2014年01月24日

コーチングのコツ(4)

1) 部下の未来を確認する

ここで「未来」とは、具体的にどういうことを指すのであろうか?

それは旅にたとえるなら、「目的地」ということになる。

つまり、その部下がどこへ行こうとしているのか、ということである。

目的地の代表的なものは「目標」だが、未来にはもっと広く部下の「ビジョン」とか「夢」といったものも含まれる。

ただ、大切なことは、上司が確認する目標やビジョンは部下本人の中から出てきたものであって、決して上司が「上から与えた」ものではないということである。

部下は日々の雑務に追われるうちに、目標のことが部下の頭の中から薄れてしまったり、ちょっとした失敗をしたことでその目標を達成する自信を失ってしまったりするということがよくある。

そんな時、上司が果たしうる役割とはどのようなことであろうか?

それは、部下自身が立てた目標を部下が忘れそうになったら、それを思い出させてあげたり、自信を失って立ち止まっていたら励ましてあげたりすることである。

ちなみに「励ます」というのは、よくある「がんばれ!」という励ましのことではない。それは、その目標を達成することがどんなにその部下にとって大事なことなのか、あるいはそれを達成した時に感じる喜びはどのようなものかといったことを思い出させてあげることを意味している。

そして、思い出させてあげる時には、できるだけ「質問のスキル」を使って、部下が自分でそのことを思い出せるようにサポートするのが望ましいと言える。

たとえば、「その目標を達成するのは、君にとってどれほど大切なことなの?」とか、「その目標を達成したら、君はどんなふうに感じるだろうね?」といった具合である。

上司が部下の可能性を信じ、部下自身が望む未来をつねに確認してあげることで、部下は自らの目指す目的地を見失うことなく、前に進むことができる。




2) 部下の現在を確認する

ここで「現在」とは、具体的にどういうことを指すのか?

それは、その部下が今どういう状況に置かれているのか、ということである。

日々の忙しさや感情の浮き沈みに振り回されるうちに、部下は自ら立てた目標やビジョンを目指す旅の中で自分がいったい今、どのあたりにいるのかを往々にして見失ってしまいがちである。
これは言い換えれば「客観性を失う」ということでもある。

そんな時、上司が「君は今、例の目標に対してどの辺まで来ているんだい?」とか「このプロジェクトに対する、君の現在の満足度を十段階評価で表すとどれくらいなのかな?」といった問いを投げかけてあげれば、部下は自らの置かれている状況をかなり客観的に把握できるようになるだろう。

現在地を確認するということに関しては、実はもう1つ大事な要素がある。それは部下の「価値観」である。

価値観とは、その人がどういったことに価値を置いているかということだが、この価値観を確認することが部下の可能性を最大限に引き出す上で大きな役割を果たすのである。


私たちが決断や選択を行う上で私たちが基準にしているものは何であろうか?

この基準にはいくつかあるが、その中心的なものが価値観である。

部下が目的地をめざす旅の過程においても、決断や選択をしなければならない場面が数多く出てくる。

そして、その中にはどんな選択肢を選んだらいいのか部下自身にも分からないこともあるだろう。

そんな時、上司が「君の価値観に照らして考えてみた時、どの選択肢が一番いいと思うんだね?」と確認してあげれば、部下は自らの選択基準を思い出し、今、どの選択肢を選ぶことが自分にとって大切なのかを知ることができるだろう。



3)部下の過去を確認する

ここで「過去」とは、具体的にどういうことを指すのであろうか?

それは、これまで部下がどういう道のりをたどってきたのか、ということである。

その道のりの中でも、この「確認のスキル」において特に重要となるのは、部下の過去における「成功体験」である。

どんな人でも、よくよく振り返れば、自分では失敗ばかりしているように思っていても、必ず1つか2つくらいは成功体験を持っているものである。

しかし、自分で自分のことを認められないばかりに、その成功体験を過小評価し、逆に失敗ばかりを過大評価してしまう人が意外に多い。

ある人が何かに成功する時というのは、たいていその人が本来持っている能力や可能性を最大限に発揮した時である。

したがって、その人の成功体験を確認するということは、とりもなおさず、その人が本来持っている能力や可能性をその人自身が思い出せるようにサポートすることを意味している。



最後に、ここで「部下の過去を確認する」というのは、部下の意識の矢印を過去に向けるためでなく、あくまでも部下が目指す未来に向かって着実に進んでいけるようにサポートするためであるということだ。



posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | リーダーの役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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