「モニタリング2.0検討会」というサイトがあります。(とてもいい活動をしています。)
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http://www.moni2.org/moni2/Top.htm
上記のページに下記の「相互評価表」があります。これが実に使える!
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http://www.moni2.org/moni2/PDF/20121129_WG01_sougohyouka.pdf
この表をモニターはセルフチェックに使ってみましょう。
モニターの教育担当者は研修のヒントになりますよ。
なお、本来の使い方は下記のページに説明されていますので、ご参照ください。
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「CRC、CRAの相互評価体制の構築に関する相互評価表(WG01)2012年12月3日」
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http://www.moni2.org/moni2/outcome.htm
以上、ご連絡でした。
では、本題に入ります。
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今週は「GCP調査の傾向と対策(2012年版)」です。
東京と大阪で総合機構が実施した「GCP研修会」で使用したパワーポイント(公開済みの)の資料を基に話を進めています。
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●平成24年度GCP研修会資料
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp
今日のテーマは「医療機関における留意点」です。
こちらの資料です。
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/chiken_ryuiten.pdf
上記の資料に「いいこと」が書かれています。(4ページ目)
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GCP実地調査では・・・・
形式的な照合や間違い探しではありません。
●主な視点
・被験者の人権等への配慮がされていたか
・有効性や安全性の評価に影響を及ぼす事例の有無
(例)・治験の実施に十分な設備、人員を有しているか
・緊急時に被験者に必要な措置を講ずることができるか
・治験審査委員会の運営状況
・同意の取得方法は適切か
・原資料等の記録の保存体制
治験実施計画書に従い実施されているか
・治験実施計画書からの逸脱を認識し、再発防止がされているか
・原資料に記載された有害事象等が症例報告書に記載されているか
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上記の中で「医療機関の体制」として、最も注意を要するのが「治験審査委員会の運営状況」です。
以前にも書きましたが、治験が「倫理的」であるためには「IRB」が正しく運営されている必要があります。
そして、基本的事項を守るということ。
総合機構からの指摘事例を見ても、IRBの基本的事項ばかりです。(上記資料の12ページ目)
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治験審査委員会(IRB)に関する事例
●治験期間が1年を超える場合の治験継続の適否の審査(年1回以上)について、IRBは審査していなかった、あるいは迅速審査により審査していた。
●治験実施計画書の変更や安全性情報に関する情報を受けて説明文書が改訂されたが、これについてIRBは迅速審査により審査していた。
●治験依頼者から通知された安全性情報について、IRBは治験を継続して行うことの適否について審査していなかった、あるいは迅速審査で審査していた。
●治験協力者がIRB委員として審議・採決に参加しており、当該委員を除くと出席員数がIRBの成立要件を満たしていなかった。
●IRBの会議の記録が審議結果のみの記載であり、議事要旨が記載されていなかった。
●治験の継続について審査していたが当該医療機関の長に対し当該審査に係る意見を文書により述べていなかった。
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上記のことはGCPにはっきりと明示されている基本的事項ばかり。
どうして、こういう基本的事項のミスが起こるのか?
まず、IRB事務局の方が「新人でGCPをよく知らない」場合が考えられます。(特に「迅速審査」の意味を勘違いしている。)
さらにモニターが「IRBでの審議」を要請しない場合が考えられます。
上記のミスの予防策としては、とにかく、モニターがしっかりとIRBの運営状況を把握することです。
モニターがIRBの事務局に「これは重要なことですので、「迅速審査」ではなく「通常の」審査でお願いします」としっかりとはっきりと、自信を持って確実に伝えることです。
(いつまで、こういうことが続けばいいのか。。。)
次に「治験薬の管理」について。(上記資料の15ページ目)
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●誤った薬剤が被験者に交付/投与されていた。
●盲検期に非盲検期の薬剤を投与。
●指示された薬剤番号と異なる番号の治験薬を投与。
●治験薬は医療機関に交付されていたにもかかわらず、同一成分の市販薬を投与。
●他の治験用の治験薬を投与。
●温度規定を逸脱して管理された治験薬を依頼者への確認等を行わず投与。
●回収した使用済みの治験薬(バイアル)を再度投与。
●被験薬を交付すべきところ対照薬を交付。
●割り付けられた割付番号の治験薬が被験者に投与されたことを示す記録を作成していなかった。
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僕も以前、モニターの現役だった時代に「ダブルブラインド」の試験とオープンの「長期投与試験」を同時に同じ病院でやっていて、「ダブル」の患者に「長期」の治験薬が渡されたことがありました。(その逆もありました。)
そういうことがあったので、すぐに治験薬の外箱、内袋を「ダブル」の治験薬は「ショッキングピンク」に、「長期」の治験薬は「まっさお」に変えました。
さらに、でかでかと、「これでもか!」というぐらい大きな文字で「治験用」「二重盲検試験用」「長期投与試験用」「誤投与に注意!」と表示しました。
医師の治験用の処方印にも同様な処置をとりました。
「人間はミスをするもの」という発想で、治験は準備し、進める必要があります。
リスクマネジメントは「発生」してから考えるのではなく「事前」に考えるものです。
また、万が一、ミスが発生したら、「再発防止策」を緊急、かつ、確実に実行することが重要。
まぁ、これは治験に限った話ではないのですが。
さらに、昨日の話題でも触れましたが治験の「記録の保存」について。(上記資料の22ページ目)
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記録の保存に関する事例
●『診療録』が保存されていなかった。
●『同意文書』が保存されていなかった。
●『患者日誌』が保存されておらず、有効性評価、安全性評価項目の根拠が確認できなかった。
●『○○スコアシート』が保存されておらず有効性の副次評価項目の根拠が確認できなかった。
●『治験薬の投与時刻、採血時刻』及び検体処理が治験実施計画書に従って実施されたことを示す記録が確認できず、得られた動態解析結果の信頼性が担保できなかった。
★治験終了後(特に直接閲覧終了後)にあまり注意が払われず、紛失してしまうケースが見られる(画像フィルム、検査結果など)。
★医師法等では、診療録は5年間、その他の記録は3年間の保存義務が規定されているが最終来院から5年間受診がなかった被験者の治験に係る記録、が含まれている診療録等を廃棄している医療機関が見られる。
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昨日も言いましたが、治験にとって「原データ」が命です。
治験の「原データ」は「新薬の有効性と安全性」の唯一無二の「証拠・根拠」です。
それが無かったら、国民から信頼されません。
「データ」の無い薬を、あなたは飲みますか?
モニターもQCも監査も「誤字・脱字」とか「てにをは」とか「サインが簡単すぎてこれでは誰もがマネされます」とか「シャチハタはダメです」とか・・・そういう些末なことばかり指摘しないで(そんなことにかまけていると、重要かつ基本的な仕事をする時間がなくなる)、こういう大原則(データの信頼性確保)を確実にすることです。
チェックや指摘が「趣味」に走ってはいけません。
モニターの持ち時間はみんなと同じ1日24時間しかありません。
その持ち時間をどのように消費して欲しいかを考えましょう。
また、QCやQAの皆さんも同様に1日24時間しかありません。
その貴重な24時間をどれだけ『本質的で重要な』チェック・確認・保証・改善(提案)の作業に使いたいかを考えていきましょうね。
特にQCやQAは、本当にその指摘が「データの信頼性に影響するのか?」「患者の人権、安全、福祉、倫理に影響するのか?」「私の指摘はひょっとしたら、モニターの本質的な仕事の邪魔をしていないか?」という視点を持ちましょう。(もちろん、総合機構も)
「細々」とした指摘よりも「本質的」な指摘・改善提案をするのが優秀なQC、QAです。(もちろん、総合機構も)
「やっているよ!」でしたら、はい、大丈夫です。
次に重大な「被験者の選定に関する指摘事例」です。(上記資料の25ページ)
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●スクリーニング検査の結果が選択基準を満たしていなかった。
●除外基準に規定された併用禁止薬の投与及びWash-out期間が遵守されていなかった。
●除外基準に規定された既往歴、合併症の有無が未確認であった。
●除外基準に規定された臨床検査の規定範囲を超えていた。
●治験薬投与前に変更が禁止されていた前治療薬の用量が変更されていた。
★通常診療ではあまり実施しない検査項目や、同意前の過去の履歴に関する規定を見落としてしまうケースが多い。
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上記のようなミスを防ぐ、最も確実な方法は「やばそうな医師」を治験に参加させないことです。
治験の打診に行って、プロトコルの概略を説明しても「いい加減」な顔をして、「いい加減」な返事しかしない医師だったら、たとえ著名、有名、大家の医師でも、治験を依頼しないことです。
(もし、営業部から、「絶対に、この医師は治験に参加させてくれ。そうしないと販売するときに病院に採用されない」なんて言われたら、やばい医師は「治験調整医師」とか「幹事」とかにして、実害を防ぐ。)
治験実施計画書(プロトコル)からの逸脱を防ぐポイント、注意点、コツは・・・
●プロトコルを作る人はそもそも非現実的なプロトコルを作らないこと。
●プロトコルを作成する人は「誤解」を招きしそうな書き方をしないこと。
●モニターは、プロトコルを「丸暗記」すること。
●「同意説明文書」にも「除外基準」を分かりやすく書いて、患者自身にも確認してもらうこと。
●ここまで、準備をしたうえで、モニターは治験責任医師、治験分担医師、CRC、治験薬管理者に「分かりやすく」プロトコルを説明すること。(分かりやすいフローチャートやチェックリストも有用。)
だから、モニターは日頃から「他人に理解しやすい」話し方ができるように訓練しておきましょう。
プレゼンのコツは「話しやすい」順番にプレゼンにするのではなく、聞いている人が「理解しやすい」順番に話すこと。
プロトコルの記載の順番にプレゼンする必要はない。
場合によっては、そうするとむしろ理解しにくい場合すらある。
●ハードボイルド・ワンダーランド日記
http://hard-wonder.seesaa.net/