡しましょう、それがネットのエチケット(ネチケット)です、なんて言われていた。

ところが、グーグルができてからは、「リンクフリー。連絡は不要」と書かれたサイトが多くなった。

それは、グーグルの上位に表示されたいからだね。

グーグルの検索結果の3ページ目以降は「ネット上に存在しないも同じ」と僕は思っている。

グーグルの検索結果の4ページ以降も調べる人って、多分、少ないだろうから。

「無人島の鳥は存在しない」なのだ。



横道が長くなりましたが、alcoaに戻ります。

alcoaを考える時に忘れてはいけないことは、alcoaの原則は、それだけ(原則だけ)が独立して存在しているわけではないということ。

alcoaの原則は、治験で言うならば、CRF(症例報告書)に記載されたデータの信頼性と正確さを保証するためにあることを忘れてはいけない。

CRFの記録のオリジナルはどれ?と連携させて考えないといけない。

必ず、それに連携して考える。

そこを忘れて、「alcoaとは」だけを考えると、どんどん深みにはまって、思考の迷路に入ってしまう。

何が何だか訳が分からなくなる。



CRFに記載されるデータに影響を与えると考えられるならば記録類で、その中でも、これが最初に記録される資料だなと思えたら、それがオリジナルだ。

たとえば、上記の「ALCOA実践セミナー」の資料の14ページ目に「集中測定の速報結果のFAX」と「最終版としてまとまったものが郵送」されてきた場合、どちらに医師のサインと日付がいるの?というものがある。

僕は、「速報」は暫定的で、測定機関が正式に証明できるのは郵送されてくる報告書ならば、そちら(郵送された報告書)にサインと日付があればいいと思う。

速報はあくまでも「参考」だからだ。


ここまではalcoaはCRFのデータの信頼性のため、という観点で述べてきたけれど、これを拡大して、治験のシステムの信頼性まで拡大すべきだと僕は思う。

たとえば、「治験薬管理表」を確認・訂正した場合は確認・訂正者のサインと日付が欲しいし、測定機器のメンテナンス記録を確認・訂正する場合も同様だ。

さらにさらに、こういうことって、治験に限らず、病院のシステムそのものにも必要なのではないだろうか。

医療が適切に提供されているシステムの中に組み込まれてもいいはずだ。

僕は弁護士ではないので、詳しくは分からないけれど、医療事故等でカルテやその他の諸々の医療に関する記録で「誰が、いつ確認・訂正したか分からない」ことがあるとまずくない?

全ての記録に誰が、いつ確認・訂正したのか、とか、誰が、いつ医学的判断したのか、ということの説明が医療裁判なんかでは要求されるんじゃないだろうか。

そういうことに対するリスクマネジメントとして、医療全体に、あるいは病院というシステムにalcoaの考え方を導入すべきだ。(もうしているのかな?)



僕はかつてGMPの世界で働いていたけれど、この世界では、全ての作業記録、分析作業記録等にサインと日付が必要だ。

このサインは簡単に、例えば、僕はイニシャルのATをくずして、ひと筆で書けるようにしていた。

だから、全ての書類にサインするとしても、1回につき1秒で済む。

ドイツ系製薬会社でGMP関係の仕事をしていた時は、SOPの承認欄として表紙にもちろん部長(ドイツ人)のサインが有ったが、そのドイツ人のボスは、SOPの全てのページに、自分のサインとして、「J」の一文字をサインしていた。



第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録の中の講演4:原資料マネジメントのあり方 −Global監査の観点から−の9ページ目の最下段に「イニシャルや簡略署名を使用しては?」という記載がある。

