もちろん、フィクションです。
若い男性に特異的に流行している「後天性若年骨粗鬆症(acquired juvenileosteoporosis:AJO)」に関して、ホーライ製薬の重田尚美のチームはHORAI−Z358(プロテアーゼ阻害薬)を開発していた。
まだ、今のところ、非臨床試験の結果しか分からず、これから健常男性ボランティアに初めて投与するフェーズ1(つまり人類に初めて投与する治験)を開始するところだった。
このフェーズ1の目的は人間の体内で薬物が有効性を示せる濃度まで血中濃度が上がり、維持されるか、副作用はあるか? ということだった。
今ではHORAI−Z358は、社内では、市販後に予定されている販売名「ホラオステン」という名前で呼ばれていた。
また、フェーズ1が始まる前までに合成・製造コストを10分の1にすることが製剤研究室の課題になっていた。
この段階においても、社内ではAJOに効く薬なんて存在しない、という雰囲気があった。
しかし、当然ながら、世間一般ではAJO治療薬が発売されることを今や遅しと期待していた。
それも、今すぐに。
コスト削減は、急増する開発費用のことを考えても、何としても達成しなくてはならなかった。
1つの新薬候補化合物だけでも探索段階で10億円〜70億円の費用がかかる。
これに加えて途中の段階で中止になった候補化合物のコストがある。
もちろん、その数は成功する化合物よりもはるかに多い。
約1万の化合物をスクリーニングして、たった1つだけが段階を踏んで承認され、患者に処方される。
そして、化合物が臨床試験(治験)に入ると費用はうなぎのぼりだ。
治験で薬を投与する医師や看護師にもお金を払わなければならないし、社内の人件費もかかる。
そうやって当局の規制に従った大量のデータを取らなければならない。
「ホラオステン」プロジェクトはホーライ製薬にとって、通常の新薬を開発するよりもはるかにリスクがあるものだ。
「製薬ビジネス」を考える人に向かって「AJOを治したい」と言うのは、「人類を火星に送ることができる」と言っているようなものだ。
たぶん、専門家はいうだろう。
「わかりました。ただ、覚悟しておいてください。時間と忍耐と予算を。それと、私はあなたの確信まで共有できないですが。」
「ホラオステン」プロジェクトはホーライ製薬にとって一種の賭けだ。
製薬ビジネスはホーライ製薬にとってビジネスだけではなく、世界に医療で貢献する、というホーライ製薬にとっての使命とアイデンティティとレーゾンデートル(存在理由)だった。
もし、それがなかったら、ここまで足を踏み込まなかっただろう。
フロリスは、ある日、シャチョーのホーライと「ホラオステン」プロジェクトについて話し合った。
ホーライはフロリスの話をじっと聞いた。
そしてホーライは言った。
「これは成功してほしい。ただ、我々はどう進めたらいいか分からない。だから、毎月会って、進捗を説明して。どう進めたらいいか、一緒に決めていこう。」
人々は、新聞やネットで画期的新薬の記事を読むとき、ブレークスルーは自然と起き、新薬は必ずできるものだと考えている。
しかし、内部にいる者として、新薬の運命は、このようにして、まぁ、少人数二人ぐらいの会話の成り行きにかかっていることもある。
とにもかくにも、まずはフェーズ1を始めることだ。
そこに全てがかかっていると言ってもいい。
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