下記のテーマの順に話を進めます。
●1.「IT危機の傾向と対策」
●2.「資料の紛失の重大性を再認識する」
●3.「医療機関における留意点」
●4.「モニターにとっての留意点」
●5.「総合機構からの指摘事例とその対策」と「総合機構の担当官とモニターの共通項」
今日の話題は「IT危機の傾向と対策」です。
東京と大阪で総合機構が実施した「GCP研修会」で使用したパワーポイント(公開済みの)の資料を基に話を進めます。
こういう資料はどんどん公表して欲しいですよね。
GLPの研修会の資料が公開されたので、GCP研修会も公開されるかな?と思っていたところでした。
いいことです!
↓
●平成24年度GCP研修会資料
↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp
さて、その前にこんなニュースがありました。
↓
●抗がん剤副作用で男性死亡 検査異常値見落とし、徳島大病院
↓
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121122/crm12112212040007-n1.htm
●抗がん剤副作用で死亡…患者遺族が阪大提訴
↓
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20121120-OYT8T00409.htm
徳島大病院の例を見ると「タイムリーな検査結果の評価」が大切だということが分かります。
↓
消化器・移植外科抗がん剤治療におけるインシデントについて(徳島大学病院の公式サイト)
↓
http://www.tokushima-hosp.jp/topic/info.html?news_id=380
↓
このページにこう書いてある。(抜粋)
↓
■■■■■■■■■■■■■■
治療の第2コース開始のため受診された際に、予定に基づき一般末梢血検査、生化学検査が行われました。
担当医は一般末梢血検査で血小板の減少は確認しましたが、生化学検査で肝腎機能の異常値が出ていたにもかかわらず、これを確認しないまま抗がん剤を投与し、その後もこの結果が確認されることはありませんでした。
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臨床検査の結果のリアルタイムの確認は抗がん剤だけではなく、「安全性」が確立されていない「治験薬」でももちろん同じ。
だから、プロトコルで「4週間おきに来院して臨床検査を実施」等と規定されているわけです。
その検査結果を治験が終わるまで放置しておいて、「CRFを早く書いてください」とモニターにせっつかれてから、ようやく「どれどれ、しゃないなー」なんて言って、ようやく「臨床検査値」を見るようではいけません。
「リアルタイム」に検査値を見て、安全性を確認しないとね。
だから、「今や、ALCOAの時代ですから、リアルタイム(ALCOAのContemporaneous:同時である)にデータを評価してCRFを作成してくださいね」という説明は間違っている。
ALCOAの原則が無くても「リアルタイム」に臨床検査値等を評価しないと患者の安全性を確保できないのだ。
「いやいや、だからこそ、ALCOAが大事なんだよ」という言い方もあるけれどさ、ALOCAなんてさ、大事なことを忘れないための「ごろ合わせ」みたいなものなんですよね、結局のところ。
「忘れ物をしないためのごろ合わせの『ハトが豆食ってパッ』」と同じ。
まぁ、総合機構の方が作ったプレゼン資料なのだから、「ALCOAだからリアルタイムにデータを入力してください」ということではないと思うけれど、下記のスライドの26ページに「適切なユーザーが適切なタイミングで正確に入力することが重要です( ALCOA原則)。」とあったので、ちょっと気になった次第です。
↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/denshidata.pdf
はい。前振りが長くなりました。
今回の「平成24年度GCP研修会資料」を見て、「ドヒャー!」とぶっ飛んだのが「EDC」関係です。
さっきの資料と同じ、下記のスライドの23ページです。
↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h24gcp/denshidata.pdf
こんなことが書かれています。
↓
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(1) 医療機関で入力されたデータが正確に保持されていなかった。当該システムを利用しているユーザで同様な事象が発生していた。
→試験途中に改修された。
(重要)それまで入力されたデータ(一部)が欠落してしまう。
(2) 単一のID・パスワードしか発行できないシステムが使用されていた。
また、1医療機関に1つのID・パスワードのみが交付されていた。
運用手順とその実施状況を確認したが、作成者が特定できない状況になっていた。
→当該システムは、以降、使用されていない。
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「EDCのシステムが不完全で、データが無くなってしまった」というものですね。
「紙のカルテ」や「紙のCRF」ではありえなかった(そうでもないか。紙のカルテでも紛失とか破棄した、とかあるからね)。
ほかにもこんなのがあります。(上記の資料の25ページ)
↓
■■■■■■■■■■■■■■
治験薬交付管理システムに対し、個別試験の情報が正確に設定されていなかった。
このため、治験薬交付管理システムが誤作動してしまい、過量の治験薬が被験者に投与されてしまった。
→試験途中に改修された。
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「ゲー!」です。
システムを使う時は、使い始める前にしっかりと「バリデーション」しておきましょうね。
また、インストール時にはインストールバリデーションをやりましょう。
これはシステムを使う時の鉄則です。
さらに、さらに!!
