「新医薬品の承認に必要な用量―反応関係の検討のための指針」について
薬審第494号 平成6年7月25日 厚生省薬務局審査課長
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http://www.pmda.go.jp/ich/e/e4_94_7_25.htm
今週も僕が興味を持ったところだけコピペしているだけなの、ご興味の無い方は今週はスキップしてくださいね。
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●5)用量―反応関係と時間との相互作用
個々の患者に対する投与量の選択は,しばしば投与頻度と関連している。
一般に投与間隔が薬物の消失半減期に比べて長い場合には,選択した投与間隔を薬力学的に説明することに注意を向けるべきである。
例えば,同じ投与量について投与間隔が長い場合と,より小刻みに分割して投与する場合との比較が挙げられる。
その場合は,可能であれば次の投与時まで期待している効果が持続するかどうか,および血中濃度のピークに伴う副作用を観察する。
一回の投与間隔の中でみるとピークおよびトラフの時点の血中濃度における用量―反応関係が異なることがあり,用量―反応関係が選択した投与間隔に依存しているこ262Topic E4 ともありうる。
用量―反応試験においては,他の様々な面からも時間を考慮に入れるべきである。
医薬品の効果発現の遅れが薬物動態学的,または薬力学的因子の結果である場合でも,所定の用量を用いた試験期間は,最大の効果が発現するのに十分な長さとすべきである。
朝方の投与と夕方の投与とでも用量―反応関係が異なることもある。
同様に,投与初期の用量―反応関係とそれ以後投与を継続した後のそれとが異なることもある。
反応が一日用量ではなく,むしろ累積用量,投与期間(例えばタキフィラキシー,忍容性,または履歴現象)あるいは投与と食事との関係に関係していることもありうる。
●●3.用量―反応を評価するための試験デザイン
●1)総論
用量―反応試験のデザインおよび試験対象母集団の選択は,開発の段階,治験対象としている適応症,および目的とする患者母集団における疾患の重症度に左右される。
例えば,不可逆的な結果をもたらす致死的あるいは重篤な状態に対して適切な救命療法がない場合は,忍容される最大用量より下の用量を用いた試験を実施しなくても倫理的に問題はないであろう。
均一な患者母集団であれば,各々の治療を受ける患者が少数であっても試験の目的を達成することが一般に可能であろう。
一方,多数かつ多様な母集団の場合には,重要になるかもしれない共変量の影響を発見することができる。
一般に有用な用量―反応情報は,数種の用量を比較することを目的として特別にデザインされた試験から得るのが最もよい。
単一の固定用量で実施した2つあるいはそれ以上の比較対照試験の結果を比較すると,例えばそれらの対照群が類似しているならば,時には有益な情報が得られることもある。
しかしそのような場合であっても,異なる試験では試験間の差異が多く存在するので通常はこの方法では不十分である。
固定用量の試験で得られた多様な血中濃度データから血中濃度―反応関係を回顧的に導くことが可能である場合もある。
このような分析は,疾患の重症度あるいは他の患者因子と交絡する可能性はあるものの,そこから得られる情報は有用であり,その後実施される試験の手引きとすることができる。
臨床開発の初期の段階で用量―反応試験を実施することは第V相試験での失敗を減らすことになり,結果として医薬品開発の速度が上がり,開発に用いる資源を節約できることになると思われる。
用量―反応関係の指針265 用量―反応試験の用量を選ぶに当たって薬物動態学的情報を用いることにより,得られる血中濃度―反応の値の適切な広がりを確保し,得られる血中濃度の間の重複を減らす,あるいは避けることができる。
薬物動態学的な変動が大きい医薬品の場合には,用量の間隔を広くしたり,患者数をより増やすことを選択してもよい。
あるいは,各用量群内で薬物動態学的な共変量を指標として個々の患者について調整してもよい(例えば体重,除脂肪体重,あるいは腎機能を指標とした補正)。
または,血中濃度による比較対照試験を実施してもよい。
実際問題として,連続変数またはカテゴリー変数で測定される反応で治療開始後比較的速やかに発現し,かつ治療中止後比較的速やかに消失するような反応(例えば血圧,鎮痛,気管支拡張)の場合には,かなり容易に妥当な用量―反応データを得ることができる。
この場合には,より広範な試験デザインを使用することができ,比較的小規模で単純な試験から有用な情報を得ることができる。
例えば,医薬品の開発の初期の試験の多くで典型的に用いられるプラセボ対照をおいた各個人毎の漸増デザインは,適正に実施および分析(母集団と個々の患者の用量―反応関係のモデルを作り,算定する定量的な分析)されれば,より決定的な並行群間比較による固定用量の用量―反応試験を行うための手引きを得ることができるし,あるいは漸増デザイン自体で結論が出せることもあろう。
逆に,試験のエンドポイントや副作用が遅延して発現したり,持続したり,あるいは不可逆であったりする場合(例えば脳卒中や心臓発作の予防,喘息の予防,反応の開始が遅い関節炎治療,癌における生存,うつ病の治療)は,通常は用量を漸増すると同時にそれに対する反応を評価するようなデザインは不可能であり,並行群間比較による用量―反応試験が必要である。
用量―反応曲線がベル型の場合,そのために有効な用量を見逃すことがあるが,並行群間比較による用量―反応試験ではその恐れがない。
ベル型曲線は,高い用量が低い用量より有効でない場合(例えば,作用と拮抗の混合によって起こりうる反応の場合)にみられる。
用量―反応または血中濃度―反応関係の評価を目的とする試験は,治療群間の比較可能性を保証するため,ならびに患者,研究者,および分析者に起因する偏りを最小限にするために,無作為化および(盲検化が不必要かあるいは不可能でない限り)盲検化を用いた適切な規模のよく管理された比較対照試験とすべきである。
臨床的に意義のある差異を識別するために,実施可能性および患者の安全性を両立できる範囲内で広い用量を選択することが重要である。
用量を決めるための初期の手引きとなるような薬理学的なエンドポイントも,妥当とみなせる代替のエンドポイントもない場合には,この点が特に重要である。