2014年09月04日

生殖発生毒性試験、妊婦、小児における臨床試験等

さて、今週のテーマです。
     ↓
「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
     ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

■■■■■■■■■■■■


11. 生殖発生毒性試験

生殖発生毒性試験(3)は、対象となる被験者集団に応じて、適切な試験が実施されるべきである。


11.1 男性

男性は、雄受胎能試験の実施前に、第T相及び第U相試験に組み入れることができるが、それは、雄生殖器の評価が反復投与毒性試験のなかで行われるからである(注2)。

雄受胎能試験(3)は、大規模臨床試験あるいは長期投与臨床試験(例えば第V相試験)の開始前には、完了しておくべきである。



11.2 妊娠の可能性のない女性

妊娠する可能性のない女性(すなわち、永久的な避妊術を受けた者、閉経後の者)は、適切な反復投与毒性試験(雌生殖器の評価を含む)が実施されていれば、生殖発生毒性試験を実施していなくても、臨床試験に組み入れることができる。

閉経とは、別の医学的理由を伴わずに月経の無い状態が12ヶ月以上にわたる場合と定義される。





11.3 妊娠可能な女性

妊娠可能な女性の場合、有益性とリスクについての情報が得られる前に、意図せずに胚/胎児が暴露されてしまうことに対する強い懸念がある。

妊娠可能な女性を臨床試験へ組み入れるための生殖発生毒性試験の実施時期については、3極でほぼ同様の推奨がなされている。

臨床試験において妊娠可能な女性を組入れる場合、胚/胎児への意図しない暴露によるリスクを明らかにし、最小限にすることが極めて重要である。

そのための一つのアプローチは、生殖発生毒性試験の実施によって治験薬固有のリスクを明らかにし、臨床試験において妊娠可能な女性が暴露されている期間に適切な予防策を講じることである。

第2のアプローチは、治験期間中に妊娠を回避する予防措置をとり、リスクを限定することである。

妊娠を回避する予防措置としては、妊娠テスト(HCG のβ-サブユニットに基づくものなど)を行うこと、極めて有効性の高い受胎調節方法を使用すること(注3)、及び月経周期を確認した後にのみ臨床試験へ組み入れることが含まれる。

臨床試験期間中の妊娠テスト及び被験者への教育を十分に行うことによって、治験薬の暴露期間中(試験期間を超えることもある)、所定の避妊法の遵守を確実なものとすべきである。

これらのアプローチを支持するために、インフォームドコンセントは、生殖発生毒性に関連した知り得る限りの適切な情報、例えば、類似した構造や薬理作用を有する医薬品の毒性に関する総合的な評価などに基づくべきである。

適切な生殖発生毒性の情報が無い場合には、胚/胎児へのリスクが確定されていないことについて伝えるべきである。





3極とも、一定の状況下では非臨床発生毒性試験(例えば胚/胎児試験)を実施せずに初期の臨床試験に妊娠可能な女性を組み入れることができる。

許容される状況の一つは、短い(例えば2週間)臨床試験期間で、妊娠のリスクを徹底して制御できる場合である。

他の状況として、女性に特に多い疾患で、妊娠可能な女性を含めないと臨床試験の目的の達成が不可能であり、かつ妊娠を回避する十分な予防措置がとれる場合である(上記参照)。



さらに、非臨床の発生毒性試験を行うことなく妊娠可能な女性における臨床試験を実施するために考慮すべき事項として、治験薬の作用機序、薬剤のタイプ、胎児への暴露の程度、あるいは適切な動物モデルで発生毒性試験を実施することの困難さに関する知見が含まれる。

例えば、モノクローナル抗体は、ヒトにおいて器官形成期の胚/胎児への暴露が少ないことが現在の科学的知見から理解されており、発生毒性試験は第V相試験の間に実施してもよい。

