2012年10月13日

新薬開発におけるブレークスルー(DNAの構造決定)

10月9日に山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞し、また、ノーベル化学賞では「Gたんぱく質共役型受容体」の研究者のロバート・レフコウィッツ米デューク大教授と、ブライアン・コビルカ米スタンフォード大教授が受賞したということで、今週のホーライ製薬のテーマは「新薬開発のブレークスルー」です。

これまでの科学の歴史の中で、何が新薬開発にとって、ブレークスルーとなったかを見ていこう、というもの。

科学はあるブレークスルーが発見・発明されると飛躍的に発展する。

そして、ある時期、また停滞する。

ところが、そこにまた新たなブレークスルーがある、という歴史の繰り返しです。

(Breakthrough(ブレイクスルー、ブレークスルー)とは、進歩、前進、また一般にそれまで障壁となっていた事象の突破を意味する英単語。)




■■■ DNAの構造決定(1953年) ■■■

まず、僕が最初に選んだブレークスルーは「DNAの構造決定」(ワトソン・クリックの二重らせん」です。

この発見について、是非、読んで頂きたいのが「二重らせん」(J.D.ワトソン著)。
     ↓
「二重らせん」(J.D.ワトソン著)

二重らせんを発見した当の本人が、赤裸々に当時の科学者のデッドヒートを書いたこの本は無茶苦茶、面白い!!

この本を読むと、「科学者が、そういう行為をやっていいのか?」「それはフェアか?」「それ、反則でしょ!」と思わざるを得ない。

この本が発売されて、ワトソンとクリックの行動に対して賛否両論が噴出した。

それだけ、この本が面白いってことであり、それだけ売れたということだよね。

新しい理論や論文、本はオリジナリティが高くて強烈なモノほど、いろんな意見が出る。

もちろん反論も。(つまらない理論や論文、1本はただ黙殺されるだけだ。)

ワトソン博士は「二重らせん」構造を発見すると同時に、この「二重らせん」(J.D.ワトソン著)でも、天才的な文才を発揮するし、「有機化学」の教科書でも、その才能を開花させた。


「まえがき」が長くなったけれど、DNAの構造決定が、その後の20世紀から21世紀における「生物学の爆発」を呼んだ。

この発見が無ければ、山中教授のiPS細胞もなかったってことだ。


DNA の構造は、分子模型を構築する手法を用いて1953年にジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによって提唱された。(1953年)

このDNA分子模型の構築は、モーリス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンによってすすめられていたX線結晶構造解析の画像及び解析情報やエルヴィン・シャルガフによって示されていたDNA塩基存在比の法則などのDNAに関する既知情報をすべて満足させるように配慮しながら行われた。

1962年、DNA二重らせん構造に関する研究により、ワトソンとクリックはウィルキンスとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。

DNAが二重らせんであることから、DNAこそが遺伝子の基本であることが分かった。

このことから、様々なことが発見、発明され、それぞれが、また新薬開発のためのブレークスルーになる。

●DNAとRNAの役割の発見(DNA⇒RNA⇒タンパク質、というセントラルドグマ)

●DNAシークエンシングの発明(DNAを構成するヌクレオチドの結合順序(塩基配列)を決定すること)

●DNAの合成方法の確立

●DNAポリメラーゼの発見

●組み替えDNAによるタンパク質合成

●PCR法の発明

●ヒトのゲノム解析(2003年完了)


これらから「遺伝子工学」という言葉(学問)までできた。

僕もドイツ系の製薬会社で酵母に人間のある種のタンパク質をコードするDNAを組み込み、酵母にそのタンパク質を作らせるプラント立ち上げに関わった。

その酵母は万が一、工場の外に漏れたとしても天然では生きていけないように「生物学的封じ込め」という操作を施していた。

もちろん、外に漏れないようにプラントそのものが「物理的封じ込め」になるように設計されている。

ちなみに、酵母を培養するときに「曝気」を失敗すると、酵母が嫌気性発酵してしまい、アルコールを作っちゃんだよね。

時々、培養室の中がアルコール臭で満たされて、下戸の僕は二日酔い状態で分析作業を続けることがあった。



最初の遺伝子組換え医薬はヒトの「インスリン」で、アメリカで1982年に承認された。



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従来、インスリンは人工的に合成するのが難しいとされていた。

そこで、正常にインスリンを分泌するヒトの遺伝子を切り出し、大腸菌のプラスミド(環状の小さな二本鎖のDNA)に組み込む。

大腸菌に組み込まれた正常なヒトインスリン遺伝子が大腸菌中で働き出し、大腸菌がヒトインスリンをつくるようになる。

大腸菌は培養が極めて容易で増殖スピードが速いため、ヒトインスリン遺伝子を発現する大腸菌を大量培養すれば、大量のヒトインスリンを確保することが可能になる。


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1986年には最初のヒト用組換えワクチンであるB型肝炎ワクチンが承認された。

