2010年10月30日

■問題解決のための新しい手法「全体最適化」

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●『部分最適』に走りすぎていませんか?


みっちーK「やれやれだわ」

かずさ2号「どうしたの?」

みっちーK「プロジェクトマネジャーをやっていると問題が山積みなのよね。」

かずさ2号「どんな問題があるの?」

みっちーK「たくさん、あるわ。プロジェクト品の『HORAI2010(前立腺肥大症の薬』の臨床開発のスピードが予定の半分。」

かずさ2号「なるほど。」

みっちーK「営業からは、そんな前立腺の薬なんて売れないと、総スカンをくらっている。」

かずさ2号「あらあら」

みっちーK「非臨床部門からも既にあるはずのデータがまだ揃っていない。」

かずさ2号「ふんふん。」

みっちーK「臨床チームメンバーのモチベーションも下がりっぱなし。」

かずさ2号「確かに問題が山積みだ。」

みっちーK「だから、開発が悪い、製造が悪い、営業が悪い、とまるで責任のなすりつけ。犯人探しに血眼になっている。」

かずさ2号「プロジェクトチームのチームワークが下がっているのかな?」

みっちーK「そうね。それもあるわ。」

かずさ2号「ひょっとして、みんな、『部分最適』に走っているのかも。」



かずさ2号「部分最適よりも『全体最適』を目指すべきだ。」

みっちーK「全体最適ね・・・・・・。難しそうな概念だわ。」

かずさ2号「簡単に言うと、部分最適とはある部門やチームだけがよくなっても、ほかの部門やチームのことは考えない。ことだし、全体最適とは自部門だけでなく、他部門や他チームのことも考えて課題解決に向かう、というものだね。こんな本も役立つよ。」



■エリヤフ ゴールドラット著『ザ・ゴール― 企業の究極の目的とは何か』
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●全体最適のために対立する問題を解決する


かずさ2号「たとえばさ、以下のことを見て。」


******************************

「治験が進まない(患者さんの登録が進まない)」という問題に対して考えられる理由として以下のことが考えられる。

1)その治験薬Aに対して治験責任医師の興味が低い

2)モニターのやる気が低い

3)治験薬Aそのものに魅力が無いとモニターがは思っている

4)患者さんの理解が得られない

5)強力な競合品Bがある

6)優秀なモニターが転職する

7)CRCの協力が得られない

8)臨床チームのマンパワーが不足している

9)非臨床のデータから治験薬のポテンシャルが分からない

10)問題を臨床チームで共有していない。

******************************


みっちーK「そうね。そんなところかな。」

かずさ2号「上の問題と原因の因果関係を矢印で結んでやるとより考えやすくなるよね。」


治験薬Aそのものに魅力が無い⇒強力な競合品Bがある⇒治験責任医師の治験薬Aに対する興味が低い⇒患者さんの理解が得られない⇒患者登録が進まない⇒モニターのやる気が下がる⇒治験薬Aの魅力を治験責任医師に伝えられない⇒治験責任医師のモチベーションが上がらない


かずさ2号「・・・・・・というように悪循環している可能性が考えられる」




みっちーK「ええ。でも、じゃ、どうすればいいの?という話になる・・・・・・。」

かずさ2号「全体最適のための問題解決として次の5つのツールが役立つ。」


●(1)対立解消術

●(2)現状把握術

●(3)未来構想術

●(4)目標達成術

●(5)実行手順立案術

●(6)戦略戦術実践術


みっちーK「なるほでね。たとえば対立解消術って?」

かずさ2号「問題解決の案ができたとしよう。例えば、上述の治験が進まない例とすると、まずモニターが治験薬Aの魅力を引き出すために、毎週勉強会をしましょう、となったとするじゃない?」

みっちーK「それはもうやっている。」

かずさ2号「そうだろうね。でも、新しい視点でやって治験薬Aをいかに治験責任医師に売り込むかを考える勉強会にするのがいい。そうすると現場から「やろう!」という気持ちと「今さらなに?やる必要ない」という対立が生まれることが多いよね。そこには次の意識があると思う。」



