●(3)メンバーの能力を引き出す
●(4)メンバーのモチベーションをあげる
まず●(3)メンバーの能力を引き出す
メンバーのやる気を引き出す方法
★メンバーはどんな時に「やる気」を感じるか?
・チャレンジグな目標を達成したとき
・おもしろい仕事をしているとき
・高い評価を得たとき
これらは「効力感」(無力感の対義語)というキーワードでくくれる。
★どんな時に「やる気を失う」だろうか?
・否定的な言動が多い
・コミュニケーションが少ない
・言うことがコロコロ変わる
マネジメントとは「メンバーを通して目標を実現するために、メンバーのやる気と能力を引き出しながら、計画、実行、フィードバックを繰り返す一種の活動」と言える。
モチベーション・マネジメントは「マネジメント動機」「メンバーへの関心」「コミュニケーションの技術」の三要素から構成されている。
●「モチベーション・マネジメント」を行う方法の紹介
1)「希望の法則」・・・3つの「うまくやれそうだ」と思わせる方法・・・これが無いと「無気力」になる。
原理(1)頑張れば上手くいく
・技術1「明確なフィードバック」を繰り返す
*フィードバックを与えるタイミングを間違わない・・・「その時、その場」で、一言でもいいから。
*フィードバックのレベルに明確な段階をつける・・・頑張ったら、それなりに。
*言葉で明示的に行う
・技術2「フィードバックのTPO」を考える
*声のトーン
*態度
*場所
原理(2)十分にやれそうだ
・技術3「達成可能な到達目標を設定する」
*目標の水準・・・不可能な目標はかえってやる気を削ぐ、あきらめを誘う
*目標の達成状況をはかるメジャー(評価基準)も注意する
*目標未達者にこそ、フィードバックを早め、早めに必要
*不満は不満で全てを吐き出させる。すると不満ばかり言っている自分がいやになる。そして、その反動で建設的な行動にでる。これをカール・ロジャースが「指示しないカウンセリング」として「人は受容してもらうと、本当にしたいことに行き当たる
・技術4「下位目標の設定を工夫する」
*大きな目標に対しては適切なマイルストーンが必要
*本人にマイルストーンを決めさせる
*必要に応じてアドバイスを与える
*適宜、マイルストーン達成度を調べる
*優先度が同じなら、成功する確率が高いものからやらせる
・技術5「気が楽に持てるように原因を解釈する」
*プロジェクトが失敗しても「自分に能力が無いせいだ」とは決して思わないこと
*「努力不足」も、きつい
*手ごろな理由としては「戦略がまずかった」。
*とりあえず、「運が無かった」と思う ⇒ ダメージが消えたら、本格的に失敗した原因調査にとりかかる。
*真面目で几帳面で繊細なメンバーは、こちらが思っている以上に心理的ダメージを受けている
*ここにこそ、あなたの出番がある。⇒ストレスや不安のコントロールを手助けし、働きかけてあげる。
*能力不足という思い込み⇒自信喪失⇒意欲低下・・・このサイクルを断ち切ってあげる
*失敗は「方策」が間違っていたということに気づかせる。(他の人も同様にしている、と言ってあげる。)
原理(3)何をどうすればいいかわかる
*「頑張ろう」という意識が有っても「どう頑張ればいいか」を知らない人が多い。
*「どう頑張ったらいいか」を教えてあげる。
*「やる気」を空回りさせない
*自分の採っている仕事の進め方や戦略についてしっかりとした自覚を持っているか確認する
*正しい選択をしているかをチェックしてあげる
*メンバーが困っていないかを確認する
*「何をどうすればいいか分かっている」という手段保有感を高め、効果的な仕事の進め方や戦略について自信を持てるようにする。
・技術6「手本」を目に見えるかたちで示す
*まずは自分がやってみせる
*「言葉」だけでなく「見せる」教育を意識的にやる
*ただ漠然と眺めさせているだけではだめ。まず「こうすると良い」という行動のパターンを明確に示してみせる
*また「こうすると、こんな効果がある」といった行動の結果までを必ずセットで見せる。
*例えば同行させた時に治験責任医師と交渉を行ったという「行動のパターン」と、その結果として相手のこういう反応をひきだしていたという「行動の結果」について、同行から帰ってきた時にまとめさせると良い。
*プレゼンテーションについては、話すのが上手な人はどのような工夫をしているかという「行動のパターン」と、その結果、聞き手にどんな印象を持たせたかという「行動の結果」の二つについて、ミーティング形式で話あわせるのも教育研修方法として有効
・技術7「自分が使っている方略を自覚させる」
*「自分はどこでつまずいているか」「いったいどこに問題があるのか」という質問に対して、すぐに答えられるか?
