2012年05月31日

臨床研究・治験活性化5か年計画2012に対する意見(9)

今週は先週に引き続き「『臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)』に関する意見の募集について寄せられた御意見について」ということで、治験の活性化5ヶ年計画に対するパブリックコメントうについて見ていきます。
   ↓
臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)」に関する意見の募集について寄せられた御意見について


そもそもこれは、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012案に関する意見の募集について」によせられたパブリックコメントです。。



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『臨床研究・治験の実施体制の整備』に関するコメント   ★★★=コメントです。


★★★治験や臨床研究を推進する上でいくつかの核となる機関を設定することは理解できる。

ただ、様々な省庁からの事業が混在する中で、機関整備を含む事業が特定の医療機関のみに集中している感がある。

しかし現在の公募制では、実績がありすでに体制整備ができている機関が新規事業の受託に有利であり、資金が集中している印象を受ける。

特に治験中核・拠点事業と、橋渡し研究支援拠点、早期・探索的臨床拠点、臨床研究中核などを別個に選定することは、一部の機関への資金集中となりうることを懸念する。

また、日本の開発推進に関する重要な意見交換や議論も、これらの機関関係者を中心とした限られたメンバーのみで行われてきた感を持っており、結果的に施設間格差を拡大していることにつながってきたとの印象が拭えない。

  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。

各種事業における実施機関の重複については、それぞれの事業の目的を踏まえ、適切に対応しています。




★★★橋渡し研究支援推進プログラムにおいて、対象と考えられる疾患が希少であってもバックアップされるような支援を希望。

  ↓(回答)

今後、第2期プログラム「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」では、計画にも記載さているとおり「「橋渡し研究支援推進プログラム(平成19年〜23年度)」において整備してきた橋渡し研究支援拠点のシーズ育成能力を強化するとともに、恒久的な拠点の確立を促進する。」こととしており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。



★★★「今後は下記の拠点等を整備する事業により、医師主導治験や質の高い臨床研究を推進し、日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出を目指す」ことに強く期待します。

また、拠点ではない施設においても、チャレンジできるようになることを願います。

● 橋渡し研究支援拠点

橋渡し研究への支援は、本拠点によるもの以外にも必要です。

● 早期・探索的臨床試験拠点

遠位型ミオパチーは前述のシアル酸補充療法のほか、日本の研究グループが実験モデル動物においても最先端を走っており、薬の候補物質を発見しやすいため、「日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出を目的に、世界に先駆けてヒトに初めて新規薬物・機器を投与・使用する」ためのシーズを有していることになります。

● 臨床研究中核病院

遠位型ミオパチーでは、前述のシアル酸補充療法の治験、また日本の研究グループが最先端を走る実験モデル動物を使用しての薬の候補物質探索結果の臨床への応用において、まさに「我が国で実施される臨床研究の質を薬事承認申請データとして活用可能な水準まで向上させる」、また「早期・探索的臨床試験や市販後の大規模臨床研究等も含めた国際水準(ICH-GCP 準拠)の臨床研究や医師主導治験」のすみやかな実施が期待できます。

● 日本主導型グローバル臨床研究拠点

患者数の少ない疾病には、グローバルな臨床研究が必要です。

  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。

計画には、「医師主導治験や質の高い臨床研究を推進し、日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出を目指す。」と記載しており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。また、整備事業としては、計画に記載した拠点を対象としますが、本拠点以外による支援も必要である旨、今後の参考にさせて頂きます。



★★★「シーズ探索においては、自施設のみならず、全国的に広く検索する。」とある。

文部科学省と連携して、大学が所有するシーズすべての洗い出しを行ってもらいたい。

さらにそれらのシーズを評価し、関係者が確認できる仕組みを構築してもらいたい。

大学等の各施設にあるTLOは一元化することにより、企業からアプローチがしやすくなると思われるため、一元化を行ってもらいたい。

(参考:ホーライ記載⇒TLOとは・・・Technology Licensing Organization(技術移転機関)の略称です。大学の研究者の研究成果の特許化し、それを企業へ技術移転する法人であり、産と学の「仲介役」の役割を果たす組織です。大学発の新規産業を生み出し、それにより得られた収益の一部を研究者に戻すことにより研究資金を生み出し、大学の研究の更なる活性化をもたらすという「知的創造サイクル」の原動力として産学連携の中核をなす組織です。)


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・・・・・・・ということで、『臨床研究・治験の実施体制の整備』でした。

治験の実施体制については、ICH-GCPが導入された10年前から比べたら、雲泥の差があるくらい、良くなりました。

あとは、関係者各位の創意工夫次第だと思います。

また、何度も言っていますが、「キモ」は「情熱を持っている人」をいかにして育成するかにかかっています。

あるいは、既に「情熱をたぎらせうている人」を治験の実施体制の中に参加させることです。






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「それぞれの拠点等の位置づけの明確化と質の高い臨床研究等の推進」に関するコメント   ★★★=コメントです。



★★★臨床研究中核病院の役割として@国内治験を担う人材の教育、A地域の治験普及の活性化に貢献する機能、の2点を備えてほしい。

  ↓(回答)

