2012年11月08日

(4)治験のリスクマネジメントを考える

リスクマネジメント協会というのがある。
  ↓
http://www.arm.gr.jp/

このサイトに「リスクマネジメント」の意義等が書かれている。
  ↓
http://www.arm.gr.jp/rm_nyumon/index.html


*** 以下、引用 ***

リスクマネジメントの根本的な問題は、企業や事業に損失が発生した場合には、その企業が消滅する恐れがあること、事業が中断し、利潤を発生することすらなく損失を発生しつづける「無駄 な存在」になる可能性があることを、誰がどのように認識するのかという点にあると考えられます。

*************


上記の「企業」や「事業」という言葉を「治験」におきかえる。

まずは「治験」で「リスク」が現実化した場合、治験そのものが破たんするということを「認識」することが重要だ。


では「リスク」とは何か?

これは一般的に次のように定義されている。



**** Wikiより ****

「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する概念」

**************



ここで重要なのは、「リスク」は「可能性」だということ。

ある事故が発生したら、それはもう「可能性」ではなく、実際に起きたことなので「リスク」とは言わないそれはもう「事故」だ。

治験で言うなら「GCP違反」だ。「プロトコル逸脱」だ。

これらの事故は起きてから対応しても遅い。

モニターや監査、QC、CRCは予め発生しうる・可能性のある「リスク」を予想・予測する必要がある。

そして、それを未然に防ぐ。

万が一、発生したとしても被害が最小限に抑えられるようにする。

たとえば、ひとりの被験者でGCP違反が発生したとしても、同様な違反を他の被験者では発生させない(被害を最小限に抑える)。

リスクの発生を防ぐ手段として「システム」で防ぐ方法がある。

簡単な例で言うと社内や院内でSOPを作る。

「ここでこういうステップを踏んでおかないと、こういう事故が発生する可能性がある。確率が高まる。だから、絶対に、こういうステップを踏んでね」ということだ。


「医療におけるリスクマネジメント」という資料もある。
   ↓
http://www.nsweb.biz/blog/


「治験におけるリスクマネジメント」で検索すると次のようなサイトがヒットする。
   ↓
http://jp.fujitsu.com/solutions/life/gcp/


まだ、治験におけるリスクマネジメントはそれほど研究されていないようだ。

JSQA(日本QA研究会)の今期の活動の中に次のものがある。
   ↓
http://www.jsqa.com/whats/Theme_GCP_20120830.pdf


*******************

各業務へのRisk-based Approach の導入

治験におけるrisk の洗い出し方、及び重要risk を回避しながら適正品質を達成する。

Risk-based Approach の各業務への導入方法の検討。

*******************


確かに、事前に可能性のある治験のリスクを洗い出すことからリスクマネジメント、リスクコントロールは始まる。

人はミスをするものだ、という前提に立ってモニタリングをする。

モニタリング部門は過去にどのようなGCP違反、プロトコル逸脱があったかを他のチームなどから情報収集する。

また、自分たちが担当するプロトコルやCRFを分析して、どこで逸脱が起こりやすいか「事前に」検討しておく。

そして、その逸脱を防ぐにはどのようなモニタリングを行えばいいかを決める。

CRCも同様だ。


場当たり式に、問題が発生したら、それに対応していると、全てが後手後手に回り、それがさらなる問題を発生させてしまう「負のスパイラル」に陥ってしまう。

大事なことは「事前に予測し、それを未然に防ぐシステムを構築すること」だ。

プロトコルで特殊な検査があったり、忘れられそうな検査があった場合、必ず3日前には自動的にメールが治験責任医師や治験分担医師、CRCに配信されるシステムを作っておく。


iPadを立ち上げると、今日、実施すべきプロトコルの項目が自動的に表示される。

治験薬の誤投与が起こらないように、事前に治験薬の箱と被験者識別コードにバーコードを貼り付けておく。


そもそもプロトコル逸脱が発生しやすい非現実的なプロトコルを作らない、ということも大事だ。

CRFのデザインも、プロトコル逸脱を防ぐように作成する。


大事なことは「リスク」は「可能性」だということ。

その可能性が現実化する確率をいかにして少しでも低くするかが、治験におけるリスクマネジメントだ。



「女房が宇宙を飛んだ」という本がある。

これは日本人女性として初めて宇宙に行った向井千秋さんの旦那が書いた本だけど、この中に「NASA」の徹底したリスクマネジメントのことが書かれている。

NASAの職員が宇宙飛行士たちに何が不安かを尋ねる。

たとえば飛行士が「シャトルが飛び立った瞬間に爆発したら、僕らは逃げることができるのか」と心配すると(リスクを感じると)、そういうリスクに対する対応方法を逐一、考えて飛行士に提示していく、というものだ。

こういうやりとりをシャトルが飛び立つ瞬間まで繰り返し、繰り返し、行う。

何故なら、飛行士の命がかかっているからだ。


治験だって患者の命がかかっている。

NASAと同じリスクマネジメントをしない理由があるだろうか?




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