*「自分はどこがわかっていないのか自分でもわからない」
*せっかくノウハウを伝授しても、自分でうまくいったかどうかを把握できないと効を奏さない。
*うまく行っている人も「どうしてうまく行っているか」が分からないと、さらに良くしたり、次回に生かせない。
*自分の仕事を認識しながらやらせる「今のプロジェクトはその方法でうまくいくのか?」や「つまずいているとしたら、どこに問題があるかを自覚できているか?」という質問が有効
以上の方法を使って、メンバーに「うまくやれそうだ」と思ってもらいましょう。
次に●(4)「メンバーのモチベーションをあげる」です。
●●● リーダーシップの条件 ●●●
原則1.自分を「カンパニー」ととらえる
優れたリーダーは強い自立心を持っている。
自分をカンパニーととらえ、日々、経営努力を積み重ねエクセレント・カンパニーを作ろうとしている。
あなたが優秀なリーダーになりたいなら自分自身をひとつの株式会社に置き換えて考えてみてはどうだろうか?
●●● モチベーションをマネジメントする ●●●
リーダーがチームのモチベーションをアップするうえで、まず取り入れなければならない考え方、それは「モチベーション・マーケティング」という発想である。
言うまでも無く、マーケティングとは、企業や市場や顧客といった外界を把握するために行う活動である。
「誰をターゲットに」「どんな商品やサービスを」「どこで、いくらで、どのような方法で」提供すれば受け入れられるのかを分析することで、企業は課題を明確化して適切な戦略を打ち立てる。
ここでは、このマーケティング活動を、企業の内に対しても行うべき時代が到来したことを強調したい。
かつては、社員のモチベーション状態を把握する必要性そのものがなかった。
年功序列や終身雇用という仕組みによって、企業と個人がお互いに「縛り合う関係」を育んできたため、「組織への忠誠心」を社員から引き出すことは容易なことだった。
しかし、今は、企業と個人がお互いに「選び合う関係」=人材流動化の時代である。
一度採用した社員であっても、企業がその組織に属するに値する魅力を提供し続けることができなければ、モチベーションを低下させ、やがては組織外への流出を招くこととなってしまう。
リーダーに求められているのは、モチベーション・マーケティングによって、メンバーが組織に「何を求めているのか」「何に満足しており何に不満を抱いているのか」というモチベーションの方向や強弱の状態をしっかりと把握することが必要だ。
●魅力的な目標や報酬を掲げる
V.ブルームの『期待理論』によれば、人間のモチベーションは「目標の魅力」X「達成可能性」で決まるとされている。
企業組織では「報酬の魅力」X「獲得可能性」と置き換えてもいいだろう。
自分にとって魅力のないものに対して、人はエネルギーを使おうとしない。
また、「達成可能性(獲得可能性)」は、「成し遂げられそう」「手に入れられそう」という実感のことであり、この実感が行動の喚起には大切になる。
逆に「絶対に無理だ」と思ってしまう目標などは掲げる意味がない。誰も意欲がわかないだろう。
しかし、達成が簡単な目標でも、それが社会のなんのためにもならない目標であれば、これまた意欲がわかないだろう。
だからリーダーは「目標の魅力」X「達成可能性」を上手に活用すべきだ。
リーダーが、モチベーション・クリエイターになるには、メンバーに対して、目標の魅力を高めるように働きかけを行う必要がある。
メンバーが「やりたい」と思えるような目標を設定してやること、あるいはメンバーがどうしても手に入れたいと思えるような報酬を設定してやることだ。
「やれる」「やれそう」と思えるように、能力を引き出してやる。
そのような支援行動を惜しまないことだ。
●「目標の魅力」を高める処方箋
▼ラダー効果(ハシゴの利用)
上位の目標を示すことで、部下自身の業務を「意味づける」ことは特に重要だ。
人は「意味がない」ことに対して意欲を持ち得ない。
