2013年02月22日

そもそも「ゲノム薬理学を利用した治験について」とは?

●今週は「ゲノム薬理学を利用した治験について」と「ゲノム薬理学における用語集について」についてです。


ところで、今週のテーマに入る前に2つのご連絡を・・・・・・。

まず、最初のご連絡。

■TVシンポジウム「よい薬をより早く〜治験をめぐる新たな進展〜」

2月23日の午後2時からNHK教育テレビで上記の番組があった。
  ↓
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2013-02-23&ch=31&eid=22626

出席者は以下の方々。

【パネリスト】国立病院機構大阪医療センター院長…楠岡英雄

【パネリスト】国立がん研究センター中央病院乳腺腫瘍内科…藤原康弘

【パネリスト】全国骨髄バンク推進連絡協議会前会長…大谷貴子

【司会】池上彰

楠岡先生が「日本の治験の現状(特に課題)」を主に話され、藤原先生が「ファースト・イン・ヒューマン」等の最新の治験状況を紹介。

大谷さんは「患者代表」という立場。

1時間の番組だったが、よくまとまったいい番組だった。

まず「新薬の開発の流れと費用」という話。


シンポジウムに参加していた一般観客者に「新規化合物の発見から新薬として市場に出るまでの期間と開発費はどれくらいか?」を質問すると「5年ぐらいで、5千万円くらい」と答えていた。
もうひとりは「たぶん10年ぐらいで、億単位のお金」と答えていた。

そこで楠岡先生が「長いものでは15年、費用も千億単位」と答える。



番組中には実際に治験に参加している「糖尿病」患者(この方は多分フェーズ3)と「卵巣がん」患者(この方は多分フェーズ1)がインタビューに答えていて、どちらも治験に肯定的な答えをしていた。


また、番組中では「何故、ドラッグラグが起こるのか?」や「臨床研究中核病院」や「あたかもひとつの病院のようなネットワーク構築」、「早期・探索的臨床試験拠点」、「CRCという方も治験に係わっている」や「PMDAの人材を増やしている」、はたまた「戦略的治験相談」、「公知申請」などという専門的な話も出てきた。

途中で実際に製薬会社で新薬開発に携わっているという男性の「治験の仕事の責任感と使命感」等という発言もあった。



僕たち治験の現場の人から見ると「ちょっとイイことばかりを強調していないか?」とか「GCPの話はないのね?」とかあったが、とにもかくにもNHKのEテレで60分もかけて「治験だけの話の番組」が製作されたということを素直に喜びたい。

最後に池上彰さんが「健康の時にできるボランティアもあるけれど、病気の時にもできるボランティアもあるという考えもありますね」という言葉が良かった。


再放送があるかもしれないので、見逃したかたはぜひ、ご覧あれ。


この番組を見て「こんな大事な治験の仕事に就きたい」という若者が増えてくれたらいいなぁ・・・・。

僕たちの仕事をもう一度、一般市民の方の視線で見直そう。

意義ある仕事だけど、とても責任が重たいこと仕事をやっているんだと再認識した。

そんな番組でした。




次に2番目のご連絡を。

治験の仕事をしていると「どうしてこんなにガイドラインとかガイダンス、通知が多いの? 私は何かを見落としていない?」と思ったりしませんか?

ですよね。

それで、とりあえず僕が思いつく限りの「治験に関連する通知類、ガイドライン、ガイダンス、業界の申し合わせ」を集めたサイトがあります。

何かの参考にしてください。
  ↓
「治験に関する通知集」
  ↓
https://sites.google.com/site/zhiyanniguansurutongzhiji/



さて、では今週のテーマに入ります。

まず通知のタイトルです。

「ゲノム薬理学を利用した治験について」(厚生労働省医薬食品局審査管理課長:薬食審査発第0930007号:平成20年9月30日)
  ↓
通常は下記のサイトにあります。(総合機構の「ガイダンス・ガイドライン」のページです。)
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/guideline.html

さらにそのページの中のこれ(↓)です。
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/genomu-yakurigaku.pdf


私が作った「治験に関する通知集」では下のページにリンクを張っています。
  ↓
https://sites.google.com/site/zhiyanniguansurutongzhiji/genomu-yao-li-xuewo-li-yongshita-zhi-yannitsuite



さて、最近では「治験」の中で「遺伝子」を解析する場合が増えましたね。

まず、そもそも選択基準で、ある一定の遺伝子を持った疾患を対象とした場合は、遺伝子検査が必須です。

さらに、ある遺伝子タイプの人に「よりよく効果が出る」とか「出ない」という分析をする場合もあります。

はたまた、「今はまだ未確定ですが、今後、遺伝子に関する情報がこの治験薬に関係する可能性が高いので、今回の治験では「とりあえず」あなたの遺伝子サンプルを提供して頂けませんか?」というのもあります。



では、「遺伝子検査」と「血圧検査」の違いはどこにあるでしょうか?

