2014年09月09日

研究活動の不正行為に関する基本的考え方

今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




第1節 研究活動の不正行為に関する基本的考え方


1 研究活動

研究活動とは、先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等によって知り得た事実やデータを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為である。

その際、科学研究とは、そもそも仮説と検証の循環により発展していくものであり、仮説が後に否定されるものであったとしても、当該仮説そのものが科学的価値を持ち得るものであるということを忘れてはならない。




2 研究成果の発表

研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。

科学研究による人類共通の知的資産の構築が健全に行われるには、研究活動に対する研究者の誠実さを前提とした、研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。

研究成果の発表は、このチェックシステムへの参入の意味を持つものであり、多くが論文発表という形で行われ、また、論文の書き方(データ・資料の開示、論理の展開、結論の提示等の仕方)に一定の作法が要求されるのはその表れである。






3 研究活動における不正行為

研究活動における不正行為とは、研究者倫理に背馳(はいち)し、上記1及び2において、その本質ないし本来の趣旨を歪め、科学コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為にほかならない。

具体的には、得られたデータや結果の捏造、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用が、不正行為に該当する。


このほか、他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなどが不正行為として認識されるようになってきている。

こうした行為は、研究の立案・計画・実施・成果の取りまとめの各過程においてなされる可能性がある。

このうち、例えば「二重投稿」については、科学への信頼を致命的に傷つける「捏造、改ざん及び盗用」とは異なるものの、論文及び学術誌の原著性を損ない、論文の著作権の帰属に関する問題や研究実績の不当な水増しにもつながり得る研究者倫理に反する行為として、多くの学協会や学術誌の投稿規程等において禁止されている。

このような状況を踏まえ、具体的にどのような行為が、二重投稿や不適切なオーサーシップなどの研究者倫理に反する行為に当たるのかについては、科学コミュニティにおいて、各研究分野において不正行為が疑われた事例や国際的な動向等を踏まえて、学協会の倫理規程や行動規範、学術誌の投稿規程等で明確にし、当該行為が発覚した場合の対応方針を示していくことが強く望まれる。


なお、新たな研究成果により従来の仮説や研究成果が否定されることは、研究活動の本質でもあって、科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであったとしても、それは不正行為には当たらない。




4 不正行為に対する基本姿勢

研究活動における不正行為は、研究活動とその成果発表の本質に反するものであるという意味において、科学そのものに対する背信行為であり、また、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げるものであることから、研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。

また、不正行為は、研究者の科学者としての存在意義を自ら否定するものであり、自己破壊につながるものでもある。


これらのことを個々の研究者はもとより、科学コミュニティや研究機関、配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない。

なお、不正行為への対応の取組が厳正なものでなければならないことは当然であるが、学問の自由を侵すものとなってはならないことはもとより、大胆な仮説の発表が抑制されるなど、研究を萎縮させるものとなってはならず、むしろ不正への対応が研究を活性化させるものであるという本来の趣旨を忘れてはならない。





5 研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律と研究機関の管理責任


(1)研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律

不正行為に対する対応は、研究者の倫理と社会的責任の問題として、その防止と併せ、まずは研究者自らの規律、及び科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。

自律・自浄作用の強化は、例えば、大学で言えば研究室・教室単位から学科・専攻、更に学部・研究科などあらゆるレベルにおいて重要な課題として認識されなければならない。

このような研究者の自己規律を前提としつつ、科学コミュニティは全体として、各研究者から公表された研究成果を厳正に吟味・評価することを通じて、人類共通の知的資産の蓄積過程に対して、品質管理を徹底していくという、極めて重い責務を遂行しなければならない。

その際、若手研究者を育てる指導者自身が、この自律・自己規律ということを理解し、若手研究者や学生にきちんと教育していくことが重要であり、このこと自体が指導者自身の自己規律でもある。

このように指導者、若手研究者及び学生が自律・自己規律を理解することは、研究活動を通じた人材育成・教育を行う上での大前提になることを全ての研究者は心に銘記すべきである。

また、複数の研究者等による共同研究の実施や論文作成の際、個々の研究者間の役割分担・責任を互いに明確化すべきことは、研究活動を行う大前提の問題、かつ研究者の自己規律の問題として全ての研究者に認識される必要がある。







(2)研究機関の管理責任

研究者は研究活動の本質を理解し、それに基づく作法や研究者倫理を身に付けていることが当然の前提とされているが、研究者を目指す学生や若手研究者の中には、これらがどういうものであるかということについて十分な教育を受けていない、又はそのことについて研究指導に当たるべき研究者の中には、その責務を十分に自覚していない者が少なからずあるように見受けられる。

また、不正行為が起きる背景には、競争的環境の急速な進展、研究分野の細分化や専門性の深化、研究活動体制の複雑化・多様化の結果、科学コミュニティにおける問題として自浄作用が働きにくくなっている、との指摘もある。


このような指摘等の背景には、これまで不正行為の防止に係る対応が専ら個々の研究者の自己規律と責任のみに委ねられている側面が強かったことが考えられる。

今後は、研究者自身の規律や科学コミュニティの自律を基本としながらも、研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることにより、不正行為が起こりにくい環境がつくられるよう対応の強化を図る必要がある。

特に、研究機関において、組織としての責任体制の確立による管理責任の明確化や不正行為を事前に防止する取組を推進すべきである※ 4。


*******************

※ 4研究活動の不正行為に対する研究者、研究機関の責任については、本ガイドラインに添付した「参考資料1」を参照のこと。
    ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/09/03/1351568_03_1.pdf