▼(1)取り組もうとしている問題が、問題であるとは思わない

▼(2)解決しようとしているやり方に合意できない

▼(3)その解決方法で、問題が解決すると思わない

▼(4)この解決方法を実行すると、ネガティブな問題が発生する

▼(5)時間がない



かずさ2号「こういう対立をどう解消していくが問題解決の一歩だよね。」

みっちーK「そうそう。どんな問題解決に対して出てくる反応は『時間がない』だわ。勉強会をやる時間がない。」

かずさ2号「だけど、それを言っていては問題が解決しない。でも、もし問題を解決すれば今よりも時間的余裕ができることも考えられる。」

みっちーK「なるほど。そこを突いていって相手に納得してもらいながら、対立を解消していくってわけね。」

かずさ2号「一方で、勉強会をやらないという選択肢のほうから考えると、一同が会して勉強しなくても、治験薬の魅力が分かるのではないかとも考えられる。」

みっちーK「ふんふん。」

かずさ2号「というように、対立するお互いの要望を尊重しつつ、問題を解決していくのが、対立解消術のひとつだ。ほかにも第三案を考える、という方法も有効だね。」



●全体最適のために全体像を把握する・・・現状把握術


みっちーK「ときどき、多くの問題が複雑に絡み合っている気がするのよね。」

かずさ2号「それはおおいにありえる。複雑に絡み合う望ましくない現象の中でも、根本的な問題、つまり根本対立を見つけられれば、問題解決はグンと早く進む。」

みっちーK「そんな便利な方法があるの?」

かずさ2号「その便利なツールが、スリークラウド方法だ。まずは望ましくない現象のうち、最も重要でかつ『異なる』望ましくない現象を3つ選ぶのがキモ。」

みっちーK「なるほど。そうやって多くの問題をカバーすることを担保しようということね。」

かずさ2号「たとえば、上の問題のうち『2)モニターのやる気が低い』と『5)強力な競合品Bがある』、『7)CRCの協力が得られない』の3つを抽出する。」

みっちーK「そうなると?」

かずさ2号「そうなると、たとえば、今度は『2)モニターのやる気が低い』という問題を解決しようとすると『(1)個人の実績ベースの褒賞を与える』という方法と『(2)治験薬開発の意義を勉強し、再認識する』というのがある


同様に

『5)強力な競合品Bがある』・・・解決方法『(1)治験薬Aの良い点を打ち出し差別化をはかる』と『(2)競合品Bと競合しない施設を増やす』

『7)CRCの協力が得られない』・・・解決方法『(1)モニターのコミュニケーション能力を上げる』と『(2)CRC側にどんな障害があるかを見極める』


かずさ2号「・・・・・・というように、3つの問題に対して、最低2つの解決方法を考えるね。」

みっちーK「それで?」

かずさ2号「出てきた6つの解決方法から共通するものを考える。たとえば『(2)治験薬開発の意義を勉強し、再認識する』と『(1)治験薬Aの良い点を打ち出し差別化をはかる』、『(1)モニターのコミュニケーション能力を上げる』という3つの解決方法の共通として『治験薬の勉強を実施し、治験薬Aのポテンシャルを十分に理解し、治験担当医師、CRCへ伝える』ということよね。」

みっちーK「なるほど。そうすると、かけ離れていた問題が同じ解決方法でいっきに解決される可能性が見えてきたわ。」

かずさ2号「そうだよね。こんな感じで問題の全体像を把握して、全体を改善していこうというのが全体最適化なんだ。」

みっちーK「こんな組織全体の問題を解決する担当部署はどこかしら?」

かずさ2号「普通は担当組織が無いので、タスクフォースチームを特別に立ち上げて期間限定で問題解決する方法がとられことが多い。」

みっちーK「組織で仕事をするのって、一筋縄ではいかないわけね。」

かずさ2号「そうそう。だから、頑張ろう!」


デーモン部長「ああ〜〜〜、ホーライ製薬の時間もない。あとは本を読んでおくれ。」

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