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1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料
本剤の有効成分であるイグラチモド(本薬)は、19●●年に富山化学工業株式会社で創出されたクロモン骨格を有する疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)である。
本邦においては、プラセボ及びサラゾスルファピリジン(SASP)との比較試験、長期投与試験等の成績を基に、関節リウマチ(RA)に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、20●●年月に製造承認申請が行われた。
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うむ。プラセボやSASPとの比較試験が行われた、と。
さらにこんなことも書かれています。
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特に、肝障害、骨髄抑制等を副作用として有するMTXとの併用時における安全性に懸念があったことから、審査の過程において、本剤とMTXの併用時の安全性を検討するための追加臨床試験を実施すべきとの結論に至り、申請が取り下げられた。
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ほ〜〜〜〜、申請が取り下げられた経緯があるんですね。
だから、時間がかかったんだ、と感想も持つ。
海外での開発は?
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海外においては、19●●年から英国にて第T相臨床試験が実施されたが、RA患者を対象とした初期第U相試験については、50 mg/日を超える用量では肝機能及び血液学的検査における安全性に懸念があるとの理由から、英国規制当局及び倫理委員会と試験デザインに関する合意が得られず、開発は中断された。
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なるほど、なるほど、と。
イギリスでは安全性の問題があるので開発が中止されているのですね。
そういう薬が日本では承認されたのだ、という認識をまず持ちましょう。
相当、副作用に注意しないといけないね。
「審査報告書」の5ページから39ページまでCMCやら非臨床のデータなのでスキップして(本当はこれらのパートも読むと勉強になるよ)、臨床試験について見てみましょう。
41ページです。
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(2)健康成人での検討(5.3.3.1.1: 臨床第T相試験<19●●年月〜19年●●月>)
1)単回経口投与試験
日本人健康成人男性(20〜26歳、各6例)を対象として、本剤(T-614P、PhI処方)25 mg(25 mg錠×1)、50 mg(25mg錠×2)、100 mg(100 mg錠×1)及び200 mg(100 mg錠×2)を食後に単回経口投与したときの血漿中未変化体、代謝物M1及びM2の薬物動態パラメータは表2のとおりであり、それぞれのCmax及びAUCは投与量の増加に伴い上昇した。
未変化体及びM1のt1/2はそれぞれ5.29〜7.05時間及び36.0〜47.2時間と投与量に関係なくほぼ一定であったが、M2のt1/2は投与量の増加に伴い延長する傾向が認められた。
未変化体のCmax及びAUCについて、体重60 kgに基準化して投与量との関係を検討したところ、いずれも投与量にほぼ比例して増加した。
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なるほど。
投与量に応じて血中濃度も上がると。
その他にも「食事の影響試験」や「高齢者における検討」等が検討されていることが分かりますね。
そして、このようなデータに対して総合機構の審査をやっている人も疑問を持ったり、懸念を持たれたりします。
そうなるとこんなことになります。
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44ページより
<審査の概略>
(1)高齢者における本剤の薬物動態について
機構は、高齢者における本薬の血漿中薬物濃度が非高齢者と比較して高値を示していることから、高齢者への投与時の用量調節等の必要性について説明するよう求めた。
申請者は、反復投与時の未変化体、M1及びM2のCmax及びAUCは非高齢者に比べ高齢者でやや高い値であったものの、両群ともに個体間変動が大きく、大きな分布の重なりがみられていること、また申請用法・用量で実施された試験(漸増法試験、比較試験、長期投与試験)において高齢者と非高齢者の有効性及び安全性に大きな差が認められなかったこと(長期投与試験におけるACR20 10改善率:高齢者48.4%<15/31例>、非高齢者46.6%<54/116例>、長期投与試験28週集計時の副作用発現率:高齢者52.8%<67/127例>、非高齢者52.5%<211/402例>)から、高齢者における減量の必要性はないものと考える旨を説明した。
なお、添付文書においては高齢者で血漿中薬物濃度が高くなる可能性について記載し、注意喚起を図る旨の説明がなされた。
機構は、現時点では以上の回答を了承するが、本剤の副作用発現には用量依存的な傾向がみられており、高齢者では低体重の患者が比較的多いと想定されること等を踏まえ、高齢者における本剤投与時の安全性及び有効性については、製造販売後調査等においてさらに検討する必要があると考える。
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上記の文章で「機構は」と冒頭に書かれている文章が総合機構からの質問で、それに対する答えが「申請者は」で始まる文章です。
とりあえず現時点では了承するけれど、相当に注意すること、というのが分かります。
新薬の承認申請すると、上記のように総合機構の人が有効性や安全性で懸念点があると、その都度、製薬会社に質問がきます。
すると、製薬会社は必死になって回答書を作成します。
この回答書を作成するのも1ヶ月かかったり、ざらにします。
そして、その回答書に対して、また総合機構から質問が来たりします。
ね? 大変でしょ?
自分ならどう答えるかを考えるのが勉強になります。
それはいいとして、44ページの下の欄外に気になることが書かれています。
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これらの症例は薬物動態試験の実施が契約書に記載がない又は薬物動態試験の実施について患者の同意が取得されていないことからGCP不適合とされ、薬物濃度データは不採用として取り扱われている。
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「おっと!」という感じですが、「契約書に記載がない」又は「患者の同意が無いままに試験が行われていた」という「とんでもないこと」が書かれています。
うむうむ。
ね? 勉強になるでしょ。
どうしてこんなことになったのでしょうか?
さらにさらに、46ページには以下のことが書かれています。
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(iii) 有効性及び安全性試験成績の概要
<提出された臨床試験結果の概略>
有効性及び安全性の評価資料として、RA患者を対象とした第U相パイロット試験(E26)、初期第U相試験(E27)、第U相用量設定試験(E24)、第U相漸増法試験(E28)、第V相比較試験(E25)、第V相トランスアミナーゼ試験(E30)及び国内第V相長期投与試験(E29)、並びに国内第V相MTX併用試験(E25-1及び2)の成績が提出された。
また、安全性評価資料として、健康成人を対象とした国内第T相試験(E22)及び第V相高齢者試験(E23)の成績が提出された。
なおこれらの臨床試験の一部においてはGCP不適合の治験実施施設(2施設)に組み入れられた症例及び診療録が保存されておらずGCP不適合とされた症例(19例)が存在するが、各臨床試験について、これらの症例の有効性及び安全性の解析対象からの削除は試験成績に大きな影響を与えないことが確認されている。
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「GCP不適合とされた症例(19例)」というのは相当ですよ。
上記の最後の文です。
「臨床試験の一部においてはGCP不適合の治験実施施設(2施設)に組み入れられた症例及び診療録が保存されておらずGCP不適合とされた症例(19例)が存在する」です。
え〜〜っと、診療録(カルテ等)が保存されていないとですね、データの信頼性が絶対に担保されません。
ですから、こういう場合は、即、GCP違反で、データの削除が要求されます。
そりゃそうだよね。
ちなみに総合機構が主催する研修会に出た時の僕の感想ですが、100%「GCP違反でデータの削除」が求められるのは「原資料」が確認されない場合です。
原資料(カルテ等)が無いとCRFに記載されたデータの信頼性を確認しようがありませんからね。(明日へ続く)
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