2014年06月06日

「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)その5

今週は下記のQ&Aを読みます。

なお、ガイドラインそのものについては、既にお話済みです。
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http://horaiseiyaku.seesaa.net/category/12608675-1.html


「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について

平成24年10月18日 厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡
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http://www.pmda.go.jp/ich/e/E3qanda_12_10_18.pdf


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質問7

E3ガイドラインの10.2項では,「重要な治験実施計画書からの逸脱("important protocol deviation")」を集計することを求めている。

しかし,同ガイドラインの別添IVa(被験者の内訳)では,治験実施計画書からの逸脱("protocol violation")が原因で試験中止に至った被験者数を提示することを推奨している。

しかし,"protocol deviation","protocol violation"のいずれの用語もICHは定義していなかった。

"protocol deviation ","important protocol deviation","protocol violation"はどのように区別されるのか。

これらの用語の意味を明確にしてほしい。

また,試験における重要な治験実施計画書からの逸脱の定義について,治験依頼者は柔軟に対応してよいのか。

(注意)

このQ&Aに含まれる治験実施計画書からの逸脱に関する解説は,E3ガイドラインのStep4文書(英文)における問題を扱っている。

Step4文書の本文では治験実施計画書からの逸脱を表す用語として,一貫して"protocol deviation"が用いられていたが,別添VIa「患者の内訳」にのみ"protocol violation"が用いられていた。

日本のE3ガイドラインの通知(平成8年5月1日薬審第335号)では,"protocol deviation"及び"protocol violation"の両方に対して同一の訳語「治験実施計画書からの逸脱」が与えられていたため,用語の違いによる問題は生じていない。

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回答7

「治験実施計画書からの逸脱(“protocol deviation“)」には,治験実施計画書に規定された試験デザインや手順からのいかなる変更,相違,乖離も含まれる。

「重要な治験実施計画書からの逸脱(important protocol deviation)」は,治験実施計画書からの逸脱のうち,試験データの完全性,正確性,信頼性,あるいは被験者の権利,安全性,福祉に大きな影響を及ぼす可能性がある逸脱を指す。

例として,ある特徴を有する被験者集団を確実に構成するために設定された重要な適格性基準を満たさない被験者を組み入れた場合や,主要評価項目の解析に必要なデータを収集できなかった場合など,試験の科学的価値の低下につながる恐れがある場合である。

"protocol violation"と"important protocol deviation"は,治験実施計画書の規定からの大きな乖離を指すために,同意語として用いられることがある。

また,"violation"という用語は,規制上,他の意味でも用いられる。

しかし,E3ガイドラインの別添IVa(被験者の内訳)では,試験の規定からの変更,相違,乖離で,被験者又は治験担当医師のいずれによるものかに関わらず,試験中止に至った場合を"protocol violation"としている。

("protocol violation"に該当する被験者を試験の解析に含めるべきかどうかについては,別の問題である)。


用語の混乱を避けるため,治験依頼者は以下のフローチャートに示すように,別添IVaの“protocol violation”を “protocol deviation”に置きかえることを推奨する。

ただし,治験依頼者は,提示する情報が上述の“protocol violation”の定義と概ね一致するのであれば,別の記述を選択してもよい。

E3ガイドラインでは,「重要な治験実施計画書からの逸脱」と一般的にみなされることから,セクション10.2で記述し,付録16.2.2の一覧表に含めるべき逸脱を例示している。

個々の試験における「重要な治験実施計画書からの逸脱」の定義は,試験デザイン,重要な手順,試験データ,治験実施計画書に記述された被験者保護の方針,試験データの解析計画などによって決定される。

E3ガイドラインは柔軟な運用が認められていることから,治験依頼者は,試験での要件に応じて,E3ガイドラインで提示された「重要な治験実施計画書からの逸脱」の例の変更又は追加を行うことが可能である。

なお,大きな変更又は追加を行った場合には,審査員に対してその旨を明確に説明するべきである。

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今週のQ&Aを見て、言えるのは「ガイドライン」はあくまでも「ガイドライン(指針)」なので、それに固執しなくてもいいってことですね。

