特に「植物由来」の薬について見ていきたいと思います。
「ベルベリン」
ベルベリン(berberine)とはキハダ(ミカン科)やオウレン(キンポウゲ科)などの植物に含まれるベンジルイソキノリンアルカロイドの1種。
ベルベリンという名前は、メギ科メギ属の属名(Berberis)に由来する。
対アニオンの種類の違いにより、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、タンニン酸ベルベリンなどが知られる。
いずれも抗菌・抗炎症・中枢抑制・血圧降下などの作用があり、止瀉薬として下痢の症状に処方されるほか、目薬にも配合される。タンニン酸ベルベリンを除いて強い苦味がある。
僕がOTCメーカーで働いていた頃、「タンニン酸ベルベリン」を配合した「止瀉剤」(下痢止め)を作っていた。
僕は胃腸が弱かったので、よく「下痢」をして、この「タンニン酸ベルベリン」を配合した「止瀉剤」(販売名:ネオゲドミン)を愛用していた。
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http://www.yoshidapharma.com/product.htm
「止瀉剤」の逆の「瀉下薬(しゃげやく)」(所謂、下剤)として使われる「センノサイド」。
センノサイドは「センナ」の成分。
センナとは、マメ科ジャケツイバラ亜科の植物である。
生薬名としては本種の小葉を指す(日本薬局方での基原植物の定義による)。
生薬としての「センナ」は瀉下剤である。
薬理成分のセンノシド (sennoside) が腸内で分解され、瀉下効果を示す。
このセンノシドを成分としたソルダナ、プルゼニドといった多数の医薬品(いずれも商品名)もあり、胃のレントゲン検査後のバリウム(正確には硫酸バリウム)排泄の目的や便秘症に用いられる。
僕も毎年、健康診断でバリウムを飲んだあと、必ず、プルゼニドを飲まされています。
「ジギトキシン」も植物由来の薬としては外せない薬だよね。
ジギタリス (Digitalis) は、オオバコ科の属の一つ。
地中海沿岸を中心に中央アジアから北アフリカ、ヨーロッパに20種あまりが分布する。
一・二年草、多年草のほか、低木もある。
園芸用に数種が栽培されているが、一般にジギタリスとして薬用または観賞用に栽培されているのは、D. purpurea種である。
ジギタリスには全草に猛毒があり観賞用に栽培する際には取り扱いに注意が必要である。
ジギタリスの葉を温風乾燥したものを原料としてジギトキシン、ジゴキシン、ラナトシドCなどの強心配糖体を抽出していたが、今日では化学的に合成される。
古代から切り傷や打ち身に対して薬として使われていた。
1776年、英国のウィリアム・ウィザリングが強心剤としての薬効を発表して以来、うっ血性心不全の特効薬として不動の座を得るに至っている。
ただし猛毒があるため、素人が処方すべきではない。
日本薬局方ではジギタリスの一種 Digitalis purpurea が医薬品として収録されている。
これはハトを使って効力を定量した「ジギタリス単位」という単位で効力を表示する。
詳細な定量方法は、日本薬局方を参照のこと。
「ジギタリスを使いこなせてこそ漢方医」という話もある。
「ノスカルピン」
ノスカピン(Noscapine)はモルヒネと同じくけしの液汁(アヘン)に含まれる植物アルカロイド性の成分。
ケシの未熟果実に傷をつけて滲出する乳液を乾燥したものをアヘンと言い、その主成分は麻薬のモルヒネです。
アヘンにはモルヒネ以外にも多くのアルカロイドが含まれています。
アヘンから単離された成分としてもっとも古いのがノスカピンで、1803年に単離されています。
当時は、アヘンの麻酔・鎮痛作用の成分と考えられて、麻酔睡眠薬を意味するnarcoticからナルコチン(Narcotine)と命名されました。
しかし、この成分には麻酔作用や鎮痛作用は無いことが明らかになり、ナルコチンの名称は不適当として、ノスカピンと改称されました。
アヘンに含まれるアルカロイドでは、ノスカピンはモルヒネについで2番目に多く含まれています。
薬としてはノスカピンには麻酔・鎮痛作用や依存性は無く、強い鎮咳作用があります。
ノスカピンは脳の咳中枢を抑制することによって鎮咳作用を示しますが、麻薬系の咳止め薬と異なり、呼吸を抑制することなく、また習慣性も無いので、『非麻薬性中枢性鎮咳剤』に分類されている医薬品です。