臨床研究中核病院の機能については、治験に限られるものではないものの、御指摘のような機能が含まれるものと考えています。




★★★「成功例を提示する」には、遠位型ミオパチーは最も近い位置にいます。

また、拠点等でなくても、臨床研究等の推進は重要です。案に記載されている事項の検討を積極的に進めるべきと考えます。

  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。

整備事業としては、計画に記載した拠点を対象としますが、今後、拠点以外でも取組が進められることが重要と考えています。




★★★再審査期間中は市場における新製品の有効性や安全性について迅速で正確な情報が最も必要な時期であり、情報の収集と伝達を製薬企業に依存せずに、臨床研究の一環と位置づけて医師主導の調査も実施できるようにすべきである。

企業は再審査期間中の企業主導調査・試験以外の医師主導臨床研究を認めない一方で、奨学寄附金による研究は奨励するという矛盾にあるが、現行の企業主導調査のオプションとして企業から医師への委託または共同研究での実施を可能にすべきである。

  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。今後の取組の参考にさせていただきます。




★★★グローバル臨床研究を実施するための体制づくりだけではなく、グローバル医師主導治験も対象とすべきである。

  ↓(回答)

御意見のとおり、日本主導型グローバル臨床研究拠点事業においては、医師主導治験も対象にする予定です。




★★★ICH-GCP水準での医師主導治験および臨床研究を実施する場合は薬事申請資料として採択できるよう省令GCPに定義してほしい。

  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。今後の取組の参考にさせていただきます。




★★★国内での臨床試験について、ICH-GCP水準で行っていくことについて基本的に賛同いたしますが、実際の運用上非常に迷うところが何点かあります。

1, どの範囲の臨床研究についてICH-GCP水準を適応していくべきなのか

2, ICH-GCPには規制当局への届けの項目がありますが、UMIN等への登録を行うことで準拠したことになるのか

3, 副作用の緊急報告については、現行の「臨床研究に関する倫理指針」での対応でよいのか

など、ICH-GCPでの規定について、どの程度を達成目標として行うべきか、特に現行の制度では厳密な対応が困難な項目について、例えば24年度のワーキンググループ等において、その方向性を示していただけると幸いです。



(ホーライコメント⇒)UMINとは = University Hospital Medical Information Network「大学病院医療情報」ネットワーク



『必要な人材の育成』に関するコメント   ★★★=コメントです。

★★★必要な人材の育成については積極的な取組みをお願いします。

  ↓(回答)

計画には、「臨床研究・治験に精通する医師の育成」や「臨床研究・治験に携わる医療関係職種の育成」について記載しており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。


★★★人材育成について、医学部教育のコアカリキュラムの改訂、生物統計等の大学講座の創設などを具体的に記述するべきである。


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医学部のみならず、薬学、看護学などの学部でも治験についてのカリキュラムを充実して欲しいものです。

でも、今年の新入社員で薬学出身の人は「6年制」になって初めての人たちがやってきましたが、結構、治験について学んできたな、と思います。

引き続き、治験についての教育を学生の頃に積んで欲しいですね。






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『臨床研究等における倫理性及び質の向上 』に関するコメント    ★★★=コメントです。


★★★記載事項の他、臨床研究の厳格な対象から外れた患者も人道的使用として治験薬等を使用できる仕組みが必要です。



★★★倫理委員会では、研究者とは独立した自由な意見がだされる環境が不可欠です。

現状では外部委員といえども内部委員に近い方が委員になっている施設が多数みられます。

委員会の質の向上のために、構成員の要件について、発言のない委員を削除することを含め検討する必要があると考えます。






『「臨床研究に関する倫理指針」の改正(平成25 年目途)における検討』に関するコメント    ★★★=コメントです。


★★★「臨床研究に関する倫理指針」の改正にあたっては、指針として改正するのではなく、法制化を図ることが積極的に検討されるべきことを明記すべきである。

また、法制化の検討は、他の指針やGCPとの関係など、日本の被験者保護全般に関わる事項を整理する場を設けて行うべきことを明記すべきである。




★★★倫理指針において求められている研究の事前登録が現場では徹底されておらず、今後は登録を義務化すべきである。

  ↓(回答)

引き続き「臨床研究に関する倫理指針(平成20年厚生労働省告示第415号)」の周知徹底を図っていきます。



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いかがでしたか?

今後は「治験」から「臨床研究」に軸足を移していく、という感じですね。

そもそも「臨床研究」とは何でしょうか?

以下、ウィキペディアより

臨床研究(りんしょうけんきゅう)とは医学研究の一領域。

臨床医学における問題意識に立脚して臨床現場において行われる研究を指し、「基礎(医学)研究」「社会医学研究」等。

根拠に基づいた医療(EBM)を実践する上で十分なエビデンスが見つからない場合、もしその疑問が臨床上重要なテーマであり、倫理上の問題がなく、資金的・人員的に実際に行える規模の研究であれば、臨床研究として掘り下げることができる。

エビデンスは上から与えられるものではなく、むしろ日常臨床の中から自らエビデンスをつくりあげていこうとする姿勢こそが、EBM実践の中で重要なことのひとつである。


だそうです。

今の日本の現状は「治験」と「臨床研究」は別枠で考えられています。

「治験」は新薬の製造販売承認申請のために行われますが「臨床研究」はよりよし治療のために行われます。

でも、この2つを規制するのはGCPである、というようになると医師にとって「便利」ですよね。

「治験」の時は、このルールで、「臨床研究」の時は、このルールで、となると煩雑です。

「治験」が「創薬」なら「臨床研究」は「育薬」です。

どちらも大事。

どちらも患者さんのために、きちんとルールを守り、1日でも早く新薬の上梓とその有効な使い方を研究していきましょう。


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医薬品ができるまで(治験に関する話題)
posted by ホーライ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の活性化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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