2012年10月30日

モニターがやるべきこと(治験薬概要書を読む)

「治験薬概要書」を毛嫌いするモニターがいるが、それではいけません。

この「治験薬概要書」に治験薬の全てが書かれているのですから。

プロトコルのところでも書いたけれど、そもそも、この治験薬の存在意義が書かれている。

じっくり読んで、自分がまず納得する。

「何故、この治験薬を開発する意義があるのか?」だ。

そのために「背景」をしっかり読む。

その背景を読んだら、次は、治験薬概要書の一番、最後の項目を読む。

普通、治験薬概要書の最後には「データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス」が書かれているはず。

ここに治験薬の有効性と安全性の「まとめ」が(普通は)書かれています。

その治験薬概要書が作成された段階で得られているデータの概略が書かれているので、そこをしっかりと理解、暗記する。

ちなみに、ICH-GCPでは、この「データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス」には「治験薬を過剰投与した場合の対処方法」も記載されることになっているんだけれど、知ってた?

下記のPDFの50ページの下から2行を見てみよう!
   ↓
http://www.jmacct.med.or.jp/report/files/ICH-GCP.pdf


このガイダンスを読んだら、治験薬概要書の最初に戻ります。

まず、治験薬の化学的、物理的性質が記載されているので、ここでは「安定性」を確認する。

室温で保存なのか、冷蔵保存なのか、さらに「使用期限」(有効期限)などはここに関連して記載されている。

水に溶けるのか、アルコールに溶けるのか、なども忘れずに読む。

このあたりを薬剤部の方に質問されることが多い。


治験薬概要書の次の箇所からはひたすら「非臨床試験」のデータが記載されている。

ここを飛ばさないように!

ここに「有効性」の根拠と予測される「危険性」がある。

「薬効薬理」と一般に呼ばれている試験に、この治験薬の有効性を確認した動物実験のデータがある。

どんな動物を使って、どのような試験を使って有効性を確認したのか、を確認します。

場合によっては、「薬効薬理」が無い場合もある。

たとえば「更年期障害」のように「人間の自覚症状」に対する治験薬などは動物実験では確かめられないね。


次に「一般薬理」と呼ばれている箇所に、薬効とは直接関係しないけれど、発現する生理作用が記載されている。

これは、人によっては「副作用」になるので、しっかりと読もう。

この治験薬を投与すると血圧は上がるのか、心拍数は増えるのか、行動は活発化されるのか、等。


そして、各種「毒性試験」が記載されている。

そもそも、この治験薬は蓄積性があるのか、急性毒性にはどのようなものがあるか、慢性毒性はどうか、がん原性はどうなのか、など等。

これれは直接、人間に対する毒性にも関連しているので、しっかりと読もう。


動物実験のデータが終わると、次が「臨床試験」。

もちろん、その治験がフェーズ1の単回試験なら、その前に行われた臨床試験は無いけれど、それ以外は全ての臨床試験のデータが簡潔にまとめられている。

このあたりは、治験責任医師等に治験の概略を説明するときに使えるので、全て、暗記する。(せめて、どのページに、どんなデータが記載されているかぐらいは最低限、覚えておく。)

海外での臨床試験を既に実施しているなら、その海外データも記載されているので、それも要注意。

日本人のデータと海外データとの間に差があるのか無いのかがポイントだ。



こうして、自分が担当する治験薬の全てを理解する。

そこには(繰り返すけれど)、治験薬の存在意義が記載されているので、そこを自分で納得しないと治験を担当するモチベーションが下がる。

しっかりと、存在意義を理解して、納得しよう。

自分が存在意義を感じていないのに、治験責任医師に治験を勧めることなんて、できっこない。


次はCRF(症例報告書)を確認しよう。




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