まさに、そのとおりです。

なお、この「原資料マネジメントのあり方」の資料はよく読みましょう。

「原資料」と「原データ」についての考え方が分かります。

また、以下のスライドも熟読しましょう。

原資料マネジメントを再考する 〜質保証と効率の両立〜「総括」



さらに、同じ会議録に●不毛なお仕事にさようなら:安全性を理解して仕事にメリハリをつけよう!という資料がある。

この資料では「有害事象」についての考え方が特に素晴らしい。

この資料は若い人ほど、是非、読んでほしい。

これからの治験を変えるのは「あなた」だからだ。



蛇足ですが、「alcoa」も時間が立てば、ごく「普通」のことのように習慣化されると思う。

それも「形式」としてではなく「実践」として。

何故、そんなことが言えるかというと、どんな新しい「概念」も、最初は混乱がつきものだが、みんなが苦労すればするほど、定着することを身を持って知っているからだ。


今から10年ほど前、僕は日本QA研究会(JSQA)の「2−C」グループの幹事をやっていた。

そのグループの活動は「システム監査の技法」について検討することだった。

ICH-GCPが導入され「システム監査」という言葉が初めて、日本の治験の現場に登場した。

いったい、何をどうすればシステム監査なるものができるのか、現場は混乱した。

いろんな考え方が、治験依頼者ごとにあった。

それらを整理するような作業を「2−C」グループで2年間、検討し、システム監査の効果的なやり方を提案した。

活動の最後に、JSQAのGCP部会の人を集めて、当時としては画期的なことだったけれど、活動グループが主催して、「システム監査について」のパネルディスカッションをやった。

それから10年。

今では、ほとんどの会社の監査部署は「システム監査」を「普通」にやっている。

きっと、いつかは「alcoa」も「普通」に「実践」している時代が来ると僕は信じている。


蛇足の蛇足ですが、このJSQAの「2−C」グループの人たちとは、今でも1年に何回か、「飲み会」をやっている。

一緒に苦労すると結束力が高まるものだ。



ちなみに今、JSQAでは下記の活動をやっているようです。
   ↓
http://www.jsqa.com/whats/Theme_GCP_20120830.pdf





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2012年10月20日

ALCOA(アルコア)について、もう一度考える

●今週は治験にまつわる「あれこれ」です。

下記のことを今週は考えます。


(1)ALCOA(アルコア)について、もう一度考える

(2)未来のモニター

(3)治験責任医師が突然、治験を止めると言ったら?

(4)治験の問題点、治験の課題

(5)治験に貢献する方法



今日は、ALCOAについて。あるいは、ALCOA(アルコア)の問題点について。


ALCOAは以前も記事にしている。
  ↓
「データの信頼性をどのように確保するか?・・・ALCOAとは?」

あらためて、ALCOA(アルコア)について考えてみます。


ALCOAとは次の言葉の頭文字をとったものだ。

Attributable(帰属/責任の所在が明瞭である)

Legible(判読/理解できる)

Contemporaneous (同時である)

Original (原本である)

Accurate (正確である)



この概念はかなり浸透してきた。

これはもちろん、治験のデータの正確さと信頼性を確保、担保、向上させるために提言されているものだ。

FDAから提言されてね。

詳しくはこちらを見て。
  ↓
http://firstclinical.com/fda-gcp/?show=2005/r_RE%20ALCOA&format=fulllist

あるいは直接、FDAのサイトで「ALCOA」で検索してみよう。
  ↓
http://www.fda.gov/default.htm

2012/10/19現在、264の記事がヒットする。



ただ、このALCOAって、考え出すとキリがなくなり、「一体、どこまでを原資料というの?」とか「ポストイットに書いたメモも原資料?」とかなる。

ALCOAの問題点は、明確な定義が無い、ということだ。


あるいは、感熱紙で取得したデータを色があせなくなって見えなくなるといけないから、コピーを取る場合、「あれ?感熱紙にデータ確認者のサインがいるの?それともコピーをしたほうにサインするの? ひょっとして、両方にいるの?」とか。

もともと、日本人は真面目だからね。

こういう「思考の迷路」にはまりこんだら、「原則」「基本」にもどるとスッキリします。


何故、僕たちはALCOAが必要なのか? 

何故、アルコアの原則に基づこうとしているのだろう?