これ以後、多くの遺伝子組換えによる医薬・ワクチンが導入されている。

インターフェロンやエリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)、ヒト成長ホルモン、ゴリムマブ(抗リウマチ薬)、B型肝炎ワクチン等。

DNAの構造決定とゲノムプロジェクトは遺伝子研究にパラダイムシフトをもたらした。


遺伝子工学からは、細胞融合やクローン技術ができた。

遺伝子操作を施した研究用マウス(トランスジェニックマウス)の作成。

人間を対象とした遺伝子治療の試みなどがある。

1970年代初頭までに、DNAを特定の位置で切断する制限酵素、DNA断片をつなぎ合わせるDNAリガーゼ、DNAを細胞に導入する形質転換の技術が開発され、これらが組換えDNA技術の基礎となった。

さらに1980年代にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって目的とする遺伝子の複製が容易に行えるようになり、遺伝子工学はますます利用範囲を広げた。



がん遺伝子の発見も重要。

1911年に、ペイトン・ラウスにより、ニワトリに癌(肉腫)を発生させるウイルスが発見され、発見者の名をとりRous=ラウス肉腫ウイルス(レトロウイルス)と命名された。

その後の研究により、このウイルスには、自身の増殖に関する遺伝子以外に、細胞を癌化に導く遺伝子が存在することが判明した。

その遺伝子こそが、世界で初めて発見された、がん遺伝子=SRC(Sarcoma(肉腫)の意味)と呼ばれるものである。


今では、ありとあらゆる病気のもとになる遺伝子探索が行われている。

遺伝子の一塩基多型(SNPs)は一塩基の置換(点突然変異)によって生じた多型で、ここからテーラーメイドの治療(個人別の治療)も将来的には考えられている。


さらに今は「ポストゲノム」時代と呼ばれていて、プロテオーム解析(*)が盛んに行われている。

たとえば、病態と正常の細胞中のプロテオームを比較することで、疾患に関係しているタンパク質を見出すことが出来る。

*プロテオーム・・・細胞中のすべてのタンパク質をまとめてプロテオームと呼ぶ。



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2012年09月28日

僕に必要なのは「カンフル剤」

今週は『製薬会社』らしく医薬品に関わる話題です。

特に「植物由来」の薬について見ていきたいと思います。


「エフェドリン」

エフェドリン (英: ephedrine) は、鬱血除去薬(特に気管支拡張剤)、または局部麻酔時の低血圧に対処するために使われる交感神経興奮剤で、漢方医学で生薬として用いられる裸子植物のマオウ(麻黄)に由来するアルカロイドである。

1885年(明治18年)、長井長義がマオウから単離抽出した。

ちなみに、この「長井長義」さんは薬学者で日本薬学会初代会頭。

日本の近代薬学の開祖とも呼ばれている。

無茶苦茶、偉い人で、詳細は「こちら(長井長義)」をどうぞ。


で、そのエフェドリンですが、現在では、主に感冒薬(風邪薬)を中心として、薬効をよりマイルドとした誘導体である dl-塩酸メチルエフェドリンが、気管支拡張剤として使用されている。

エフェドリンはカフェインよりも勉強の効率を高めるということが示唆された。

一部の学生とホワイトカラーはこの効果を期待し、また一部のプロスポーツ選手や重量挙げ選手と同様にエフェドリン(または麻黄を含むハーブ補助食品)を使った。

アメリカの水泳選手・リック・デモントは、1972年のミュンヘンオリンピック400メートル自由形で金メダルを獲得したが、ドーピング検査でエフェドリンが検出され、メダルを剥奪された。

デモントのチームドクターらは「デモントは幼少期から喘息を患っており、その対処にエフェドリンは必須」と訴えたが、IOCは例外を認めなかった。


フェニルエチルアミンとして、エフェドリンはアンフェタミンに類似した化学構造を持つ。

違法ドラッグ製造者がメタンフェタミンを生成する際には、エフェドリンを前駆物質として使用する。




「ニコチン」

ニコチン (nicotine) はアルカロイドの一種であり毒物および劇物取締法に毒物として指定された物質である。

主にタバコの葉に含まれる。

天然由来の物質であり、即効性の非常に強い神経毒性を持つ。

半数致死量は人で0.5mg〜1.0mg/kgと猛毒で、その毒性は青酸カリの倍以上に匹敵する。

人体に対して神経毒としての有害性は持つが、ニコチン自体に発癌性はない。

ほぼ全ての生物に対して毒性を発揮する為、殺虫などの用途で使用されている。

「ニコチン」の名前は1550年にタバコ種をパリに持ち帰ったフランスの駐ポルトガル大使ジャン・ニコ(Jean Nicot, 1530年 – 1600年)に由来する。