それは「GCPガイダンス」でも言えます。

「GCPガイダンス」は、わざわざ、「これにこだわる必要もない」という記載があるぐらいです。


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薬食審査発1228第7号
平成24年12月28日
厚生労働省医薬食品局審査管理課長

なお、GCP省令の規定に合致し、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上が図られ、治験の科学的な質及び試験の成績の信頼性が確保されるのであれば、本ガイダンス以外の適切な運用により治験を実施することができます。


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2014年06月05日

「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)その4

今週は下記のQ&Aを読みます。

なお、ガイドラインそのものについては、既にお話済みです。
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http://horaiseiyaku.seesaa.net/category/12608675-1.html


「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について

平成24年10月18日 厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡
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http://www.pmda.go.jp/ich/e/E3qanda_12_10_18.pdf


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質問6

E3ガイドラインの12.2.2項では,試験治療の開始後に発現した全ての有害事象を要約表に示すべきであると述べられている。

E3ガイドラインの12.2.2項に例示された表(有害事象:発現数,発現率,及び発現した患者の識別コード)が,総括報告書の本文中に示すことが出来るほど簡潔であることは滅多にない。

その上,(E3ガイドラインに例示された表では),重症度,因果関係,被験者の識別コードだけでなく,各有害事象について治験責任医師が報告に使用した用語を提示するように記載されている。

これらの情報の全てを一つの要約表に示すのはどうすればよいのか。

この表を修正することは可能か。

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回答6

総括報告書の本文(E3ガイドラインの12.2.2項)には,比較的よく見られる有害事象,例えば,治療群で特定の割合以上の被験者に発現した有害事象の要約表を提示するべきである。

この要約表は,治療群と対照群との比較に用いるため,被験者の識別コードや治験責任医師が報告に使用した用語は含めない。

E3ガイドラインの12.2.2項に例示されている一覧表は,総括報告書本文中の12.2.2項ではなく,総括報告書の本文ではない14.3.1項に示すことを意図していることに注意するべきである。

E3ガイドラインは,有害事象に関する情報を考えられる全ての方法で表示することを意図していたのではなく,12.2.2項では要約表を提示し,より詳細な情報は14.3.1項に提示するように説明していた。

しかし,14.3.1項での例では,全ての方法で表示しているのではなく,治療群Xで発現した個々の有害事象について,器官別,重症度別,治験薬との因果関係に関する情報を示している。

一覧表は,各事象に対応する治験責任医師の報告用語を示すべきであり,人口統計学的な情報又は疾患特有の情報,用法・用量,治療期間,(癌の化学療法の場合)投与サイクルを示すのに用いられる場合もある。

これらの情報を1つの一覧表にすべて表示することが非実用的な場合には,分析結果を別々の一覧表で,例えば用量別など,注目すべきサブグループ別に分けて示すことができる。

しかし,有害事象データをサブグループ別に示す場合には,集団全体でのデータも同じ表中に示すべきである。

例えば,慢性腎臓病患者に対する薬剤では,有害事象データを被験者が人工透析を受けているか否かで分けて示すことができるが,被験者全体で発現した有害事象を示した表も含まれるべきである。

より詳細な有害事象の情報,具体的には被験者識別コードや各有害事象の報告用語が示された一覧表は,総括報告書の14.3.1項や16.2.7.項に示されるべきである。

個々の有害事象の特性を広範囲に検討する場合(多数の項目を一覧表に示す場合)には,電子的な提示方法が必要になるかもしれない。


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2014年06月04日

「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)その3

今週は下記のQ&Aを読みます。

なお、ガイドラインそのものについては、既にお話済みです。
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http://horaiseiyaku.seesaa.net/category/12608675-1.html


「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について

平成24年10月18日 厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡
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http://www.pmda.go.jp/ich/e/E3qanda_12_10_18.pdf