咳止め(鎮咳薬)としては1950年代から多くの国で使用されています。
次に「ガランタミン」。
ガランタミン (ニバリン、ラザダイン、レミニール、リコレミン)は軽-中度のアルツハイマー病や様々な記憶障害の治療に用いられる薬剤である。
特に脳血管障害を原因とするものに有効。
Galanthus属-スノードロップや他のヒガンバナ科植物(Narcissus属スイセン, Leucojum属-スノーフレーク、Lycoris属-ヒガンバナ)の球根や花から得られるアルカロイドである。
人工的に合成することもできる。
現代医学での利用は1951年に始まり、ソ連の薬学者MashkovskyとKruglikova-Lvovaによって行われた。
この2人によってガランタミンのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用が証明された。
東欧、ソ連では長い間、重症筋無力症、ミオパチー、中枢神経疾患に関連する感覚・運動機能障害などの治療に用いられている。
米国でもアルツハイマー治療薬としてFDAに承認されている。
精製されたガランタミンは白い粉末状物質である。
可逆的なコリンエステラーゼ阻害剤であり、競合的拮抗薬である。
つまり、AChEの活性を低下させることで脳内アセチルコリン濃度を増加させ、アルツハイマーの症状を改善させると考えられている。
「コルヒチン」
コルヒチン(colchicine)とはユリ科のイヌサフランの種子や球根に含まれるアルカロイドである。
リウマチや痛風の治療に用いられてきたが、毒性も強く下痢や嘔吐などの副作用を伴う。
現在は主に痛風に用いられる。
また種なしスイカの作出にも用いられる。
ちなみに種なしぶどうの作出には「ジベレリン」を用いる。(ジベレリンは植物ホルモン。日本人が発見し構造決定した。)
イヌサフランはシチリア出身のローマ帝国の医者ペダニウス・ディオスコリデスの『デ・マテリア・メディカ』(『薬物誌』)において痛風に効くと記載されている。
その有効成分であるコルヒチンは1820年にフランスの化学者ピエール=ジョセフ・ペルティエとジョセフ・カヴェントゥによって初めて分離され、のちにアルカロイドとしての構造が明らかにされた。
微小管の主要蛋白質であるチューブリンに結合して重合を阻害し微小管の形成を妨げる。
細胞分裂を阻害するほかに、好中球の活動を阻害し抗炎症作用をもたらす。
痛風における疼痛抑制と抗炎症効果はこれによると考えられている。
コルヒチンは植物の細胞分裂時に染色体の倍加(染色体異常)を誘発する作用がある。
これを利用して種なしスイカ、あるいはその他の育種のための四倍体や倍化半数体の作出にも用いられる。
また、細胞分裂を阻害し、細胞分裂中期で分裂を停止させる性質を利用して核型の診断にも用いる。
「キニーネ」
キナ(機那)の樹皮に含まれるアルカロイド。
マラリア原虫に特異的に毒性を示すため、マラリアの特効薬として第二次世界大戦頃までは極めて重要な位置づけにあった。
その後、キニーネの構造を元にクロロキンやメフロキンなどの抗マラリア薬が開発され、キニーネは副作用が強いため代替されてあまり用いられなくなった。
しかし、熱帯熱マラリアにクロロキンやメフロキンに対して耐性を持つものが多くみられるようになったため、現在ではその治療に利用される。
また強い苦味を持つ物質として知られている。そのため、トニックウォーターに苦味剤として添加される。
日本では、劇薬に指定されている。
キナ属の植物は南米のアンデス山脈に自生する植物であり、原住民のインディオはキナの樹皮を解熱剤として用いていた。
マラリアはアメリカ大陸にはもともと存在しなかったが、後にヨーロッパ人の渡来とともに拡散したと推定されている。
その後偶然にキナ皮にマラリアを治療する効果が発見され、1640年頃にヨーロッパに医薬品として輸入されるようになったと思われる。
最近、「顧みられない熱帯病」に対する新薬の開発が流行で、たとえばアステラスでは次のプレスリリースを発表している。
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http://www.astellas.com/jp/corporate/news/pdf/120920_jp.pdf
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