ここで「頭」とは、上司が部下をコーチングする時の「思考」の状態を指す。
「直観のスキル」で「上司は考えてはいけない」と述べた。
しかし、実際には、部下をコーチングしている間、上司の頭の中にはいろいろな考えが浮かんでは消えていくのが普通であり、一切何も考えないというのは不可能に近い。
では、上司が部下をコーチングしている時に、もしも「考えて」しまった場合はどうしたらよいのだろうか?そこで必要となってくるのが「自分の頭を管理する」ということである。
自分の頭を管理するためには、2つのステップを踏む必要がある。
最初のステップが「気づく」ということ。そして次のステップは「手放す」ということ。
最初の「気づく」というステップだが、これは上司が部下の話を聞いているときに何か頭に浮かんでくる考えがあったら、それを「言葉」として客観的にとらえるということである。
自分の頭に浮かんだ言葉に気づいたら、今度はそれを「手放す」。手放すとは、その言葉にとらわれない、あるいはこだわらないということである。
このように、部下の話を聞きながら、頭の中に考えが浮かんでくるのを感じたら、あせらずに「気づいたら手放す」というステップを繰り返す。
これができるようになると、上司はますます楽に部下の話を心で聴けるようになる。はずである。
2) 自分の心を管理する
ここで「心」とは、上司が部下をコーチングする時の「感情」の状態を指す。
上司も人間なので、機嫌がいいときもあれば悪いときもある。しかし、部下をコーチングする際にこうした感情を一緒に持ち込んでしまうと、部下のために100%「その場にいる」ことが難しくなる。
では、上司が感情的になっていて、まともに部下の話が聞けない時はどうしたらいいのだろうか?
これには二通りの場合が考えられる。
1つは、事前に部下と話をすることが分かっているような場合、もう1つは部下にふいに声をかけられたような場合である。
前者の場合は、まずその話し合いに臨む前に、自分で自分の感情を処理するという方法がある。
たとえば、何か不安の種があってイライラしているのであれば、その不安の種をあらかじめ取り除いておく必要がある。
後者のようにふいに部下に声をかけられたような場合は、時間を改めてもらうよう依頼するか、それができなければ正直に自分の心境を部下に伝えた上で話に入るということが考えられる。
上司が感情的になると、えてして操作主義的になりがちである。それは上司の意識の矢印が自分の方を向いた状態になるからである。
この状態から脱するために必要なのは、上司が自らの感情を無視したり抑圧したりすることではなく、適切な方法でその感情を処理することである。
そして、それが「自分の心を管理する」ということなのである。
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