それはひとえにCRF(症例報告書)のデータが正確で信頼できるかを確認するためだ。

この一点に尽きる。


たとえば、CRFの「併用薬の使用無し」がチェックされていたとする。

ところがモニターが(或いは監査が、或いは総合機構が)原資料を色々と調べたら、カルテ(診療録)に「2012/09/12:花粉症のため次回来院より●●●を処方予定」と書かれていた。

すると、当然、それを見た人は●●●は処方されたのか、されないのか、が気になる。

もし、●●●が処方されていたならば、CRFに記載が必要だからね。

この場合、「CRFに記載が無いのだから、当然、併用薬の使用は無かったのだ」と考える人もいる。

そうかもしれない。

でも、投与が無かったのならば、「処方予定だった●●●は、治験実施計画書で「併用禁止薬」であることが判明したため、治験が終わるまで処方を延期する」の一文が、どこかに書かれていると助かる。

この一文をどこに書くべきか? という議論も起こりそうだが(何しろ、日本人は、几帳面だから)、僕は分かりやすい場所に記載されているなら、どこに記載があっても構わないと考える(何しろ、僕は、大雑把だから)。



たとえば、「処方延期」されたことがカルテにはなくて、看護師からCRCが聞いたとしよう。

それをCRCがカルテに記載することは普通できないから、CRCから治験担当医師にカルテに、その一文を記載するようお願いするのが一番、いいかなとは思う。

さて、ここで「今回の治験では併用薬については『カルテシール』(或いはワークシート)を原資料とする」なんていう規定が治験実施計画書なり、契約書なり、覚書なりで規定されていたとしよう。

するとカルテ(診療録)に「処方予定」と書かれていても、「カルテシール」の併用薬欄に記載が無いのだから、別に「処方延期」の一文は不要じゃないの?という考えもある。

この考えはカルテシールの「併用薬」の記載欄とCRFの「併用薬」の記載欄が一致しているのだから、「処方延期」の一文は不要でしょ、という考え方だ。

はい、それもあながち間違ってもいません。

でも、総合機構の担当官が実地調査した時に「覚書」でカルテシールが「原資料」ですから、カルテに「処方予定」と書かれていても、問題ありません、と言っても、多分、通じない。

誰だって、カルテに「処方予定」と書かれていたら、「どうなりましたか?」と聞きたくなる。(あなたが総合機構の立ち場ならどう? 僕なら絶対に知りたい。)

だから、こういう場合は律義に覚書でそうなっているからなどと考えずに、どこかにたとえば「カルテシール」でもいいし、「CRC手帳」(名称は何でもいいが)とかでもいいから、「投与延期になった旨、看護師のAさんより確認した。2012/9/15 サイン」と一文、あればいいのです。(もし「CRC手帳」に書いたならば、その手帳は保存をお願い致します。)



これをまた律義に「原資料との矛盾の記録用紙」に書いてくださいとモニターが頼むとなると、おおごとになって、書く、書かない、ということになりかねない。

ここはさ、協力しあっていきましょうよ。

たった一文でいいので、経緯が分かるようにどこかに(分かりやすところに)記載しておきましょう。

それだけでいいのです。

そうすることで、治験関係者全員(審査当局も含め)の貴重な時間が助かります、ということは、治験のスピードもあがり、ひいては患者に新薬を届けるのが速くなります。

そこを考えていきましょう。



ALCOAで大事なことは「これは新薬を待っている患者のためになるか?」という考え方です。

ALCOAで大事なことは「これでデータの信頼性は担保できるか?」という考え方です。

ALCOAで大事なことは「これでデータが正確であることが誰の目にも明らかとなるか?」という考え方です。


ただし、治験依頼者もやたらにカルテシール等を作るのはやめましょうね。

カルテシールは無くす方向で検討しましょう。

カルテに記載されていることを、また、カルテシールやワークシートに書くのは無駄ですし、転記が1回増えれば、それだけ転記ミスも増えます。

カルテシールを作ると、モニターはCRFとカルテシールの間の整合性を確認し、さらに、カルテシールと他の原資料との間の整合性を確認する、となって、何が何やら分かりません。

