2012年08月04日

「GCPの解説・GCP入門」(その1)実はわがままな言い分

そもそも、何故、GCPはあるのか?

GCP=Good Clinical Practice



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(第1条より)

●被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図るため

●治験の科学的な質及び成績の信頼性を確保するため

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つまり、治験に参加される創薬ボランティアの方の人権の保護等と科学的な質等の2点をカバーするためにGCPがあるわけです。

逆に言うとGCPを守っていないということは、創薬ボランティアの人権が守られておらず、安全が確保できず、データの信頼性もない、等ということです。

では、GCPを遵守することで、何故、創薬ボランティアの人権が保護されたり、治験の科学的な質や成績の信頼性を確保できるのでしょうか?



まず、最初に「被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図る」について考えてみましょう。

たとえば、患者さんに黙って治験薬を使うことは許されるでしょうか?

あなたが患者なら、どう思います?

あなたは(僕は)高血圧の治療を●●クリニックに通院しながら行っています。

ある日、医師が「新しい薬が出たので、今日からそちらを出しますね」と言って治験薬を処方する。

今までに見たことがない薬だけど、あの先生(医師)が出したのだから、大丈夫だろうと治験薬を飲む。

ところが、その新しい薬(治験薬)を飲んだら、猛烈な「痒み」が体中を襲ってきたので、慌てて●●クリニックに駆け込んだ。

医師は「あ、体に合わなかったですかね」と言って「痒み」を治すためにステロイド剤なり、抗ヒスタミン薬を出す。

「では、また、もとの薬に戻します。」などとその医師は言う・・・・・・・。

というような回りくどい説明をしましたが、これでは患者の人権(自分の体を守る権利や、人体実験にさらされない等)を守ったことになりません。

では、GCPでは、このような場合、どのように規定されているか? どのようにして人権を守ろうとしているのか?


まず、あなたが治験に参加してもらうことが適切かどうかを医師は考えないといけません。

以下、参照

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(被験者となるべき者の選定)

第44 条 治験責任医師等は、次に掲げるところにより、被験者となるべき者を選定しなければならない。

1)倫理的及び科学的観点から、治験の目的に応じ、健康状態、症状、年齢、同意の能力等を十分に考慮すること。

2)同意の能力を欠く者にあっては、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、選定しないこと。

3)治験に参加しないことにより不当な不利益を受けるおそれがある者を選定する場合にあっては、当該者の同意が自発的に行われるよう十分な配慮を行うこと。

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医師はあなたが治験に参加して頂くことに問題が無いと判断したら、こんどは何が必要か?

そうです、あなたに対して治験の説明ですね。

以下、参照


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(文書による説明と同意の取得)

第50 条 治験責任医師等は、被験者となるべき者を治験に参加させるときは、あらかじめ治験の内容その他の治験に関する事項について当該者の理解を得るよう、文書により適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない。

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治験の説明を文書で受けて、それについて、あなたはあらゆることを医師に質問できます。

その上で、たとえば「1週間、考えさせてください」という回答も「あり」です。

さらに「やっぱり、治験には参加したくありません」という結論も、おおいに「あり」ですね。

それどころか、説明を受けて、即、「治験に参加します」という結論も、当然、「あり」です。




ちなみに、話題は真逆に跳びますが、患者は治験に参加する「権利」はあるのでしょうか?

たとえば、あなたは糖尿病の患者です。

今、現在はA病院のB医師の元で治療していますが、どうも薬の効き目がいまいちのような気がしています。

そんな折、インターネット(このご時世)で新しい作用機序の(これまでになかった効き方をする)新薬の候補が治験という形で提供されていることを知ります。

しかし、A病院はその治験に参加していないようです。

自宅から近い所ではCクリニックがその治験をやっているようです。

でも、とりあえずB医師にこう聞きます。

「先生、なんだか新しい効き方をする糖尿病の薬が開発されているようですね。私も、その新しい薬を使って治療してもらいたいのですが・・・・・・。」

B医師はどう答えるでしょうか?

「じゃ、紹介状を書くね」と素直に紹介してくれるでしょうか?

う〜〜〜ん。

どうでしょう?

その昔(と言っても10年ほど前)、ある地方の新聞に「治験に参加しませんか?」という広告を出したことがあります。(糖尿病ではありません。)

すると、どんなことが起こったと思います?

ある開業医から製薬会社に電話が入り「うちの患者が治験に参加したいと言っている。どうして、そんな余計なことを新聞で広告するんだ?そもそも、そんな話し、俺は聞いていないぞ」と・・・・・・・。

それ以来、その製薬会社では、ある地域で治験の参加を新聞で募集するときは、事前に、その地区の「医師会」に連絡して、事前に承諾を得ることにしました。




医師が、みな、上記のようなことを思っているとは思いませんが、皆無ではないでしょうね。

今では、医師のほうが率先して病院のホームページ等で治験参加者を募集してくださいますが、その病院以外の医師は快く、患者をその病院に紹介してくれるのでしょうか?

それでも、とにかく、なんとか紹介されたとしましょう。

では、これで問題無いかというと、そうは簡単にいかないですよね。

あなたが医師に「その治験に参加したいのですが」と言っても、あなたがプロトコルのクライテリアに適合しているかどうか、治験責任医師は調べるわけですね。

たとえば、「選択基準」に適合しないとか「除外基準」に抵触してしまうとかですと、あなたは治験に参加できません。

(もちろん、あなたはこのことは重々、ご承知のこととは思いますが。)

あなたは、それで納得しますか?




治験に参加したいけれど、あなたは治験に参加できません。

もちろん、その理由は(もし除外基準に抵触しているなら)、あなたの安全性を考慮して、治験に参加できないと医師は言っているわけです。

あるいは治験薬の予測される効果から(選択基準に合致していないなら)、あなたの病気にはその治験薬が効きそうもないので、治験への参加を断ってきます。

うむ。


(大きくテーマから「逸脱」したまま、明日に続く)



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posted by ホーライ at 03:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 難病に対する治験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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