2012年11月20日

製薬会社における「寝耳に水」と「瓢箪から駒」

昨日は製薬会社の合併の悲哀を書きましたが、今日は、まず「寝耳に水」についてです。


製薬業界には面白いビジネス慣習があって、自社で非臨床試験までやったけれど、臨床開発以降の権利は別の会社に売っちゃう、とか、他社の治験薬だけどフェーズ2から我が社でやります、その代わり、フェーズ2が成功したら、何十億円を、フェーズ3が成功したら何百億円をその会社に払います、とかね。

これを「ライセンシング」という。

製薬会社の社内には「ライセンシング部」という部署まであったりする。



こんなことを研究している報告書もある。
   ↓
「ライセンシング成功のカギ  製薬企業の研究開発生産性向上のための打ち手」
   ↓
http://www.bcg.co.jp/documents/file25135.pdf

う〜〜ん、この報告書を出しているのは世界でも有数のコンサルティングファームの「ボストンコンサルティング」だね。

この会社には「リエンジニアリング」の件で1年以上、お世話になったことがある。

一度でも、コンサルティング会社と働いたことがある人は分かると思うが、彼らは信じられないくらいの速さで信じられないくらいの資料を作る。

まるで、作った資料のキロあたりでお金を払ってもらっているかのように。


で、僕が働いていた外資系製薬会社が他社と合併するにあたり開発パイプラインの見直しがあって、昨日まで「イケイケ、ドンドン」だったプロジェクトが別の会社に売られることになった。

まさに、今、血眼になって頑張っているモニター達の前にそのプロジェクトのリーダーが会議室から走ってきて、「おい、おまえら、もう、仕事しなくていいぞ!やめ、やめ!」と叫んだ場面を今でも覚えている。

モニターにとっては、まさに「寝耳に水」だ。というか「寝耳に熱湯」だ。

「はぁ?」だ。

製薬会社で働いていると、こういうことがある。

「俺たちに明日は無い」だ。

製薬会社で働くときは、そんなことも起こりうると覚悟をして日々の仕事をやらなければならない。




さて、次に「瓢箪から駒」の話。

今年の夏は「節電」が叫ばれたよね。

原発がみんな止まったからね。

特に「関西電力管内」はそうだった。

僕が勤めている会社の大阪支店では7月から9月いっぱいまで「午前10時〜午後3時」はエアコンを止めるので、社員はよそで(たとえばマクドナルドとか図書館とか)で働いていてね、という作戦を打ち出した。

社内で働いてもいいけれど、エアコンは使用禁止!ということになった。

それはそれで大変だったけれど、僕にとっては「研修」をどうするか? という問題も発生した。

それまで研修は大抵、午後1時30分から午後4時30分までの3時間の研修、という感じでやっていた。

でも、午後は3時からしか働けないとなると、どうする? となった。

大阪で働くモニターも少ない貴重な時間の3時間も研修に消費されることなんて受け入れられる状態ではなかった。


僕は悩んだ。

そして、苦肉の策として3時間の研修を1時間に短縮することにした。

すると、これが結果的に良かったのだ。

何が良かったかというと、まず、出席率が上がった。

そりゃそうだ。

モニターが平日の昼間に3時間の研修なんて、「出てられねーや」となる。

でも、1時間ぐらいなら、気分転換にもなるし、「まぁ、出てやるか」となった。

さらに、講師側としても3時間を1時間にするのだから、研修のポイントを絞らざるを得ない。

要点は何か?をひたすら考えた。

そして贅肉をそぎ落としたコンパクトな研修を考えた。

だから、非常に効率の良い研修ができるようになった。

今では節電もないので、通常どおりの勤務体制になったけれど、研修は今でも1時間にしている。

研修の資料作りも楽になった。

1時間でどうしても終わらないのは(そういうのはほとんど無いけれど)、また来月やります、とした。

これが「瓢箪から駒」だ。


人間、困ったり、切羽詰まるといいアイデアが出るものです。

ついでに・・・・・・。

「目から鱗が取れる」ということわざもあるよね。

何かがきっかけに、急に物事の理解が進んだり「なるほど!分かった!!」ような場合に使う言葉だ。

学生時代の実習の時に、ある化学反応式が分からないので、講師に質問した。

すると、ますます分からなくなった。

で、講師から聞かれた。

「この説明でよく分かった?」

かえって分からなくなった僕は答えた。

「まるで、目に鱗が入ったようです。」と。

すると、その講師が「その言い方は間違っているよ。正しくは「目から鱗が取れた」だよ。」

いやいや、そりゃ知っていますよ。だから、皮肉を込めたジョークで言ったんじゃないですか、とは言えずに「はぁ、そうですか」とだけ答えた。

ここから得られる教訓はジョークや皮肉は相手の理解度と知識に依存する、また、相手が僕のことをどの程度、理解しているかによって、「せっかくの」ジョークも皮肉も通じない、ということだ。


昔(1979年頃)、NHKに「テレビファソラシド」という番組があった。

永六輔がプロデュースし、司会もやっていた。

初めて「タモリ」をNHKに出演させた番組。(あの頃のタモリはまだ「ハナモゲラ語」等を駆使した、毒のあるタモリだった。そのタモリがNHKに出演できたのは、ひとえに永六輔の力だ。)

その「テレビファソラシド」にある視聴者から投書があったと永六輔が紹介していた。

その投書にはこう書いてあった。

「テレビファソラシドは間違いで、ドレミファソラシドが正しい言い方です。」と。


ジョークひとつとっても難しい・・・・・・・。

どうでもいいんだけれど。


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