予定としては以下のガイドラインを見ます。
モニター、CRCの皆さまも、今、自分が担当している疾患ではなくても、あるいは「こんなガイドライン僕の(私の)担当とは関係ない」と思わずに見ていきましょう。
それが「自己啓発」というものです。
●月曜日・・・・国際共同治験に関する基本的考え方について
●火曜日・・・・医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス
●水曜日・・・・睡眠薬の臨床評価方法に関するガイドライン
●木曜日・・・・腎性貧血治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン
●金曜日・・・・副作用等報告に関するQ&Aについて
ということで、今日は「国際共同治験に関する基本的考え方について」です。
参考にしているサイトは以下のところです。
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●「PMDAの業務に関連し、試験計画、データの評価等に関連する主なガイドラインを掲載しています。」
上記の中から、国際共同治験についてです。
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●「国際共同治験に関する基本的考え方について(平成19年9月28日 薬食審査発第0928010号)」
以下、重要な部分だけ、抜粋していきます。
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従来,我が国においては,ICH-E5ガイドラインに基づく「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について(平成10年8月11日医薬審第762号厚生省医薬安全局審査管理課長通知)」により,いわゆる「ブリッジング」による海外臨床試験成績を承認申請資料として活用することを認めており,また,欧米諸国における市販後調査等の結果についても必要に応じ承認審査に際して活用しているところである。
他方,総合科学技術会議報告書「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(平成18年12月)」においては,新規医薬品開発の効率化・迅速化の観点から外国との国際共同治験を推進すべき旨指摘しており,また,厚生労働大臣の検討会報告書「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会報告書(平成19年7月)」においては,「ドラッグ・ラグ(欧米で承認されている医薬品が我が国では未承認であって国民に提供されない状況)」解消のためには,国際共同治験の推進を図る必要があり,承認審査の観点から必要な国際共同治験実施に当たっての基本的考え方を明らかにする必要がある旨,指摘している。
このような状況を踏まえ,今般,独立行政法人医薬品医療機器総合機構における対面助言等の国際共同治験に関する現時点の知見について,別添「国際共同治験に関する基本的考え方」としてとりまとめた。
(中略)
日本を含む国際共同治験を推進するため,独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)は,平成18年度より国際共同治験に関する対面助言の予約申込みに際して優遇措置を講じている。
国際共同治験の実施を前提とした治験デザイン,治験データ等の取扱いについて,総合機構と企業との間で,個々のケースに応じた検討を行うことは重要であり,これまでも対面助言を通じて対応してきたところであるが,今般,これまでの個々の事例等を踏まえ,国際共同治験を計画・実施する際の基本的な考え方をとりまとめることとしたものである。
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・・・・というように、この「通知」は、総合機構の対面助言等から派生してできたものだということが分かります。
続きを見ましょう。
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【基本的考え方】
国際共同治験は,国内臨床試験とは異なり,様々な地域及び民族にまたがって臨床試験が実施されるため,その治験計画に際しては,民族的要因を考慮して計画することが必要である。
したがって,ICH-E5ガイドラインで述べられている事項を検討することは,国際共同治験を計画する場合にも有用である。
ブリッジングの考え方については,諸外国で開発が先行している場合のみならず,国際共同治験のように同時期に実施する場合にも適用可能である。
この考え方は,ICH-E5ガイドラインのQ&A(「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」に関するQ&A について(その2)平成18年10月5日厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡)の質問11において明確に示されているので参照されたい。
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・・・・・・ということなので、「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」も各自でしっかり見ておきましょう。
ここからはQ&A方式で話は進みます。
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1.国際共同治験を実施する上での基本的な要件は何か?
