鑑別診断として・変形性頚椎症・HTLV-I関連脊髄症 (HTLV-1 associated myeloathy; HAM)・脳・脊髄の腫瘍・脊髄動静脈奇形・ALS以外の運動ニューロン疾患などを除外せねばならない。
ALSと診断された後に他の治療可能な疾患と判明した例が少なくない。
このような例では治るはずだった疾患を見過ごすことになるから、他の疾患を除外することは非常に重要である。
特に上位ニューロン障害と下位ニューロン障害両方をきたす疾患として、孤発性ALS、家族性ALS以外にライム病やガングリオシドーシスであるHexosamnidase欠損症があるほか、筋力低下や筋萎縮が左右非対称に緩徐に進行する疾患として多巣性運動ニューロパチー、封入体筋炎、脊髄進行性筋萎縮症、post polio myelitisなどがあげられる。
●ALSの身体所見
線維束性収縮がある。
特に上腕と前胸部の筋肉に認めることが多い。
ただし、線維束性収縮が単独の症状として現れることはなく、必ず他の所見を伴う。
反射の現れかたによって上位ニューロンの障害か下位ニューロンの障害かを見分けられる。
初期は反射が亢進し、筋萎縮が進むと低下するという例が多い。
特にバビンスキー反射の出現は上位ニューロンの障害を強く示唆する。
徒手筋力検査で筋力の低下を見る。
筋萎縮がみられない、もしくは廃用性萎縮がある場合は上位ニューロンの障害が示唆される。
早くから高度な筋萎縮がある場合は下位ニューロンの障害が示唆される。
陰性徴候がない。
感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害・褥瘡の4つはALSの4大陰性徴候と呼ばれ、病初期の診断基準として重要である。
ただし、人工呼吸器による延命でさらに病態が進むと、眼球運動障害などが現れることもある。
●神経伝導検査
伝導の速度と活動電位を調べる。
運動線維のみで活動電位が低下し、伝導速度は運動線維・感覚線維ともに正常である。
ただし頸椎症を合併して非典型的所見を示すことも多い。
●筋電図検査
神経の障害が疑わしい部位で、電位の振幅が大きくなり、多相性電位が現れる。
●血液検査
HAMなら抗HTLV-I抗体が出る。
●ALSの治療
根治を期待できる治療法は現在ない。
グルタミン酸放出抑制剤のリルゾール(商品名リルテック)は進行を遅らせることが確かめられており、健康保険の適用になる。
他に、メチルコバラミン(ビタミンB12誘導体)超大量療法も試みられることがある。
対症療法として、呼吸筋麻痺が起こると人工呼吸器を装着する。
嚥下障害があると、栄養管理のため胃瘻や中心静脈栄養を使う。
その他、QOL向上をはかって、流涎や強制失笑に対する薬物療法を行うこともある。
●iPS細胞の援用による治療の可能性
京都大学iPS細胞研究所の井上治久准教授はALS患者から採取した皮膚細胞からiPS細胞を作り運動神経の細胞に変化させたところ変性TARDBP-43が蓄積し神経突起の成長を抑制していることを突き止めた。これに対しanacardic acidを投与すると変性TARDBP-43が減少し、突起の成長が促されることを確認した。
これは将来的なALS治療の可能性を示唆するものである。
●意思の疎通
人工呼吸器装着に伴い、会話ができなくなると、眼球運動を介助者が読み取り、文字盤を利用するなどしてコミュニケーションを行う。
また、本人の意思による筋の収縮、あるいは脳波などが検知できる場合は、重度障害者用意思伝達装置の使用が検討される。
導入効果は早期であるほど高い。
発話障害が進行する前に声を録り貯めておき、のちのちの音声コミュニケーションで生かす取り組みがある。
●ALSに罹患した著名人
毛沢東(1893年 - 1976年) - 初代中華人民共和国主席(*争議あり)
ルー・ゲーリッグ(1903年 - 1941年) - 野球選手
篠沢秀夫(1933年 - ) - フランス文学者
徳田虎雄(1938年 - ) - 医師、衆議院議員
スティーヴン・ホーキング(1942年 - ) - 理論物理学者
日本ALS協会
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http://www.alsjapan.org/jp/index.html