●サンプリングSDVの方法について
サンプリングSDVの手法、サンプリングSDVの方法、サンプリング方法(抽出方法)です。
まずは下記の文章を読んでみましょう。
ガイダンスのPDFで言うと54頁目(紙に表示されている頁で言うと48頁目)にはこう記載されています。
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5.
臨床研究中核病院等が当該実施医療機関及びその他の施設において治験の実施(データの信頼性保証を含む。)を適切に管理することができる場合においては、必ずしもすべての治験データ等について原資料との照合等の実施を求めるものではないこと。
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この文章が何を言っているのかよく分からないという質問を受けたことがあります。
まずしょっぱなの「臨床研究中核病院」とは?
↓
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国際水準の質の高い臨床研究や難病等の医師主導治験を推進し、日本発の革新的な医薬品・医療機器を創出するためには、複数病院からなる大規模なネットワークの中核となり、臨床研究の拠点となる機関が必要です。
厚生労働省ではこのたび、この課題に対応するため、臨床研究中核病院整備事業の対象として、次の5機関を選定しましたので公表いたします。
・ 北海道大学病院
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/120806_1.pdf
・ 千葉大学医学部附属病院
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/120806_2.pdf
・ 名古屋大学医学部附属病院
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/120806_3.pdf
・ 京都大学医学部附属病院
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/120806_4.pdf
・ 九州大学病院
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/120806_5.pdf
1 事業概要
○ 日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出等を目的に、国際水準の臨床研究、難病等の医師主導治験及び市販後臨床研究等(以下「国際水準の臨床研究等」)の中心的役割を担う「臨床研究中核病院」を整備する事業。
○ 選定された機関は、以下の基盤構築を行う。
・ 自ら国際水準の臨床研究等を企画・立案し実施するとともに、他の医療機関が実施する臨床研究を支援できる体制
・ 倫理性、科学性、安全性、信頼性の観点から適切かつ透明性の高い倫理審査ができる体制
・ 関係者への教育、国民・患者への普及啓発、広報体制 等
○ 各機関から提出される整備計画に基づき、1機関当たり5億円程度を上限として基盤整備に必要な事業費を補助する。
○ 整備事業と連動して、国際水準の臨床研究等を行うための研究費を補助する。
○ 補助期間は平成24年度からの5年間を予定。
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ちなみに、今、臨床研究中核病院をさらに募集中です。
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臨床研究中核病院整備事業の公募に係るお知らせについて
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http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002th21.html
ということで、上記の病院の下のURLをクリックして出てくる資料をご覧になると分かるのですが、各病院とも「データセンター」とか「品質保証部」等が組織にあります。
そこにはローカルデータマネジャーがいたりします。
そういう病院等で「治験の実施(データの信頼性保証を含む。)を適切に管理することができる場合」は、「必ずしもすべての治験データ等について原資料との照合等の実施を求めるものではないこと」なのですね。
ここで「すべての治験データ等について原資料との照合等の実施」というのは従来、普通に行われてきた全ての(100%の)データ・資料をSDVをする、といことですね。
それを「求めるものではない」ということですから、100%のデータ・資料をSDVしなくてよい、と。
ということは「サンプリングSDV」でもよい、ということです。
では、「臨床研究中核病院」ではない病院ではだめかというと、そんなことはなく、「治験の実施(データの信頼性保証を含む。)を適切に管理することができる場合」ならクリニックレベルでもいいはずです。
たとえば、クリニックレベルでもCRCの方がデータマネジャー的(ローカルデータマネジャー的)業務を行い、クリニック内でデータの品質保証を行っていれば、サンプリングSDVも可能です。
もちろん、ローカルデータマネジャーがいないけれど、治験責任医師が緻密な人で、きっちりとしたデータをCRFに記入・入力していることが分かれば、それでもOKでしょう。
さて、では、サンプリングSDVの手法、サンプリングSDVの方法、サンプリング方法です。
私が過去に外資系で「サンプリングSDV」のSOPを作ったり(ただし10年以上前)、監査を行ってきた経験(同左)等から考えてみました。
■■■■■■■■(1)√N または √N+1 を抽出する方法(ルートN または ルートN+1)
一般的にサンプリングでデータを抽出する場合上記の式を使う場合が多いですね。(これに固執する必要はありません。)
(何故 √N(ルートN) または √N+1(ルートN+1) なのかは、自分で調べてみましょう!)
