●「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」について」(事務連絡:平成24年9月5日)が出ました。
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●「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」について」
なお、参考になる資料としては以下の通知もあります。
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●「国際共同治験に関する基本的考え方について」(薬食審査発第0928010号:平成19年9月28日)
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●「国際共同治験に関する基本的考え方について」
さらにICHのE5の「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて」等もご一緒にお読みください。
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●「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて」
●「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」に関するQ&Aについて
●「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」に関するQ&Aについて(その2)」
では、早速、「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」について」の「はじめに」を見てみましょう。
★★★ 以下引用 ★★★
我が国が参加する国際共同治験の経験は、平成19年に「国際共同治験に関する基本的考え方について」(平成19年9月28日付薬食審査発第0928010号、厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)が通知されてから着実に増加しており、近年では、欧米との国際共同治験だけでなく、日中韓等の東アジア地域での国際共同治験も増加している。
また、我が国と海外との連携内容も、開発の初期段階からの国際共同治験の実施や数千例を超える大規模国際共同治験への参加等多様化しつつある。
医薬品の国際開発が進む中で、国際共同治験、特に東アジア地域における国際共同治験が円滑かつ適切に実施されることは、得られた結果の評価を行う規制当局にとっても重要な課題である。
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う〜〜ん、日中韓等の東アジア地域での治験が増えつつあるんですね。
そりゃそうですよね、人種が近いから。
できたら、東アジアで実施した治験のデータを日本でもそのまま「日本人のデータの代わりに」使いたいという思いもありますからね。
それに、中国は巨大な医薬品市場ですから。
中国ですぐに申請するためにも、中国人のデータは必須ですぜ。
過去の海外治験は主として欧米でしたが、昨今は、東アジア地域での治験が増えているのが特徴。
その他にも数千例を超える大規模国際共同治験を行っている企業もあるようです。
焦りますね、国内治験だけでも「フーフー」言っている製薬会社は。
★★★ 以下引用 ★★★
●1.東アジア地域での国際共同治験に関する留意事項
★1) 東アジア地域で国際共同治験を実施するにあたって特に留意する事項はあるか。
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日中韓等の東アジア地域の民族間では、代謝酵素における遺伝子多型の種類と頻度あるいは遺伝子プロファイルが類似していると考えられ、近年では、東アジア地域での国際共同治験を主たる臨床試験結果として承認された医薬品もある。
したがって、十分な検討に基づき計画され、実施された東アジア地域での国際共同治験の結果を、本邦での承認申請資料として受け入れることは可能である。
しかしながら、東アジア民族間においても民族的要因(内因性民族的要因のみならず、医療習慣や社会経済的要因等の外因性民族的要因も重要)の差異が、医薬品の有効性及び安全性(データそのものだけではなく、評価に及ぼす影響も含む。以下同様)に影響を及ぼす可能性はあるため、東アジア地域で実施する治験であっても、欧米諸国と実施する国際共同治験の場合と同様に、民族的要因の差異が医薬品の有効性及び安全性に及ぼす影響について予め十分に検討した上で、国際共同治験を計画し実施する必要がある。
特に、東アジア民族を一つの集団と捉えて検証的な治験を実施しようとする場合には、予め十分なデータや情報を収集した上で日本人と他の東アジア民族間における民族的要因の影響について検討し、その結果を踏まえて適切な仮説に基づく試験計画を策定することが適切であり、臨床薬理学的試験を別途実施することで有用なデータが得られる場合もある。
具体的な試験デザイン、評価方法等については、事前にPMDAの対面助言で相談することが推奨される。
今後、東アジア地域における科学的データや情報をより集積し検討することで、民族的要因の差異に関する理解が深まり、東アジア地域における国際共同治験をより円滑かつ適切に実施することにつながると考えられる。
このような検討を積み重ねることによって、東アジア地域を含む臨床開発の効率化と質の向上が期待され、最終的には、本邦の承認申請に東アジア地域で実施された国際共同治験の結果をさらに利用しやすくなるものと考えられる。
したがって、開発計画の中に東アジア地域における国際共同治験を含めることも検討し、東アジア地域での情報を集積することが望まれる。
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うむ。
つまり、単純に東アジアで治験を実施したからと言って、そのデータをそのまま日本の申請に使われるとは限りませんからね、とまず釘が刺されています。
ところで、こういう通知類は日本語的に分かりにくくなっています。
何故なら、単文ではなく複文になっているからですね。
何故、こんなに分かりにくくなっているかというと、簡単に分かってしまうとお役人さんが困ってしまうからです(冗談だよ!)
