2012年07月11日

こんな勉強方法もある!「新薬審査報告書」を用いて(3)

さて、有効性はどんなもんでしょうか?

報告書を見てみましょう。
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(2)国内前期第2相パイロット試験(5.3.5.2.1 E26<19●●年●●月〜19●●年●●月>)

米国リウマチ学会(ACR)の診断基準(1958年)を満たした20歳以上70歳未満の日本人RA患者(目標症例数24例)を対象に、本剤の安全性及び有効性を予備的に検討するため、非盲検非対照試験が実施された。

(中略)

GCP不適合症例(診療録未保存)3例を除く総投与症例数19例すべてが安全性解析対象とされ、本試験開始2日目に軽度の皮疹により中止した1例を除く18例が有効性解析対象とされた。

主要評価項目である有効性解析対象における医師の評価による最終全般改善度における改善率(「改善」以上を達成した症例の割合)は38.9%(7/18例;「著明改善」3例及び「改善」4例)であり、「不変」5例、「悪化」1例であった。

(中略)

以上より申請者は、本剤はNSAIDとしての薬効を期待して開発を始めたが、本治験においてNSAIDでは一般に改善が認められない炎症性パラメータ(CRP及び赤沈)の改善が認められたことから、次相以降はDMARDとして開発を進めることとしたこと、また本治験で用いた用量では副作用発現率が高く、安全性に問題があると判断したことを説明している。


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ほほほ〜〜、と感想を持ったりします。

二転三転していますね。

新薬の開発はそう簡単ではない、ということが身に沁みます。

さて、しきり直して以下のように開発が再開しています。
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(3)初期第2相試験(5.3.5.2.2 E27<19●●年●●月〜19●●年●●月>)

ACRの診断基準(1958年)を満たし、一定の活動性を有する15 20歳以上70歳未満の日本人RA患者(目標症例数36例)を対象に、本剤のDMARDとしての安全性及び有効性を予備的に検討するため、非盲検非対照試験が実施された

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ところでさ、上記のように何故、年月日がマスキングされているんだろう? と思った人はいますか?

何故でしょう。

考えてみましょうね。


それはいいとして・・・・・・・
  ↓
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GCP不適合症例(診療録未保存)6例を除く総投与症例数35例のうち、貧血の合併症により組み入れ対象として不適格と判明し投与13日後に中止した1例(当該症例は副作用及び臨床検査値異常を認めなかった)を除く34例が安全性解析対象(このうち概括安全度採用例及び随伴症状採用例は34例、臨床検査値異常変動採用例は32例)とされ、投与期間不足5例及びウォッシュアウト期間不足1例を除く28例が有効性解析対象とされた。

(中略)

申請者は、50及び75 mg/日ではいずれも50%以上の改善率を示し、特に重篤な副作用は発現しなかったことから、用量設定試験における用量幅は50〜75 mg/日とすることが妥当であると判断した旨を説明している。

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・・・・・・ということで至適用量が50〜75 mg/日というふうに決まりました。

次に「後期第2相漸増法試験」を実施しています。
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(5)国内後期第2相漸増法試験(5.3.5.2.3 E28<19●●年●●月〜19●●年●●月>)

ACRの診断基準(1987年)を満たした20歳以上80歳未満の活動性を有する日本人RA患者(目標症例数70例)を対象に、漸増法により本剤の用法を探索し、安全性及び有効性を検討するため非盲検非対照試験が実施された。

用法・用量は、本剤25 mg/日(朝食後分1)を4週間投与後に50 mg/日(朝・夕食後分2)へ増量し、さらに12週間(計16週間)経口投与することとされた。

総投与症例数79例のうち、GCP不適合症例(診療録未保存)2例及び完全解析除外例5例(除外基準違反1例、4週未満の脱落3例<症状悪化2例、合併症発現1例>、4週以降来院無し1例)を除く72例が安全性解析対象(このうち概括安全度採用例は69例、副作用採用例は68例、臨床検査値採用例では65例)とされ、GCP不適合症例6例(診療録未保存2例及び治験実施施設の不適合4例)及び完全解析除外例5例を除く68例が有効性解析対象(このうち最終全般改善度採用例は8週未満脱落例等を除外した60例)とされた。


(中略)

申請者は、本剤25 mg/日(分1)を4週間経口投与後に50 mg/日(分2)に増量する漸増投与法は、安全性及び有効性を担保し得る投与法であると判断した旨を説明している。

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ところで、上記を見ると、ここまで治験が「非盲検非対照試験」で行われていますね。

どうしてでしょうか?