血圧を測定し、「あなたは血圧が高い。だから高血圧です」となり、その人、本人だけの問題で済みます。

しかし、遺伝子検査となると、その結果は本人はもちろんのこと、その方の血縁関係者にも影響を与える可能性が大きくなります。

その方のご両親や兄弟、子ども、さらには孫にも影響する可能性があります。

これが通常の検査と遺伝子検査との間の決定的な違いです。

このことに注意していくことが何よりも重要です。

たとえば、上記の通知の中にもこうあります。
  ↓
■■■■■■■■■■■■■■

医薬品開発のために治験を実施する際には、GCP省令を遵守することとされており、ゲノム薬理学を利用した解析を行う治験についても同様にGCP省令に従う必要があるが、得られた遺伝情報の中には、被験者のみならず、その血縁者の遺伝的素因を明らかにするものもあることから、その取扱いは十分留意する必要がある。

■■■■■■■■■■■■■■




ところで、遺伝子検査をする治験では2種類あります。

まず遺伝子検査が必須の場合。

この場合は、通常の「治験の同意説明文書」にも記載され、ひとつの「同意書」で「治験への参加」と「遺伝子検査」に同意したことにする治験がほとんど。

かたや、遺伝子検査が必須ではなく「参考にさせてください」という治験もあり、この場合は「治験参加」の同意書と「遺伝子検査」の同意書は別になっていることがほとんど。

この場合、「治験」には参加しますが、「遺伝子検査」はしないでくさい、ということもあり得ます。

(ちなみに、上記の例の逆の「治験」には参加しませんが、「遺伝子検査」だけをしてください、という場合は、これはもう治験ではなく、通常の診察・診療の範囲になるので、話が全然、違ってきます。)



・・・・・・・ということで「ゲノム薬理学を利用した治験について」の通知を今週は見ていきます。




●最新の医療ニュースのまとめ
http://medical-news.seesaa.net/

●iPS細胞と再生医療ニュースのまとめ
http://horai-science.seesaa.net/

●治験と臨床試験のニュースのまとめ
http://chiken-adventure.seesaa.net/

●製薬会社のニュースのまとめ
http://horai-biz.seesaa.net/

●最新の科学のニュースのまとめ
http://horai-sciencenews.seesaa.net/

●ホーライ製薬は下記
http://horaiseiyaku.seesaa.net/

●医薬品ができるまで」は下記
http://chiken-imod.seesaa.net/

●ハードボイルド・ワンダーランド日記
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●GCPの解説(ワンポイントアドバイス)ブログ版
http://gcp-explain.seesaa.net/

●GCPの解説(ワンポイントアドバイス)サイト版
https://sites.google.com/site/gcpnokaisetsu/

●GCPの問題集(ブログ版)
http://horai-gcp-test.seesaa.net/

●GCPの問題集(サイト版)
https://sites.google.com/site/monitorcrcgcpmondai/

●基礎医学知識・薬学知識・カルテ用語の問題集(ブログ版)
http://cra-hilevel.seesaa.net/

●治験の略語集、治験に使われる言葉の解説(サイト版)
https://sites.google.com/site/chikenryakugo/

●お勧めのビジネス書(ランキングあり)
https://sites.google.com/site/osusumebzbook2/

posted by ホーライ at 20:58| Comment(2) | TrackBack(0) | ゲノム関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
現在、医師主導治験のプロジェクトリーダーをしています。先生が作成したプロトコールには遺伝子検査(ミトコンドリアのある遺伝子の変異を検査)が規定されています。そもそも対象となる疾患では、確定診断のため、この遺伝子が既に検査されているのですが、治験薬投与により遺伝子変異の割合が変化したかどうかを見るため、遺伝子検査が組み込まれています。このようなケースでも、「ゲノム薬理学を利用した治験について」のガイドラインにしたがって、プロトコールやICFに必要事項を記載するという理解でよろしいでしょうか?お手すきの際にでもご教示いただければ幸いです。
Posted by 東條 伸輝 at 2013年02月26日 13:24
こんにちわ、東條さん。
ご質問の件ですが、やはりプロトコルや同意・説明文書に必要事項を記載したほうがいいと思います。
何故なら、「治験薬」の投与によって遺伝子変異の変化をみるわけですから、「治験の一環」だと思うからです。「治験薬の投与⇒遺伝子変異があるか?」の検査ですから「治験の一環」ですよね。
・・・・というふうに私は考えます。
Posted by ホーライ at 2013年02月28日 02:11
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