2014年09月05日

薬物乱用に関する非臨床試験、その他の毒性試験、配合剤のための非臨床試験

さて、今週のテーマです。
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「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
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http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

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15. 薬物乱用に関する非臨床試験

中枢神経系に対し活性がある薬物に関しては、適応症によらず、薬物乱用性の評価の必要性について検討されるべきである(訳注:ここで言う乱用性とは、中枢神経系に対し活性がある薬物の使用に伴う依存性に係る乱用を意味する)。

非臨床試験は、乱用の可能性に関する臨床評価デザイン、規制当局による薬物分類とリスト作成、製品情報に役立つものでなければならない。

薬物乱用に関するデータパッケージをデザインする上で、各極の薬物乱用に関する非臨床ガイダンスが参考となる。

薬物開発の初期段階で得られる非臨床データは、乱用の可能性の初期指標を同定する上で有用である。



これらの初期指標には作用持続時間を明らかにするための薬物動態/薬力学的プロファイル、既知の乱用薬物との化学構造の類似性、受容体結合プロファイル、インビボ非臨床試験での行動/症状観察所見が含まれ、通常ヒトに最初に投与する前までに入手可能である。

これらの初期指標から乱用の可能性が認められない場合には、乱用性に関する非臨床評価モデルを用いたそれ以上の試験は不要であろう。



一般的に、活性本体に乱用性があることを示唆する所見が得られた場合や、活性本体が中枢神経系に対する新規の作用機序を持つ場合には、大規模な臨床試験(例えば、第V相試験)の実施のために、さらなる非臨床試験が推奨される。

げっ歯類での薬物の代謝物プロファイル及び薬物活性の標的がヒトと一致している場合には、乱用性に関する非臨床評価はげっ歯類を用いて行うべきである。

ヒト以外の霊長類を使用するケースは、霊長類がヒトでの乱用性を予測し得ると考える明確な根拠があり、しかも、げっ歯類のモデルは不適切である場合に限るべきである。

乱用性を評価するために、薬物弁別試験、薬物自己投与試験、退薬症候に関する試験の3つの試験がよく実施される。



薬物弁別試験と薬物自己投与試験は、一般的に、独立した試験として実施すべきである。

退薬症候の評価は、反復投与毒性試験における回復群のデザインの中に組み入れることもある。

これらの乱用性に関する非臨床試験における最高用量は、予測される臨床治療用量での血漿中濃度の数倍相当量までを設定するのが妥当である。





16. その他の毒性試験

当該治験薬又は類薬について、臨床又は非臨床試験でみられた事象から、特別な安全性上の懸念が示唆される場合には、追加的な非臨床試験(例えば、有用なバイオマーカーの特定や毒性機序の理解のため)が必要となることがある。

不純物や分解物を評価するためのアプローチについてはICH Q3A及びQ3B(12、13)に示されている。

不純物あるいは分解物を評価する必要がある場合でも、それまでとは明らかに異なる不純物プロファイルを示すような変化がある場合(例えば、新規合成経路、製剤に含まれる成分との相互作用により生成された新規分解物)を除き、通常、これらの評価は第V相試験までは必ずしも必要ではない。

例外として示した上記の事例においては、第U相試験あるいはそれ以降の開発のために、適切な評価のための試験がなされるべきである。





17. 配合剤のための非臨床試験

本節では複数製剤を組合わせたパッケージあるいは複数の有効成分からなる配合製剤(配合剤)について述べる。

ここで示す原則は、配合剤以外でも、製品情報においてある特定の薬剤との併用が推奨されることがわかっており、併用に関する臨床情報がほとんどない医薬品の開発にも適用できる。


本ガイダンスが対象としている配合剤の組合わせは以下のように分けられる:(1)後期開発ステージにある被験薬の2つ以上の組合わせ(後期開発ステージとは、十分な臨床経験があるステージ(第V相臨床試験中あるいは市販後)と定義される);(2)後期開発ステージにある1つ以上の被験薬と早期開発ステージにある1つ以上の被験薬との組合わせ(早期開発ステージとは、限定された臨床経験しかないステージ(第U相あるいはそれ以前)と定義される);あるいは(3)2つ以上の早期開発ステージにある被験薬の組合わせ。

臨床での十分な併用投与経験がある後期開発ステージの2つの被験薬による配合剤のほとんどについて、臨床試験あるいは製造販売承認のための配合剤としての毒性試験は、毒性学的に大きな懸念(例えば、毒性標的器官の類似)がない限り、一般的に必要ない。

