2013年02月27日

遺伝子解析する治験は通常のIRBだけで審査すればいい?

●今週は「ゲノム薬理学を利用した治験について」と「ゲノム薬理学における用語集について」についてです。

「ゲノム薬理学を利用した治験について」(厚生労働省医薬食品局審査管理課長:薬食審査発第0930007号:平成20年9月30日)
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https://sites.google.com/site/zhiyanniguansurutongzhiji/genomu-yao-li-xuewo-li-yongshita-zhi-yannitsuite


引き続き、「ゲノム薬理学を利用した治験について」に戻りましょう。
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Q3

Q1及びQ2のような試料提供を含む治験の場合、当該治験を行うことの適否その他治験に関する調査審議は、治験審査委員会において行うことでよいか。

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(答え)

治験に関する事項については、通常の治験と同様に、GCP省令に基づき治験審査委員会で調査審議を行う。

なお、当該委員会は、ゲノム薬理学を利用する治験に関して適正に調査審議ができるような配慮がなされるべきである。

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というように遺伝子検査を伴う治験は当然、「IRB」で審議されるのですが、特に「ゲノム薬理学を利用する治験に関して適正に調査審議ができるような配慮」とあります。

通常はこのような治験がきた場合「臨床薬理」等の専門家や「倫理」の専門家が加えられるようです。

また、病院によっては別だてに「治験のIRB」とは別に「倫理委員会」があり、そこで審議が必要、という場合もあります。


ちなみに、この件に関連して製薬協の「治験119」に次のようなQ&Aがあります。
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http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/tiken119/251.html
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【質問】

最近の治験は遺伝子解析を付与した治験実施計画書が多くみられるようになりました。

当院の治験審査委員会(IRB)ではこれらファーマコゲノミクス(PGx)を含む治験の審議を「ゲノム薬理学を利用した治験について(薬食審査発第0930007号;平成20年9月30日)」((以下「厚労省通知」と略)と「医薬品の臨床試験におけるファーマコゲノミクス実施に際し考慮すべき事項(日本製薬工業協会医薬品評価委員会)」((以下「製薬協提言資料」と略)を参考に以下の通り審議を行っております。

1.治験薬の評価に関連するゲノム・遺伝子解析(製薬協文書に定める「分類A」又は「分類B」)を含む治験 → IRBで一括審議

2.治験薬の評価とは関連しないゲノム・遺伝子解析(「分類C」)を含む治験 → 治験に関する事項をIRBで審議し、ゲノム・遺伝子解析に関する事項はゲノム・遺伝子を審議する倫理委員会で別途審議

 
今般、某治験依頼者から「製薬協提言資料では分類CもIRB審議することになっているので、当院のような対応はおかしい」との指摘がありました。

厚労省通知と製薬協文書とでは若干の齟齬があるように感じますので、日本製薬工業協会としての見解を教えてください。


(参考資料)
厚労省通知では、「治験薬の評価とは関係ないゲノム・遺伝子解析の試料提供を含む治験の実施」の審議を (1)治験に関する事項はIRBで審議する (2)解析の実施はゲノム倫理指針を遵守する (3)治験の実施とは別に同意取得する、としています。

一方、製薬協提言資料では上述試料を「分類C」に規定しており、その審査は「PGx検討を含めた治験全体の審査はIRBで行う(表2や2.1治験実施計画書および研究計画の審査体制)」としています。


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【製薬協の見解】

「医薬品の臨床試験におけるファーマコゲノミクス実施に際し考慮すべき事項(暫定版)(2008年3月14日、日本製薬工業協会 医薬品評価委員会)」(以下、製薬協提言資料)及び「ゲノム薬理学を利用した治験について(薬食審査発第0930007号;平成20年9月30日)」(以下、厚労省通知)は、それぞれ別の時期に出されていますが、両者に齟齬はないものと思われます。

厚労省通知のQ1のケースは製薬協提言資料の分類A及び分類Bに該当し、Q2のケースは分類Cに該当します。

さらに、Q3では製薬協提言資料でいう分類A、分類B及び分類Cについて解説されています。

厚労省通知及び製薬協提言資料ともに、分類A、分類B及び分類Cにおいては、ファーマコゲノミクス検討を含む治験実施計画書等を実施医療機関の長が意見を聴く治験審査委員会で審査いただくことになっています。

また、厚労省通知において、分類Cにおけるゲノム・遺伝子解析の実施については「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成16年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)」(以下、ゲノム倫理指針)を遵守する旨を規定していますが、製薬協提言資料おいても、当該解析の実施に係る研究計画書はゲノム倫理指針に基づいて設置された研究機関(治験依頼者がその責任者として機能する)の倫理審査委員会で審査することとしています。

上記のように、厚労省通知及び製薬協提言資料ともに、実施医療機関においては、GCPに基づく治験審査委員会とゲノム倫理指針に基づく倫理審査委員会の両者による審査を必須とはしていません。


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上記に出てくる「医薬品の臨床試験におけるファーマコゲノミクス実施に際し考慮すべき事項(暫定版)」は下記にリンクを保存しています。

ご参考までに。
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https://sites.google.com/site/zhiyanniguansurutongzhiji/seiyakukyogenomu






さて、治験実施計画書の記載についてです。
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Q4

Q1のような試料提供を含む治験を行おうとする場合、治験実施計画書策定時に留意すべき事項は何か。

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(答え)

治験実施計画書策定時点の科学的知見に基づき、ゲノム薬理学を利用する検討の目的やゲノム・遺伝子解析の詳細を治験実施計画書にできるだけ具体的に記載することが必要である。

ゲノム薬理学の検討に係る計画を治験実施計画書とは別に作成することも可能であるが、この場合には、治験実施計画書に別で定める旨記載し、当該計画も治験実施計画書の一部として治験審査委員会の審査が必要となる。

また、Q1の(2)のような将来的にゲノム・遺伝子解析を実施しようとする場合であっても、ゲノム・遺伝子解析に関する事項を治験実施計画書へできるだけ具体的に記載する。

なお、治験実施計画書に記載すべき事項は、例えば以下のような事項が考えられるので参考にされたい。

・ゲノム薬理学を利用する検討の目的(治験薬との関係等)

・ゲノム・遺伝子解析を行う対象集団(解析対象が治験対象の一部に限定される場合はその条件等)

・試料の取扱い(提供を受ける量、提供を受ける方法、匿名化の方法、保存・廃棄方法等)

・検討方法(ゲノム・遺伝子解析の対象範囲、解析実施機関、実施(予定)時期等)

・ゲノム薬理学を利用する検討に関して被験者の同意取得及び同意撤回に関する手続及び方法(試料やデータの取扱いを含む)

・遺伝情報の開示に関する事項(非開示にする場合はその理由)

被験者の同意を得る際の同意文書についても、上記のような事項を含む必要があるが、ゲノム薬理学を利用する検討の目的等が十分理解できるよう、被験者にとってわかりやすいように記載することが必要である。

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上記の文章の中で最も難しいのは多分、「ゲノム薬理学を利用する検討の目的等が十分理解できるよう、被験者にとってわかりやすいように記載する」でしょうね。


僕ですら(と別に僕はゲノム科学の専門家ではありませんが)分かりませんから。



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