*******************


また、研究者や研究支援人材、学生、外国人といった研究活動を行う人材の多様化、共同研究体制の複雑化が進展していることを踏まえ、研究機関においては、共同研究における個々の研究者等がそれぞれの役割分担・責任を明確化することや、複数の研究者による研究活動の全容を把握・管理する立場にある代表研究者が研究活動や研究成果を適切に確認していくことを促すとともに、若手研究者等が自立した研究活動を遂行できるよう適切な支援・助言等がなされる環境整備(メンターの配置等)を行うことが望ましい。研究機関においては、このような適切な研究体制が確保されるよう、実効的な取組を推進すべきである。



posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究活動における不正行為 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月06日

研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン

「デング熱」について。
   ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%86%B1


デング熱の国内感染症例について(第七報)
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000056755.html

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

今週と来週は「文部科学省」が出した次のガイドラインを見ます。

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の決定について
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351568.htm




研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
   ↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf


平成26年8月26日

文部科学大臣決定


研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを次のとおり決定し、これを公表する。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




はじめに

(本ガイドラインの目的と策定の背景)

本ガイドラインは、研究活動の不正行為に対する基本的考え方を明らかにした上で、研究活動における不正行為を抑止する研究者、科学コミュニティ及び研究機関の取組を促しつつ、文部科学省、配分機関及び研究機関が研究者による不正行為に適切に対応するため、それぞれの機関が整備すべき事項等について指針を示すものである※ 1。


※ 1公的研究費の適正な管理については「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19 年2月15 日文部科学大臣決定。平成26 年2月18 日改正)を参照のこと。
     ↓
http://www.mext.go.jp/a_menu/kansa/houkoku/1343831.htm



科学研究における不正行為は、真実の探求を積み重ね、新たな知を創造していく営みである科学の本質に反するものであり、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げ、冒涜するものであって、許すことのできないものである。

このような科学に対する背信行為は、研究者の存在意義を自ら否定することを意味し、科学コミュニティとしての信頼を失わせるものである。

科学研究の実施は社会からの信頼と負託の上に成り立っており、もし、こうした信頼や負託が薄れたり失われたりすれば、科学研究そのものがよって立つ基盤が崩れることになることを研究に携わる者は皆自覚しなければならない。

厳しい財政事情にもかかわらず、未来への先行投資として、国民の信頼と負託を受けて国費による研究開発を進めていることからも、研究活動の公正性の確保がより一層強く求められる。



また、今日の科学研究が限りなく専門化を深め複雑かつ多様な研究方法・手段を駆使して行われる結果、科学的成果・知見が飛躍的に増大していく反面、研究者同士でさえ、互いに研究活動の実態を把握しにくい状況となっていることからも、研究者が公正に研究を進めることが従来以上に重要になってきている。

このため、「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて −研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書−」(平成18 年8月8日科学技術・学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会。以下「特別委員会報告書」という。)が策定され、文部科学省では、関係機関に対して特別委員会報告書を踏まえた厳格な対応を求めてきた。


しかしながら、研究活動における不正行為の事案が後を絶たず、昨今、これらの不正行為が社会的に大きく取り上げられる事態となっていることを背景に、文部科学省では、平成25 年8月、「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」を設置し、今後の対応策について集中的に検討を行い、同年9月に取りまとめを公表した。



これを受け、科学技術・学術政策局に設置された「「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直し・運用改善等に関する協力者会議」では、研究機関が組織を挙げて、研究活動における不正行為に対応し、特にその事前防止に努め、公正な研究活動を推進することが、我が国の研究活動の質の担保や科学に対する信頼の向上にも資する、という認識に立ち、特別委員会報告書の見直し・運用改善の在り方や、研究倫理教育の強化を図る上での方策を中心に検討を重ね、平成26 年2月3日に審議の結果を取りまとめたところである。



本ガイドラインは、これらの検討等を踏まえ新たに策定するものであり、研究活動における不正行為への対応は、研究者自らの規律や研究機関、科学コミュニティの自律に基づく自浄作用によるべきものである、との特別委員会報告書の基本認識を踏襲した上で、これまで個々の研究者の自己責任のみに委ねられている側面が強かったことを踏まえ、今後は、研究者自身の規律や科学コミュニティの自律を基本としながらも、研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることにより、対応の強化を図ることを基本的な方針としている。


本ガイドラインに沿って、研究機関においては、研究活動の不正行為に対応する適切な仕組みを整えること、また、配分機関においては、競争的資金等の公募要領や委託契約書等に本ガイドラインの内容を反映させること等により、研究活動における不正行為への対応等について実効ある取組が一層推進されることを強く求めるものである。




(適用)

本ガイドラインは平成27年4月1日から適用する。

第3節及び第4節については、平成27年度当初予算以降(継続を含む。)における文部科学省の予算の配分又は措置により行われる全ての研究活動を対象とする。

なお、平成27年3月31日までを本ガイドラインの適用のための集中改革期間とし、関係機関において実効性のある運用に向けた準備を集中的に進める。




(用語の定義)

本ガイドラインにおいて用いる用語の定義について示す。

(1)競争的資金等

文部科学省又は文部科学省が所管する独立行政法人から配分される競争的資金を中心とした公募型の研究資金


(2)研究機関

上記(1)の競争的資金等、国立大学法人や文部科学省所管の独立行政法人に対する運営費交付金、私学助成等の基盤的経費その他の文部科学省の予算の配分又は措置により、所属する研究者が研究活動を行っている全ての機関(大学、高等専門学校、大学共同利用機関、独立行政法人、国及び地方公共団体の試験研究機関、企業、公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人、一般財団法人、特例民法法人等)



(3)配分機関

上記(2)の研究機関に対して、上記(1)の競争的資金等の配分をする機関(文部科学省※ 2、文部科学省が所管する独立行政法人)



(4)研究・配分機関

上記(2)の研究機関及び上記(3)の配分機関


(5)配分機関等

上記(2)の研究機関に対して、競争的資金等、基盤的経費その他の文部科学省の予算の配分又は措置をする機関(文部科学省※ 3、文部科学省が所管する独立行政法人)