たとえば、全国で100症例を集める治験だった場合、√100ですから10症例あるいは√N+1ですから11症例を抽出(サンプリング)して、そのCRFをSDVすることでよしとする考えです。
じゃ、その10症例はどれを抽出するか?ということですが、1つの病院から10症例を抽出(サンプリング)するのは偏りが大きいですよね。
ですから、北海道から沖縄の全国から平均して10症例を選ぶ、という考え方もあります。
また、SDVの質はモニターの質にも左右されるので、各モニターから10症例を選ぶという方法もあります。
たとえば100症例は下記の内訳だったとしましょう。
A君担当分・・・10症例
B君担当分・・・20症例
C君担当分・・・50症例
D君担当分・・・5症例
E君担当分・・・15症例
この場合、下記のようにサンプリングするという方法ですね。
A君担当分から1症例を選ぶ
B君担当分から2症例を選ぶ
C君担当分から5症例を選ぶ
D君担当分から1症例を選ぶ
E君担当分から1症例を選ぶ
これで10症例分になります。
上記の方法はどちらかというと監査(QA)が採用する方法です。
今度は√N(ルートN) または √N+1(ルートN+1)を各施設ごとにあてはめる、という方法です。
たとえばA君が担当している3施設は次の症例があったとします。
イ病院・・・10症例
ロ病院・・・8症例
ハ病院・・・4症例
上記に√N(ルートN) または √N+1(ルートN+1)の式をあてはめて、各病院から次の症例だけサンプリングしてSDVをします。
イ病院からは√10なので3症例を抜き取ってSDVをする
ロ病院からは√8なので3症例を抜き取ってSDVをする(√8は2.8なので四捨五入して3症例)
ハ病院からは√4なので2症例を抜き取ってSDVをする
■■■■■■■■(2)最初の数例は100%SDVを実施し、問題ないなら、次の症例からはサンプリングSDVとする方法
どこの病院でも最初の3症例は100%のデータ・資料をSDVで確認します。その結果、ミスがないと分かったら(つまり「治験の実施(データの信頼性保証を含む。)を適切に管理していると判断できる」ので)あとは3症例につき1症例を抜き取る、というサンプリングSDV方法です。
たとえば、A病院で20症例が登録されたとします。
そのA病院の最初の3症例分は100%のSDVをします。
その結果、問題無いと判断したら、次は6症例目の患者、9症例目の患者、12症例目の患者、15症例目の患者、18症例目の患者のCRFだけを抜き取り、それらのCRFは100%SDVをします。
ということは20症例から8症例をサンプリングSDVしたことになります。(√20よりは多くなりますが。)
また、上記の方法でやったとしても6症例目で致命的なミスが見つかったら、やっぱりこの施設は全て(全症例の全データ)をSDVする方法に戻す、というやり方もあります。
■■■■■■■■(3)特定のデータだけを抜き取るサンプリングSDV方法
有効性に係わる、つまりプライマリーエンドポイント(主要評価項目)に係わるデータと安全性に係わるデータ(有害事象)だけは全てのCRFにつきSDVを実施し、その他はSDVをしない、というサンプリングSDV方法です。
たとえば、抗がん剤の治験でA病院で10症例が登録されたら、10症例全ての被験者の腫瘍縮小率(有効性)のデータと発生した有害事象のデータについてはSDVできっちりと確認します。
それ以外のたとえば「生年月日などの患者背景」とか「血圧」等はSDVしない、という方法です。
この場合CRFとしては100%ですが、SDVするデータだけは抜き取る(サンプリングSDV方法)という方法です。
監査の場合、全くデータを見ない施設もある、ということもありえますが、モニターが行うSDVの場合、全くSDVを実施しない施設がある、というのは、今は、まだ、ちょっと怖いですね。
その他にも、たとえばA病院のB医師についてはフェーズ2で100%SDVして問題が無かったので、フェーズ3は抜き取るでやる、という方法も考えられます。
もちろん、逆にC病院のD医師はフェーズ2では「ちょっと問題あり」という結果だったら、フェーズ3では他の病院、他の医師はサンプリングSDVをするが、D医師だけは100%SDVにする、というやり方もありえます。
上記のようにサンプリングSDVの方法は様々なので、各治験依頼者が工夫して考えるといいと思います。
その場合、監査部門に相談するという手もありますね。
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