ニコチンは主に中枢神経および末梢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR) に作用することで薬理作用を表すと考えられている。

中枢神経において nAChR は広範囲に分布しているため、ニコチンは脳の広い範囲に影響を与える。

そのうち、特に依存性の形成に関与する部位として中脳辺縁系のドーパミン神経系が挙げられる。

中脳の腹側被蓋野、側座核などの nAChR にニコチンが結合すると、直接的あるいはグルタミン酸の放出を介してドーパミン系神経の脱抑制を起こす。

このドーパミン神経系は「報酬系回路」として知られており、快の感覚を個体に与えるため、強化行動をひき起こす。

この中脳辺縁系のドーパミン神経の興奮を介した依存性の形成メカニズムは他の依存性薬物(コカイン、ヘロイン、アンフェタミンなど)と同じとされるが半数致死量の低さと他細胞系への薬理作用の点から、麻薬とはされておらず、毒物に指定されている。

僕はニコチン依存症・・・・・・。




「カフェイン」

カフェインは、アルカロイドの一種。

プリン環を持つプリンアルカロイドの一種で、コーヒー類に含まれることからこの名がある。

また、安息香酸ナトリウムカフェイン剤などは強心・興奮作用を期待して使われる。

OTCのいわゆる「滋養強壮剤」には無水カフェインが欠かせない。

1819年(一説には1820年)にドイツのフリードリープ・フェルディナント・ルンゲによってコーヒーから世界で初めて単離された。

分析化学者であったルンゲに、コーヒーの薬理活性成分の分離を勧めたのはゲーテであったと伝えられている。

主な作用は覚醒作用、脳細動脈収縮作用、利尿作用。

医薬品にも使われ、眠気、倦怠感に効果があるが、副作用として不眠、めまいがあらわれることもある。

カフェインを習慣的に摂取する人が半日から1日カフェインを摂取しなかった時に現れる症状として最も顕著であるものは頭痛であり、その他、不安、疲労感、集中力の欠如、抑うつが現れることがある

カフェインはアデノシン受容体に拮抗することによって、覚醒作用を示す。

また、メチルキサンチン誘導体に共通の活性として、ホスホジエステラーゼの非選択的な阻害作用があり、細胞内cAMP濃度の上昇を引き起こす。

これにより、心筋収縮力の増大、気管支平滑筋の弛緩、脳細動脈の収縮のような交感神経興奮様作用を示す。

これらの作用の結果、腎血管拡張により糸球体濾過量(GFR)が増大し、さらに尿細管での水分の再吸収の抑制により利尿作用を現わす。


僕はカフェイン依存症・・・・・・。



「カンフル」樟脳(しょうのう)

クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留すると結晶として得ることができる。

二環性モノテルペンケトンの一種。

他の植物の精油から得られた結晶性テルペノイド化合物を植物名+camphorで命名することもしばしば行われた(この場合の camphor は「脳」と訳される)。

代表的なものにmint camphor 薄荷脳(メントール)やborneo camphor 龍脳(ボルネオール)などがある。


血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用などがあるために主に外用医薬品の成分として使用されている。

かつては強心剤としても使用されていたため、それらの用途としてはほとんど用いられなくなった現在でも、「駄目になりかけた物事を復活させるために使用される手段」を比喩的に"カンフル剤"と例えて呼ぶことがある。

ちなみに瀕死状態の人にカンフルを打つと効果があるのは「あまりにも痛いため」という説もある。(僕にはカンフルが必要かも・・・・・。)


また人形や衣服の防虫剤、また防腐剤、花火の添加剤としても使用されている。

樟脳を小さくカットして船尾に付けた木製もしくはセルロイド製の小船を水面に浮かべると、後方の水面に樟脳の成分が拡がり、表面張力の差によって前方に引っ張られ船が進む。

時としてカオス的な予測できない動きをする。

1960年代位までは縁日の露店等でよく売られていたシンプルで安価な玩具であった。

僕も小さい頃、お祭りに行くと必ず、この「樟脳舟」を買ってもらった。

でも、家でやると、なかなかうまく走らないんだよね。何かコツがあったのかな?