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質問5

被験者の死亡は2つの別の一覧表に含められる可能性がある。

a. 12.3.1.1項「死亡」に提示される一覧表。

この項では,治験依頼者は,「治療後の追跡期間を含め治験中に発生した死亡,及び治験中に始まった変化の結果として生じた死亡の全て」を一覧表に含めるよう求められている。


b. 12.3.1.2項「その他の重篤な有害事象」に提示される一覧表。

この項は,「その他の重篤な有害事象とは,”死亡ではないが,時間的に死亡に関連する又は死亡に先行する重篤な有害事象”を含む」と定義している。


12.3.1.2項の一覧表に死亡に至った事象を含めると,死亡を二重にカウントするなど,誤ってカウントする恐れがあるが,この件について明らかにしてほしい。

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回答5

確かに,E3ガイドラインに示された構成及び定義に基づくと,転帰が死亡であった有害事象,あるいは死亡に関連する有害事象の場合, 12.3.1.2項(E3ガイドラインの見出し番号で)の「その他の重篤な有害事象」の一覧表に死亡が提示される可能性がある。

しかし,死亡は12.3.1.2項の一覧表に含まれる場合も,含まれない場合もあるが,すべての死亡は12.3.1.1項の一覧表に含まれている。

すなわち,12.3.1.2項で,転帰が死亡であった「その他の重篤な有害事象」として報告された被験者の死亡はすべて,12.3.1.1項の死亡の一覧表でも提示される。

よって,死亡を二重にカウントするなど,誤ってカウントすることにはならないはずである。


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なんだか、時代がかった言い回しが懐かしい。。。。。。


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2014年06月03日

「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)その2

今週は下記のQ&Aを読みます。

なお、ガイドラインそのものについては、既にお話済みです。
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http://horaiseiyaku.seesaa.net/category/12608675-1.html


「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について

平成24年10月18日 厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡
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http://www.pmda.go.jp/ich/e/E3qanda_12_10_18.pdf



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質問3

E3ガイドラインに示されている総括報告書の付録には,現在では,ICH-GCPに従いTrial Master File(TMF)から入手できる文書も含まれているが,TMFに保管されている文書を総括報告書の付録に含める必要はあるのか。

(注意)

TMFは、日本のICH-GCP関連の通知(平成16年7月22日付薬食審査発第0722014号)での、「必須文書」に該当。

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回答3

審査員が総括報告書を審査する際に必要な文書は,すべて総括報告書の付録に含めるべきであり,TMFは販売承認申請時に提出されないため,TMFに保管されているのみでは不十分である。

治験実施計画書(付録16.1.1)や統計手法に関する文書(付録16.1.9),治験責任医師及び治験実施医療機関の一覧(付録16.1.4),症例報告書の見本(付録16.1.2)など,試験の重要な情報を記載した文書は,審査員が試験を評価する上で常に必要な情報であるため,たとえTMFに保管されていたとしても総括報告書の付録に含めるべきである。

また,国や地域によって,総括報告書に添付することが要求されている文書がある場合は,それに従うべきである。

例えば,ICH-GCPに従い,監査証明書(付録16.1.8)が法令又は審査当局によって要求されている場合は,必ず提供すべきである。

文書を添付すべきかどうか不明な場合は,当該規制当局に相談することを推奨する。

治験責任医師の履歴書(付録16.1.4)や倫理委員会の承認,同意説明文書(付録16.1.3),被験者ごとの治験薬のロット番号(付録16.1.6)などの補助的な文書は,TMFあるいは治験薬データベースに保管されるため,一般的には総括報告書の付録に含める必要はない。

付録に含めなかった文書はいずれも,後で審査当局から要求された場合に速やかに提出できるようにしておく必要がある。

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質問4

E3ガイドラインは,CTD及びeCTDに関連するM4ガイドラインより前に作成されたことから,E3ガイドラインの本文や付録で言及されていないデータをCTD及びeCTDに含めるにはどのようにしたらよいか?