なんのためにやってるの? となります。

もし、カルテシールが無駄だと思ったら、医療機関側からも治験依頼者に言ってみましょう。

「このデータも、あのデータも、カルテや、こちらの原資料に記載されるので、このカルテシール、無駄ですよね?」と。

「既往歴はカルテの最初に書いてあるので、それをわざわざ、カルテシールの既往歴一覧に書き並べる必要はないですよね?」と。


ただ、こういうことができるために、まずは、治験依頼者も医療機関側もCRFのどのデータはどの原資料から拾ってくるのか、ということを事前に十分、検討しておきましょう。

要はCRFのもとになったデータがどこから来たのか、その原データは誰が書いたのか、それが分かるようにしておけばいいと思います。



治験をやっていて、一番、最悪なのは原資料、原データが無いということ(直接、CRFに記載するデータは別として)。

原資料、原データが無いということはデータの信頼性が無い、ということなので、これは一発でアウト!です。

原資料、原データが有るならば、それが感熱紙にサインがあろうが、コピーのほうにサインがなかろうが、まぁ、大丈夫です。


治験依頼者も総合機構の人が言ったひと言ひと言に過敏に反応しないことです。

総合機構の担当官だって同じ人間なのですから、興味本位で聞くことだってあります。

それが、あっという間に業界広がって、やみくもに、これも必要、あれも必要とか。

本当に、そうなの? という本質を考えるようにしましょう。

ALCOA(アルコア)の原則の基本は、データの正確さと信頼性を確実にするということ。

思考の迷路にはまったら、この基本に戻りましょう。




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2011年07月02日

データの信頼性をどのように確保するか?・・・ALCOAとは?

今回は製薬協が作成した「治験の効率的実施を目指した医療機関での品質管理」を支持する、という意思表明です。
  ↓
http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/allotment/chiken_hinshitsu.html



ぷか「ねぇ、ALCOAって何?アルコアって何? アレ?コレ?」

JOYママ「ALCOAとは以下の単語の略だね。」(治験関係でのALCOAだ)




◆◆◆ ALCOA(アルコア)とは治験データの信頼性を確保するための考え方だ ◆◆◆

1) Attributable(帰属/責任の所在が明確である)

2) Legible(判読/理解できる)

3) Contemporaneous(同時である)

4) Original(原本である)

5) Accurate(正確である)


◆◆◆ ALCOA(アルコア)とは・・・・ ◆◆◆





ぷか「ふ〜〜ん、これって誰が言い出したの?」

JOYママ「このアルコアはそもそもFDAが出した「Guidance for Industry “Computerized Systems Used in Clinical Investigations3”」に記載があるわ。」

ぷか「コンピューターで治験のシステム化された時だけにあてはまるの?」

JOYママ「最初はIT化に伴う治験のデータの信頼性の話だったかれど、今では一般的に「ALCOA(アルコア)原則」として、治験のデータ作成、収集にも適応できる考えとして広がっているのよ。」




ぷか「で、ALCOAって具体的にはどういうこと?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「1) Attributable(帰属/責任の所在が明確である)・・・・・・そのデータは誰が記載したのか、どこのデータを使用したのか、を明確にする。」


「2) Legible(判読/理解できる)・・・・・・これは文字通り、読める、データとして理解できる、ということ。意味不明じゃないってことだね。」


「3) Contemporaneous(同時である)・・・・・・CRFの作成が速やかである、ってとこかな。ずっとあとになって原データからCRFを作成しましたというのではいけない。」


「4) Original(原本である)・・・・・・2次データではないということ。それが一番最初に記載されたデータですよね、ということだ。」


「5) Accurate(正確である)・・・・・・これまた、文字通り、CRFが(或いは原資料、原データが)正確である、ってことだ。」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ぷか「なるほど。で、だからどうしたの?」