・・・・・・ということで、今週は「植物由来の薬」の話でした。

これからも、まだまだ植物から新薬が出てくることでしょう。

それはそれとして、植物はそばに置いておくだけで、人間の心に安らぎを与えてくれます。

そういう意味では「植物」というだけで、人間には薬かも。



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2012年09月26日

妖しげな植物から怪しげなドラッグ

今週は『製薬会社』らしく医薬品に関わる話題です。

特に「植物由来」の薬について見ていきたいと思います。

今日は「妖しげな植物」です。



まずは軽く「麻」(アサ)です。

この麻の花冠、葉を乾燥または樹脂化、液体化させたものが「大麻」又は「マリファナ」です。

これに含有される化学物質カンナビノイド(特にテトラヒドロカンナビノール (THC) )には様々な薬理作用があり、「嗜好品」や「医薬品」として用いられる。

日本においては、大麻取締法により、大麻の所持、栽培、譲渡等に関して規制がある。

(日本では、無許可所持は最高刑が懲役5年、営利目的の栽培は最高刑が懲役10年の犯罪である。産業用のアサは、陶酔成分が生成されないよう改良された品種が用いられる。)

大麻の薬や嗜好品としての歴史は長く、中国で2700年前にシャーマンが薬理作用を目的としたとされる大麻が発見されている。

後漢の頃に成立したとされる中国最古の薬物学書「神農本草経」には薬草として使われていたことが記されている。

歴史の父と呼ばれるヘロドトスは、『歴史』において、紀元前450年のスキタイ人やトラキア人は大麻を吸っていたと伝え、70年にはローマの医学治療として大麻の使用が言及された。

1886年に印度大麻草として日本薬局方に記載され、1951年の第5改正日本薬局方まで収載されており、庶民の間でも痛み止めや食用として戦後に規制されるまで使用されていた。

相対的には「タバコ」よりも「人体に対する悪影響は低い」という報告もあるが、絶対にダメ! だからね。




次に「モルヒネ」(これは立派な医薬品)です。

モルヒネは、アヘンに含まれるアルカロイドで、チロシンから生合成される麻薬のひとつ。

「アヘン」は「ケシ(芥子)の実から生産されるもの」ですね。

モルヒネはベンジルイソキノリン型アルカロイドの一種。

この「アルカロイド」がまた薬の宝庫だ。

それは置いといて。

モルヒネからは依存性のきわめて強い麻薬、ヘロイン(塩酸ジアセチルモルヒネ)がつくられる。

医療においては、癌性疼痛をはじめとした強い疼痛を緩和する目的で使用される。

モルヒネ硫酸塩水和物徐放錠の「MSコンチン」(塩野義製薬)は「癌の激しい疼痛の鎮痛」に使われる「医薬品」。

モルヒネはオピオイド神経を興奮させ、下降性疼痛制御により、侵害受容器(痛みを感じる受容器)で発生した興奮の伝達を遮断し上行性疼痛伝達をとめることにより中枢鎮痛作用を示す。

(僕も癌の末期状態になったら、この「MSコンチン」で中毒になって死にたいなどと戯言を言っていますが、でも、本当に癌の疼痛を和らげるのは人間の最後の最後までQOLを向上させるのに大きく寄与していると思います。

モルヒネの歴史は1804年、ドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュルナー (Friedrich Sertürner) により、初めて分離される(この物質は、史上初めて薬用植物から分離されたアルカロイドとなった)。


ヘロインは塩酸モルヒネを無水酢酸で処理し、生成する。

ロンドン・セントメアリー病院医学校のアルダー・ライトによって1874年に調合され、ドイツのバイエル社から鎮咳薬として1898年に発売された。



次に「コデイン」です。

このコデインもまた「アヘン」(ケシ(芥子)の実)から発見された。

コデインはアヘン中のアルカロイドとして0.7から2.5%の濃度で含まれる。

コデインはアヘンから得られるにもかかわらず、合衆国内で使用されているコデインはモルヒネをO-メチル化して合成されている。



コデインの誘導体である「リン酸ジヒドロコデイン」は「咳止め」(鎮咳薬)として、今でも、立派に使われています。

僕が大学を卒業して最初に勤めたOTCのメーカーでも「コデスミン」という「鎮咳薬」を製造していましたが、この中に「リン酸ジヒドロコデイン」が配合されていた。

リン酸ジヒドロコデインはある特定の製薬会社(某大手製薬会社)しか製造が許可されていなくて、そこから購入すると、すぐに会社で一番丈夫で重たい金庫の中に僕がしまっていた。

そして3か月おきに「関東信越厚生局 麻薬取締部」に「リン酸ジヒドロコデイン」を1g単位で報告していた。

ちなみにリン酸ジヒドロコデインを澱粉等で100倍(100倍散)に希釈すると「麻薬」ではなくなる。

100倍散=リン酸ジヒドロコデイン1gを999gの澱粉等に混ぜる、ということ。

鎮咳薬にはこのリン酸ジヒドロコデインの他に「覚せい剤原料」の「エフェドリン」が一緒に配合されることが多くて、深夜の「クラブ」あたりで「鎮咳薬シロップ」の「一気飲み」が流行ったことがあった。