考えてみましょう。


さて、いよいよ「国内第3相比較試験」です。
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ACRの診断基準(1987年)を満たし、活動性を有する20歳以上の日本人RA患者(目標症例数:本剤群134例、SASP群134例、プラセボ群67例、計335例)を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討するため、プラセボに対する優越性及びサラゾスルファピリジン(SASP)に対する非劣性を検討するため無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施された。

用法・用量は、本剤については投与開始4週間までは25 mg/日(分1)、5週以降は50 mg/日(分2)、SASPについては1000 mg/日(分2)と設定され、ダブルダミー法により28週間経口投与することとされた。

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うむ。

フェーズ3では「無作為化二重盲検並行群間比較試験」でやっていますね。

その結果が以下のように記載されています。
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総投与症例数376例(本剤群147例、SASP群156例、プラセボ群73例)のうち、GCP不適合4例(治験実施施設不適合)、GCP不遵守1例、観察項目又は実施時期・期間の不備5例、服薬違反1例及び盲検化不十分1例の計12例を除く364例(本剤群139例、SASP群153例、プラセボ群72例)が有効性のFAS(Full Analysis Set)解析対象集団(このうち非劣性解析対象採用例は207例<本剤群103例、SASP群104例>、優越性解析対象採用例は196例<本剤群132例、プラセボ群64例>)とされ、安全性解析対象集団はGCP不遵守1例、観察項目又は実施時期・期間の不備5例、中止脱落29例(副作用の発現がない場合)、服薬違反1例の計30例(除外理由の重複例有り)を除く346例(本剤群131例、SASP群147例、プラセボ群68例)とされた。

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上記に「FAS(Full Analysis Set)解析対象集団」という言葉が出てきますね。

この「FAS」とは何でしょう?

答えは下記にあります。
  ↓
「臨床試験のための統計的原則」


有効性の結論はこうなっています。
  ↓
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58ページ

以上より申請者は、本剤の有効性はSASPと同程度と考えられ、安全性についてはSASPとは異なるプロファイルを有すると考えられる旨を説明している。

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さらに「長期投与試験」とか「トランスアミナーゼ試験」とか「高齢者試験」とか「MTX併用試験」とか・・・・・など等。

最終的にはこのようになります。
  ↓
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68ページ

<機構における審査の概略>

(1)有効性について

@関節痛等の症状に対する軽減効果について

機構は、第V相比較試験において、DMARDの一つであるSASPに対するACR20改善率の非劣性が示されたことから、日本人RA患者における関節痛等の症状の軽減に対する本剤の有効性は示されたものと判断する。

また、第V相MTX併用試験において、投与24週におけるTM群のACR20、50及び70改善率はそれぞれ69.5%、38.4%及び17.1%であり、PM群(それぞれ30.7%、15.9%及び5.7%)に比べ有意な改善が認められたことを踏まえると、臨床現場において本剤の主な投与対象になると想定される、MTX効果不十分なRA患者に対する本剤とMTXの併用投与により関節痛等の症状の軽減において十分に高い改善効果が得られることが示されたものと判断する。

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さらに重要なのは「(2)本剤の臨床的位置付けについて」という点ですね。70ページにあります。


そして問題となる「安全性」については、下記のことがらが72ページから87ページまで、相当数の考察がなされています。


1)単剤投与時の安全性について

@汎血球減少症について

A肝障害について

B胃腸障害及び腎障害について

C間質性肺炎について

D低体重患者及び腎障害患者における安全性について


2)MTX併用時の安全性について

@第V相比較試験(本剤単独投与とSASPとの比較試験)と第V相MTX併用試験における有害事象発現状況の相違について

A肝障害について

B胃腸障害及び腎障害について

C血液障害について

D高齢者における安全性について


上記の事柄に対して「機構」はどう考え、「申請者」はどう答えているのか、その結果、何故、「機構」は納得したのか、というあたりをつぶさに観察してみましょう。

これだけで1ヶ月は勉強になります。(明日へ続く・・・・明日はちょっとショッキングなことが・・・・・。)



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posted by ホーライ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新薬の審査について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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