*******************

※ 2「配分機関」における文部科学省は、それぞれの競争的資金等を所管する課室を示す。

※ 3「配分機関等」における文部科学省は、それぞれの競争的資金等又は基盤的経費を所管する課室を示す。

*******************



(6)管理条件

文部科学省が、調査の結果、研究機関の体制整備等の状況について不備を認める場合、当該研究機関に対し、改善事項及びその履行期限を示した競争的資金の交付継続の条件






(留意点)

各節に示す内容は、それぞれの機関の性格や規模、コストやリソース等を考慮して実効性のある対策として実施されることが必要である。

また、企業において、会社法(平成17 年法律第86号)等に基づく内部統制システムの整備の一環として規程等が既に設けられ、対策が実施されている場合や、大学等において、コンプライアンス関連の規程等により、本ガイドラインの内容を包括する体制等が整備されている場合は、本ガイドラインにおける対策をそれらに明確に位置付けた上で本ガイドラインを適用することを可能とする。


posted by ホーライ at 10:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究活動における不正行為 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月05日

薬物乱用に関する非臨床試験、その他の毒性試験、配合剤のための非臨床試験

さて、今週のテーマです。
     ↓
「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
     ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

■■■■■■■■■■■■



15. 薬物乱用に関する非臨床試験

中枢神経系に対し活性がある薬物に関しては、適応症によらず、薬物乱用性の評価の必要性について検討されるべきである(訳注:ここで言う乱用性とは、中枢神経系に対し活性がある薬物の使用に伴う依存性に係る乱用を意味する)。

非臨床試験は、乱用の可能性に関する臨床評価デザイン、規制当局による薬物分類とリスト作成、製品情報に役立つものでなければならない。

薬物乱用に関するデータパッケージをデザインする上で、各極の薬物乱用に関する非臨床ガイダンスが参考となる。

薬物開発の初期段階で得られる非臨床データは、乱用の可能性の初期指標を同定する上で有用である。



これらの初期指標には作用持続時間を明らかにするための薬物動態/薬力学的プロファイル、既知の乱用薬物との化学構造の類似性、受容体結合プロファイル、インビボ非臨床試験での行動/症状観察所見が含まれ、通常ヒトに最初に投与する前までに入手可能である。

これらの初期指標から乱用の可能性が認められない場合には、乱用性に関する非臨床評価モデルを用いたそれ以上の試験は不要であろう。



一般的に、活性本体に乱用性があることを示唆する所見が得られた場合や、活性本体が中枢神経系に対する新規の作用機序を持つ場合には、大規模な臨床試験(例えば、第V相試験)の実施のために、さらなる非臨床試験が推奨される。

げっ歯類での薬物の代謝物プロファイル及び薬物活性の標的がヒトと一致している場合には、乱用性に関する非臨床評価はげっ歯類を用いて行うべきである。

ヒト以外の霊長類を使用するケースは、霊長類がヒトでの乱用性を予測し得ると考える明確な根拠があり、しかも、げっ歯類のモデルは不適切である場合に限るべきである。

乱用性を評価するために、薬物弁別試験、薬物自己投与試験、退薬症候に関する試験の3つの試験がよく実施される。



薬物弁別試験と薬物自己投与試験は、一般的に、独立した試験として実施すべきである。

退薬症候の評価は、反復投与毒性試験における回復群のデザインの中に組み入れることもある。

これらの乱用性に関する非臨床試験における最高用量は、予測される臨床治療用量での血漿中濃度の数倍相当量までを設定するのが妥当である。





16. その他の毒性試験

当該治験薬又は類薬について、臨床又は非臨床試験でみられた事象から、特別な安全性上の懸念が示唆される場合には、追加的な非臨床試験(例えば、有用なバイオマーカーの特定や毒性機序の理解のため)が必要となることがある。

不純物や分解物を評価するためのアプローチについてはICH Q3A及びQ3B(12、13)に示されている。

不純物あるいは分解物を評価する必要がある場合でも、それまでとは明らかに異なる不純物プロファイルを示すような変化がある場合(例えば、新規合成経路、製剤に含まれる成分との相互作用により生成された新規分解物)を除き、通常、これらの評価は第V相試験までは必ずしも必要ではない。

例外として示した上記の事例においては、第U相試験あるいはそれ以降の開発のために、適切な評価のための試験がなされるべきである。





17. 配合剤のための非臨床試験

本節では複数製剤を組合わせたパッケージあるいは複数の有効成分からなる配合製剤(配合剤)について述べる。

ここで示す原則は、配合剤以外でも、製品情報においてある特定の薬剤との併用が推奨されることがわかっており、併用に関する臨床情報がほとんどない医薬品の開発にも適用できる。


本ガイダンスが対象としている配合剤の組合わせは以下のように分けられる:(1)後期開発ステージにある被験薬の2つ以上の組合わせ(後期開発ステージとは、十分な臨床経験があるステージ(第V相臨床試験中あるいは市販後)と定義される);(2)後期開発ステージにある1つ以上の被験薬と早期開発ステージにある1つ以上の被験薬との組合わせ(早期開発ステージとは、限定された臨床経験しかないステージ(第U相あるいはそれ以前)と定義される);あるいは(3)2つ以上の早期開発ステージにある被験薬の組合わせ。

臨床での十分な併用投与経験がある後期開発ステージの2つの被験薬による配合剤のほとんどについて、臨床試験あるいは製造販売承認のための配合剤としての毒性試験は、毒性学的に大きな懸念(例えば、毒性標的器官の類似)がない限り、一般的に必要ない。