部下が仕事の意味を見失ってモチベーション低下に陥っている場合には、仕事を上位概念でとらえ直させてやることが有効である。
リーダー自身も、部下に目的や背景をしっかり伝えて仕事をさせているか、確認する必要がある。
仕事の意味を伝えるためには、「抽象化」という技術が欠かせない。
ここでは「抽象のハシゴ」という考え方を利用する。
たとえば「リンゴ」を、すこしずつ上位の概念でとらえてみよう。
概念をワンステップ上がると、「リンゴ」は「果物」としてとらえることができる。
もうひとつ上がると「食べ物」という概念に、さらにもうステップ上がると、「人間が生きるために不可欠なもの」という抽象化が可能となる。
これと同じことを仕事に対して行うのである。
「SDV」という仕事は「モニタリング」という概念にもち上げられる、さらに「モニタリング」の上として「治験」があり、さらにその上には「新薬開発」があり、さらに「疾病の苦痛を取り除く薬の開発」というのがある。
「SDV」がとても大変な仕事で、「私は何のためにやっているのだろう?」と疑問に思ったら、「患者の苦痛を取り除く新薬を開発するためだ」と思うと、モチベーションがアップスすることが多い。
リーダーがメンバーの仕事のとらえ方を変えるアプローチを行うことで、仕事への取り組み方や成果は格段に変わるだろう。
●達成可能性を高める工夫が必要
▼マイルストーン効果・・・途中目標を明確に設定する
目標を達成したときの喜びは、次の目標に向けて高いモチベーションを発揮するための原動力となる。
そこで、リーダーには、達成に至るまでの「道のり」をメンバーに示すことが求められる。
目標達成までのプロセスを明確化し、途中途中に「マイルストーン」を置いて小目標を設定させるのである。
何をいつまでに達成すればよいのか、という小目標の達成を積み重ねることが、最終的な目標や成果に近づくことになるからだ。
小目標を設定するうえでは「数値化」「点数化」が有効な手法である。
例えば「3ヶ月でCRF20例分、回収」という目標が与えられたとする。もし3ヶ月先のゴールしか決まっていなければ、メンバーには「まだ3ヶ月先だ」という油断が生じ、スタートダッシュはおのずと遅くなる。
しかし、3ヶ月先のゴールから遡って、「今、何を行動すべきか」「いつまでにどこまで実現するか」を考えれば、目標設定のその日から目標に向かって走りだすことができる。
小目標を周囲に宣言させ、状況をともにモニタリングすることも、達成へのモチベーションを引き出す秘訣である。
▼フィードバック効果・・・取組み結果を評価する
たとえば、プレゼンテーションがうまくなりたければ、自分の姿をビデオに撮って見るのが一番良い方法である。
その他のビジネスでも同様の効果を発揮すべく、リーダーは、適切なフィードバックでメンバーの客観的な評価を伝える必要がある。
「できているつもりの自分」と「実際の自分」のギャップが分かるとモチベーションアップに繋がる。
リーダーは、賞賛するにしても、修正に向けた指導を行うにしても、「正確に、客観的な自分の評価」を信頼してもらう必要がある。
そのためには、リーダー自身が尊敬される仕事の進め方をする。
また、「即時性」も重要な要素だ。
「半年前の会議で、こう言っていたが、あれはよくなかった」と言われても、その指摘を素直に受け止められるメンバーはいない。
「なぜ、そのとき指導してくれなかったのだろう」と思うだけだ。
正確に即時にフィードバックしてくれるリーダーが、メンバーの成長した意欲をかきたて、実際に大きく成長させていく。
●週刊「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
●日刊「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
●医薬品ができるまで(治験に関する話題)
●塚田 淳彦 (ホーライ) facebook
http://www.facebook.com/atsuhiko.tsukada