また、ある時、新聞で読んだけれど、暴力団のひとりが麻薬取締法で逮捕されたのだけれど、彼の部屋の押し入れには「分液ロート」とか「エバポレーター」が隠してあり、「化学」の教科書もあったという。

彼は鎮咳薬からジヒドロコデインを抽出して濃縮してさばいていたらしい。

人間、その気になると(悪い例だけど)、何でもやってしまうものです。



「コカイン」はコカノキに含まれるアルカロイド。トロパン骨格を持ちオルニチンより生合成される。

粘膜の麻酔に効力があり、局所麻酔薬として用いられる。

コカインを摂取した場合、中枢神経興奮作用によって快感を得て、一時的に爽快な気分になることがある。また、コカインは薬物依存症の原因になる。

日本では麻薬及び向精神薬取締法で規制対象になっている麻薬である。



「麦角アルカロイド」から作られるのが「LSD(lysergic acid diethylamide)」。

LSDはインドール核を有し、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンによく似た構造を持つ(LSDの4つの環のうち2つはセロトニン分子の環系であり、セロトニンにつく側鎖はLSDの構造の一部に類似している)。

そのためLSDはセロトニン受容体に結合し、5-HT2のアンタゴニストとして、5-HT1Aと5-HT1Cのアゴニストとして働き、セロトニンの作用を阻害するために幻覚が起こると考えられている。

日本では1970年に麻薬に指定された。

ちなみにザ・ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の3曲目に「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」という曲がある。

作詞はジョン・レノンだけれど、この「Lucy in the Sky with Diamonds」の頭文字を取ると「LSD」となり、これはジョン・レノンが薬物の「LSD」を使った時に見えた幻影を曲にしたのではないかという噂がある(真偽は定かではない)。


「麦角アルカロイド」も薬の宝庫で、リゼルグ酸,エルゴタミン,エルゴメトリン,エルゴクリスチンなどがある。

「麦角アルカロイド」とは小麦・ライ麦などに寄生する麦角菌(Claviceps purpureaなど)により産生されるアルカロイドのこと。

エルゴタミンは血管収縮作用をもち片頭痛治療薬として使われた。

エルゴメトリンは子宮の平滑筋を収縮させ、陣痛促進や分娩後の子宮出血抑制に用いられた。



次に「メスカリン」。

メスカリン はフェネチラミン(フェネチルアミン、フェニレチルアミン)系のサイケデリック麻薬(幻覚剤)である。

硫酸メスカリンとして化学的に合成することもでき、サボテンの一種であるペヨーテ等の成分として得ることもできる。

名称はメスカレロ・アパッチが儀式の際に使用したことに由来する。日本では麻薬に指定されている。

サボテンの「ペヨーテ」(和名はウバタマ)はちゃんと育てれば、ちゃんと花が咲く。

ウバタマサボテン属の植物は生長がきわめて遅く、野生では地上部分の大きさがゴルフボール大になって、花をつけるようになるまでに約30年もかかることがある。

栽培株はかなり生長が早いが、それでも発芽してから花をつけるまでには6年から10年が必要である。

サボテンは水をやり過ぎると腐ります。(僕はいつもこれでサボテンの育成に失敗している。)

この「ウバタマ」を辛抱強く育て、花がついたという写真を津村ゆかりさんがfacebookに載せられたことから、今週のホーライ製薬のテーマが決まったというわけだ。



ここで「ボトックス」(グラクソ・スミスクライン)を唐突に思い出したので書きます。(植物とはちょっと違うけれど。)

ボトックスはボツリヌストキシンを希釈した薬で「日本国内においてはA型ボツリヌス毒素製剤(商品名:ボトックス注用50単位・100単位)が注射剤として、1996年に眼瞼痙攣、2000年に片側顔面痙攣、2001年に痙性斜頸、2009年に2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、2010年に上肢痙縮・下肢痙縮の適応で承認されている。」

そもそも「ボツリヌストキシン」とはボツリヌス菌が産生する毒素である。ボツリヌス毒素とも呼ばれる。

ボツリヌス菌食中毒の原因となり、極めて毒性が強い(致死量:ヒトに対しA型毒素を経口投与した場合、体重1kgあたりの致死量が1μgと推定されている。

「毒」は「人間に強い生理作用」を持っているので、それを何らかの方法で(たとえば誘導体を作り)毒性を弱くすると、それがそのまま薬になったりするわけです。


「毒」が「薬」になる例として「ツボクラリン」がある。

ツボクラリンは南米の先住民が古くから狩猟などに用いてきたクラーレ (curare) と呼ばれる矢毒のうち、ツヅラフジ科コンドデンドロン属の植物が材料のツボクラーレと呼ばれるものから1935年にハロルド・キングにより単離された。