この毒性学的懸念は、安全域やヒトにおける副作用をモニタリングできるか否かよっても変わり得る。

毒性学的に重要な懸念の原因に対処するための試験が実施される場合、一般的に配合剤の臨床試験が実施される前に完了すべきである。



後期開発ステージにある2つの被験薬を含む配合剤で、臨床での併用投与の経験が十分ではないが、得られている個々の被験薬についてのデータに基づく毒性学的な懸念がない場合は、通常、小規模かつ比較的短期間の臨床試験(例えば、3ヶ月までの第U相臨床試験)を実施するためには、配合剤の非臨床試験は必要ない。

しかしながら、大規模あるいは長期間の臨床試験前や製造販売承認前には試験の実施が推奨される。


臨床試験の経験がある早期開発ステージの被験薬と後期開発ステージにある被験薬の配合剤については、毒性学的に有意な懸念がなければ、1ヶ月までのproof-of-concept (POC)臨床試験を実施するために配合剤の毒性試験は必要ない。

これら配合剤の臨床試験は、個々の被験薬について過去に実施された臨床試験期間より長くなってはならない。

より後期の開発ステージあるいはより長期間の臨床試験を実施するためには、配合剤の非臨床毒性試験を実施すべきである。



早期開発ステージの2つの被験薬を含む配合剤については、臨床試験を実施するために、配合剤の非臨床毒性試験を前もって実施すべきである。

個々の被験薬について開発のための非臨床試験が既に完了しており、配合剤の非臨床毒性試験がその臨床試験の実施のために必要な場合、毒性試験の期間は最長を90日として臨床試験期間に相当する期間とすべきである。

製造販売承認のためには、90日間の配合剤の毒性試験が必要であるが、予定されている臨床使用期間によっては、90日よりも短い毒性試験でもよい。

配合剤の特徴を明らかにするために推奨される非臨床試験のデザインは、個々の被験薬の薬理、毒性及び薬物動態学的プロファイル、適応症、対象とする患者集団及び得られている臨床データに依存する。

配合剤の非臨床試験は通常、適切な動物種1種について実施されていればよい。予期しない毒性が確認された場合には、追加試験が必要な場合がある。

個々の被験薬について開発のための非臨床試験が実施されておらず、個々の薬剤が配合剤としてのみ用いられるのであれば、非臨床毒性試験の全てを配合剤のみを用いて実施することが適切な場合がある。



遺伝毒性、安全性薬理、がん原性について、個々の成分を用いた試験が現在の標準的な試験方法で実施されている場合には、臨床試験の実施や製造販売承認のための配合剤を用いた試験の実施は必要ない。

患者集団に妊娠可能な女性が含まれており、個々の成分を用いた試験において胚/胎児発生へのリスクが示されている場合には、ヒトの発生に対する有害影響の可能性がすでに同定されていると考えられるので、配合剤を用いた試験は推奨されない。

非臨床の胚/胎児発生毒性試験においていずれの成分についてもヒトの発生へのリスクがないことが示されている場合には、個々の成分の特徴から考えて、配合剤とすることでヒトに有害影響を生じる懸念がない限り、配合剤を用いた胚/胎児発生への影響を評価する必要はない。

個々の成分について胚/胎児発生毒性試験で評価されているが、配合剤を用いた胚/胎児発生毒性試験が必要と考えられる場合には、配合剤の試験を製造販売承認申請前に実施すべきである。






19. 後注

注1:本文書中の「暴露量」とは通常、AUCの群平均値を意味する。

しかし、状況(例えば、急性の心血管系機能変化又は中枢神経系に関連した症状を引き起こすことが知られている化合物又は化合物クラス)によっては、AUC値よりもCmaxの群平均値に基づく暴露量の方が適切であろう。




注2:雌雄受胎能の評価は、2週間の反復投与毒性試験(一般的にげっ歯類)における精巣及び卵巣の標準的な組織病理学的検査を十分に実施することによって、雌雄生殖器への影響を受胎能試験と同等の感度で検出できると考えられる(3, 15, 16)。




注3:極めて有効性の高い受胎調節方法とは、単独又は組合せにより一貫して正しく使用された時、失敗する確率が低い(すなわち年1%未満)方法を指す。

被験者がホルモン剤による避妊法を用いている場合には、評価中の治験薬に関する情報、及び治験薬の避妊薬への影響に関する情報が示されるべきである。




注4:この目的に役立つ予備的な胚/胎児発生毒性試験とは、胎児の生存、体重、外形及び内臓観察を含み、1群あたり最低でも6例の母動物に器官形成期を通じて十分な用量段階で投与された試験である。

この予備的な非臨床試験は、科学的に質の高い水準で実施され、かつデータの収集記録を容易に確認できるものであるか、又はGLP条件下で実施されるべきである。




注5:妊娠する意思を最初から持っている女性の妊娠率は月経1周期あたり約17%である。

妊娠可能な女性で行われた第V相試験から見積もられた妊娠率は月経1周期あたり0.1%未満であった。

これらの試験の間、被験者には妊娠を避けるよう勧めるとともに、妊娠を予防するための方策が施された。

初期の第U相試験の調査では、妊娠率は第V相試験よりも低いことが示唆されたが、試験に組み入れられた女性の数に限りがあったため、どの程度低下したのかは推測できなかった。

上記の第V相試験の経験から、150人の妊娠可能な女性で3ヶ月間実施する第U相試験の場合、開発中の医薬品あたりの妊娠例数は0.5例よりも有意に少ないと推測される。




注6:光がん原性試験のために現在使用可能なげっ歯類のモデル(例えば、げっ歯類の無毛動物)は、医薬品開発の裏付けとして有用ではないと考えられており、一般的に推奨されない。光がん原性に対する適切な評価系が利用できるようになった場合は、光毒性評価で光がん原性リスクの可能性が示唆された化合物について、通常、その試験は販売される前までに完了しておくべきであり、その結果はヒトでのリスク評価に考慮されるべきである。