この毒性学的懸念は、安全域やヒトにおける副作用をモニタリングできるか否かよっても変わり得る。

毒性学的に重要な懸念の原因に対処するための試験が実施される場合、一般的に配合剤の臨床試験が実施される前に完了すべきである。



後期開発ステージにある2つの被験薬を含む配合剤で、臨床での併用投与の経験が十分ではないが、得られている個々の被験薬についてのデータに基づく毒性学的な懸念がない場合は、通常、小規模かつ比較的短期間の臨床試験(例えば、3ヶ月までの第U相臨床試験)を実施するためには、配合剤の非臨床試験は必要ない。

しかしながら、大規模あるいは長期間の臨床試験前や製造販売承認前には試験の実施が推奨される。


臨床試験の経験がある早期開発ステージの被験薬と後期開発ステージにある被験薬の配合剤については、毒性学的に有意な懸念がなければ、1ヶ月までのproof-of-concept (POC)臨床試験を実施するために配合剤の毒性試験は必要ない。

これら配合剤の臨床試験は、個々の被験薬について過去に実施された臨床試験期間より長くなってはならない。

より後期の開発ステージあるいはより長期間の臨床試験を実施するためには、配合剤の非臨床毒性試験を実施すべきである。



早期開発ステージの2つの被験薬を含む配合剤については、臨床試験を実施するために、配合剤の非臨床毒性試験を前もって実施すべきである。

個々の被験薬について開発のための非臨床試験が既に完了しており、配合剤の非臨床毒性試験がその臨床試験の実施のために必要な場合、毒性試験の期間は最長を90日として臨床試験期間に相当する期間とすべきである。

製造販売承認のためには、90日間の配合剤の毒性試験が必要であるが、予定されている臨床使用期間によっては、90日よりも短い毒性試験でもよい。

配合剤の特徴を明らかにするために推奨される非臨床試験のデザインは、個々の被験薬の薬理、毒性及び薬物動態学的プロファイル、適応症、対象とする患者集団及び得られている臨床データに依存する。

配合剤の非臨床試験は通常、適切な動物種1種について実施されていればよい。予期しない毒性が確認された場合には、追加試験が必要な場合がある。

個々の被験薬について開発のための非臨床試験が実施されておらず、個々の薬剤が配合剤としてのみ用いられるのであれば、非臨床毒性試験の全てを配合剤のみを用いて実施することが適切な場合がある。



遺伝毒性、安全性薬理、がん原性について、個々の成分を用いた試験が現在の標準的な試験方法で実施されている場合には、臨床試験の実施や製造販売承認のための配合剤を用いた試験の実施は必要ない。

患者集団に妊娠可能な女性が含まれており、個々の成分を用いた試験において胚/胎児発生へのリスクが示されている場合には、ヒトの発生に対する有害影響の可能性がすでに同定されていると考えられるので、配合剤を用いた試験は推奨されない。

非臨床の胚/胎児発生毒性試験においていずれの成分についてもヒトの発生へのリスクがないことが示されている場合には、個々の成分の特徴から考えて、配合剤とすることでヒトに有害影響を生じる懸念がない限り、配合剤を用いた胚/胎児発生への影響を評価する必要はない。

個々の成分について胚/胎児発生毒性試験で評価されているが、配合剤を用いた胚/胎児発生毒性試験が必要と考えられる場合には、配合剤の試験を製造販売承認申請前に実施すべきである。






19. 後注

注1:本文書中の「暴露量」とは通常、AUCの群平均値を意味する。

しかし、状況(例えば、急性の心血管系機能変化又は中枢神経系に関連した症状を引き起こすことが知られている化合物又は化合物クラス)によっては、AUC値よりもCmaxの群平均値に基づく暴露量の方が適切であろう。




注2:雌雄受胎能の評価は、2週間の反復投与毒性試験(一般的にげっ歯類)における精巣及び卵巣の標準的な組織病理学的検査を十分に実施することによって、雌雄生殖器への影響を受胎能試験と同等の感度で検出できると考えられる(3, 15, 16)。




注3:極めて有効性の高い受胎調節方法とは、単独又は組合せにより一貫して正しく使用された時、失敗する確率が低い(すなわち年1%未満)方法を指す。

被験者がホルモン剤による避妊法を用いている場合には、評価中の治験薬に関する情報、及び治験薬の避妊薬への影響に関する情報が示されるべきである。




注4:この目的に役立つ予備的な胚/胎児発生毒性試験とは、胎児の生存、体重、外形及び内臓観察を含み、1群あたり最低でも6例の母動物に器官形成期を通じて十分な用量段階で投与された試験である。