ツボクラリンは少量でも傷口から体内に入ると末梢神経と筋の接続部のニコチン受容体においてアセチルコリンと拮抗、興奮伝達を阻害して目・耳・足指(短筋)→四肢の筋→頚筋→呼吸筋の順に骨格筋を麻痺させることにより、呼吸困難を起させて窒息死させる。

逆に経口摂取しても排泄がすみやかで毒性を発揮しないため、これを含む矢毒を用いて倒した動物を食べても害が無く、狩猟に用いるには都合が良い。

今日では単離されたものが筋弛緩剤として医療現場で用いられている。

また、薬理学の実験には欠くことができないものである。


妖しい薬の話はここまで。



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2012年09月25日

「美くしいマドンナ」から生まれた薬

今週は『製薬会社』らしく医薬品に関わる話題です。

特に「植物由来」の薬について見ていきたいと思います。



柳から発見された「サリチル酸」の話は有名だよね。

ヤナギの薬理作用については、ヒポクラテスの書物に登場するほかにシュメール、レバノン、アッシリアの文書にも登場する。

また、チェロキー族などのアメリカ原住民もヤナギの仲間を解熱・鎮痛に用いていた。

日本でも「歯痛には柳楊枝」として知られていた。

1763年、イギリスの司祭エドマンド・ストーンが柳の解熱作用を再発見。

その後、1830年にフランスの薬剤師アンリ・ルルー (Henri Leroux) とイタリアの科学者ラファエレ・ピリア (Raffaele Piria) が解熱成分(サリチル酸の配糖体)を分離してサリシン(ラテン語: salix 「柳」から)と命名。

その後ピリアはサリシンを分解して新物質を発見、サリチル酸と命名した。

このサリチル酸からアスピリンが誘導体として合成され、今に至っているというわけです。




次にイタリア語で「美くしいマドンナ」という名前の「ベラドンナ」。

「ベラドンナ」はナス科オオカミナスビ属の草本。

和名は、オオカミナスビ、オオハシリドコロ、セイヨウハシリドコロ。

何故、「美くしいマドンナ」という名前がついたのかというと、昔から女性が瞳孔を散瞳にさせるための点眼薬として、この実のエキスを使用したことに由来する。

今でも「瞳」を大きく見せるコンタクトレンズがあるものね。

(「瞳」が大きいと「美しい」というわけでもないと僕は個人的には思うけれど。)


なぜ、ベラドンナの抽出物が瞳を開くのか?

そんな疑問から発見されたのが「アトロピン」。

アトロピンは抗コリン作用を有しているので散瞳するわけです。

ちなみにアトロピンは「サリン事件」の時に治療薬としても使われた。

アトロピンは天然ではl-ヒヨスチアミンとして存在する。

他の抗コリンアルカロイド同様、主にナス科の植物に含まれる。

たとえば、「ハシリドコロ」 「ベラドンナ」 「チョウセンアサガオ」など等、


ベラドンナの花が過ぎた後に緑色の実をつけ、1 cm ほどに膨らんで、黒色に熟していく。

この実は甘いといわれるが、猛毒を含んでいるため絶対に食べないように!

「ベラドンナ」の「花ことば」は「沈黙」だ。




植物からちょっと外れるけれど、「ヒルジン」を思い出したので書きます。

「ヒル」っていますよね?

都会育ちの方は知らないかな?

ミミズみたいな奴で、川の中や山の雑草の中にいて、そっと人間の足などに吸い付いて血を吸う奴です。

その「ヒル」って治療にも使って時代が長い。(これを「医用ヒル」という。)

ヒルは「瀉血(しゃけつ)*」として使われていたらしい。

で、そのヒルジン(またはヒルディン:Hirudin)はヒル(医用ヒルHirudo medicalisなど)の唾液腺から分泌されるポリペプチドで、トロンビンを阻害することにより血液凝固を妨害する。

これによりヒルは吸血を続けることができ、またヒルに噛まれた痕は止血しにくい。

抗凝固剤として用いることもある。

*瀉血(しゃけつ)とは、人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法の一つである。古く中世ヨーロッパで広く行われたが、医学的根拠はほとんどの場合は無く、迷信による治療であった。