最終報告書は製造販売承認申請時に提出すべきである。



一般的に、2種の動物において適切な予備的発生毒性試験データが得られており(注4)、臨床試験において妊娠を回避する予防措置がとられる場合(上記参照)は、最終的な発生毒性試験を実施する前であっても、妊娠可能な女性(最大150人)を比較的短期間(最長3ヶ月)の治験に組み入れることができる。

これはこの規模の人数と期間の管理された臨床試験においては妊娠率が非常に低いこと(注5)、及び臨床試験に妊娠可能な女性を組み入れる際に懸念される発生毒性所見のほとんどが、適切にデザインされた予備的な試験において検出可能であるということに基づいている。

臨床試験における妊娠可能な女性の数と試験期間は妊娠率を変化させる集団の特性(例えば、年齢や疾患)によって影響される。





米国では、妊娠可能な女性に妊娠を回避する予防措置がとられている臨床試験(上記参照)においては、胚/胎児発生への影響の評価は、第V相試験の前までに実施すればよい。

EU及び日本では、前段落に示した状況を除いては、妊娠可能な女性に投与される前に最終的な胚/胎児発生毒性試験を完了しておくべきである。

3極とも、雌受胎能試験の実施前に、妊娠可能な女性を第T相及び第U相の反復投与試験に組み入れることができるが、それは、雌生殖器の評価が反復投与毒性試験のなかで実施されるからである(注2)。

雌の受胎能に特に着目した非臨床試験(3)は、大規模かつ長期の臨床試験(例えば第V相試験)で妊娠可能な女性を含める前に完了しておくべきである。

3極とも、出生前及び出生後の発生への影響の評価は、製造販売承認申請時に提出すべきである。

極めて有効性の高い受胎調節方法(注3)を用いていない妊娠可能な女性や妊娠の有無が明らかでない女性を組み入れる全ての臨床試験においては、事前に、全ての雌生殖発生毒性試験(3)と標準的な組合わせの遺伝毒性試験(10)を完了しておくべきである。




11.4 妊婦

妊婦が臨床試験に組み入れられる前に、全ての雌生殖発生毒性試験(3)と標準的な組合わせの遺伝毒性試験(10)を実施しておくべきである。さらに、事前に実施されたヒト暴露試験における安全性データを評価しておかなければならない。





12. 小児における臨床試験

小児患者を臨床試験に組み入れる場合には、通常、先だって実施された成人における臨床使用経験での安全性データが最も有用な情報であり、一般的に小児での臨床試験の前に入手しておくべきである。

成人データの必要性及び範囲は個別の状況に応じて決定される。

広範囲にわたる成人データが小児に投与する前に得られない場合もあろう(例えば小児特異的な適応疾患)。



小児での臨床試験の開始前には、成熟動物を用いた適切な期間の反復投与毒性試験(表1参照)、安全性薬理コアバッテリー試験、標準的な組合わせの遺伝毒性試験の成績を入手しておくべきである。

臨床試験に組み入れる小児患者集団の年齢と性別に対応した生殖発生毒性試験も、直接的な毒性あるいは成長へのリスクについての情報を得るために重要である(例えば、受胎能試験、出生前及び出生後の発生への影響の評価)。

胚/胎児発生毒性試験は男児あるいは思春期前の女児での臨床試験を実施するために必須ではない。

同じ薬理学的分類に属する他の薬物のデータを含めて、既存の動物データ及びヒトの安全性データが小児の臨床試験を実施するのに十分でないと判断された場合にのみ、幼若動物を用いた試験の実施を考慮すべきである。

幼若動物での毒性試験が必要な場合は、通常、適切な1種の動物種で十分であると考えられ、可能であればげっ歯類を用いることが望ましい。

科学的に正当性を示せるのであれば、非げっ歯類を用いた試験が適切な場合もある。




一般的に、小児集団での短期間の薬物動態試験(例えば、1から3回投与)を実施するためには、幼若動物による毒性試験は重要でないと考えられる。

治療上の適応、小児集団の年齢、成熟動物及びヒトへの暴露より得られた安全性データに基づいて、有効性及び安全性評価のための短期間の反復投与による臨床試験を開始する前に、幼若動物を用いた試験成績が妥当かどうかを考慮すべきである。

