今後も、ときどき、こんなふうにある疾患について学んでいきます。
何故か?
スーパーモニターやスーパーCRCになるには、浅くてもいいので、幅広い疾患の知識が必要だからです。
何故か?
何故ならば、どんな疾患を対象としたプロトコルであったとしても、有害事象としては、なんでもありえるからです。
たとえば、「更年期障害」を対象とした治験を担当したとしても、患者さんがいつ「子宮がん」になるかわかりませんし、「糖尿病」になってしまうかもしれません。
たとえば、「高血圧」を対象としたプロトコルだとしても、患者さんが突然、「緑内障」になってしまう可能性もありますし、「肺炎」なってしまう可能性だってあります。
だから、有害事象の対応がいつでもできるように、幅広い知識を持っておいたほうがモニターもCRCもやりやすいわけです。
それに、いつでも、どんな疾患の治験でも担当できるぞ!とスタンバイしておくのが賢いモニターでありCRCです。
とまぁ、そんなこんなで、今週は「高血圧と降圧剤」についての勉強会です。
1週間を使って「高血圧と降圧剤」を学んでいきましょう。
ちなみに、僕は降圧剤を2種類、服用している。
1つは朝、「アムロジン」(カルシウム拮抗薬)で、もう1つは夜、「オルメテック」(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB))だ。
これらの薬を服用する前の血圧は大体95と150で、最初は「オルメテック」だけだったのだが、効果が薄く、90、145位を推移していた。
そこで、「アムロジン」が追加されて、今では、大体、85、135位。
食事(減塩)の指導と体重増加に注意すること、禁煙することを言い渡されている。(ちなみに、僕の母親がやはり高血圧で治療中。)
そもそも、高血圧(Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。
高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症リスクとなる点で臨床的な意義は大きい。
生活習慣病のひとつであり、肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「syndrome X」「インスリン抵抗性症候群」などと称されていた。
これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。
高血圧のガイドラインを見てみよう。
これは、「日本高血圧学会」にある。
↓
●「高血圧治療ガイドライン」
至適血圧 < 120 かつ < 80
正常血圧 < 130 かつ < 85
正常高値血圧 130〜139 または 85〜89
I度高血圧 140〜159 または 90〜99
II度高血圧 160〜179 または 100〜109
III度高血圧 ≧180 または ≧ 110
(孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ < 90
収縮期血圧が140以上または拡張期血圧が90以上に保たれた状態が高血圧であるとされている。
しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いだけ合併症のリスクが高まるため、収縮期血圧で120未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされている。
僕はI度高血圧だったわけだ。
生活習慣の修正項目
1.減塩 6g/日未満
2.食塩以外の栄養素 野菜・果物の積極的摂取*
コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える、魚(魚油)の積極的摂取
3.減量 BMI(体重(kg)÷[身長(m)×身長(m)])が25未満
4.運動 心血管病のない高血圧患者が対象で、中等度の強度の有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う
5.節酒 エタノールで男性は20-30ml/日以下、女性は10-20ml/以下
6.禁煙
生活習慣の複合的な修正はより効果的である
*重篤な腎障害を伴う患者では高K血症をきたすリスクがあるので、野菜・果物の積極的摂取は推奨しない。
糖分の多い果物の過剰な摂取は、特に肥満者や糖尿病などのカロリー制限が必要な患者では勧められない。
●高血圧の原因
高血圧は原因が明らかでない本態性高血圧症とホルモン異常などによって生じる二次性高血圧に分類される。