次に甘草(かんぞう)です。

新潟大学医学部の教授(法医学)で俳人でもあった「高野素十」の俳句に「甘草の芽のとびとびのひとならび」という名作がある。高野素十は写実主義の俳人だ。

甘草は漢方薬に広範囲にわたって用いられる生薬であり、日本国内で発売されている漢方薬の約7割に用いられている。

で、その甘草から発見されたのが「グリチルリチン」。

グリチルリチンはスクロース(砂糖)の30から50倍の甘みを持つといわれる。

特に消化性潰瘍や去痰薬としての効果がある。

グリチルリチンのアグリコンであるグリチルレチン酸は、消化性潰瘍の治療に効果がある。

「強力ミノファーゲン」(ミノファーゲン製薬)は「グリチルリチン酸モノアンモニウム」が主成分で「強力ミノファーゲン」は肝炎の治療薬として以前より広く使用されてきた。

長期使用が可能で、適応範囲が広く、且つ副作用が少ないことから、今でもインターフェロンのすぐ次の選択となっています。




さて、お次は「レセルピン」です。

レセルピンは1952年にチバ社(現在のノバルティス)で「インドジャボク」から発見され、1954年に精神分裂病(現・統合失調症)の治療薬として実用化された。

レセルピンの発見は、ほぼ同時に発見されたクロルプロマジンと共に精神科病院の「閉鎖病棟」を開放する大きな要因となった。

だが、パーキンソン症候群という副作用が大きいため、現在では血圧降下剤としての用途が中心である。

レセルピンはアドレナリン作動性ニューロン遮断薬の一つ。

シナプス小胞へのカテコールアミンやセロトニンの取り込みを抑制し、その結果、これらがシナプス小胞内において枯渇することによって作用する。


インドジャボク(印度蛇木)とは、キョウチクトウ科の植物の一種。別名は、ラウオルフィア。

インド周辺に自生し、根の形がヘビのようであるからインドジャボクという。また、ヘビの咬傷に用いるからという説もある。

さらにインドジャボクからは「アジマリン」という化合物も発見されており、『発作性心房細動や発作性頻脈の予防・期外収縮(上室性および心室性)・新鮮心房細動』に効果があります。


本当に植物は薬の宝庫だね。




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2012年09月22日

植物由来の抗がん剤

今週は『製薬会社』らしく医薬品に関わる話題です。

特に「植物由来」の薬について見ていきたいと思います。

漢方薬を見るまでもなく、植物は薬の宝庫です。

植物由来の薬は「くさるほど」あります。

さらにアヘン、マリファナ、脱法ハーブ等を見るまでもなく、妖しげな作用も植物には多数あります。

さらにさらにトリカブト、ツキヨタケ、ベニテングタケ等を見るまでもなく毒薬の宝庫でもあります。

・・・・・・ということで今週は植物由来の薬の話ですが、(話は50万光年ほど飛びますが)実はこのホーライ製薬の毎週のネタを考えるのって、これが実は意外と大変なのだ。

だいたい毎週、木曜日に次週のネタを考えるんだけれど、これが胃が痛くなるぐらい困る。

書くテーマさえ決まればなんとかなるけれど、そのテーマさえ思いつかないことも多々ある。

今週のテーマはいろんな所でお世話になっている「津村ゆかり」さんとのfacebookでのやりとりからネタのヒントを頂きました。(津村さん、ありがとうございます!津村さん、大丈夫です!!あやしげな薬を創ったりしませんので。いや、創るかな・・・)

ちなみに津村ゆかりさんとは長いおつきあいでして(もちろんネット上だけですが)、彼女のサイトに僕の昔の「医薬品ができまで」が紹介されています。
   ↓
http://www5e.biglobe.ne.jp/~ytsumura/hpage05.html#soshilnk

まぁ、そんなこんなで今週は植物のお話です。




まずは、「タキソテール(ドセタキセル)」(サノフィ・アベンティス)と「タキソール(パクリタキセル)」(ブリストル・マイヤーズ)です。

何故、この薬を最初に選んだのかというと、僕が初めてモニターになった時に「タキソテール」の「卵巣がん」を開発するモニターをやったからなのですね。

この「タキソール」の発見はアメリカの国家戦略で発見されました。

アメリカの第40代レーガン大統領の大号令で抗がん剤の開発を国家レベルでやっていたというわけです。

何故、レーガン大統領なのか?