20. 参考文献

1. 平成12年2月22日医薬審第326号「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価」について


2. 平成10年4月21日医薬審第380号「臨床試験の一般指針について」


3. 平成9年4月14日薬審第316号「医薬品の生殖発生毒性試験に係るガイドラインの改定について」、及び平成12年12月27日医薬審第1834号「医薬品の生殖発生毒性試験についてのガイドラインの改正について」


4. 平成20年11月27日薬食審査発第1127001号「医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について」


5. 平成13年6月21日医薬審発第902号「安全性薬理試験ガイドラインについて」


6. 平成21年10月23日薬食審査発1023第4号「ヒト用医薬品の心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性に関する非臨床的評価について」


7. 平成8年7月2日薬審第443号「トキシコキネティクス(毒性試験における全身的暴露の評価)に関するガイダンスについて」


8. National Centre for the Replacement, Refinement and Reduction of Animals in Research, (May 2007) "Challenging Requirements for Acute Toxicity Studies: Workshop Report"


9. Robinson, S., Delongeas, J.L., Donald, E., Dreher, D., Festag, M., Kervyn, S., Lampo, A., Nahas, K., Nogues, V., Ockert, D., Quinn, K., Old, S., Pickersgill, N., Somers, K., Stark, C., Stei, P., Waterson, L., Chapman, K. A European pharmaceutical company initiative challenging the regulatory requirement for acute toxicity studies in pharmaceutical drug development, Regul. Toxicol. Pharmacol. 50, 345-352 (2008)


10. 平成10年7月9日医薬審第554号「遺伝毒性試験:医薬品の遺伝毒性試験の標準的組合せ」について


11. 平成9年4月14日薬審第315号「医薬品におけるがん原性試験の必要性に関するガイダンスについて」、及び平成20年11月27日薬食審査発第1127001号「医薬品のがん原性試験に関するガイドラインの改正について」


12. 平成14年12月16日医薬審発第1216001号「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改定について」、及び平成18年12月4日薬食審査発第1204001号「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改定について」の一部改定について


13. 平成15年6月24日医薬審発第0624001号「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について」、及び平成18年7月3日薬食審査発第0703004号「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について」の改定について


14. 平成18年4月18日薬食審査発第0418001号「医薬品の免疫毒性試験に関するガイドラインについて」


15. Sakai, T., Takahashi, M., Mitsumori, K., Yasuhara, K., Kawashima, K., Mayahara, H., Ohno, Y. Collaborative work to evaluate toxicity on male reproductive organs by 2-week repeated-dose toxicity studies in rats. Overview of the studies. J. Toxicol. Sci. 25, 1-21 (2000)


16. Sanbuissho, A., Yoshida, M., Hisada, S., Sagami, F., Kudo, S., Kumazawa, T., Ube, M., Komatsu, S., Ohno, Y. Collaborative work on evaluation of ovarian toxicity by repeated-dose and fertility studies in female rats. J. Toxicol. Sci. 34, SP1-SP22 (2009)


posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 非臨床試験関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月04日

生殖発生毒性試験、妊婦、小児における臨床試験等

さて、今週のテーマです。
     ↓
「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
     ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

■■■■■■■■■■■■


11. 生殖発生毒性試験

生殖発生毒性試験(3)は、対象となる被験者集団に応じて、適切な試験が実施されるべきである。


11.1 男性

男性は、雄受胎能試験の実施前に、第T相及び第U相試験に組み入れることができるが、それは、雄生殖器の評価が反復投与毒性試験のなかで行われるからである(注2)。

雄受胎能試験(3)は、大規模臨床試験あるいは長期投与臨床試験(例えば第V相試験)の開始前には、完了しておくべきである。



11.2 妊娠の可能性のない女性

妊娠する可能性のない女性(すなわち、永久的な避妊術を受けた者、閉経後の者)は、適切な反復投与毒性試験(雌生殖器の評価を含む)が実施されていれば、生殖発生毒性試験を実施していなくても、臨床試験に組み入れることができる。

閉経とは、別の医学的理由を伴わずに月経の無い状態が12ヶ月以上にわたる場合と定義される。





11.3 妊娠可能な女性

妊娠可能な女性の場合、有益性とリスクについての情報が得られる前に、意図せずに胚/胎児が暴露されてしまうことに対する強い懸念がある。

妊娠可能な女性を臨床試験へ組み入れるための生殖発生毒性試験の実施時期については、3極でほぼ同様の推奨がなされている。

臨床試験において妊娠可能な女性を組入れる場合、胚/胎児への意図しない暴露によるリスクを明らかにし、最小限にすることが極めて重要である。

そのための一つのアプローチは、生殖発生毒性試験の実施によって治験薬固有のリスクを明らかにし、臨床試験において妊娠可能な女性が暴露されている期間に適切な予防策を講じることである。

第2のアプローチは、治験期間中に妊娠を回避する予防措置をとり、リスクを限定することである。

妊娠を回避する予防措置としては、妊娠テスト(HCG のβ-サブユニットに基づくものなど)を行うこと、極めて有効性の高い受胎調節方法を使用すること(注3)、及び月経周期を確認した後にのみ臨床試験へ組み入れることが含まれる。

臨床試験期間中の妊娠テスト及び被験者への教育を十分に行うことによって、治験薬の暴露期間中(試験期間を超えることもある)、所定の避妊法の遵守を確実なものとすべきである。

これらのアプローチを支持するために、インフォームドコンセントは、生殖発生毒性に関連した知り得る限りの適切な情報、例えば、類似した構造や薬理作用を有する医薬品の毒性に関する総合的な評価などに基づくべきである。