本態性高血圧の原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝的素因が、生まれてから成長し、高齢化するまでの食事、ストレスなどの様々な環境因子によって修飾されて高血圧が発生するとされる(モザイク説)。
★動脈硬化症による脳内酸欠:一般的に病院で高血圧と診断される大部分の原因は、上行大動脈の動脈硬化症による脳内酸欠を防ぐため、血圧が上がっている状態のことをいう。
★遺伝:両親の一方あるいは両方が高血圧であると高血圧を発症しやすい。
★塩分:日本人の高血圧の発生には食塩過剰摂取の関与が強いとされる。日本人の食塩摂取量は1日平均12gであり、欧米人に比べて多い。日本人の食塩嗜好は野菜の漬け物、梅干し、魚の塩漬けなど日本独自の食生活と関連があるが、2004年版に発行された日本の高血圧治療ガイドラインでは1日6g未満という厳しい減塩を推奨している。
食塩(塩化ナトリウム)だけでなく重曹(炭酸水素ナトリウム)などを含む食品および胃腸薬の摂取に対しても注意が必要。
食塩の過剰摂取が高血圧の大きなリスクとなるのは、身体の電解質調節システムに原因がある。
細胞外液中でナトリウムをはじめとする電解質の濃度は厳密に保たれており、この調節には腎臓が大きな役割を果たしている。
すなわち、濃度が正常より高いと飲水行動が促され、腎では水分の再吸収が促進される。反対に、濃度が低い場合は腎で水分の排泄が進む。
結果として、血中のナトリウムが過剰の場合は、濃度を一定に保つため水分量もそれに相関して保持され、全体として細胞外液量が過剰(ハイパーボレミア:hypervolemia)となるのである。
腎のナトリウム排泄能を超えて塩分を摂取している場合、上記のメカニズムで体液量が増加して高血圧を来す。
ナトリウム過剰で高血圧をきたしやすい遺伝素因も存在することが確認されている。
ストレスや肥満、飲酒なども高血圧の発症に関与するとされる。
●高血圧の合併症
高血圧が持続すると強い圧力の血流が動脈の内膜にずり応力を加えると同時に血管内皮から血管収縮物質が分泌されることで、血管内皮が障害される。
この修復過程で粥腫(アテローム)が形成され、動脈硬化の原因となる。
慢性的疾患は大きく 「脳血管障害」、「心臓疾患」、「腎臓疾患」、「血管疾患」の4つに分類され、高血圧によって生じる動脈硬化の結果、以下のような合併症が発生する。
★脳血管障害
脳卒中
脳出血と脳梗塞およびクモ膜下出血に分類されるが、高血圧と関連が深いのは前2者である。
★心臓疾患
虚血性心疾患
心筋梗塞や狭心症などの冠動脈の硬化によって心筋への血流が阻害されることで、心筋障害をきたす疾患群をいう。
高血圧が虚血性心疾患の重大な危険因子であることは間違いがないが、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、肥満などの関与も大きい。
最近は腹部内臓型肥満に合併した高血圧や高トリグリセライド血症、耐糖能異常などが冠動脈疾患のリスクであるとされ、メタボリック症候群として注目されている。
肥大、心不全
高血圧が持続すると心臓の仕事量が増えて、心筋が肥大してくる。
肥大した心筋はさらに高血圧の負荷によって拡張し、最終的には心不全に陥る。
また肥大した心筋では冠動脈からの血流も減少するために、虚血に陥りやすく、不整脈、虚血性心疾患の大きなリスクとなる。
★腎臓疾患
腎障害
腎臓の糸球体は細動脈の束になったものであり、高血圧によって傷害される。
また、糸球体高血圧がレニン-アンギオテンシン系を賦活するためさらに血圧を上昇させる。
糸球体は廃絶すると再生しないため、糸球体障害は残存糸球体への負荷をさらに強めることとなる。
最終的には腎不全となり人工透析を受けなければならず、やはり社会的、経済的な負担は大きく、その進展予防は重要である。
★血管疾患
動脈瘤
胸部や腹部の大動脈の壁の一部が動脈硬化性変化によって薄くなり、膨隆した状態を大動脈瘤という。
内径が5cm以上になると破裂する可能性が高くなるので、手術適応となる。
また血管壁の中膜が裂けて、裂け目に血流が入り込み、大血管が膨隆する状態を;解離性大動脈瘤 といい、生命を脅かす危険な状態である。
閉塞性動脈硬化症
主に下肢の動脈が、動脈硬化によって著しく狭小化するか、あるいは完全に閉塞した状態をいう。
数十メートル歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると回復する場合には、この疾患を疑う。
眼障害
高血圧性網膜症や、網膜動脈・網膜静脈の閉塞症、視神経症など様々な眼障害を合併する。
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