こんなことも。(上記の資料の27ページ)
↓
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「ページ表示未完了時に‥」→「ページが切り替わる操作」→「一部入力済データが空白に!(不特定の場所から下、全項目)」
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こわいなぁ・・・・・。
ある1つのベンダーのシステムのが多くの治験依頼者に使用されていると、同じ事態が多数、発生してしまう。
それも、すぐには気がつかない。
「異常事態」が発生して、初めて気がつく。
こわい、こわい。
これから、ますます、IT関係が普及するけれど、こういう「危険」も一緒に「普及」するのだ。
また、「ハッキング」の恐れもある。
それと、IT関係に関連してだけど、「大規模な天災」が発生した時の対応を今後は「絶対に」必要ですよね。
今日(12月7日)もマグニチュード(M)が7.3の地震が三陸沖で発生し、僕が勤めている会社は高層ビルの12階にあるので、かなり長い時間、相当、揺れた。
今後も、まだ3.11の余震が続く可能性が高いと気象庁は注意喚起している。
また、3.11以降、「地震の活動期」に入ったと言われている日本、特に千葉沖や南海トラフの連動巨大地震が予想されている。
民間企業では、東京と大阪に拠点があると、東京と大阪にサーバーを置いて、その2つに同一データをリアルタイムにバックアップし、どちらかが「壊滅的状態」になったとしても、一方のデータは生き残れるようにしている。
病院でもこういう対応は必要ですね。
今はレンタルサーバーも安くなったし、なんなら、アメリカ本土とかハワイとかイギリス等の海外のサーバーを使って複数の国に「バックアップ」を取っておくということだって、今なら、できます。
もともと、「インターネット」って、アメリカの軍事基地が「敵」から攻撃された時を想定して、別の基地にデータを保存しておこうと、電話回線を使って、重要なデータを分散させるために開発されて、それを一般にも解放したのが「インターネット」の誕生だったのだ。
・・・・・と言うことで、「EDC」とか「電子カルテ」とか「eCRF」とか普及してきたので、それに対応したバックアップ等のリスク対応が必要というわけです。
ついでに心配なのが、医療機関が使っている「電子カルテ」がどんどんバージョンアップするとか、ベンダーを変更したとかなって、「昔のデータ」を見ることができなくなることです。
そうそう、そう言えば、まだ「ワープロ専用機」が現役だった時代に作ったその「ワープロ専用機」で作成した「承認申請データ」を見るために、パソコンの時代になっても、そのデータを見るためだけに「書院」とか「一太郎」などの「ワープロ専用機」をずっと保管していた。
また、パソコン初期の頃、「医師」は「マック」が好きで、よく、マックを使ってデータ等を作成しました。
その医師が作ったデータを見るためだけに「Windows」全盛になっても、1台だけ「マック」を残していた。
いやはや、便利な時代になったのか不便な時代になったのか・・・・・。
実は、僕も、つい先日、バックアップ用に使っていた「外付けのHD」に「コーヒー」をこぼしてしまい、貴重なデータが全て「パー」になってしまった。。。(T_T)
●GCPの解説(サイト版)
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