港野陽子「今日は、当社の新規抗がん剤のHORAIGAN001について開発計画を練ります。」
みかん「参考となるのは抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインね。」
↓
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/171101-b.pdf
港野陽子「基本的な開発の流れは次のとおりです。」
第T相臨床試験では主として安全性を検討。
第U相臨床試験では腫瘍縮小効果等の有効性と安全性を検討。
第V相臨床試験では延命効果等を中心とした臨床的有用性を検討する。
承認後の製造販売後臨床試験を通じて、当該薬剤を系統的に評価するために、対象疾患、治療体系における当該薬剤の位置づけや海外での開発状況を十分に検討する。
港野陽子「抗がん剤の新薬の開発に関して、参照とすべきガイドラインと通知は次のものがある。」
●ICH E8ガイドライン「臨床試験の一般指針」
●ICH E5ガイドライン「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について」
●「外国で実施された医薬品の臨床データの取扱いについて」(平成10年8月11日医薬発第739号)が発出されたことにより、国外で既に承認されている抗悪性腫瘍薬、又は信頼できる国外での臨床試験成績が得られている治験薬では、これらの成績及び国内臨床試験成績を基に承認申請資料を作成することが可能となった。
このため、海外で臨床開発が先行している抗悪性腫瘍薬については、海外試験成績の導入を考慮し、ICH E5ガイドラインに基づいて迅速に国内開発が進むような臨床開発計画を立案することを検討する。
港野陽子「抗がん剤の承認申請時の第V相試験成績の提出についてだけど、患者数が多い癌腫を対象とした抗悪性腫瘍薬では、延命効果等の明確な臨床的有用性の検証が必須なのよね。」
みかん「つまり、当社の抗がん剤の開発で、非小細胞肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌で、取得を目的とする効能・効果の癌腫のうち、その患者数が多い癌腫では、それぞれの癌腫について延命効果を中心に評価する第V相臨床試験の成績を承認申請時に提出することを必須だ。」
港野陽子「これらの癌では『癌組織』の縮小だけでなく、延命効果を見るわけね。」
みかん「ただね、抗がん剤の場合、他の新薬とは違って、第U相臨床試験終了時において高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認められる場合には、第V相臨床試験の結果を得る前に、承認申請し承認を得ることができるのよ。」
港野陽子「へー!!そうなんだ。抗がん剤の場合、フェーズ2までで新薬製造販売の申請ができる場合もあるのね。」
みかん「ただしね、その場合でも、承認後一定期間内に、第V相臨床試験の結果により速やかに、当該抗悪性腫瘍薬の臨床的有用性及び第U相臨床試験成績に基づく承認の妥当性を検証しなければならないとなっている。」
港野陽子「この第V相試験の実施場所に関しては国内外を問わないから、海外での実施でもいい。さらにさらに!海外に信頼できる第V相試験成績が存在する抗悪性腫瘍薬は、承認申請前に国内で実施する臨床試験数を最小限とし、効率よく、かつ迅速に当該薬剤の導入が図れるように臨床開発計画を立案すべきと言われている。」
●●● 抗がん剤の第T相臨床試験 ●●●
港野陽子「抗がん剤のフェーズ1では、次のことを見ます。」
a) 至適用量(optimal dose )又は臨床上適切な用量、例えば最大耐量(MTD: maximumtolerated dose)、最大許容量(MAD: maximum accepted dose)の推定
b) 薬物動態学的検討
c) 第U相試験で推奨される投与量の決定
d) 治療効果の観察
e) 治療効果を予測するマーカーの探索(分子標的薬等)
みかん「抗がん剤のフェーズ1は、どういった施設でやるの? 一般的な新薬の治験のいやゆる『フェーズ1施設』では無理だよね?」
港野陽子「無理無理! 抗がん剤のフェーズ1な、『がんセンター』などのがん治療の専門病院でやる。」
みかん「抗がん剤のフェーズ1では創薬ボランティアの方は、健常人では駄目なんでしょ?」
港野陽子「うん。副作用が強すぎるので、健常人では治験ができない。だから、がん患者さんにお願いする。それも、一般的に認められた標準的治療法によって延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者を対象とすべきではない、とされている。」
みかん「開発のデザインはどうするの?」
港野陽子「単回投与(1コース投与)における安全性の確認のみならず、反復投与での蓄積毒性の有無及び安全性を確認しておく必要がある。安全性を十分に確認するってことね。」
みかん「抗がん剤のフェーズ1の評価指標(エンドポイント)はどうなるの?」
港野陽子「至適用量又は臨床上適切な用量。例えば最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)、及び用量制限毒性(DLT: dose-limiting toxicity)を規定する必要がある。」
みかん「最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)とは何?」
港野陽子「最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)は、文字通り、『これ以上の投与量では患者に危険が出る』という投与量を見極めるのよ。」
みかん「じゃ、用量制限毒性(DLT: dose-limiting toxicity)とは何?」
港野陽子「最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)の理由となる副作用のこと。たとえば、この抗がん剤では副作用として『浮腫』が出るけれど、100mg以上投与すると、その浮腫が生命維持の危険になる、というような場合、『この抗がん剤のDLTは浮腫です』となるわけ。」
みかん「その他のフェーズ1の評価指標(エンドポイント)は?」
港野陽子「次のものね」
・薬物動態(PK)及び薬物動態/薬力学(PK/PD)の評価
・腫瘍縮小効果
みかん「フェーズ1なのに、『腫瘍縮小効果』も見るの?」
港野陽子「うん。でも、このフェーズ1で縮小効果が出なくても、フェーズ2に進めることもできるんだけどね。」
みかん「さらに、増量方法だけど、投与量は薬剤使用の制限となる毒性が耐えられる範囲又は許容できる範囲までとする。」
港野陽子「ただし、毒性が少ない場合は治療効果の明らかな徴候を生じるレベル又は事前に定めたレベルまで慎重に増量する。」
みかん「一般的な増量計画としては伝統的方法であるFibonacciの変法を用いることもあったが、増量計画については、科学の進歩に従って最も適切なデザインを採用することが可能である。」
港野陽子「原則として1コース目に出現する毒性で増量や最大耐量(MTD)の1次判断を行うが、2コース目以上で出現する毒性も評価し、増量や最大耐量の1次判断の修正を行い、最終的に判断する。」
みかん「例えば、各々の用量段階には少なくとも3例のコホートによる観察を行い、Grade 3以上の薬剤との関連性を否定できない有害事象の発現が経験された場合、その段階にさらに少なくとも3例を加えた6例以上で検討を行う。各々の用量での有害事象の観察期間が終了し、解析結果が評価されるまで次の段階に増量しない。」
港野陽子「当たり前だけど、抗がん剤の治験って厳しいのね。」
みかん「その抗がん剤の増量だけど、原則として同一患者での治験薬の増量は行わない。」
港野陽子「ただし、当該患者で治験薬の有効性が確認され、当該治験薬しか有効な治療薬がなく、治療継続を患者が希望する場合等では、同一患者での増量投与を検討する場合もある。」
みかん「第T相臨床試験が終了した時点で、以下の事項についての検討が終了していることが望ましい。」
・治験薬の投与経路、投与スケジュール
・最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)
・用量制限毒性(DLT)
・薬物動態と毒性の関連性
・第U相試験における推奨用量
・副作用の発現を回避、又は軽減する予防方法
・治療効果を予測するマーカー(分子標的薬等)
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