てぃん「スタチン系の薬だね。」
澤田「うん。コレステロールや中性脂肪が多いだけで死ぬことはないけれど、動脈硬化を起こしやすなったり、血管が詰まりやすくなるので危険だ。」
てぃん「コレステロールは酢酸が活性化したアセチルCoAから、約20段階の酵素反応を経て生合成される。」
澤田「このコレステロール合成の調節の鍵となるのが、HMG−CoA還元酵素により触媒されるHMG−CoAからメバロン酸への変換反応。」
てぃん「コレステロールの生合成を阻害すれば、血液中のコレステロールを低下させると考えたのが三共の若き研究員だった遠藤章さんだ。」
澤田「彼らは長年かかって世界中から集めた約6000種類のカビなどの微生物の培養液を約2年かけて地道にスクリーニングして、ついに京都産のコメについていた青かびの一種からメバスタチンというコレステロール生合成の阻害物質を発見した。」
てぃん「その後、この化合物がHMG−CoA還元酵素を特異的に阻害することを証明した。」
澤田「でも、その後の高脂血症薬への道のりは紆余曲折の連続だったみたいね。」
てぃん「まず、最初に行ったラットやマウスを使った実験では、なぜかコレステロールが低下作用をまったく示さなかった。」
澤田「うん。他の動物で強力なコレステロール低下作用があることを証明するまで3年近くを費やした。」
てぃん「よく途中で諦めなかったよね!!」
澤田「でも、メバスタチンは長期毒性試験の結果が思わしくなく、残念ながら開発が中止されるんだ。」
てぃん「一方、三共に遅れて開発に着手したアメリカのメルクはメバスタチンとほぼ同じ構造のロバスタチンを別の種類のカビから発見して、1987年に世界で初めてのスタチン系の高脂血症薬として使用承認を受けた。(メバコール)」
澤田「三共もあきらめなかった。メバスタチンを投与した犬の尿中に、メバスタチンの10倍以上の活性を示す代謝物質を発見した。」
てぃん「それがプラバスタチンだね。」
澤田「微生物変換によって大量生産する方法を開発するため、さまざまなカビや放線菌をスクリーニングした結果、オーストラリア産の放線菌によってメバスタチンがプラバスタチンに効率よく変換させることがわかった。」
てぃん「そして、ついに1989年に三共はメバロチンの販売にこぎつけた。」
澤田「開発開始から実に18年にわたる多くの研究者たちの努力の結晶だね。」
てぃん「まさに!」
澤田「スタチン系は世界中で2兆円の売り上げだって。」
てぃん「す、す、すごい・・・・・・。」
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