2012年07月03日

◆医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス

今週は治験に関連する各種ガイドライン・ガイダンスを読んでいます。

今日は「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」について、です。


「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」について


「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンスに関する質疑応答集(Q&A)」について





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医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス

【概説】

本ガイダンスは,医薬品開発における非臨床から初期臨床試験への移行を支援するための基本的な考え方を示すものである.

被験薬をヒトに初めて投与する際のリスク要因を予測し,さらに,被験薬の品質,非臨床試験及びヒト初回投与試験に関する計画・実施について言及する.

ヒトへの初回投与量の設定,それに続く用量漸増法及び臨床試験の実施にともなう被験者リスクを低減するための考え方を示すものである.

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これから日本でも「ファースト・イン・ヒューマン」ということで、初めて人類に治験薬を投与する治験を世界に先駆けて日本でやっていこう!ということらしいので、このガイダンスは私たちには必読です。

人類に初めて治験薬を投与する場合、最も重要なのは「非臨床試験のデータ」です。

ただし、非臨床試験でもカバーできない毒性というのもあり得るので十分な注意が必要です。

この(↓)事件を忘れてはいけない!!


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リウマチ及び白血病治療新薬のためのフェーズ1治験がParexel社によって行われ、テストを受けた健常な男性ヴォランティア8名中、プラセボを投与された2名以外の6名全てが重篤な症状を示して病院に搬送された。

全員、ICUで懸命の治療を受けており、6名中4名は意識があり、わずかながら回復の兆しを見せているものの、残る2名は危篤状態(完全に植物状態)が続いている。

Parexel社によれば、この治験薬は規則に準拠して全ての必要十分な前試験(動物実験を含む)を通してあり、今回のような副作用は全く持って予想外であるとのこと。

治験に参加してプラセボ投与だったことにより難を逃れた人によると「まるでドミノのように次々と倒れていった。みんな、シャツをかきむしり、口々に熱いと訴え、頭が爆発しそうだと叫ぶ者もいた。」ということである。

投与された薬剤TGN 1412は抗CD28モノクローナル・アゴニスト抗体(アゴニスト:レセプターに働いて神経伝達物質やホルモンなどと同様の機能を示す作動薬)で自己免疫・炎症性疾患と血液悪性腫瘍のための治験薬とのことです。

要するにいわゆる化学合成品ではなく遺伝子工学的に作られた生物薬なわけです。


TGN1412 事件の教訓


この事件(事故じゃなくて、事件だね)については、他にもあるので「パレクセル 治験 TGN 1412」で検索してみよう!!

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「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」の続きに戻ります。


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3. ガイダンス主文

新規被験薬は非臨床試験によりヒト初回投与前にリスクを予測するための安全性データが収集されるが,非臨床試験ではヒトにおける重篤な有害作用を十分に予測できないことがある.

従って, 非臨床試験を吟味しヒト初回投与試験のデザインを慎重に検討することが必要とされる.

ヒト初回投与試験を計画する際,治験依頼者及び実施者は,リスク要因を考慮しリスク低減策を検討しなければならない.


3.1 リスク要因

被験薬の重篤な有害作用発現の可能性を予測するには,リスク要因を特定する必要がある.1)作用機序,2)標的分子(作用部位)の特性,3)モデル動物の妥当性について十分な情報が欠如している場合, あるいはヒトへの安全性予測が困難な場合には, ヒト初回投与時におけるリスクが増大する.

従って, 治験依頼者はヒト初回投与試験に関する以下の各項目について,被験薬ごとに検討しなければならない.

●3.1.1 被験薬の作用機序(項目名のみ)

●3.1.2 標的分子の特性

●3.1.3 非臨床試験における動物モデルの妥当性


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・・・・・・と言うことで、まずは何を置いても「リスク分析」をしておかないといけないわけですね。

当然と言えば当然ですが。

本当にちゃんとやっているのかな・・・・・。



さらに、臨床試験(治験)では、どんなことに留意すればいいのでしょうか?


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3.4 臨床試験

3.4.1 一般的な考え方

ヒト初回投与試験に参加する被験者の安全性は,有害作用発現のリスク要因を特定し,それを計画的に低減することによって高めることができる.

これらのリスク要因を低減するために,試験計画をたてる際は以下について検討すべきである.


@ 被験薬の品質に関わるリスク

A 懸念される毒性

B 適切な動物モデル(非臨床試験)から得られた知見

C 適切な被験者集団(健康人・患者)

D 予想される有害事象/副作用に対する被験者の忍容性

E 被験者の遺伝学的素因により被験薬の反応に差異がでる可能性

F 患者が他の医薬品や医療手段から利益を得られる可能性

G 被験薬の予測される治療濃度域


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・・・・・・・といことで、もちろん、治験実施計画書も慎重に設定しないといけません。

ここには記載しませんが、ガイダンスには治験実施計画書の注意点も書かれているので、見ておいてください。





そして、最も大事なのが、ヒト初回投与試験を行う医師と施設です。
 ↓
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3.4.3 臨床試験の実施施設及び人員」

ヒト初回投与試験は,適切な医療施設において,必要な教育と訓練を受け,初期段階の臨床試験(つまり第I相,第U相)を実施するために十分な専門知識と経験を持つ治験担当医師と適切なレベルの訓練を受け経験を持つ医療従事者によって実施されるべきである.

これらの医師や医療従事者は,試験デザインや被験薬,その標的,作用機序及び予想される有害作用について理解していなければならず,臨床薬理学に造詣の深い者を含めるべきである.


臨床試験に従事する医療施設は,緊急事態(心肺停止状態, アナフィラキシー, サイトカイン放出症候群, 意識消失,けいれん, ショック等)に対応可能な設備や医師等を備え,また被験者の移動や治療に関する責任と業務遂行についての手順を定めた救命救急施設(外部を含む)を利用できるようにしておくべきである.


ヒト初回投与試験は,一部の抗悪性腫瘍薬等を除き、単一の治験実施計画書として同一施設で実施するのが原則である.

いくつかの施設が関与する場合には,適切な計画により全ての被験者の安全性を確保するための十分な情報伝達システムが必要である.


予期せぬ重大な被験薬の安全性情報は,このシステムにより迅速に参加施設に伝達すべきである.

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これから、日本は世界に先駆けて人類に治験薬を投与する第1相臨床試験(臨床薬理試験)を進めていく予定ですが、くれぐれも事故が起きないようにして欲しいものです。

事故は初心者が多ければ多いほど、発生しやすいですからね・・・・・・。




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