(1)製薬会社の合併に隠された悲哀(ちょっとエグイ話を含む)
(2)製薬会社における「寝耳に水」と「瓢箪から駒」
(3)患者が怠けてもモニターは死なないが・・・・・
(4)ホーライの1年、1ヶ月、1日
(おまけ)ICH-GCPとJ-GCPの違い
最近、製薬会社同士の合併とか吸収が多くなってきた。
たとえば最近の吸収で言うと「武田薬品によるEnvoy社の買収について」がある。
↓
http://www.takeda.co.jp/press/article_54065.html
実は「ホーライ製薬」でも「合併」の話があった。^^;
下記のページの2004年11月13日のところです。
昔の「「ホーライ製薬」(サイト版)」の中の「「2004/10/31」〜「2004年11月23日」の社史」。
(うむ。前は1日分って、あんなに短かったんだ。最近、長くなりすぎだな。)
ここでクイズ!
次の会社はどことどこが合併してできた会社でしょうか?
「初級問題」
●第一三共
●アステラス製薬
「中級問題」
●中外製薬
●ノバルティス
●グラクソ・スミスクライン
「上級問題」
●田辺三菱製薬
●ファイザー
●MSD
「絶対に誰も答えられない問題」
●サノフィ
多分、「サノフィ」の全社員のルーツを探ると20社近くの会社出身者がいると思う。(20社ぐらいが合併してできた会社なのだ。)
製薬会社の合併で何が大変かというと、SOPをどうするかだ。
いや、本当はもっと大変なことがあって、「人員整理」なんだけれどね。
製薬会社は相手の会社の「社員」が欲しくて吸収・合併するわけではない。
あくまでも吸収・合併の目的は「製品」や「開発パイプライン」、そして「資金」だからね。
「人員整理」の方法としては「狙い撃ち」と「早期退職者制度」が代表的。
「狙い撃ち」では、たとえば「40才以上でラインマネジャではない人」とか「支店長」「部長」クラスが狙われる。
そりゃそうだよね。
「北陸支店長」は二人いらないし、「薬事部長」も「監査部長」も「開発部長」等も同じだ。
たいていが、強制的に「クビ」か「意に沿わない職場」に回される。
こんな笑い話がある。
内資系で働いていた中年男性がリストラにあった。
そこで、外資系の会社に転職することにした。
採用面接の席で、外資系の会社の人事担当者がその男性の履歴書を見ながらきいた。
「で、あなたは何ができるのですか?」
「はい。『部長』ならできます。」
「早期退職者制度」は「狙い撃ち」よりも穏やかに聞こえるが、そうとは限らない。
通常「早期退職者制度」では、その制度を使って会社を辞める場合、退職金を通常の3倍出しますよ、となったりする。
僕が経験した合併では「表面上」、この「早期退職者制度」が使われた。
この制度の説明のために管理職が全員、あるホテルの会議室に集められた。
当時、ある部門の管理職をやっていた僕もそこに出席した。
そこで、どんな話がなされたかとういと、要は部下を次の3種類に分けてください、というもの。
●辞めて欲しい人
●辞めて欲しくない人
●どちらでもいい人
会場での説明に使われた言葉はもっと「マロヤカ」だったが、でも、結局はそういうことだった。
管理職は部下をこの3種類に分けたら、今度は、それぞれの人を個別に会議室に呼んで、面談しなさいとのこと。
どんな話をするかというと・・・・・
●辞めて欲しい人には「きみは、今回の早期退職制度を利用したほうがいいよ。もし、それを使わずに会社に残ったとしても、今と同じ給料、職位、仕事内容を確約できないからね。」
●辞めて欲しくない人には「きみは、是非、このまま会社に残ってほしい。もし、早期退職制度を使いたくても、きみの場合は対象にならない(!)。通常の、退職金しか払われない。」
●どちらでもいい人には「きみは、早期退職制度を使ってもいいし、このまま会社に残ってもどちらでもいいよ。きみの選択次第だ。」
・・・・というようなことを説明する。
もちろん、それを言う僕も、臨床開発本部長から、上の3つのどれかを「宣告」される。
管理職が集められた説明会では、「もし部下との話し合いで、相手が感情的に怒りだしたら、こうしなさい。もし「労働基準局に訴える!」と言い出したら、こう言いなさい」なんていうレクチャーも受けた。
こういうことを乗り越えて育つ外資系の人は、だから、いつでもリストラされてもいいように自分を磨く。
さらに会社の合併で、問題となるのは「風土(カルチャー)の違い」だ。
一方の会社は「QC部門があって、がちがちにQCチェックします。」というのに、もう一方の会社は「QC部門なんて不要!品質の最終責任はモニターにある。モニターがチェックするのに、何故、またQCをやる部門なんて必要なんだ?」というように。
僕の知り合いで外資系のベンチャー会社に勤めていた人がいる。
そのベンチャー会社が、がちがちの内資の有名な製薬会社に吸収された。
世間一般から考えたら、そんなベンチャーの会社だったのが、一流の製薬会社の社員になれて良かったね、と思うところを、その友人は、それを嫌って、別の外資系に転職した。
それだけ、会社の風土やカルチャーは社員に影響を与えている。
僕も長く外資系で働いていたので、内資系に転職した時は、「カルチャーショック」が相当あった。
(逆に、その会社も僕にカルチャーショックを受けたようだったけれど。)
さて、脇道が長くなりましたが、「SOP」の話に戻します。
製薬会社が合併する場合、ふたつの会社でそれぞれが独自のSOPを持っているわけですので、合併するにあたって、どうするかが必ず問題となる。
対応方法としては、次の方法がある。
●合併しても2つのSOPでいく
●合併にあたって、新規に1つのSOPを作る
●どちらか一方のSOPを採用する
僕が経験したのは(と言うか、合併にあたり、当時SOPの担当者だった僕は面倒なので)、上記の3番目の「どちらか一方のSOPを採用する」を選んだ。
その時、僕は会社で、「今、社内で走っている治験の現状」を全て調べ、Aというプロジェクトは「治験薬の提供までは今のSOPで、症例登録からは新しいSOPね」とかBというプロジェクトは「CRFの回収がもうすぐ終わるので、それまでは今のSOPで、総括報告書の作成からは新しいSOPでね。」というような一覧表を残した。
合併ではなく吸収の場合は、否が応でも、吸収する側のSOPに従わざるを得ない。
製薬会社の、あるいはCROやSMO等の会社の合併では、以上のことが起こっているんだな、と思いながらニュースを見ると、思わず「泣けてきます」^^;
製薬会社では他にも「寝耳に水」とか「瓢箪から駒」ということも多々ありますので、それは明日の話題ということで。
●最新の医療ニュースのまとめ(1)ブログ版
●医薬品ができるまで(治験に関する話題)
●ホーライ製薬のfacebook
●お勧めのビジネス書のfacebook
●塚田 淳彦 (ホーライ) facebook
●ホーライのツイッター
●週刊「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」の登録はこちら
●日刊「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」の登録はこちら