適切な生殖発生毒性の情報が無い場合には、胚/胎児へのリスクが確定されていないことについて伝えるべきである。





3極とも、一定の状況下では非臨床発生毒性試験(例えば胚/胎児試験)を実施せずに初期の臨床試験に妊娠可能な女性を組み入れることができる。

許容される状況の一つは、短い(例えば2週間)臨床試験期間で、妊娠のリスクを徹底して制御できる場合である。

他の状況として、女性に特に多い疾患で、妊娠可能な女性を含めないと臨床試験の目的の達成が不可能であり、かつ妊娠を回避する十分な予防措置がとれる場合である(上記参照)。



さらに、非臨床の発生毒性試験を行うことなく妊娠可能な女性における臨床試験を実施するために考慮すべき事項として、治験薬の作用機序、薬剤のタイプ、胎児への暴露の程度、あるいは適切な動物モデルで発生毒性試験を実施することの困難さに関する知見が含まれる。

例えば、モノクローナル抗体は、ヒトにおいて器官形成期の胚/胎児への暴露が少ないことが現在の科学的知見から理解されており、発生毒性試験は第V相試験の間に実施してもよい。

最終報告書は製造販売承認申請時に提出すべきである。



一般的に、2種の動物において適切な予備的発生毒性試験データが得られており(注4)、臨床試験において妊娠を回避する予防措置がとられる場合(上記参照)は、最終的な発生毒性試験を実施する前であっても、妊娠可能な女性(最大150人)を比較的短期間(最長3ヶ月)の治験に組み入れることができる。

これはこの規模の人数と期間の管理された臨床試験においては妊娠率が非常に低いこと(注5)、及び臨床試験に妊娠可能な女性を組み入れる際に懸念される発生毒性所見のほとんどが、適切にデザインされた予備的な試験において検出可能であるということに基づいている。

臨床試験における妊娠可能な女性の数と試験期間は妊娠率を変化させる集団の特性(例えば、年齢や疾患)によって影響される。





米国では、妊娠可能な女性に妊娠を回避する予防措置がとられている臨床試験(上記参照)においては、胚/胎児発生への影響の評価は、第V相試験の前までに実施すればよい。

EU及び日本では、前段落に示した状況を除いては、妊娠可能な女性に投与される前に最終的な胚/胎児発生毒性試験を完了しておくべきである。

3極とも、雌受胎能試験の実施前に、妊娠可能な女性を第T相及び第U相の反復投与試験に組み入れることができるが、それは、雌生殖器の評価が反復投与毒性試験のなかで実施されるからである(注2)。

雌の受胎能に特に着目した非臨床試験(3)は、大規模かつ長期の臨床試験(例えば第V相試験)で妊娠可能な女性を含める前に完了しておくべきである。

3極とも、出生前及び出生後の発生への影響の評価は、製造販売承認申請時に提出すべきである。

極めて有効性の高い受胎調節方法(注3)を用いていない妊娠可能な女性や妊娠の有無が明らかでない女性を組み入れる全ての臨床試験においては、事前に、全ての雌生殖発生毒性試験(3)と標準的な組合わせの遺伝毒性試験(10)を完了しておくべきである。




11.4 妊婦

妊婦が臨床試験に組み入れられる前に、全ての雌生殖発生毒性試験(3)と標準的な組合わせの遺伝毒性試験(10)を実施しておくべきである。さらに、事前に実施されたヒト暴露試験における安全性データを評価しておかなければならない。





12. 小児における臨床試験

小児患者を臨床試験に組み入れる場合には、通常、先だって実施された成人における臨床使用経験での安全性データが最も有用な情報であり、一般的に小児での臨床試験の前に入手しておくべきである。

成人データの必要性及び範囲は個別の状況に応じて決定される。

広範囲にわたる成人データが小児に投与する前に得られない場合もあろう(例えば小児特異的な適応疾患)。



小児での臨床試験の開始前には、成熟動物を用いた適切な期間の反復投与毒性試験(表1参照)、安全性薬理コアバッテリー試験、標準的な組合わせの遺伝毒性試験の成績を入手しておくべきである。

臨床試験に組み入れる小児患者集団の年齢と性別に対応した生殖発生毒性試験も、直接的な毒性あるいは成長へのリスクについての情報を得るために重要である(例えば、受胎能試験、出生前及び出生後の発生への影響の評価)。

胚/胎児発生毒性試験は男児あるいは思春期前の女児での臨床試験を実施するために必須ではない。

同じ薬理学的分類に属する他の薬物のデータを含めて、既存の動物データ及びヒトの安全性データが小児の臨床試験を実施するのに十分でないと判断された場合にのみ、幼若動物を用いた試験の実施を考慮すべきである。

幼若動物での毒性試験が必要な場合は、通常、適切な1種の動物種で十分であると考えられ、可能であればげっ歯類を用いることが望ましい。

科学的に正当性を示せるのであれば、非げっ歯類を用いた試験が適切な場合もある。




一般的に、小児集団での短期間の薬物動態試験(例えば、1から3回投与)を実施するためには、幼若動物による毒性試験は重要でないと考えられる。

治療上の適応、小児集団の年齢、成熟動物及びヒトへの暴露より得られた安全性データに基づいて、有効性及び安全性評価のための短期間の反復投与による臨床試験を開始する前に、幼若動物を用いた試験成績が妥当かどうかを考慮すべきである。

被験者の年齢と臨床試験の期間の関係(すなわち、被験者が薬物に暴露される期間中に、発育上の懸念すべき時期が含まれるか否か)は考慮すべき最も重要な事項の一つである。

この評価により、幼若動物による試験の必要性と、実施するのであれば、臨床試験に応じて毒性試験の実施時期が決定される。

長期間の小児の臨床試験のために、幼若動物を用いた毒性の評価が必要な場合には、それらの非臨床試験は長期間の小児の臨床試験を開始する前に完了している必要がある。

小児が主たる対象患者群であり、実施済みの非臨床試験で標的臓器(毒性学的あるいは薬理学的な)の発育に対する懸念が示される場合がある。

このような事例の中には、幼若動物を用いた長期の毒性試験の実施が適切な場合もある。




発育に対する懸念を検討するには、適切な動物(種及び週齢)を用い、妥当な評価項目が設定された慢性毒性試験(例えば、イヌの12ヶ月投与試験あるいはげっ歯類の6ヶ月投与試験)が有用である。

12ヶ月投与試験はイヌにおいて全ての発育期間をカバーすることが可能である。

どちらの動物種においても、場合によっては、対応する通常の慢性毒性試験とそれとは別に実施される幼若動物の試験とをこのデザイン(訳注:通常の慢性毒性試験と幼若動物毒性試験を兼ねる)に置き換えることが可能であろう。



がん原性試験の必要性は長期間の小児臨床試験を開始する前に判断しなければならない。

しかし、懸念すべき重大な事由(例えば、複数の試験で遺伝毒性が明らかな場合や、想定される機序や一般毒性試験の所見から、発がんに繋がるリスクが懸念される場合)がない限り、がん原性試験は小児の臨床試験を実施するためには必要ない。





13. 免疫毒性

ICH S8ガイダンスに示すように(14)、全ての新規の医薬品については、標準的な毒性試験や、その試験で認められた免疫に関連する変化の重要性を踏まえて追加実施される免疫毒性試験によって、免疫毒性を引き起こす可能性を評価しなければならない。

追加の免疫毒性試験が必要とされた場合、これらの試験は大規模な臨床試験(例えば第V相試験)の投与前に完了しておくべきである。




14. 光安全性試験

ヒトへの暴露と関連する光安全性試験の妥当性及び試験実施のタイミングは、以下の項目を考慮して決定すべきである。

1)化合物分子の光化学的性質(例えば、光吸収性と光安定性)、2)化学的に関連する化合物の光毒性に関する情報、3)組織分布、4)光毒性を示唆する臨床又は非臨床所見。

薬物の光化学的特徴と薬理学/化学的分類に基づいて、光毒性の可能性に関する初期評価を行なうべきである。

得られている全てのデータと実施しようとする治験計画から、ヒトでの光毒性のリスクが強く懸念される場合には、外来患者を用いた臨床試験では適切な保護対策をとるべきである。

これに加えて、ヒトでのリスク及び追加試験の必要性に関するさらなる情報を得るために、引き続き、非臨床での皮膚や眼における薬物分布の検討を実施すべきである。

そして、光毒性に関する実験的評価(インビトロ又はインビボの非臨床試験あるいは臨床試験)は、それが適切であると考えられる場合には、大規模臨床試験(第V相試験)の開始前には実施すべきである。

上記の段階的アプローチの代わりに、非臨床又は臨床試験において光毒性を直接評価することも可能である。

この試験の結果が陰性ならば、開発早期における眼/皮膚への分布の評価や臨床における保護対策は必要ない。

光毒性評価によって潜在的な光がん原性のリスクが示唆された場合、患者におけるリスクは、臨床試験のためのインフォームドコンセントや販売用の製品情報に警告として記載するなどの保護対策によって、通常、適切に管理することができる(注6)。



posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 非臨床試験関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月03日

早期探索的臨床試験、マイクロドーズ臨床試験、局所刺激性試験等

さて、今週のテーマです。
     ↓
「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
     ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

■■■■■■■■■■■■




7. 早期探索的臨床試験

ヒトに薬物を投与したときのデータをより早く入手することにより、ヒトにおける生理学/薬理学に関するより深い理解や、候補薬物の特性及び疾病に対する適切な治療標的についての知見が得られる場合がある。

合理的な早期の探索的アプローチにより、この目的は達成できる。

このガイダンスが目的とする早期探索的臨床試験は、第T相試験の初期に実施されることを意図しており、限定的なヒトへの暴露で、治療を目的とせず、かつヒトにおける忍容性を求めるものではない。

早期探索的臨床試験は、例えば、薬物動態や薬力学に関する様々なパラメータを調べるために、また、PETリガンドの受容体への結合や置換、その他の診断的手法などのバイオマーカーなどを調べるために利用できる。

これらの試験は、選ばれた集団からの患者、もしくは健常人を被験者として組み入れて実施される。

このような場合に臨床試験実施のために必要とされる非臨床試験のデータの量及び種類は、最高臨床用量や投与期間の観点からみた、ヒトで計画されている暴露の程度によって異なる。

5つの異なる探索的臨床試験の例を以下にまとめ、それぞれのアプローチで推奨される非臨床試験プログラムを含めて表3に詳細を示した。

一方、バイオテクノロジー応用医薬品の早期探索的臨床試験の戦略を含め、本ガイダンスに記載されていない他のアプローチもまた利用可能である。

これら別のアプローチは、しかるべき規制当局と討議、同意されるべきである。

これらアプローチを用いることにより、全体として新薬開発における動物の使用を削減できる。



5つのアプローチにおいて推奨される初回投与量及び最高用量を表3に示す。

いずれの場合においても、表3及び第2節に書かれているようなインビボないしインビトロモデルを利用した薬力学及び薬理学的特性の解析が重要であり、ヒトにおける用量設定のために利用されるべきである。






