2012年12月21日

経口血糖降下薬:「フェーズ3」と「長期投与試験」

今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf


今日は「フェーズ3」と「長期投与試験」についてです。


「フェーズ3」と「長期投与試験」について、次のように解説されています。
  ↓
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経口血糖降下薬における第3相試験を大きく分けると単独療法における有効性、安全性を評価するための試験と他の経口血糖降下薬との併用療法における主に安全性を評価するための試験に分類される。

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この「他の経口血糖降下薬との併用療法における主に安全性を評価するための試験」が最大の特徴です。



まず、普通の「フェーズ3」については次のように記載されています。
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3-1. 単独療法試験

3-1-1 無作為化二重盲検群間比較試験

(1) 目的

第3相試験は、第2相試験により明確にされた適応、用法・用量等に基づいて、 治験薬の有用性をより客観的に検証することを目的とする。

このため、適切な対照薬を選び二重盲検法による群間比較試験を行う。

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まぁ、ここまでは普通ですね。

治験期間は長めになります。
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(5) 試験期間

投与期間は治験薬の有効性、安全性を評価するに足る十分な期間が必要である。

HbA1cを主要評価項目とする場合は、少なくとも12週は必要であり、原則として24週が望ましい。

また、適切な観察期間も設定する。

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う〜〜ん24週(6ヶ月))プラス観察期間(1ヶ月ぐらい)ですね。

このように長い治験期間の場合、「ドロップアウト」する患者さんが多くなるので、難しいところです。



次に「普通」の「長期投与試験」についてです。
  ↓
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3-1-2. 長期投与試験

経口血糖降下薬の性質上、長期にわたる投与が一般的であるので、長期投与の安全性、有効性の確認が重要である。

長期投与試験は一般的に非盲検法により、第3相比較試験に並行又は継続して実施される。

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ここで素朴な疑問として「長期投与試験は一般的に非盲検法」とありますが、何故、長期投与試験は「非盲検法」なのか?

逆に「群間対照試験」では「ブラインド」なのか?

「対照試験」では「対照薬」と「治験薬」を比較するのが目的ですので、どちらかに「バイアス(先入観・偏り)」がかかるとまずいですよね。

でも、「長期投与試験」は通常「対照薬」がないので、偏りがかかりようがないので「非盲検法」でよいというわけです。




さて、評価項目は「安全性」で試験期間が1年というのも、他の分野の治験薬と同様です。
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(4) 評価項目

主要評価項目は治験薬の安全性とし、副次評価項目として有効性(HbA1c等)を評価する。


(5) 試験期間

投与期間は、無作為化二重盲検群間比較試験と並行して長期投与試験を実施する場合は1年間以上、無作為化二重盲検群間比較試験から継続する場合は両試 験で合わせて1年間以上とする。

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ここまではいいのですが、次からが「経口血糖降下薬のガイドライン」の最大の特徴です。
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3-2. 併用療法長期投与試験(非盲検併用療法長期投与試験)

(1) 目的

薬理学的作用機序により大別した既承認の経口血糖降下薬と治験薬を長期間併用した場合の安全性及び有効性を評価することを目的とする。

そのため、各々の既承認の経口血糖降下薬と治験薬の2剤併用療法(医療現場で併用が想定される組み合わせ)について、まとめて一つの非盲検併用療法長期投与試験として実施する。

治験薬と理論上併用が可能であり、実臨床において併用が想定される全ての被併用薬群*との組み合わせが推奨される。

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これですね!!

「併用療法の長期投与試験」がガイドラインで義務付けられています。

これが大変そう!!

しかも、「実臨床において併用が想定される全ての被併用薬群*」ですよ。


この「*」は次のようになります。
  ↓
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*ここでいう被併用薬群とは各種経口血糖降下薬の種類別に群をわけたものを指す。

(例えばSU薬群、ビグアナイド薬群、α−グルコシダーゼ阻害薬群など。)

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他の領域での治験では「長期投与試験」は下記のガイドラインのように「6か月、300例」のデータで製造販売承認申請ができます。

で、「1年、100例」のデータは承認前までに提出すればいいとなっています。

「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について」
  ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e1_95_5_24.pdf
  ↓
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8.通常は,6カ月間投与して得られた成績をもって当該医薬品の承認申請を行うことが可能である。

その場合は,12カ月間投与して得られた成績を承認前の可能な限り早い時点に追加提出しなければならない。

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ところが!!

「経口血糖降下薬」では次のようになっています。
  ↓
「「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について」(事務連絡:平成22年7月9日)。
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-qa.pdf
  ↓
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Q12

効能・効果の記載は、「2型糖尿病」とするのが適当とされているが、今後、従来のような効能・効果の記載は認められず、併用療法長期投与試験成績の提出が必須と考えるのか。

また、その場合の併用療法長期投与試験成績の提出時期はどのように考えたらよいか。



A12

本ガイドラインに従って新規の経口血糖降下薬の臨床開発を行い承認申請する場合には、併用療法長期投与試験を含めて必要な臨床試験を実施した上で、効能・効果を「2型糖尿病」と設定することが原則であり、当該試験成績を含めた臨床データパッケージで承認申請する必要がある。

また、併用療法長期投与試験では、既承認の経口血糖降下薬と治験薬を長期間併用した場合の安全性及び有効性を評価することを目的としていることから、当該試験が終了し、当該試験の成績が揃った時点でなければ、その安全性及び有効性を評価することはできないため、最初に併用療法長期投与試験以外のデータを用いて申請し、申請後に当該長期試験のデータを追加提出することは受け入れられない。

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上記のQ&Aを読むと、私の理解では「併用療法の長期投与試験」の結果が出てからでないと製造販売承認申請できないんですね。


いや〜〜!

これは大変だ!!

疾患領域によって、治験のやり方も様々ですね。

う〜〜ん、勉強になるな。



●ハードボイルド・ワンダーランド日記
http://hard-wonder.seesaa.net/
posted by ホーライ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床評価ガイドライン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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