被験者の年齢と臨床試験の期間の関係(すなわち、被験者が薬物に暴露される期間中に、発育上の懸念すべき時期が含まれるか否か)は考慮すべき最も重要な事項の一つである。

この評価により、幼若動物による試験の必要性と、実施するのであれば、臨床試験に応じて毒性試験の実施時期が決定される。

長期間の小児の臨床試験のために、幼若動物を用いた毒性の評価が必要な場合には、それらの非臨床試験は長期間の小児の臨床試験を開始する前に完了している必要がある。

小児が主たる対象患者群であり、実施済みの非臨床試験で標的臓器(毒性学的あるいは薬理学的な)の発育に対する懸念が示される場合がある。

このような事例の中には、幼若動物を用いた長期の毒性試験の実施が適切な場合もある。




発育に対する懸念を検討するには、適切な動物(種及び週齢)を用い、妥当な評価項目が設定された慢性毒性試験(例えば、イヌの12ヶ月投与試験あるいはげっ歯類の6ヶ月投与試験)が有用である。

12ヶ月投与試験はイヌにおいて全ての発育期間をカバーすることが可能である。

どちらの動物種においても、場合によっては、対応する通常の慢性毒性試験とそれとは別に実施される幼若動物の試験とをこのデザイン(訳注:通常の慢性毒性試験と幼若動物毒性試験を兼ねる)に置き換えることが可能であろう。



がん原性試験の必要性は長期間の小児臨床試験を開始する前に判断しなければならない。

しかし、懸念すべき重大な事由(例えば、複数の試験で遺伝毒性が明らかな場合や、想定される機序や一般毒性試験の所見から、発がんに繋がるリスクが懸念される場合)がない限り、がん原性試験は小児の臨床試験を実施するためには必要ない。





13. 免疫毒性

ICH S8ガイダンスに示すように(14)、全ての新規の医薬品については、標準的な毒性試験や、その試験で認められた免疫に関連する変化の重要性を踏まえて追加実施される免疫毒性試験によって、免疫毒性を引き起こす可能性を評価しなければならない。

追加の免疫毒性試験が必要とされた場合、これらの試験は大規模な臨床試験(例えば第V相試験)の投与前に完了しておくべきである。




14. 光安全性試験

ヒトへの暴露と関連する光安全性試験の妥当性及び試験実施のタイミングは、以下の項目を考慮して決定すべきである。

1)化合物分子の光化学的性質(例えば、光吸収性と光安定性)、2)化学的に関連する化合物の光毒性に関する情報、3)組織分布、4)光毒性を示唆する臨床又は非臨床所見。

薬物の光化学的特徴と薬理学/化学的分類に基づいて、光毒性の可能性に関する初期評価を行なうべきである。

得られている全てのデータと実施しようとする治験計画から、ヒトでの光毒性のリスクが強く懸念される場合には、外来患者を用いた臨床試験では適切な保護対策をとるべきである。

これに加えて、ヒトでのリスク及び追加試験の必要性に関するさらなる情報を得るために、引き続き、非臨床での皮膚や眼における薬物分布の検討を実施すべきである。

そして、光毒性に関する実験的評価(インビトロ又はインビボの非臨床試験あるいは臨床試験)は、それが適切であると考えられる場合には、大規模臨床試験(第V相試験)の開始前には実施すべきである。

上記の段階的アプローチの代わりに、非臨床又は臨床試験において光毒性を直接評価することも可能である。

この試験の結果が陰性ならば、開発早期における眼/皮膚への分布の評価や臨床における保護対策は必要ない。

光毒性評価によって潜在的な光がん原性のリスクが示唆された場合、患者におけるリスクは、臨床試験のためのインフォームドコンセントや販売用の製品情報に警告として記載するなどの保護対策によって、通常、適切に管理することができる(注6)。



posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 非臨床試験関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック