東京と大阪で総合機構が実施した「GCP研修会」で使用したパワーポイント(公開済みの)の資料を基に話を進めています。
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●平成24年度GCP研修会資料
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp
今日のテーマは「資料の紛失の重大性を再認識する」です。
新薬の(治験薬の)有効性と安全性のデータの信頼性の確認は、何も、総合機構の人が、自分でその治験薬を飲んでみて「うん、確かに効くな!」なんてやっているわけじゃぁない。
では、何をもって総合機構は治験薬の有効性と安全性を信じるのか?
それは「原資料」「原データ」を見るから。
その「原資料」「原データ」が無かったら、データの信頼性を確認しようがない。
だから、「資料の紛失」は致命的です。(電子データにしろ、紙データにしろ。)
今回、目を引いたのは、下記の資料の中の「新医薬品の適合性書面調査及びGCP実地調査について」の21、22ページの「外部委託機関における記録の保存」です。
●平成24年度GCP研修会資料中の下記資料
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http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/iyakuhin_gcp.pdf
上記の資料に次のようにある。
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業務委受託契約書において、以下のように記載。「○○(外部委託機関)は試験に係る資料を試験終了後10年間保存する。」
→試験終了から承認申請までの期間が保存期間を超える場合、試験に係る資料が廃棄される可能性がある。また、承認後も含めた資料の保存期間を満足しない可能性がある。
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今さら、言うまでもなく新薬の承認申請に使ったデータはその新薬が承認されるか、開発が中止されてから3年のいずれか遅い日までだ。
試験(治験)が終了して「10年」たっても、承認されるとは限らない。
さらに承認されたら「再審査」が終了するまでか、承認されてから5年のいずれか遅い日までだ。
だから、僕がかつて勤めていた製薬会社は「永久保存」を外部委託機関との原則契約だった。
治験とは違うけれど、生物製剤の製造記録とかPL法だったかなんだかでだと、製造記録の保存期間は30年じゃなかったっけ?(正しい期間は検索してみてください。)
ついでに「国際共同治験」の場合、日本で製造販売承認を得たとしても、ある国でまだ新薬の承認が得られていない場合、日本の医療機関の治験データは保存しておくことに注意が必要だ。
すなわち、日本で製造販売の承認を得られたからと言って、治験実施医療機関に「廃棄しても大丈夫です」なんて言ったら、まだAという国では「審査中」だった場合、そのAという国の当局が「実地調査」に日本に来たら、医療機関に「治験のデータ」が無いことになる。
だから、「国際共同治験」の場合、治験に参加した「全ての国」で製造販売承認を得られるまで、日本の医療機関の原資料も保存しておいてもらおう。
さらに上記の資料の22ページにはこうある。
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業務委託先で既に廃棄されてしまった記録があり、それらは原資料の一部であるとも考えられるものの、検査結果に係る記録は別に保存されていることから、試験の信頼性に影響があるとまではいえない場合
<廃棄されていた記録の例>
●測定記録ノート
●機器の点検記録
●精度管理記録
●測定作業日誌
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上記の「記録の例」を見ると、どうやら「検査会社」で発生した事例のようだけれど、とにかく、治験に関連する業務委託先には十分に注意しましょう。
特に「契約書」を作る時の「資料の保存期間」ですね。
それと、「どの程度の(どのレベルまでの)資料」を保存しておいて欲しいかを明記しておきましょう。
「機器の点検記録」とか「精度管理記録」等は忘れがちです。
医療機関などでも、SDVや監査(On-site Audit)が終わると「安心」しちゃって、資料が捨てられたり、行方不明になったりしますから、念を押しておきましょう。
医療機関の統廃合のどさくさにまぎれて資料が無くなることもあります。
あるいは、病院が「倒産」することもあります。(こんな時は大至急、治験関連データを全て、かき集めて、封印して、会社が契約している外部倉庫に永久保存しておきましょう。)
とにかく、治験にとって、「データ」は命です。
治験の「データ」は「新薬の有効性と安全性」の唯一無二の「データの信頼性を確保できる証拠」です。
くれぐれも紛失、破棄に注意して、リスクマネジメントしておきましょう。
「GCP違反」として100%「申請データ」から「データの削除」を求められる事例が「原資料」「原データ」が確認できない事例です。
●ハードボイルド・ワンダーランド日記
http://hard-wonder.seesaa.net/