2014年07月26日

国が考えている「医療分野研究開発推進計画(案)」(日本版NIH)等

今週は当初の予定から急きょ、変更して国が考えている下記の2つを見ます。


●医療分野研究開発推進計画(案)
    ↓
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai2/siryou2.pdf


●健康・医療戦略について(閣議決定)
    ↓
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/ketteisiryou/dai2/siryou1.pdf


所謂「日本版NIH」の続きです。(所々、割愛していますので、是非、ご自分でも一読ください。)


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今日はまず「医療分野研究開発推進計画(案)」を見ていきます。



2.我が国の課題

基礎研究の成果が創薬や医療機器等の実用的診断・治療技術に必ずしもつながっていないことは、以前より再三にわたり指摘されてきた。

その要因は、「基礎研究」、「臨床研究及び治験」、「産業界」及び「国等の研究支援体制」それぞれの段階に見出すことができる。



(1)基礎研究の抱える課題

近年、中国や韓国等の新興国においても基礎研究への取組が強化され、日米欧を急速に追い上げてきているなど、基礎生命科学や臨床医学分野での我が国の論文の国際競争力は相対的に低下傾向にあるものの、我が国の基礎研究力は国際的にも依然高い競争力を保っている。

従来は基礎研究に携わる研究者自身の開発への興味や、製薬会社における研究開発過程で見出された知見に基づいて、製品開発に至ったケースが多く、製品開発の可否は個人の見識に強く依存していた。

本計画はこうした基礎研究力を更に充実強化し、その結果を展開する研究を促進するものである。

これまで、多くの基礎研究が論文発表で留まり、疾患の病態解明や病態に基づく創薬あるいは医療機器の開発・実用化に展開する研究は、一部先駆的な事業が実施されてはいたが、全体としては必ずしも活発ではなかった。これは研究者の社会還元の志向性が強くなかったことに加え、推進するための研究費や支援体制が十分ではなかったこと、さらには、成果の中から実用化につながる有望シーズを見出し、育成する体制や目利きが不足していたことなど、組織的なマネジメントがなされていなかったことによると考えられる。




(2)臨床研究及び治験の抱える課題

我が国の臨床研究及び治験については、国際的に見ていまだに課題が多く、そのため、製薬企業の治験を海外機関で実施する傾向のあることは否めない。

これは、臨床研究及び治験における倫理規定、データマネージメント、安全性、品質保証等に関する国際基準がより厳格化される中で、我が国の対応が遅れたことが一因となっている。

臨床研究及び治験においては厳密なデータ管理や各種規制への対応を行わなければならないこと、さらに、医薬品や医療機器の有効性が生命予後や心臓発作、脳卒中などの低い頻度ながらも重大な事象を指標とされるようになったことが、臨床研究及び治験の大規模化と長期化に拍車をかけた。

その結果、多くの研究費と強力な研究支援体制なしに臨床研究及び治験を行うことが極めて困難となった。



大学病院では疾患の病態研究については多くの国際的実績を挙げてきたが、研究体制の不備や人材不足等により、臨床研究及び治験は十分に行われてこなかった。

国立高度専門医療研究センター(以下「ナショナルセンター」という。)においては、特定の疾患群の治療を対象とした病院と治療技術の実用化に軸足をおいた研究所を併設しているという特長を生かして臨床研究及び治験を実施し、一定の成果を上げてきたが、企業との連携による創薬及び医療機器開発において貢献してきたとは必ずしもいえない。

このため、症例集積性の向上、臨床研究及び治験手続の効率化、研究者・専門家の育成・確保、臨床研究及び治験の情報公開、治験に要するコスト・スピード・質の適正化に関して、より一層の強化が求められる。




(3)産業界の抱える課題

我が国は、世界第3位の医薬品開発実績を上げているが、革新的な新薬の開発実績における存在感が低下していること、世界で売上高ランキングの高い医薬品の多くに日本人研究者が関与しているものの製品化に際して日本企業参画が非常に少ないこと等の指摘がある。

医療機器については、今後、特に診断・治療機器の分野において市場の伸びが期待されている。

しかしながら、我が国の企業の参入は限定的であり、市場における日本企業の存在感も欧米企業に比べて小さいのが実情である。

我が国が誇る高度なものづくり技術や大学等の工学的な基礎研究シーズが生かせる分野も多いが、こうした技術と医療現場の要請との適合が必ずしも十分でなかったことも課題として挙げられる。

また、日本の製薬・医療機器メーカーは企業規模から見て欧米に比べてリスクを許容できる経営資源が少ない。

さらに、近年、企業の医薬品研究開発投資が巨額化しており、企業規模の違いから1社当たりの研究開発費の日米間の格差が拡大している。



欧米諸国等においては、創薬、医療機器開発におけるベンチャー企業の果たす役割が大きい。

これに対し、我が国においてはリスクマネーを供給するベンチャーキャピタルや目利き人材の不足をはじめ、ベンチャー企業の育つ環境は十分に整っていない。

積極的にリスクを取って管理していこうとする者が少ない構造も相まって、ベンチャーの果たす役割は小さい状況にとどまっている。

さらに、企業によっては医療の実態やアンメットメディカルニーズへの認識が必ずしも高くない。

これは我が国では研究開発の基盤となる医療と疾病の実態を示すデータが十分でないこと、また企業に限らないものの、創薬を志向する研究者と臨床現場との間でのコミュニケーションや人材の交流が十分でないことも一因と考えられる。





(4)研究支援体制の抱える課題

従来、医療分野の研究開発については、基礎研究から非臨床試験までに軸足を置いた文部科学省、臨床研究及び治験から実用化に軸足を置いた厚生労働省、および産業活性化の視点で推進している経済産業省により個別に実施されており、各省間の連携が不十分であったことは否めない。