この予備的な非臨床試験は、科学的に質の高い水準で実施され、かつデータの収集記録を容易に確認できるものであるか、又はGLP条件下で実施されるべきである。




注5:妊娠する意思を最初から持っている女性の妊娠率は月経1周期あたり約17%である。

妊娠可能な女性で行われた第V相試験から見積もられた妊娠率は月経1周期あたり0.1%未満であった。

これらの試験の間、被験者には妊娠を避けるよう勧めるとともに、妊娠を予防するための方策が施された。

初期の第U相試験の調査では、妊娠率は第V相試験よりも低いことが示唆されたが、試験に組み入れられた女性の数に限りがあったため、どの程度低下したのかは推測できなかった。

上記の第V相試験の経験から、150人の妊娠可能な女性で3ヶ月間実施する第U相試験の場合、開発中の医薬品あたりの妊娠例数は0.5例よりも有意に少ないと推測される。




注6:光がん原性試験のために現在使用可能なげっ歯類のモデル(例えば、げっ歯類の無毛動物)は、医薬品開発の裏付けとして有用ではないと考えられており、一般的に推奨されない。光がん原性に対する適切な評価系が利用できるようになった場合は、光毒性評価で光がん原性リスクの可能性が示唆された化合物について、通常、その試験は販売される前までに完了しておくべきであり、その結果はヒトでのリスク評価に考慮されるべきである。







20. 参考文献

1. 平成12年2月22日医薬審第326号「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価」について


2. 平成10年4月21日医薬審第380号「臨床試験の一般指針について」


3. 平成9年4月14日薬審第316号「医薬品の生殖発生毒性試験に係るガイドラインの改定について」、及び平成12年12月27日医薬審第1834号「医薬品の生殖発生毒性試験についてのガイドラインの改正について」


4. 平成20年11月27日薬食審査発第1127001号「医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について」


5. 平成13年6月21日医薬審発第902号「安全性薬理試験ガイドラインについて」


6. 平成21年10月23日薬食審査発1023第4号「ヒト用医薬品の心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性に関する非臨床的評価について」


7. 平成8年7月2日薬審第443号「トキシコキネティクス(毒性試験における全身的暴露の評価)に関するガイダンスについて」


8. National Centre for the Replacement, Refinement and Reduction of Animals in Research, (May 2007) "Challenging Requirements for Acute Toxicity Studies: Workshop Report"


9. Robinson, S., Delongeas, J.L., Donald, E., Dreher, D., Festag, M., Kervyn, S., Lampo, A., Nahas, K., Nogues, V., Ockert, D., Quinn, K., Old, S., Pickersgill, N., Somers, K., Stark, C., Stei, P., Waterson, L., Chapman, K. A European pharmaceutical company initiative challenging the regulatory requirement for acute toxicity studies in pharmaceutical drug development, Regul. Toxicol. Pharmacol. 50, 345-352 (2008)


10. 平成10年7月9日医薬審第554号「遺伝毒性試験:医薬品の遺伝毒性試験の標準的組合せ」について


11. 平成9年4月14日薬審第315号「医薬品におけるがん原性試験の必要性に関するガイダンスについて」、及び平成20年11月27日薬食審査発第1127001号「医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について」


12. 平成14年12月16日医薬審発第1216001号「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改定について」、及び平成18年12月4日薬食審査発第1204001号「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改定について」の一部改定について


13. 平成15年6月24日医薬審発第0624001号「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について」、及び平成18年7月3日薬食審査発第0703004号「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について」の改定について


14. 平成18年4月18日薬食審査発第0418001号「医薬品の免疫毒性試験に関するガイドラインについて」


15. Sakai, T., Takahashi, M., Mitsumori, K., Yasuhara, K., Kawashima, K., Mayahara, H., Ohno, Y. Collaborative work to evaluate toxicity on male reproductive organs by 2-week repeated-dose toxicity studies in rats. Overview of the studies. J. Toxicol. Sci. 25, 1-21 (2000)


16. Sanbuissho, A., Yoshida, M., Hisada, S., Sagami, F., Kudo, S., Kumazawa, T., Ube, M., Komatsu, S., Ohno, Y. Collaborative work on evaluation of ovarian toxicity by repeated-dose and fertility studies in female rats. J. Toxicol. Sci. 34, SP1-SP22 (2009)


posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 非臨床試験関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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