特に「植物由来」の薬について見ていきたいと思います。
柳から発見された「サリチル酸」の話は有名だよね。
ヤナギの薬理作用については、ヒポクラテスの書物に登場するほかにシュメール、レバノン、アッシリアの文書にも登場する。
また、チェロキー族などのアメリカ原住民もヤナギの仲間を解熱・鎮痛に用いていた。
日本でも「歯痛には柳楊枝」として知られていた。
1763年、イギリスの司祭エドマンド・ストーンが柳の解熱作用を再発見。
その後、1830年にフランスの薬剤師アンリ・ルルー (Henri Leroux) とイタリアの科学者ラファエレ・ピリア (Raffaele Piria) が解熱成分(サリチル酸の配糖体)を分離してサリシン(ラテン語: salix 「柳」から)と命名。
その後ピリアはサリシンを分解して新物質を発見、サリチル酸と命名した。
このサリチル酸からアスピリンが誘導体として合成され、今に至っているというわけです。
次にイタリア語で「美くしいマドンナ」という名前の「ベラドンナ」。
「ベラドンナ」はナス科オオカミナスビ属の草本。
和名は、オオカミナスビ、オオハシリドコロ、セイヨウハシリドコロ。
何故、「美くしいマドンナ」という名前がついたのかというと、昔から女性が瞳孔を散瞳にさせるための点眼薬として、この実のエキスを使用したことに由来する。
今でも「瞳」を大きく見せるコンタクトレンズがあるものね。
(「瞳」が大きいと「美しい」というわけでもないと僕は個人的には思うけれど。)
なぜ、ベラドンナの抽出物が瞳を開くのか?
そんな疑問から発見されたのが「アトロピン」。
アトロピンは抗コリン作用を有しているので散瞳するわけです。
ちなみにアトロピンは「サリン事件」の時に治療薬としても使われた。
アトロピンは天然ではl-ヒヨスチアミンとして存在する。
他の抗コリンアルカロイド同様、主にナス科の植物に含まれる。
たとえば、「ハシリドコロ」 「ベラドンナ」 「チョウセンアサガオ」など等、
ベラドンナの花が過ぎた後に緑色の実をつけ、1 cm ほどに膨らんで、黒色に熟していく。
この実は甘いといわれるが、猛毒を含んでいるため絶対に食べないように!
「ベラドンナ」の「花ことば」は「沈黙」だ。
植物からちょっと外れるけれど、「ヒルジン」を思い出したので書きます。
「ヒル」っていますよね?
都会育ちの方は知らないかな?
ミミズみたいな奴で、川の中や山の雑草の中にいて、そっと人間の足などに吸い付いて血を吸う奴です。
その「ヒル」って治療にも使って時代が長い。(これを「医用ヒル」という。)
ヒルは「瀉血(しゃけつ)*」として使われていたらしい。
で、そのヒルジン(またはヒルディン:Hirudin)はヒル(医用ヒルHirudo medicalisなど)の唾液腺から分泌されるポリペプチドで、トロンビンを阻害することにより血液凝固を妨害する。
これによりヒルは吸血を続けることができ、またヒルに噛まれた痕は止血しにくい。
抗凝固剤として用いることもある。
*瀉血(しゃけつ)とは、人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法の一つである。古く中世ヨーロッパで広く行われたが、医学的根拠はほとんどの場合は無く、迷信による治療であった。
次に甘草(かんぞう)です。
新潟大学医学部の教授(法医学)で俳人でもあった「高野素十」の俳句に「甘草の芽のとびとびのひとならび」という名作がある。高野素十は写実主義の俳人だ。
甘草は漢方薬に広範囲にわたって用いられる生薬であり、日本国内で発売されている漢方薬の約7割に用いられている。
で、その甘草から発見されたのが「グリチルリチン」。
グリチルリチンはスクロース(砂糖)の30から50倍の甘みを持つといわれる。
特に消化性潰瘍や去痰薬としての効果がある。
グリチルリチンのアグリコンであるグリチルレチン酸は、消化性潰瘍の治療に効果がある。
「強力ミノファーゲン」(ミノファーゲン製薬)は「グリチルリチン酸モノアンモニウム」が主成分で「強力ミノファーゲン」は肝炎の治療薬として以前より広く使用されてきた。
長期使用が可能で、適応範囲が広く、且つ副作用が少ないことから、今でもインターフェロンのすぐ次の選択となっています。
さて、お次は「レセルピン」です。
レセルピンは1952年にチバ社(現在のノバルティス)で「インドジャボク」から発見され、1954年に精神分裂病(現・統合失調症)の治療薬として実用化された。
レセルピンの発見は、ほぼ同時に発見されたクロルプロマジンと共に精神科病院の「閉鎖病棟」を開放する大きな要因となった。
だが、パーキンソン症候群という副作用が大きいため、現在では血圧降下剤としての用途が中心である。
レセルピンはアドレナリン作動性ニューロン遮断薬の一つ。
シナプス小胞へのカテコールアミンやセロトニンの取り込みを抑制し、その結果、これらがシナプス小胞内において枯渇することによって作用する。
インドジャボク(印度蛇木)とは、キョウチクトウ科の植物の一種。別名は、ラウオルフィア。
インド周辺に自生し、根の形がヘビのようであるからインドジャボクという。また、ヘビの咬傷に用いるからという説もある。
さらにインドジャボクからは「アジマリン」という化合物も発見されており、『発作性心房細動や発作性頻脈の予防・期外収縮(上室性および心室性)・新鮮心房細動』に効果があります。
本当に植物は薬の宝庫だね。
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