2014年01月17日

実施医療機関への改善すべき事項の内訳

今週は総合機構が10月24日(東京)と10月28日(大阪)に開催した「GCP研修」の資料を見ていきます。


●平成25年度GCP研修会資料
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp



●治験を実施する医療機関における留意点
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h25gcp/chiken_ryuiten.pdf



『実施医療機関への改善すべき事項の内訳(個別症例)』が19頁目からありますが、圧倒的に「プロトコル違反」が多いですね。

具体的な内容が22頁目にあります。
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●被験者背景がIVRS/IWRS(注)に誤って入力され、当該情報に基づき割付が実施されていた。

●治験実施計画書で定められた検査が実施されていなかった。

●臨床所見スコアが中止基準に達しているにもかかわらず、試験が継続されていた。

●検査結果を確認する前に治験薬が投与されていた。

●検査結果により治験薬の投与量の増減が規定されているにもかかわらず、遵守されていなかった。

●盲検性維持のため、治験薬投与期間中は検査項目○○は院内検査で測定しないことが規定されていたが、院内で測定していた。

●主要評価を実施するためのCT撮影が規定された撮影条件(スライス厚等)で実施されていなかった。

●臨床検査検体の中央測定機関への提出が遅れ欠測となった。

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(注)

★IVRS(Interactive Voice Response System)

・音声自動応答システム(英語対応)

ID番号と暗証番号を使って登録


★IWRS(Interactive Web Response System)

・インターネットによるWeb 登録(英語記載)






親切にも、プロトコル違反が起こった場合の対応まで紹介されています。
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【逸脱が発生した時の対応】

●被験者の安全性を確保すること。(治験の中止、追跡調査等、必要な措置を確認する。)

●他の症例において、同様の逸脱はないかを確認する。

●逸脱の原因を確認し、当該治験及び今後の治験実施における再発防止に取り組む。



「プロトコル違反」って、結構、同じ項目に集中して発生することが多いので、しっかりとチーム・組織内で「プロトコル違反の事例」を情報共有し、再発防止策に努めましょうね。




『症例報告書に関する事例』が24頁目にあります。
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●症例報告書に記載された検査値が、原資料(検査報告書)と異なっていた。

●有害事象○○が発現し、△△が投与されていたが、症例報告書に有害事象及び併用薬として記載されていなかった。

●有害事象治療のための予定外来院による診察を受けていたが、症例報告書に当該有害事象が記載されていなかった。

●治験薬の投与状況について、原資料と症例報告書の不整合が認められた。

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「有害事象」と「併用薬」についてはしっかりとSDVしましょう。

「有害事象」は治験薬の安全性に関わる項目ですし、「併用薬」は「併用禁止薬」との絡みもありますからね。



『被験者の同意に関する事例』が26頁目にあります。
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●治験実施計画書に規定された投与前検査を同意取得に先立って実施した。

●前治療薬のWash-outを同意取得に先立って実施した。

●同意文書の被験者日付欄を被験者本人が未記載であった。

●治験協力者が補足的な説明を行っていたにもかかわらず、同意文書に署名していなかった。

●説明文書を改訂したが、治験参加中の被験者に対して、文書による再同意を得ていなかった。また、新たな被験者の登録に際し、改訂前の説明文書が使用されていた。

●説明文書に記載のない再検査を行うことに関し、被験者へ情報提供し、同意を得た旨を文書に記録していなかった。

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「インフォームド・コンセント」は治験の根幹を成すものです。

しっかりとSDV等で確認しましょう。

特に治験特有の検査やウォッシュアウトと同意のタイミングについては、くどい位に事前に治験責任医師等に説明しておきましょう。(治験特有の検査やウォッシュアウトは同意取得のあとから可能。逆は不可。)





『記録の保存に関する事例』が28頁目にあります。
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●『診療録』が保存されていなかった。

●『同意文書』が保存されていなかった。

●『患者日誌』が保存されておらず、有効性評価、安全性評価項目の根拠が確認できなかった。

●『○○スコアシート』が保存されておらず有効性の副次評価項目の根拠が確認できなかった。

●『治験薬の投与時刻、採血時刻』及び検体処理が治験実施計画書に従って実施されたことを示す記録が確認できず、得られた動態解析結果の信頼性が担保できなかった。

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上記のうち『治験薬の投与時刻、採血時刻』は特にフェーズ1で注意しましょう。

原資料(原データ)が無いとデータの信頼性が保証できません(と言うことは、承認申請データから削除するよう機構から指示されます)。

治験依頼者から原資料の廃棄を行ってもよいという連絡があるまで、しっかりと保存してもらうようにお願いしておきましょう。

治験依頼者もその連絡(廃棄してもよい)を忘れずにしましょうね。(治験依頼者の担当者が変わると、忘れやすい。)



『被験者の選定に関する事例』が31頁目にあります。
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●スクリーニング検査の結果が選択基準を満たしていなかった。

●除外基準に規定された併用禁止薬の投与及びWash-out期間が遵守されていなかった。

●既往歴・合併症が除外基準に抵触していた。

●臨床検査値が除外基準に抵触していた。

●治験薬投与前に変更が禁止されていた前治療薬の用量が変更されていた。

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「選択基準」や「除外基準」の違反はこれまた、治験の根幹を揺るがすものです。

医師の「臨床上、問題ないから」という言葉にふりまわされないように強い意志でしっかりとクライテリアを守ってもらうようにお願いします。

日常診療ではそうかもしれませんが、私たちが行っているのは「試験」です。

そういう認識を持って頂くように日頃から注意してください。



32頁目に重要なことが記載されています。
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●選択・除外基準は、被験者保護の観点及び有効性等の情報を適切に収集すること等を目的として、治験依頼者により根拠をもって設定されている。

●治験責任医師等は独自の解釈をせずに、治験依頼者に治験依頼者としての見解を確認すること。

●モニターから回答を得た場合、モニター個人の解釈ではなく、治験依頼者として検討された見解であることを確認すること。

●上記の内容については、各自記録として残すことがリスク管理の観点からも重要。

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最後の「上記の内容については、各自記録として残すことがリスク管理の観点からも重要。」の「各自」ですが、これはもちろん、治験依頼者側のモニターと、施設側の治験責任医師等の両者で、ということですね。




33頁目以降は「医師主導の治験」の場合ですので、関係する人はしっかりと読んでおきましょう。

41頁目以降に「治験関連通知の改正点」がコンパクトにまとめられているので、復習しておきましょう。

なお、下記のページには「治験及び調査における電磁的記録の利用について」や「製造販売後調査の現状と留意点」も掲載されているので、関係者の方は必読です。

また「治験及びGCPに関する最近の動向について」では、この1年間のGCP関係の改正点が要領よくまとまっていますので、復習のために読んでおくとよいでしょう。

●平成25年度GCP研修会資料
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp



みなさん、今年も楽しく頑張りましょうね!


posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 当局の実地調査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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