2014年09月03日

早期探索的臨床試験、マイクロドーズ臨床試験、局所刺激性試験等

さて、今週のテーマです。
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「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
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http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

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7. 早期探索的臨床試験

ヒトに薬物を投与したときのデータをより早く入手することにより、ヒトにおける生理学/薬理学に関するより深い理解や、候補薬物の特性及び疾病に対する適切な治療標的についての知見が得られる場合がある。

合理的な早期の探索的アプローチにより、この目的は達成できる。

このガイダンスが目的とする早期探索的臨床試験は、第T相試験の初期に実施されることを意図しており、限定的なヒトへの暴露で、治療を目的とせず、かつヒトにおける忍容性を求めるものではない。

早期探索的臨床試験は、例えば、薬物動態や薬力学に関する様々なパラメータを調べるために、また、PETリガンドの受容体への結合や置換、その他の診断的手法などのバイオマーカーなどを調べるために利用できる。

これらの試験は、選ばれた集団からの患者、もしくは健常人を被験者として組み入れて実施される。

このような場合に臨床試験実施のために必要とされる非臨床試験のデータの量及び種類は、最高臨床用量や投与期間の観点からみた、ヒトで計画されている暴露の程度によって異なる。

5つの異なる探索的臨床試験の例を以下にまとめ、それぞれのアプローチで推奨される非臨床試験プログラムを含めて表3に詳細を示した。

一方、バイオテクノロジー応用医薬品の早期探索的臨床試験の戦略を含め、本ガイダンスに記載されていない他のアプローチもまた利用可能である。

これら別のアプローチは、しかるべき規制当局と討議、同意されるべきである。

これらアプローチを用いることにより、全体として新薬開発における動物の使用を削減できる。



5つのアプローチにおいて推奨される初回投与量及び最高用量を表3に示す。

いずれの場合においても、表3及び第2節に書かれているようなインビボないしインビトロモデルを利用した薬力学及び薬理学的特性の解析が重要であり、ヒトにおける用量設定のために利用されるべきである。






7.1 マイクロドーズ臨床試験

マイクロドーズ試験として、2つの異なったアプローチが以下に記載されている。表3に詳細を示す。

第1のアプローチは、総投与量を100μg以下とし、いずれの被験者にも単回投与あるいは分割して投与するものである。

これは、PET試験において、標的受容体への結合や組織分布を検討することに役立つ。

もう一つの利用法として、同位体標識薬物を使用した、あるいはこれを使用しない薬物動態の評価に用いることがある。



第2のアプローチは、1回あたりの最高用量が100μgで投与回数が5回以下(被験者あたりの総投与量は500μg以下)の試験である。

このアプローチでは、前述した第1のマイクロドーズ試験と同様な目的に利用できるが、比較的活性の低いPETリガンドを用いる場合に有用である。

臨床適用経路が経口投与で、既に経口投与による非臨床毒性試験成績が得られている薬物について、静脈内投与でマイクロドーズ試験を実施する状況があり得る。

この場合、表1あるいは表3のアプローチ3に記載されている既に実施済みの経口投与毒性試験において暴露レベルで適切な安全域が確認されていれば、静脈内投与によるマイクロドーズ試験の実施は、実施済みの経口投与毒性試験によって認められる。

被験薬物の局所刺激性の検討は、投与量が微量(最高用量100μg)であることから、推奨されない。

新規の静脈内投与用の媒体が使用される場合は、その媒体の局所刺激性を評価すべきである。





7.2 準薬効用量又は推定薬効域での単回投与試験

第3のアプローチは、典型的には、臨床開始用量として薬効用量以下から始めて、薬理作用発現域あるいは推定薬効域までの増量が可能な単回投与臨床試験である(表3参照)。

容認され得る最高用量は、非臨床試験の結果から算出されなければならないが、臨床試験中に得られた新たな臨床情報に基づき制限される場合がある。

このアプローチでは、例えば、薬力学的に活性を示すとされる用量又はその付近の用量において、薬物動態指標の評価を非標識化合物を用いて行うことが可能となる。



他の例としては、単回投与後における標的分子への結合あるいは薬理作用の評価がある。

このアプローチは、臨床最大耐量の検討を意図するものではない(例外は表1脚注aを参照)。







7.3 反復投与臨床試験

反復投与の臨床試験を支持する2つの異なる非臨床試験アプローチ(アプローチ4及び5)を表3に示す。

これらのアプローチは、薬効用量域におけるヒトでの薬物動態及び薬力学の測定のために、最長14日間までの投与を支持できるが、臨床最大耐量の検討を意図するものではない。

アプローチ4には、最高臨床用量での推定AUCの数倍の暴露が得られるように用量を設定した、げっ歯類及び非げっ歯類による2週間反復投与毒性試験が必要である。

アプローチ5には、げっ歯類における2週間反復投与毒性試験と、げっ歯類での無毒性量が非げっ歯類においても毒性発現用量でないことを検討するための、非げっ歯類を用いた確認試験が必要である。

げっ歯類の無毒性量での暴露量において、非げっ歯類で毒性所見が観察された場合、非げっ歯類での追加の非臨床試験(通常、標準的な毒性試験(第5節参照))が実施されるまでヒトへの投与は延期すべきである。







8. 局所刺激性試験

局所刺激性は、一般毒性試験の一部として、予定臨床適用経路により評価することが望ましく、独立した試験での評価は推奨されない。

臨床適用経路以外の経路による限定的なヒトでの投与(例えば、経口医薬品の絶対的バイオアベイラビリティの測定のための単回静脈内投与)を可能とするには、単一の動物種を用いた単回投与による局所刺激性試験が適切であると考えられる。

既存の毒性試験における全身暴露量(AUC及びCmax)が、臨床適用経路以外の投与によるものを超えているのであれば、局所刺激性試験における評価項目は、一般状態ならびに適用部位の肉眼及び顕微鏡による観察に限定してよい。

局所刺激性試験に使用される製剤は、臨床製剤と同一である必要はないが、類似したものとすべきである。

経口投与の毒性試験によって実施が支持される静脈内投与マイクロドーズ試験においては(第7節参照)、被験物質の局所刺激性を評価する必要はない。

ただし、新規の媒体を使用する場合には、媒体の局所刺激性を評価すべきである。

非経口医薬品では、多くの患者が暴露される(例えば、第V相試験)より前に、誤って適用され得る部位の局所刺激性の評価を必要に応じて行うべきである。

このような試験の要件は、地域により異なっている。

米国においてはこれらの試験は通常推奨されていない(例外として、硬膜外投与薬に対する髄腔内投与試験)。

日本及びEUにおいては静脈内投与薬に対して静脈周囲への単回投与試験が推奨されている。

その他の非経口投与薬については個別の状況に応じて判断するべきである。








9. 遺伝毒性試験

臨床試験が単回投与に限られる場合に必要な遺伝毒性試験は、通常、遺伝子突然変異に関する試験のみでよいと考えられる。

臨床試験が反復投与の場合には、ほ乳類の試験系を用いた染色体損傷検出のための追加評価が実施されるべきである(10)。

標準的な組合わせの遺伝毒性試験は第U相試験の開始前に完了しているべきである(10)。

陽性結果が得られた場合は、それらの成績を評価した上で、必要であれば追加試験を実施し(10)、臨床試験でのさらなる投与が適切であるかどうかを判断しなければならない。

早期探索的臨床試験に必要な遺伝毒性試験については第7節を参照すること。






10. がん原性試験

がん原性試験が必要となる条件については、ICH S1A(11)を参照のこと。

臨床適応を考慮してがん原性試験が推奨される場合は、それらは製造販売承認申請までに完了すべきである。

がん原性のリスクが懸念され、その明確な理由がある場合に限り、臨床試験の実施前にがん原性試験成績を提出すべきである。

単に臨床試験の投与期間が長いというだけでは、懸念されるリスクの明確な理由とはならない。

がん原性試験が推奨される場合であっても、重篤な疾患の治療のために開発された医薬品については、成人患者/小児患者用を問わず、製造販売承認後にがん原性試験の結論を出すことができる。


posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 非臨床試験関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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