このため、限られた予算と人材を活用し、基礎研究から実用化までを切れ目なく実施できる体制の構築が喫緊の課題である。

また、公的研究費の柔軟な使用について検討するとともに、民間からの資金を活用するために改正された寄附税制の活用を図るべきである。





U.集中的かつ計画的に講ずべき医療分野研究開発等施策

1.課題解決に向けて求められる取組

長期的視野及び短期的成果を目指す両面から、アカデミア、医療機関、産業界、国、地方公共団体が連携しつつ、以下の取組を行うことが必要である。


(1)基礎研究成果を実用化につなぐ体制の構築

医療の研究開発を持続的に進めるためには、基礎研究を強化し、画期的なシーズが常に産み出されることが必要である。

基礎研究の成果を実用化に展開するためには、臨床研究及び治験実施環境の抜本的な向上及び我が国発の医薬品、医療機器の創出に向けたイノベーションの実現が鍵となる。


@ 臨床研究及び治験実施環境の抜本的向上の必要性

諸外国においては、臨床研究及び治験のために数千床規模の一か所集中型の臨床研究及び治験を行う拠点を創設する例も見られる。

一方、我が国においては、複数拠点のネットワークの構築を推進してきたところであり、革新的医療技術創出拠点プロジェクトにおいて推進している橋渡し研究支援拠点、早期・探索的臨床試験拠点、臨床研究中核病院及び日本主導型グローバル臨床研究拠点(以下「革新的医療技術創出拠点」という。)並びにナショナルセンターといった拠点を活用し、それらを中心としたARO(Academic Research Organization)機能の構築による臨床研究及び治験が推進されている。


臨床研究及び治験を進めるため、各施設で症例の集約化を図るとともに、今後も、これらの資源を有効に活用しつつ、以下の更なる機能の向上を図り、国際水準の質の高い臨床研究や治験が確実に実施される仕組みの構築が必要である。

なお、我が国の医療研究開発におけるナショナルセンターの在り方については、検討を更に深める必要がある。



(@) 臨床研究の質の向上

症例集積性の向上とコストの適正化、スピードの向上、ICH−GCP(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use − Good Clinical Practice)基準の推進など、臨床研究の質の向上を図ることが必要である。

このためには、ALCOA原則に基づいた原資料作成、モニタリング、監査の実施等による品質管理と品質保証が求められる。

その対応には各ネットワーク拠点となる革新的医療技術創出拠点のAROや中央倫理・治験審査委員会等の機能を活用するとともに、研究計画書(プロトコール)の策定、研究の進捗状況の把握、研究データの管理(データ入力・集計・解析)、研究成果や知的財産の管理等の研究開発マネジメントを効率的に実施するなど、個別の臨床研究及び治験に対する一貫したマネジメントが有効である。

これにより、臨床研究及び治験の手続の効率化も期待される。

また、研究成果を効率的に薬事承認につなげられるように、大学、研究機関、医療機関、企業等とPMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:独立行政法人医薬品医療機器総合機構)との連携を強化するため、薬事戦略相談制度の拡充や優先的な治験相談制度の必要な運用改善を行う必要がある。



(A) 研究者・専門家の育成・人材確保

我が国の医学分野においては基礎研究論文が比較的高く評価される傾向があり、そのため基礎研究論文における我が国の国際的存在感は高い。

一方、臨床研究及び治験に係る論文に関する我が国の国際的存在感は、基礎研究論文と比較して低く、かつ低下傾向にある。

臨床研究及び治験を重要な医科学と位置付け、臨床研究及び治験の質と量を向上させることが必要である。

そのためには、まず臨床研究及び治験に従事する人材の魅力的なキャリアパスを確立する必要がある。

特に、医学部、薬学部生等に対し、臨床研究及び治験に関する教育を充実するとともに、臨床研究及び治験のためのポストの整備など、若手研究者の育成が必要である。


また、生物統計、バイオインフォマティクス、ビッグデータ解析等にかかる生物医学系の情報科学分野の人材育成や確保は、今後の遺伝子情報や医療情報等を活用した臨床研究及び治験の推進にとっても必須である。

さらに、疫学専門家、生命倫理、研究倫理等の専門家の果たす役割がきわめて重要である。現在これらの人材が不足しているため、早急な人材の育成・確保が重要である。



(B) 臨床研究及び治験のための共通的な基盤の共用

臨床研究及び治験のため大量に細胞培養を行うために用いるCPC(Cell Processing Center)等の構造設備及びGMP(Good Manufacturing Practice)基準準拠の製造管理・品質管理が可能な設備を全国の拠点で共用する。

さらに、ナノテクノロジー、遺伝情報の解析、その他の最先端の計測分析技術など、特殊・高度な研究基盤についても共用を進めることが必要である。



(C) 研究不正・研究費不正使用等防止への対応

近年、特定の高血圧症治療薬に関する研究論文のデータ不正操作・利益相反行為の問題等が明らかになったが、このようなことが二度と起こらないよう、臨床研究に関する情報公開、監査、モニタリング、利益相反管理、医師・薬剤師・研究者等への卒前・卒後の研究倫理の教育など、行政のみならず、研究開発現場におけるコンプライアンス遵守への取組の徹底が必須である。



(D) 患者との連携及び国民への啓発活動等への取組

臨床研究及び治験の実施に当たっては、被験者や患者との連携を図るとともに、患者・国民への臨床研究及び治験の意義やそれが国民にもたらすメリット等についての啓発活動を積極的に推進する必要がある。

特に、教育・研究を旨とする大学病院やナショナルセンターにおける取組の検討が必要である。


posted by ホーライ at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本版NIH | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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