東京と大阪で総合機構が実施した「GCP研修会」で使用したパワーポイント(公開済みの)の資料を基に話を進めています。
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●平成24年度GCP研修会資料
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp
今日のテーマは昨日から引き続き「医療機関における留意点」です。
「医療機関の」と書かれていますが、モニターにとっても、というか、むしろ、だからこそ、「モニターにとっての留意点」です。
こちらの資料です。
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/chiken_ryuiten.pdf
まずは、「治験実施計画書からの逸脱に関する指摘事例」です。(上記の27ページ)
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治験実施計画書からの逸脱に関する事例
●中止基準の判定のために定期的に定められた心電図検査が一部の時期に実施されていなかった。
●臨床所見スコアが中止基準に達しているにもかかわらず、試験が継続されていた。
●○○の検査結果により治験薬の投与量の増減が規定されているにもかかわらず、遵守されていなかった。
●休薬期から再投与に移行するための条件を満たしていないにもかかわらず、再投与に移行されていた。
●主要評価項目である観察項目が一部の時期に実施されていなかった。
●主要評価を実施するためのCT撮影が規定された撮影条件(スライス厚等)で実施されていなかった。
●臨床検査検体の中央測定機関への提出が遅れ欠測となった。
●検査結果を確認する前に治験薬が投与されていた。
●被験者背景がIVRS/IWRSに誤て入力され当該情報に基づき割付が実施されていた。
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さらに、次のページに「重要なこと」が書かれています。
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逸脱が発生した時の対応
●被験者の安全性を確保すること。(治験の中止、追跡調査等、必要な措置を確認する。)
●他の症例において、同様の逸脱はないかを確認する。
●逸脱の原因を確認し、当該治験及び今後の治験実施における再発防止に取り組む。
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上記の黒丸の3ポイントは暗記してください。今すぐに、ただちに、暗記してください。
暗記しました?
はい、では、次に進みましょう。(ちなみに、僕は、いつも、こんな感じで研修を進めています。)
モニターは自分が担当している施設でプロトコル逸脱が起こったら、すぐにチーム内で紹介し、他の施設でも発生していないか、あるいは発生する可能性があるのでこうしてください、と発表する。
話題は「症例報告書に関する指摘事例」になります。(上記資料の29ページ目)
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●症例報告書に記載された検査値が、原資料(検査報告書)と異なっていた。
●有害事象○○が発現し、△△が投与されていたが、症例報告書に有害事象及び併用薬として記載されていなかった。
●有害事象治療のための予定外来院による診察を受けていたが、症例報告書に当該有害事象が記載されていなかった。
●治験薬の投与状況について、原資料と症例報告書の不整合が認められた。
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ここには2つの問題が潜んでいます。
「記載されなかった(間違って記載された)」という問題と「それをモニターが見逃していた」という問題です。
モニターの教育担当者やモニタリングのチームリーダーは「もし、薬が新たに追加されていたら、有害事象が発生している可能性があるので、それをチェックして」とモニターに教えましょう。
さらに「予定外の来院や、他の病院に通院したという記載を見たら、有害事象がが発生している可能性があるので、それをチェックして」とモニターに教えましょう。
「治験薬の実際の残数」と「治験薬管理票」「症例報告書に記載されている服薬状況」との整合性のチェックは見逃しがちなので、それも「事前」にモニターに注意します。
この話題に関連して、別の資料になりますが、次のことも総合機構から指摘されています。
この資料の31ページ目です。モニタリングの不備に対する指摘です。
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/iyakuhin_gcp.pdf
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治験依頼者への改善すべき事項の事例
モニタリング不備
★原資料と症例報告書との不整合、治験実施計画書からの逸脱、IRB審査不備、同意取得に関する不備等について、
●把握していない
●把握していたが、了承をしている
●モニタリング報告書等に適切な記録を残していない
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上記のうち「把握していたが、了承をしている」は、モニターのプロトコルの理解不足(だから、丸暗記する!)です。