具体的には,薬物動態,薬力学,ファーマコゲノミクス(ゲノムマーカー),遺伝子治療,幹細胞,バイオマーカー,QoL,バリデーションアッセイ,データモニタリング委員会,心電図,その他の安全性報告書,画像検査データ,個別治療のための診断的検査,患者報告アウトカム(patient reported outcome,PRO)などのデータを申請時に提出するには,どのような方法があるか。

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回答4

E3ガイドラインの本文や付録で言及されていないデータに対して,総括報告書の新しい見出し及び新しい付録を作成することが適切である。

E3ガイドラインは,作成当時に知られていた有効性及び安全性評価項目を主眼に指針を示している。

E3ガイドラインで示されていない項目についても,総括報告書の本文で十分に言及し,目次で記載場所を明確に特定できるようにすべきである。

提出方法には現在,以下の選択肢がある。



1) 独立した報告書。

このような報告書はeCTDでは主となる総括報告書と「同列」に位置づけられる。

たとえば,臨床薬理試験では,総括報告書,PK報告書,バリデーションアッセイ報告書が存在する場合がある。

患者報告アウトカム(PRO)を評価項目にした有効性試験では,PRO報告書が存在する場合がある。

このような報告書は,eCTDでは同一の見出しの下に参照させることもできるし,当該試験のeCTDフォルダの中に並べて配列することもできる。

eCTDにより提示される文書のタイトルが,情報の種類を明確に表しているかを確認すること。



2) study tagging files(STF)を利用する地域。

“valid values list” に与えられているsafety-report,antibacterial,special-pathogen等(STF仕様を参照,http://www.ich.org/products/electronic-standards.html)のfile-tagの利用が推奨される。

提出予定の資料の内容を適切に表すfile-tagがない場合は,新たなfile-tagが使用できるように変更を依頼してもよい。

この依頼は,当該地域の規制当局に提出すること。

治験依頼者の希望する期限内に規制当局が対応できない場合には,総括報告書の本文の一部として提出することが可能である。

その場合は,“study-report-body”というfile-tagが付与される。情報の種類は,eCTDにより提示される文書のタイトルに含まれるべきである。

“valid values list”は変更に応じて定期的に更新されることから,最新バージョンを参照すること。

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2014年05月31日

「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)

今週は下記のQ&Aを読みます。

なお、ガイドラインそのものについては、既にお話済みです。
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http://horaiseiyaku.seesaa.net/category/12608675-1.html


「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について

平成24年10月18日 厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡
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http://www.pmda.go.jp/ich/e/E3qanda_12_10_18.pdf


このQ&Aが古いものですし、既に読まれている方も多いと思います。

また、内容はとっても「マニアック」なので、ご興味の無い方は今週はスキップしてくださいね。

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質問1

ICH-E3ガイドライン「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5月1日付薬審第335号)を規制要件,つまり遵守すべきテンプレートと解釈し,懸念を示す製薬企業がある。

Common Technical Document(CTD)に関するM4ガイドラインが,E3ガイドラインで述べられた総括報告書の特定の構成要素(セクション見出しなど)に言及していることが,このように解釈される一因と考えられる。

E3ガイドラインが柔軟性のないテンプレートと解釈されると,総括報告書における情報が重複して提示並びに不十分な提示になる可能性がある。

このようなことは,E3ガイドラインで前提にされていなかった試験(薬物動態試験,医療経済学的指標やQoLアウトカムを含んだ試験など)にE3ガイドラインを適用する際に特に問題となる。

E3ガイドラインは指針であって遵守すべきテンプレートではないと考えることは可能か。

また,当初にE3ガイドラインにおいて前提にしていなかった試験の総括報告書作成についても適用することは可能か。

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回答1

可能である。

E3ガイドラインは指針であって遵守すべき規制要件あるいはテンプレートではなく,当初から適用にあたっての柔軟性を認めている。

E3ガイドラインの序文(1ページ目)にも「本ガイドラインは,内容が完備していて,不明瞭な点がなく,きちんと整理され,かつ審査が容易な報告書の作成のために,治験依頼者を支援することを目的としている。」 と記載されている。

