研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
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http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf
平成26年8月26日
文部科学大臣決定
研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。
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第2節 不正行為の事前防止のための取組
1 不正行為を抑止する環境整備
(1)研究倫理教育の実施による研究者倫理の向上
不正行為を事前に防止し、公正な研究活動を推進するためには、研究機関において、研究者等に求められる倫理規範を修得等させるための教育(以下「研究倫理教育」という。)を確実に実施することなどにより、研究者倫理を向上させることがまず重要である。
研究倫理教育の実施に当たっては、研究者の基本的責任、研究活動に対する姿勢などの研究者の行動規範のみならず、研究分野の特性に応じ、例えば、研究データとなる実験・観察ノート等の記録媒体の作成(作成方法等を含む。)・保管や実験試料・試薬の保存、論文作成の際の各研究者間における役割分担・責任関係の明確化など、研究活動に関して守るべき作法についての知識や技術を研究者等に修得・習熟させることが必要である。
研究倫理教育の実施に当たっては、各研究機関では、それぞれ所属する研究者に加え、将来研究者を目指す人材や研究支援人材など、広く研究活動に関わる者を対象に実施する必要がある。
例えば、諸外国や民間企業からの研究者や留学生などが研究機関において一時的に共同研究を行う場合であっても、当該研究機関において研究倫理教育を受講できるよう配慮する必要がある。
さらに、近年、産学官連携の深化に伴い、学生等が共同研究や技術移転活動に参画する機会も増えてきていることから、大学の教職員や研究者のみならず、研究活動に関わる学生等が、実際に起こり得る課題に対応できるような判断力を養うために、利益相反の考え方や守秘義務についても知識として修得することが重要である。
このため、研究機関においては、「研究倫理教育責任者」の設置※ 5などの必要な体制整備を図り、所属する研究者、研究支援人材など、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施することにより、研究者等に研究者倫理に関する知識を定着、更新させることが求められる。
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※ 5「研究倫理教育責任者」の設置については「第3節 2 研究・配分機関における規程・体制の整備及び公表」を参照のこと。
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このような自律性を高める取組は、学生や若手研究者の研究活動を指導する立場の研究者が自ら積極的に取り組むべきである。
研究機関全体として、研究倫理教育を徹底し研究者としての規範意識を向上していくため、このような指導的立場の研究者に対しても、一定期間ごとに研究倫理教育に関するプログラムを履修させることが適切である。
特に、大学においては、研究者のみならず、学生の研究者倫理に関する規範意識を徹底していくため、各大学の教育研究上の目的及び専攻分野の特性に応じて、学生に対する研究倫理教育の実施を推進していくことが求められる。
具体的には、大学院生に対しては、専攻分野の特性に応じて、研究者倫理に関する知識及び技術を身に付けられるよう、教育課程内外を問わず、適切な機会を設けていくことが求められる。
また、学部段階からも、専攻分野の特性に応じて、学生が研究者倫理に関する基礎的素養を修得できるよう、研究倫理教育を受けることができるように配慮することが求められる。
配分機関においては、所管する競争的資金等の配分により行われる研究活動に参画する全ての研究者に研究倫理教育に関するプログラムを履修させ、例えば履修証明などを提出させることで研究倫理教育の受講を確実に確認していくこと、研究倫理教育責任者の知識・能力の向上のための支援その他の研究倫理教育の普及・定着や高度化に関する取組が求められる。
<<研究機関が実施する事項>>
○「研究倫理教育責任者」の設置などの必要な体制整備を図り、広く研究活動に関わる者を対象に定期的に研究倫理教育を実施すること
<<大学が実施する事項>>
○学生の研究者倫理に関する規範意識を徹底していくため、各大学の教育研究上の目的及び専攻分野の特性に応じて、学生に対する研究倫理教育の実施を推進すること
<<配分機関が実施する事項>>
○所管する競争的資金等の配分により行われる研究活動に参画する全ての研究者に研究倫理教育に関するプログラムを履修させ、研究倫理教育責任者の知識・能力の向上のための支援その他の研究倫理教育の普及・定着や高度化に関する取組を実施すること
(2)研究機関における一定期間の研究データの保存・開示
「第1節 2 研究成果の発表」のとおり、研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。
したがって、故意による研究データの破棄や不適切な管理による紛失は、責任ある研究行為とは言えず、決して許されない。
研究データを一定期間保存し、適切に管理、開示することにより、研究成果の第三者による検証可能性を確保することは、不正行為の抑止や、研究者が万一不正行為の疑いを受けた場合にその自己防衛に資することのみならず、研究成果を広く科学コミュニティの間で共有する上でも有益である。
このことから、研究機関において、研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義務付ける旨の規程を設け、その適切かつ実効的な運用を行うことが必要である。
なお、保存又は開示するべき研究データの具体的な内容やその期間、方法、開示する相手先については、データの性質や研究分野の特性等を踏まえることが適切である。
<<研究機関が実施する事項>>
○研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義務付ける規程を整備し、その適切かつ実効的な運用を行うこと
2 不正事案の一覧化公開
「第3節 4 特定不正行為の告発に係る事案の調査」のとおり、特定不正行為(次節で規定する「特定不正行為」をいう。
以下「2 不正事案の一覧化公開」において同じ。)が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果が公表されることになる。
文部科学省では、特定不正行為が行われたと確認された事案について、その概要及び研究・配分機関における対応などを一覧化して公開する。
これにより、閲覧した者が不正行為の抑止や不正行為が発覚した場合の対応にいかすことが期待できる。
<<文部科学省が実施する事項>>
○特定不正行為が行われたと確認された事案について、その概要及び研究・配分機関における対応などを一覧化して公開すること