ときどき、治験実施医療機関から、直接、モニターに電話がかかってくることがあります。
「●●を投与したいんだけれど、投与してもいい?」というような質問です。
「今、患者さんが待っているから」ということで早急に答えないといけません。
こういう事態に備えるために、モニターはプロトコルを丸暗記をすべきなのです。
あるいは、「併用禁止薬」の「一覧表」(それも「市販名の50音順」で)を自分のパソコンのディスクトップに保存しておいて、すぐに対応できるようにします。
あるいは、携帯電話やスマホの分かり易い所に保存しておきます。
さらに、手帳にコピーを挟んでおきましょう。
特に「PL顆粒」のように「配合剤」の場合は、その中の各成分まできちんと調べてから、答えてください。
ついでに、と言っては、ことが重大すぎるのですが、同じページに「重篤」なことが記載されています。
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●未知重篤な副作用情報の実施医療機関への伝達遅延
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未知重篤な副作用は1ヶ月以内に、実施医療機関、治験責任医師に報告してください。
とりあえず、メールで直ちに伝達してください。(モニターが持参するのでは遅すぎることがあります。忘れることすらあります。CCにモニタリングリーダーを入れてメールを送るように指示します。)
リーダーは全ての医療機関、治験責任医師に1ヶ月以内に伝達したかを各モニターから「直接」確認し、それがモニタリング報告書に記載されているかを確認しましょう。
エクセルのシートに記録して、間違いなく「全ての」関係者に伝達されたかをチェックしましょう。
これを守らないモニターはそれなりの「処分」も必要です。
患者の命がかかっているのですから。
前の資料に戻りましょう。
次の資料の31ページ目です。「被験者の同意に関する指摘事例」です。
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/chiken_ryuiten.pdf
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●治験実施計画書に規定された投与前検査を同意取得に先立って実施した。
●前治療薬のWash-outを同意取得に先立って実施した。
●同意文書の被験者日付欄を被験者本人が未記載であった。
●治験協力者が補足的な説明を行っていたにもかかわらず、同意文書に署名していなかった。
●説明文書を改訂したが、治験参加中の被験者に対して、文書による再同意を得ていなかった。また、新たな被験者の登録に際し、改訂前の説明文書が使用されていた。
●説明文書にない再採血を行う事に関し、被験者へ情報提供し、同意を得た旨を文書に記録していなかった。
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「同意」は治験の「倫理的根幹」を成す事項です。
特に治験特有の「投与前検査」と「ウォッシュアウト」のタイミングに注意してください。
いずれも、これらは「同意後」に実施すべきことです。
同意後に検査とウォッシュアウトをします。
逆に言うと、「同意前」に治験特有の「投与前検査」と「ウォッシュアウト」は禁止です。
本日の最後に。
こんなことが「サラッと」書かれています。(上記資料の37ページ目)
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●適切な品質保証が可能であれば、必ずしも100%SDVを求めるものではありません。
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このスライドは「医師主導型の治験」のパートのところですが、僕は「企業主導型の治験」でも同じだと思います。
「適切な品質保証」が大前提ですが。
僕が昔、勤めていた外資系の製薬会社のSOPでは「サンプリングSDV」のやり方も規定されていて、詳細は忘れたし、ここに記載すると「企業秘密」の触れるので書きませんが、考え方の基本は次のとおりです。
その施設の最初の1例目(あるいは3例目までは、とか)は完全にSDVをする。
問題が無ければ、あとはある割合でサンプリングSDVをする。
ただし、そのサンプリングSDV中に、ある一定以上の「問題」があった場合は、全例のSDVに戻す。
サンプリングSDVをするにしても、「有害事象」だけは全例チェックする、とか。
サンプリングSDVの方法として、Aという施設は過去の例から言ってサンプリングSDVでいけるけれど、Bという施設は初めてなので全例のSDVを実施しよう、という考え方だってある。
こういうことは各治験依頼者が、自分たちの考え方で決めればいいことで、「これが絶対」という方法はありません。
工夫しながらやりましょう。
要は「そのやり方で治験依頼者自身が安心できるか?」ということです。
安心できないと思うなら、100%SDVすればいいことです。
企業主導型の治験でサンプリングSDVができる大前提の「適切な品質保証」とは、CRFをきちんと作成する体制が医療機関側にあるか、ということですね。
●ハードボイルド・ワンダーランド日記
http://hard-wonder.seesaa.net/