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以下のすべての条件を満たすことが必要である。
・参加するすべての国,医療機関等でICH-GCP に準拠した臨床試験が実施可能であること。
・参加するすべての国,医療機関等で日本からのGCP 実地調査を受入れ可能であること。
・治験薬の有効性及び安全性に影響を及ぼしうる要因(人種,地域,患者背景等)を予め検討するとともに,当該要因に関する部分集団解析が実施可能であり,適切な考察が可能であること。
・慣習などの社会的相違や試験の管理・運営等各施設における治験実施状況を適切に把握でき,認められた差異が試験結果に影響を及ぼしうるものであるかどうかについて,適切に考察可能な状況であること。
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上記のうち、笑っちゃうのが(本当は笑ってもいられないんだけれど)、「ICH-GCP に準拠した臨床試験が実施可能」というところです。
なんで笑っちゃうのかというと、そもそも「日本はICH-GCP に準拠した臨床試験が実施可能なの?」と思ってしまうからですね。
まぁ、準拠と言えば準拠だけどさ。
まだまだ、ICH-GCPでは求めていないところを求めているよね。(治験に絡めて、医療機関の長が出てくるあたりね。)
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2.日本はいつからグローバル開発に参加すべきか?
↓
世界的に進行している臨床開発について,できるだけ早期に参加することが望ましい。
このため,遅くとも用量反応性を探索的に検討する段階の試験から参加できるよう予め検討しておくことが重要である。
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この(↑)あたりは、各製薬会社の考え方だよね。
プロジェクトマネジャーが国際的な視野を持っていると、率先してやってくれるのですが、外資系だと本社に相手にされていない場合もある。(辛い・・・・)
ただね、なんだろ、「日本はいつからグローバル開発に参加すべきか?」ということをいちいち、当局に聞かないと決められないのかなぁ・・・・・。
会社で決めればいい話しなんだけど。
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3.患者を対象とした国際共同治験を実施する場合に,その試験開始前に日本人での第T相試験や日本人での薬物動態情報は必須か?
↓
国際共同治験で用いる用法・用量が日本人においても安全性上特段の問題がないかについて,予め確認しておく必要がある。
そのためには,国際共同治験を開始する前に,少なくとも日本人の健康な志願者又は患者を対象とした治験薬の単回投与試験による安全性や薬物動態等を検討し,外国人における結果と比較して,日本人におけるリスクが外国人におけるリスクと遜色ないことを確認しておくことが求められる。
ただし,海外で実施された第T相試験の結果から日本人に対する安全性を判断することが可能な場合や類薬での状況等から日本人と外国人における推奨用量が同様と判断できる場合等においては,必ずしも国際共同治験開始前に第T相試験を実施する必要はない。
なお,この場合においても薬物動態と臨床効果との関連等を日本人と外国人で比較検討しておくことが日本人に適切な用量を設定する上で有用であると考えられること,また,国際共同治験の結果の解釈に際しても重要な情報となりうると考えられることなどから,必要に応じ,国際共同治験の実施と並行して適切な臨床薬理試験を実施したり,国際共同治験の中で薬物動態と臨床効果との関連を検討するなどして,その結果を承認申請資料に含めることが望まれる。
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これ(↑)のうち、「日本人での第T相試験や日本人での薬物動態情報は必須か?」は、「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」が出された頃から、課題でしたね。
とりあえず、アメリカあたりで欧米人と一緒に日本人(遺伝子的に)の方を対象としたPhase-1をやっておきましょう。
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4.海外臨床試験成績に基づき用量設定を行い,国内での用量反応試験を実施せずに,検証的な第V相試験から日本人を組み入れるという開発計画は受入れ可能か?