7.1 マイクロドーズ臨床試験

マイクロドーズ試験として、2つの異なったアプローチが以下に記載されている。表3に詳細を示す。

第1のアプローチは、総投与量を100μg以下とし、いずれの被験者にも単回投与あるいは分割して投与するものである。

これは、PET試験において、標的受容体への結合や組織分布を検討することに役立つ。

もう一つの利用法として、同位体標識薬物を使用した、あるいはこれを使用しない薬物動態の評価に用いることがある。



第2のアプローチは、1回あたりの最高用量が100μgで投与回数が5回以下(被験者あたりの総投与量は500μg以下)の試験である。

このアプローチでは、前述した第1のマイクロドーズ試験と同様な目的に利用できるが、比較的活性の低いPETリガンドを用いる場合に有用である。

臨床適用経路が経口投与で、既に経口投与による非臨床毒性試験成績が得られている薬物について、静脈内投与でマイクロドーズ試験を実施する状況があり得る。

この場合、表1あるいは表3のアプローチ3に記載されている既に実施済みの経口投与毒性試験において暴露レベルで適切な安全域が確認されていれば、静脈内投与によるマイクロドーズ試験の実施は、実施済みの経口投与毒性試験によって認められる。

被験薬物の局所刺激性の検討は、投与量が微量(最高用量100μg)であることから、推奨されない。

新規の静脈内投与用の媒体が使用される場合は、その媒体の局所刺激性を評価すべきである。





7.2 準薬効用量又は推定薬効域での単回投与試験

第3のアプローチは、典型的には、臨床開始用量として薬効用量以下から始めて、薬理作用発現域あるいは推定薬効域までの増量が可能な単回投与臨床試験である(表3参照)。

容認され得る最高用量は、非臨床試験の結果から算出されなければならないが、臨床試験中に得られた新たな臨床情報に基づき制限される場合がある。

このアプローチでは、例えば、薬力学的に活性を示すとされる用量又はその付近の用量において、薬物動態指標の評価を非標識化合物を用いて行うことが可能となる。



他の例としては、単回投与後における標的分子への結合あるいは薬理作用の評価がある。

このアプローチは、臨床最大耐量の検討を意図するものではない(例外は表1脚注aを参照)。







7.3 反復投与臨床試験

反復投与の臨床試験を支持する2つの異なる非臨床試験アプローチ(アプローチ4及び5)を表3に示す。

これらのアプローチは、薬効用量域におけるヒトでの薬物動態及び薬力学の測定のために、最長14日間までの投与を支持できるが、臨床最大耐量の検討を意図するものではない。

アプローチ4には、最高臨床用量での推定AUCの数倍の暴露が得られるように用量を設定した、げっ歯類及び非げっ歯類による2週間反復投与毒性試験が必要である。

アプローチ5には、げっ歯類における2週間反復投与毒性試験と、げっ歯類での無毒性量が非げっ歯類においても毒性発現用量でないことを検討するための、非げっ歯類を用いた確認試験が必要である。

げっ歯類の無毒性量での暴露量において、非げっ歯類で毒性所見が観察された場合、非げっ歯類での追加の非臨床試験(通常、標準的な毒性試験(第5節参照))が実施されるまでヒトへの投与は延期すべきである。







8. 局所刺激性試験

局所刺激性は、一般毒性試験の一部として、予定臨床適用経路により評価することが望ましく、独立した試験での評価は推奨されない。

臨床適用経路以外の経路による限定的なヒトでの投与(例えば、経口医薬品の絶対的バイオアベイラビリティの測定のための単回静脈内投与)を可能とするには、単一の動物種を用いた単回投与による局所刺激性試験が適切であると考えられる。

既存の毒性試験における全身暴露量(AUC及びCmax)が、臨床適用経路以外の投与によるものを超えているのであれば、局所刺激性試験における評価項目は、一般状態ならびに適用部位の肉眼及び顕微鏡による観察に限定してよい。

局所刺激性試験に使用される製剤は、臨床製剤と同一である必要はないが、類似したものとすべきである。

経口投与の毒性試験によって実施が支持される静脈内投与マイクロドーズ試験においては(第7節参照)、被験物質の局所刺激性を評価する必要はない。

ただし、新規の媒体を使用する場合には、媒体の局所刺激性を評価すべきである。

非経口医薬品では、多くの患者が暴露される(例えば、第V相試験)より前に、誤って適用され得る部位の局所刺激性の評価を必要に応じて行うべきである。

このような試験の要件は、地域により異なっている。

米国においてはこれらの試験は通常推奨されていない(例外として、硬膜外投与薬に対する髄腔内投与試験)。

日本及びEUにおいては静脈内投与薬に対して静脈周囲への単回投与試験が推奨されている。

その他の非経口投与薬については個別の状況に応じて判断するべきである。








9. 遺伝毒性試験

臨床試験が単回投与に限られる場合に必要な遺伝毒性試験は、通常、遺伝子突然変異に関する試験のみでよいと考えられる。

臨床試験が反復投与の場合には、ほ乳類の試験系を用いた染色体損傷検出のための追加評価が実施されるべきである(10)。

標準的な組合わせの遺伝毒性試験は第U相試験の開始前に完了しているべきである(10)。

陽性結果が得られた場合は、それらの成績を評価した上で、必要であれば追加試験を実施し(10)、臨床試験でのさらなる投与が適切であるかどうかを判断しなければならない。

早期探索的臨床試験に必要な遺伝毒性試験については第7節を参照すること。






10. がん原性試験

がん原性試験が必要となる条件については、ICH S1A(11)を参照のこと。

臨床適応を考慮してがん原性試験が推奨される場合は、それらは製造販売承認申請までに完了すべきである。

がん原性のリスクが懸念され、その明確な理由がある場合に限り、臨床試験の実施前にがん原性試験成績を提出すべきである。

単に臨床試験の投与期間が長いというだけでは、懸念されるリスクの明確な理由とはならない。

がん原性試験が推奨される場合であっても、重篤な疾患の治療のために開発された医薬品については、成人患者/小児患者用を問わず、製造販売承認後にがん原性試験の結論を出すことができる。


posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 非臨床試験関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする