2012年03月21日

エピソード1「QCチェックは誰のため?」

社内IRBでプロトコルを審査してもらう時に、「治験薬概要書」というのも作り、一緒に審査してもらう。

この「治験薬概要書」には、その治験に使う治験薬の全てが記載されている。

開発・発見の経緯から、化学構造式、物性、動物を使った毒性実験、薬理試験などなどの結果や、もし既にヒトを使った治験が海外などで行われている場合は、その結果も書く。

さらに、もし間違って過剰使用した場合の処置方法も書かれている。

上に書いたとおり、幅広い領域のことが書かれているため、それぞれの専門部署の人たちが、自分の担当する個所を作成し、使っているデータや記述に問題ないことを承認し、それらを一冊にまとめる。

当然、それぞれの作った部署が責任をもって内容をチェックしているはずなのに、動物実験のデータとヒトでのデータのグラフが間違えていることが社内IRBで見つかってしまった!!

しかも社外からの委員の先生に。

これから2日間不眠不休で改訂と再チェックをして、なんとか来週の月曜日に治験届を当局に出したい。

ぐったりして、社内IRB会議室を出てくるデーモン山田、ヘンリー川崎、かずさ2号、さら。。。

これからすぐに作業分担を決め、再度内容をチェックし、他にもミスがないかをまず探す。

その後、訂正個所をワードとエクセルで作り直し、再度、チェックをかける。

土曜日も出てくれば、なんとか月曜日には治験届を予定通り、提出できそうだ。

体力勝負の入力はヘンリーとかずさ2号が担当し、さらとみっちーKがミスが無いかをチェックし、最後にデーモン部長がチェックする。 

さ〜〜〜〜フリスクでも買いにゆくか? 

夜はまだまだこれからだ・・・・


*****************

不眠不休の2日間で、ようやく「治験薬概要書」を改訂し、その改訂項目を社内IRBの持ち回り審査で承認をもらった。

これで「治験届」を提出できる。

しかし、何故、ヒトと動物の実験データグラフが間違えていたんだ?

どうして、誰も気づかないで社内IRBまで来てしまったんだろう?

腑に落ちないヘンリー川崎は、キャサリン立川とみっちーKに調査を頼んだ。

すると、とんでもないことが分かった。

ホーライ製薬では「治験薬概要書」の案ができたら、それぞれの部署のQC担当者が、その内容をチェックすることになっていた。

ところが、ある部署のQCチェック記録をみっちーKが確認したところ、「データとグラフの整合性」というチェック項目には、しっかり「NG」(No Good)にチェックが入っていた。

おいおい!なんで「NG」にチェックが入っているのに、その対応がなされていないんだ?

みっちーKがQC担当者にその理由を聞いたところ「私は、ただチェックをしてくれと言われたので、チェックをしただけです。その先のことは知りません。」という返事。

目の前がクラクラするみっちーK。

前途多難な「ホーライ製薬」だと、ため息をつく彼女に明日はあるか?









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2012年03月17日

エピソード1「プロトコルを作る」

男性機能不全の治験を担当する新人モニターのキャサリン立川を連れて、ヘンリー川崎は県立モンブラン病院へSDVに行った。

しかし、キャサリン立川はカルテを見るのも初めて、SDVも初めて。

結局、ヘンリー川崎がカルテを読み取り、そのデータがCRF(症例報告書)に記載されているかをキャサリン立川が確認することにした。

その結果、治験分担医師のグラッチェ村田がプロトコルを逸脱(高血圧の患者は、この治験に参加させてはいけないとプロトコルに書かれているのに、参加させていた)していたため、この患者さんは、これ以上治験を続けないようにグラッチェ村田医師に話す。

激怒した村田医師をなだめ、もう一度プロトコルを説明し、2例目の患者さんの登録を依頼。

ゲンナリするキャサリン立川に、ヘンリー川崎は鯛焼きをおごり、慰める。

デーモン部長に、どう報告するか、胃の痛いヘンリー川崎であった。。。


ヘンリー川崎は、デーモン山田部長に、昨日のことの顛末を話す。

しっかり、怒られる。。。

しかし、昨日入社した体力と笑顔が魅力的なみっちーKに慰められ、新しいプロトコル原案の最後の仕上げに向かう。

ついでに、みっちーKの今後の勉強のために、そのプロトコル原案のレビューを頼む。

自分で作成したプロトコルのチェックは、やっぱり第三者に見直してもらうのが一番!

読みにくい点、分かりづらいところ、誤字脱字、GCP上の項目など等・・・・・・。

案の定、みっちーKから赤いペンで真っ赤になったプロトコル案が戻ってきた。

やれやれ。ふ〜〜。


これから最終原稿にまとめ、PDF化し、最近会社に導入されたドキュメント管理のツールへ保存。

あとは、他のレビューアーが各自のPCからコメントを書いてくれるのを待つ。

電子版回覧版だ。 

これが、また意外と便利なんだよね。

お宅でも導入している?


ヘンリー川崎は、できあがったプロトコルを社内IRBで審査してもらうために手続きを開始した。

この社内IRBというのも変なシステムで、海外の製薬会社の人には説明しにくい代物だ。

ヘンリー川崎は、かつて、フランスの製薬会社の人に「社内IRBで了承されれば、病院のIRB(治験審査委員会)にかけなくていいのか?」と聞かれたことがある。

そんなことはない。

だったら、そんな手続きと時間ばかりかかる代物はやめたら? と、そのフランス人に言われたが、そうもいかない日本の「慣習」だということで、ヘンリー川崎は答えた。

GCPでは単に「依頼する治験の科学的、倫理的妥当性を治験依頼者(製薬会社)は検討すること」としか書いてないのだから、このあたりのことを理解できないフランス人はますます「東洋人」を不可解な人種だと(肩をすくめて)思ったようだ。

そんな事情もしらないキャサリン立川に昔話をするおやじ。それがヘンリー川崎だった。

みっちーKは、知っているだろうか?


社内IRBで新しいプロトコルを審査してもらうことになった。ヘンリー川崎。

今日は、部長のデーモン山田も出席。・・・と言っても、困った時に救いの眼差しを向けると決まって、窓の外を見て知らん振りする油断ならない部長なのだ。

こんな時に頼りになるのはやっぱり部下だとばかりに入社したばかりのあずさ2号(彼にはDMの記述個所について)とさら(彼女には治験全体の計画について)を社内IRBに参加させた。

社内IRBで困るのは中途半端な知識しかない部長たちだった。

討論のポイントがどんどん、本質からずれていく。

あずさ2号とさらが必死になって論点をプロトコルに持っていこうとするが、おやじだちは重箱の隅をつつくばかり。

GCPの知識が無いのだからしょうがない。。。

さすがに困ったデーモン部長が、軌道修正を。

たまにはやるじゃん!と思うヘンリー川崎。

しかし、この後、とんでもない悲劇が起こることを、ヘンリー川崎は知る由もなかった。











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2011年10月21日

交渉にあたっての障害と解決方法(その4)

ムーミン「お互いが納得のいくような解決策を見つけようと私たちが努力しても、相手がまったく興味を示さないこともあるね。」

ゆうこ「相手にとってもプラスだということが理解してもらえない場合もあるし、理解したとしても、メンツが潰れることを嫌って譲歩を拒んでくることもある。」

ムーミン「単純に私のアイデアだからというだけで、断られるケースだってありうる。」

ゆうこ「ここで、無理やり相手に条件をのませようとすれば、相手はますます反発するだけだ。」

ムーミン「中国のある思想家は、相手の主張と妥協点との間に『金の橋』を架けなさいと言っている。」

ゆうこ「この場合、私たちは、自他の利益のギャップを埋め、相手の顔を立て、合意条件が相手の目に成功と映るように話を進めていけばいい。」

ムーミン「難しいけれどね。」

ゆうこ「ここまでやってきても、力で要求を押し通すことができるという自信から、相手が頑なに協力に応じてくれない場合はどうすればいいか。」

ムーミン「うん。そういうこともある。」

ゆうこ「もはや堪忍袋の緒が切れる寸前になっているかもしれないけれど、ここで怒りを爆発させてしまえば、激論の応酬となるだけで、不毛の結果に終わる。」

ムーミン「それだけは、本当に避けたい。」

ゆうこ「ここでは、相手とやり合うことを避け、怒りのエネルギーを相手の説得に振り向けよう。相手を交渉のテーブルに引き戻すことに精力を傾け、交渉をまとめるためには、相互協力が不可欠だ。」

ムーミン「うん。一方的に押し切るだけでは合意は実らないということを相手に悟らせる必要があるね。」

ゆうこ「最後の最後まで、協調の重要性を相手に悟らせる。これに尽きる。」





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2011年10月20日

交渉にあたっての障害と解決方法(その3)

ムーミン「交渉において、要求へのこだわり、という問題点もある。」

ゆうこ「うん。共同で問題を解決するためには、問題をしっかり見つめて、ともにそれに取り組んでいこうという姿勢が不可欠だ。」

ムーミン「でも、その際に、自分の設定したラインにこだわろうとする相手の態度が障害となってくる。」

ゆうこ「それもある。」

ムーミン「自分の条件を通すことしか頭になく、こちらの譲歩ばかり求めてくる相手はどうにも厄介だ。」

ゆうこ「そういうタイプの人は、他に交渉の仕方を知らないことが多いので、最初に覚えたオーソドックスな交渉戦術にいつまでもこだわるね。」

ムーミン「ここで突っぱねてしまうのは簡単だけど、そうすれば相手は意地でも要求を押し通してくるだろう。」

ゆうこ「こんな場合はどうしたらいい?」

ムーミン「こんな場合は、逆に相手に調子を合わせたほうがいい。相手の言い分をひとまず受け止めておいて、一緒にそれを解決していくという方向にうまく誘導するのだ。」

ゆうこ「たとえば?」

ムーミン「たとえば、こんなふうに言えばいい。『なるほど。その点にこだわられる理由をもう少し詳しく教えていただけませんか?』という具合に。」

ゆうこ「うんうん。相手の視点に立って、その真意に迫り、問題を親身になって考えているという印象を相手に与えるということね。」

ムーミン「つまり、相手の要求をお互いに共通の問題の一部に組み入れてしまうことだ。」





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2011年10月19日

交渉にあたっての障害と解決方法(その2)

ムーミン「交渉にあたっての第二の障害は、相手側のネガティブな感情だね。」

ゆうこ「相手の攻撃的な態度の裏には、怒りや敵意が隠れている場合があるし、かたくなな態度の裏には、恐れや不信感が潜んでいることもある。」

ムーミン「なかにはさ、自分の言い分だけが正しいと思い込んで、こちらの話を聞こうとしない人もいるよね。」

ゆうこ「食うか食われるか、という気持ちで交渉に臨んでいる場合は、なりふりかまわず汚い戦術をとってくることも考えられる。」

ムーミン「そんな時、どうしたらいい?」

ゆうこ「交渉では、相手の態度に思わずつられてしまいそうになるけれど、ここでぐっとこらえなければいけない。」

ムーミン「うんうん。第一のステップで平常心を保つことに成功したら、次は、相手にも冷静になってもらう必要があるわね。」

ゆうこ「問題解決のための協力を取り付けたいのであれば、まず、協調の妨げとなるような相手の感情を排除しなくてはならない。」

ムーミン「そのためには何をしたらいいのかしら?」

ゆうこ「そのために何より大切なことは、相手の予想どおりの反応を示さないことだ。こちらが反論してくるだろうと向こうが考えているときは、聞き役に回って相手の話に耳を傾ける。」

ムーミン「なるほど。相手の言い分や気持ちに同情し、おっしゃるとおりです、と、相手に理解を示せばいいのね。」

ゆうこ「同じ視点から問題に取り組むためには、こちらから相手に接近しなくてはならないからさ。」




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