総括報告書作成において,情報を効果的に提示,伝達するために,E3ガイドラインに提示された構成を改変することは可能である。


E3ガイドラインの序文(2ページ目)には,E3ガイドラインは規制要件ではなく指針と解釈すべき旨が以下のように明記されている。

「どの報告書においても,ここに記載されたすべての事項を(明らかに無関係でない限り)考慮すること。ある特定の治験において,別の提示方法がより論理的な場合には,事項の個々の順序や章分けを変えてもよい。」



E3ガイドラインの柔軟な適用例として,人口統計学的特性に関する情報の提示方法について考えてみる。

E3ガイドラインはこの情報を有効性評価のセクションで提示することを勧めているが,様々な提示方法が考えられる。

例えば,有効性と安全性の解析対象集団が大きく異なっている場合は,人口統計学的特性に関する情報を有効性評価,安全性評価の解析対象集団についてそれぞれのセクションに提示する,あるいは有効性評価及び安全性評価のセクションの前に新たなセクションを作成し,そこに提示することが適切と考えられる。




ある特定の情報や論点がE3ガイドラインで取り上げられていない場合や,提示場所が示されていない場合には,もっとも関連するセクションに提示すべきである。

例えば,薬物動態やQoLの結果は,有効性あるいは安全性評価のセクションの中で,適切に定義されたサブセクションに提示することも可能であり,適切に定義された新たな評価のセクションを作成し,そこに提示することも可能である。

もし,E3ガイドラインで述べられている構成要素で,試験に関連するものを総括報告書に含めない場合,例えば,有効性評価が目的の試験で有効性評価を提示しない場合は,提示しない旨を明確に示し,そのように判断した根拠を説明するべきである。

E3ガイドラインに示されているセクションについて順序又は名称を変更する場合,削除する場合(いずれも試験デザインから考えて適切と判断されることが前提となる),あるいは新しいセクションを追加する場合には,根拠の説明は必ずしも必要ではない。



E3ガイドラインは,適切に管理された有効性評価試験の結果を申請時に提出することを目的として作成されたことに留意すべきである。

E3ガイドラインに示された基本原則は,臨床薬物動態試験,非盲検の安全性試験など,有効性の評価以外を目的とする試験にも適用できるが,この場合,必ずしもすべてのセクション又はデータの提示が適切,あるいは必要とは判断されない。

治験依頼者は,必要に応じてE3ガイドラインに示された指針を適応させることが奨励される(例えば,関連のないセクションの削除,E3ガイドラインに示されていないが必要と考えられるセクションを追加など)。


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質問2

E3ガイドラインは,シノプシス(概要)について限られた指針しか示していない。

M4Eガイドラインには,総括報告書のシノプシスについて,独立した文書として扱うことや記載の長さ等の指針が追加されている。

E3ガイドラインでは,シノプシスは通常3ページ以内としているが,M4Eガイドラインでは,複雑かつ重要な試験の場合は,ページの制限を,例示ではあるが10ページまで拡大している。

これらのガイドラインをどのように解釈すべきか。

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回答2

E3ガイドラインに示された指針は,M4Eガイドラインより前に作成されたものであるため,M4Eガイドラインで示された指針と合わせて考えるべきである。

シノプシスはCTDにおいて独立した文書として利用されるため,総括報告書の他のセクションがなくても,それだけで理解でき,解釈できるように記述されるべきである。

シノプシスでは,試験デザインや重要な方法論に関する情報について簡潔に説明することに加えて,有効性,安全性の結果,並びに対象母集団,被験者の内訳,重要な治験実施計画書からの逸脱及び治療方法の遵守を含むその他重要な情報についても説明すべきである。

総括報告書の他のセクションへの相互参照は避けるべきである。

M4Eガイドラインで説明されているように,複雑な試験や,大規模で重要な試験では3ページ以上のシノプシスが必要となる場合がある。

M4Eガイドラインで示された10ページは絶対的な要件又は制限ではないが,大幅に超過する必要はないはずである。

表形式の使用も必須ではない。

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