実はレーガンはアメリカ史上、最年長で選出された大統領(69歳349日)であり、唯一離婚歴を有する大統領だからです(離婚は関係ないけれど)。

最年長で大統領になって、自分が「がん」になることを恐れて国の予算をドバっとNIHに提供して、世界中の隅から隅までシーズ探しをやらせました。

実際に、レーガンは何度か鼻の頭に皮膚がんができて手術で取りました。

ちなみに、あとになって知ったのだけれど、僕のところにもNIHから「おまえの作った化合物を5g送れ」と手紙が来た。(もちろん謝礼金はなし。)

当時、僕はピロリジン骨格の化合物合成をやっていて、その論文の中から、気になる骨格をNIHが見つけて、それで「送れ」ということになったらしい。

しょうがないから、送ったけれどね。


で、その国家レベルの抗がん剤シーズ探しで最も有力だったのが、「セイヨウイチイ」の樹皮から抽出されたタキサン化合物。

これを基にパクリタキセルが合成され、当時の世界で最も抗腫瘍効果が高かった(in vitroで)のだ。

それをアメリカの製薬会社、ブリストル・マイヤーズが商品開発に乗り出した。


一方で、フランスの製薬会社のローヌ・プーラン ローラーという会社は「セイヨウイチイ」の葉から、やはりタキサン骨格を持った化合物を抽出して、これもまた抗腫瘍効果が高いことを発見し、「タキソテール」として開発を始めた。

僕は、この「ローヌ・プーラン ローラー」に勤めていて、「タキソールはセイヨウイチイの樹皮を剥いで抽出するので、そのイチイの木はだめになるが、タキソテールは葉から抽出できる。葉はむしっても、次の年にまた出てくるので、省資源的にも優れている」という訳の分からない「利点」を覚えたものだ。

まぁ、他にもタキソテールはタキソールに比べて水溶性が高いとか、点滴時間が短くて済むとか、メリットはあったのですが。

(ちなみに、この「タキソテール」と「タキソール」って、名前が似ていて、投薬する時に間違いやすいので、いつも「ヒヤリ・ハット事例」にのるんだよね。抗がん剤だから、間違えるとやばいよね。どっちの会社も思い入れがあるので、名前を変えそうにない。)


「タキソテール」も「タキソール」も今では広く、多くの「がん」の治療薬として使用されている。

作用機序はどちらも細胞分裂の際にできる「微小管(チューブリン)」の脱重合を阻害することで、がん細胞を死滅させる、というものだ。




植物由来の抗がん剤としては「イリノテカン(カンプトテシン)」(ヤクルト本社ー第一製薬)もある。

「イリノテカン」は「カンレンボク」という植物から得られる。

この「カンレンボク」は和名が「キジュ(喜樹)」というおめでたい名前がついている。(まるで、将来、抗がん剤が発見されることを予想してつけたような名前だ。)

イリノテカンの作用機序はトポイソメラーゼTを阻害することです。

トポイソメラーゼはDNA複製時に生じたねじれや構造上のゆがみを修正する為にDNAを適宜切断および再結合させる働きを持つ酵素です、はい。




そのほかに植物由来の抗がん剤として有名なところとしては「ビンクリスチン」がある。

「ビンクリスチン」の歴史は古く、「ニチニチソウ」から発見されている。

「ニチニチソウ」は生命力が強いので、「きっと、何かある」と科学者の勘で調べ始めたんじゃないのか、なんて思ったりしている。(本当のところは知らない。)

ビンクリスチンの作用機序は微小管(チューブリン)の重合反応を阻害することによる細胞の有糸分裂阻害。


また、多くの植物にある「リグナン」という物質から作られた抗がん剤として「エトポシド」がある。

この「エトポシド」はメギ科ポドフィルムの根から得られた「リグナン」から開発された。



植物とはちょっと違うけれど、エーザイの「ハラヴェン(エリブリン)」は海綿由来の天然有機化合物であるハリコンドリンBの大環状ケトン合成アナログ(構造類縁体)だ。

ハリコンドリンBはハリコンドリア属 (Halichondria) の海綿(クロイソカイメン)から単離された、ユニークな作用機構を有する強力な細胞分裂阻害剤である(2009年に、岸義人らによりE7389(エリブリン)の新規合成経路が報告されている)

この化合物が発見当初から、無茶苦茶、合成が難しいという評判だった。

ハーバード大の岸先生のエレガントな合成方法に驚嘆したものだ。

ハラヴェン(エリブリン)はチューブリンの合成阻害。

初めて乳がんで生存期間の延長させた抗がん剤です。



抗がん剤ついでに話を展開すると、有名な抗がん剤に「シスプラチン」という「白金製剤」がある。

構造式の中に白金(Pt)が入っているので、とても高価!

で、何故、白金に抗腫瘍効果があることが分かったのか?

ある「ものぐさ」な科学者が「白金電極」を寒天培地に突っ込んで忘れていたら、大腸菌の生育を抑えることを偶然、発見したのがきっかけです(1965年、アメリカ合衆国のバーネット・ローゼンバーグです^^;)。

まるで、フレミングのペニシリンみたいだね。

「ものぐさ」も科学者の大切な「能力」なのだ。



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