JOYママ「たとえば、4) Original(原本である)という点では日本は実に怪しい。日本におけるCRFのSDVの時に『カルテシール』とか『ワークシート』なんていうのと検証していることがあるわね。」

ぷか「あるわ。」

JOYママ「じゃ、その『カルテシール』とか『ワークシート』に記載されているデータは原本か、というと、実はカルテの別の所にあるデータを転記していたり、他の検査伝票から転記したりしている。」

ぷか「うんうん。」

JOYママ「すると、モニターは、今度は『カルテシール』とか『ワークシート』と、そのデータの出所との間でデータ正しいか、検証しないといけない。」

ぷか「そうね。そうなると『カルテシール』とか『ワークシート』って、一体何なの?意味があるの?」

JOYママ「他の原資料から『カルテシール』とか『ワークシート』にデータを転記する、といことは、転記するたびに「転記ミス」の可能性が増える。」

ぷか「それよりも、CRFのデータの出所をSDV記録等に書いておけばいいんじゃないの?」

JOYママ「うん、普通はそれでいい。ただ、日常診療では記載されないことをCRFでは要求することがあるので、そのためにCRFに必要なデータをカルテにも記載してもらうたに『カルテシール』とか『ワークシート』を使っている、という理由もあるんだよね。」

ぷか「そういう項目は、CRFがオリジナルデータであることをプロトコルで規程しておけばいいんじゃないの?」

JOYママ「そういう手でカバーできることもある。」



ぷか「『カルテシール』とか『ワークシート』があることで、モニターも治験責任医師等も手間が増えるわね。転記という手間と元データを確認するという手間が。さらに「転記ミス」という危険性を常にはらんでいる。

JOYママ「看護師のメモとかCRCのメモとかもオリジナルデータだよね。」

ぷか「うん。看護日誌からわざわざカルテに転記する必要もない。メモをカルテ等に挟みこんでおけばいいわね。あるいは別ファイルとして保存するとかね。」



JOYママ「こういうALCOAの基本精神をモニターにもCRCにも、治験責任医師や治験分担医師等にもセミナーで紹介し、本当の意味でデータの信頼性を向上させられるわね。」

ぷか「日本人って、体面を気にするので、「綺麗なCRF」とか「完璧なカルテ」などを要求するけれど、そうではないわ。「綺麗なCRF」と「データの信頼性」は関係無いのよ。」

JOYママ「そのデータがどのようなプロセスで発生し、どのようなプロセスでCRFに記載(入力)されたのか、が大事だ。品質のプロセス管理が重要。」

ぷか「特に日本の場合、CRFとCRFのデータの元となった原資料との間の整合性を確認すれば、それでよし、という考え方もあるけれど、じゃ、その原資料はカルテシールで、そのカルテシールの転記元のデータは正しいのか?という発想が少ない。」


JOYママ「欧米では、モニターおよび医療機関に対し、原資料に関するトレーニングを実施することが必須となっているケースが多い。時には風光明媚なところで。」

ぷか「OK。では、治験依頼者やCRO、SMO、医療機関でALCOA原則に関連するトレーニングを行うぞ。ただ、1泊2日とかって、忙しくて嫌だ、という治験関係者もいるので、その点は考慮しましょうね。」

JOYママ「モニターおよび医療機関に対するトレーニングの実施としてはどんなことが考えられる?」

ぷか「たとえば・・・・・・」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

1)ALCOA 原則の内容を含めた原資料作成プロセス

2)治験実施計画書で要求するデータ内容(評価方法、グレード定義、CRF 記載方法など)

3)データの品質確認方法

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



JOYママ「特には2)治験実施計画書で要求するデータ内容(評価方法、グレード定義、CRF 記載方法など)はきちんと研修してね。」

ぷか「モニターにCRFの記載方法を聞いても、分からない、というおそまつなこともあるからね。治験依頼者もしっかりしないと。」



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