↓
これまでの承認事例及びICH-E5ガイドラインに基づく承認審査の経験等を踏まえると,日本人と外国人との間で薬物の体内動態等が異なることもあり,また,外国人での臨床試験結果に基づき設定された推奨用量が日本人での推奨用量であると結論付けることは困難である場合もみられることから,質問のような開発計画を基本的考え方とすることは有効かつ安全な医薬品を日本人患者の元へ届けるという本来の目的からして適切ではない。
したがって,開発を円滑に進め,日本における承認時期を諸外国と同時期とするためには,用量反応試験に日本人の患者等を組み入れ,民族間での用量反応性の差異を臨床開発の早期に同定し,その後の検証的試験を計画することが望まれる。
また,仮に日本人と外国人とで推奨用量が異なっている場合,各地域ごとに設定した用量について,有効性及び安全性の検証が同等に扱えることを適切に説明できるのであれば,その後の第V相国際共同治験(検証的試験)において各地域での結果を統合し主要な解析集団として取り扱うことも可能である。
なお,PK(pharmacokinetics)に類似性があり,PK と臨床効果との関連が明らかとなっているPD(pharmacodynamics)との間で相関性が示されているような場合等には,臨床効果を指標とした日本人での用量反応試験は必ずしも必要ないと考えられる。
(注)希少疾病用医薬品又は生命に関わるような疾患で他の治療法が確立していないような場合,そもそも国内での用量反応試験を行うことが困難な場合があり,このような場合には,医師の厳重な管理下で第V相試験を行うなどの工夫を検討すべきである。
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上記から分かるのは、攻めるキモとしては「PK(pharmacokinetics)に類似性があり,PK と臨床効果との関連が明らかとなっているPD(pharmacodynamics)との間で相関性が示されているような場合等には,臨床効果を指標とした日本人での用量反応試験は必ずしも必要ないと考えられる。」というあたりです。
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5.国際共同治験を計画する場合の基本的な留意事項は何か?
↓
基本的には以下の事項について留意すべきである。
なお,詳細については,ICH-E5ガイドラインのQ&A の質問11を参照されたい。
・国際共同治験を実施する場合には,それぞれの地域における民族的要因が治験薬の有効性及び安全性に及ぼす影響について評価し,また,日本人における治験薬の有効性及び安全性について評価できるよう計画することが必要である。
・実施する国際共同治験のデザイン及び解析方法が我が国にとって受入れ可能なものであることが必要である。
・主要評価項目は,各地域に許容されているものであるべきであり,主要評価項目が地域により異なる場合には,すべての地域においてすべての主要評価項目に関するデータを収集し,地域間での差異を検討できるようにすべきである。
・安全性評価を適切に実施するため,全地域での有害事象の収集方法及び評価方法をできる限り統一すべきである。
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・・・・・・・ということで、まだまだ話は続きますが、ここまで読んでみて、どうでしたか?
新薬を「国際共同治験」で開発したほうが簡単なのか、それとも「海外先行で進めて、あとから日本は治験を実施する」ほうが簡単なのか・・・・・・。
うむ。
まぁ、大事なのは「簡単かどうか」ではなくて、「日本において世界と同時に新薬が承認されるかどうか」なのですが、それにしてもなぁ、私には「国際共同治験」のほうが、あとでやるよりも、何倍も難しそうに思える。
当局は、本気で、国際共同治験を推奨しているのだろうか?
ほかにも、下記のような記述がある。
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7.国際共同治験においては,諸外国では確立されているが,我が国ではまだ確立されていないような指標であっても,主要評価項目とせざるを得ない場合もあるが,このような場合でもその指標は受け入れ可能か?
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そのような場合が想定されるのであれば,できる限り早期に国内でパイロット試験等を実施し,海外臨床試験結果と同様の反応が得られるかどうか確認しておく必要があると考えられる。また,国際共同治験実施前には,
予め統一的な評価方法に関する研修プログラムを作成し,実施するなど,評価者間,施設間,各地域間での差を最小限にする工夫が必要である。
質問のような場合,何ら国内での検討がない状況で国際共同治験に参加することは,日本での成績が適切に得られないばかりか,試験全体に悪影響を及ぼす可能性があることに留意すべきである。
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上記を読んで、「えっ!?」と思った人はいる?
決して「やっぱり、あとからやったほうが簡単だね」と思わないようにね。
「国際共同治験に関する基本的考え方について」には、他にも重要なQ&Aがあるので、残りも読んでおいてください。(と研修で言っても、8割の人は読まないのですが・・・・・・。)
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