そういう場合(文章が分かりににくい場合)は、できるだけ節ごとに区切って、箇条書きにすると分かりやすくなります。
上記の引用部分を箇条書きにしてみましょう。(途中で、僕が茶々を入れています。)
●近年では、東アジア地域での国際共同治験を主たる臨床試験結果として承認された医薬品もある。(←あるんですね!)
●十分な検討に基づき計画され、実施された東アジア地域での国際共同治験の結果を、本邦での承認申請資料として受け入れることは可能。
⇒あのね、この「十分な検討」が意味不明。
●東アジア民族間においても民族的要因(内因性民族的要因のみならず、医療習慣や社会経済的要因等の外因性民族的要因も重要)の差異が、医薬品の有効性及び安全性(データそのものだけではなく、評価に及ぼす影響も含む。以下同様)に影響を及ぼす可能性はある。
●内因性民族的要因のみならず、外因性民族的要因も重要。
⇒ここに出てきた「外因性民族的要因」とは何か?
これは、ICHのE5の「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて」を見ないと分かりません。
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●「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて」
上記のPDFのページ数で言うと14ページにあります。
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・外因性民族的要因(Extrinsic Ethnic Factors):
外因性民族的要因とは、個人が住んでいる環境や文化に関連した要因である。
外因性要因は遺伝よりも文化及び行動様式によってより強く決定される傾向がある。
外因性要因には、地域の社会的及び文化的な側面に関係するものが含まれる。
例えば医療習慣、食事、喫煙、飲酒、環境汚染や日光への暴露、社会経済的地位、処方された薬の服用遵守、並びに異なる地域の臨床試験の信頼性にとって特に重要なものとして、臨床試験の計画及び実施方法が挙げられる。
★★★★★★★★★★★★
なんて言うか、当局は通知や事務連絡を出す時は、参考すべき通知を必ず書いてあるので、それはそれで便利だし嬉しいのですが、今後は通知類のタイトルを書くだけではなく、ちゃんとリンクを張っておいて欲しいよね。
話は戻ります。
●東アジア地域で実施する治験であっても、欧米諸国と実施する国際共同治験の場合と同様に、民族的要因の差異が医薬品の有効性及び安全性に及ぼす影響について予め十分に検討した上で、国際共同治験を計画し実施する必要がある。
⇒はい、ここにも出てきました「予め十分に検討」。
●特に、東アジア民族を一つの集団と捉えて検証的な治験を実施しようとする場合には、予め十分なデータや情報を収集した上で日本人と他の東アジア民族間における民族的要因の影響について検討し、その結果を踏まえて適切な仮説に基づく試験計画を策定することが適切。
●臨床薬理学的試験を別途実施することで有用なデータが得られる場合もある。
●具体的な試験デザイン、評価方法等については、事前にPMDAの対面助言で相談することが推奨される。
⇒ということで、「予め、十分に何を検討すればいいのか?」は総合機構に相談してください。
ただ、この通知のここ以降のQ&Aを読んでいくと、ある程度、どのようなことを事前に検討すればよいかが(多少ですが)分かります。
あとね、思うのですが、もし東アジア地区で国際共同治験を行った場合、懸念されるのがCRFを作成する医師の意識。
特に「有害事象」とか「副作用」をどう捉えるのかが、随分、違うと言う話を聞いたことがあります。
その結果、「有害事象」の発生率が日本だけ突出するとかね。
このあたりも難しそう。
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