2014年08月30日

「食わず嫌い」はやめよう!「非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」

今週のテーマに入る前に。

「第5回 臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」のページをご覧ください。
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000055533.html



●臨床研究の在り方に関する論点整理(案)
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http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000055544.pdf



●これまでのご意見を踏まえた臨床研究に関する現状の整理と今後の検討課題(案)(PDF:308KB)
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000055545.pdf



●検討会委員からの主なご意見(まとめ)
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000055547.pdf



●研究代表者提出資料
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000055543.pdf


特に最後の「研究代表者提出資料」は必見です。

アメリカでの臨床研究に関する手続き等の情報が満載です。

たとえば、「IND(Investigational New Drug」」(日本の治験届のようなもの)とか、「データの信頼性確保」(監査は必須ではない)とか「IRB委員の利益相反に関する規定も」とか。

ふ〜〜ん、そうなんだ、IRBの委員にもCOIを当てはめるんだ!と思いました。



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さて、今週のテーマです。
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「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」について
     ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf

普段、治験に係わっていらっしゃる方って、「非臨床試験」について、ちょっと距離を置いていません?(僕だけかな?)

でも、「治験薬概要書」を見ると、「非臨床試験」のデータが満載。

これは、やっぱり、「食わず嫌い」ではいられません。

たまには、強制的に、「非臨床試験」に関連するガイドラインを見ていきましょう!

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医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス

薬食審査発0219第4号 平成22年2月19日 厚生労働省医薬食品局審査管理課長
     ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/m/step5_m3r2_10_02_19.pdf



医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス



1. 緒言

1.1 ガイダンスの目的

本文書の目的は、ヒト臨床試験の範囲と期間に応じて、また、製造販売承認を得るために推奨される医薬品の非臨床安全性試験についての国際的な基準を勧告し、そのハーモナイゼーションを促進することである。

各種非臨床安全性試験のガイダンスのハーモナイゼーションによって、現在の要求事項が明らかにされ、実質的な相違が各地域間に存在する可能性が減少すると期待される。

このガイダンスは、臨床試験の実施時期を適正化し、3R(使用動物数の削減/苦痛の軽減/代替法の利用)の原則に従って動物の使用を抑え、医薬品開発のための資源の有効利用に資するであろう。

本ガイダンスでは論じていないが、安全性評価のための新しいインビトロ代替法の利用について考慮すべきである。


これらの代替法は、バリデーションが完了し、全てのICH規制当局によって認められれば、現在の標準試験法の代わりに利用可能である。

本ガイダンスによって、医薬品の安全で倫理にかなった開発が促進され、新医薬品を一層早く利用できるようになるであろう。




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3Rの原則


Replacement(代替):「できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること」


           …意識・感覚のない低位の動物種、in vitro(試験管内実験)への代替、重複実験の排除


Reduction(削減):「できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること」


           …使用動物数の削減、科学的に必要な最少の動物数使用


Refinement(改善):「できる限り動物に苦痛を与えないこと」


           …苦痛軽減、安楽死措置、飼育環境改善など

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1.3 ガイダンスの適用範囲

医薬品の製造販売承認のための非臨床安全性評価には、通常、薬理試験、一般毒性試験、トキシコキネティクス及び非臨床薬物動態試験、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験がある。

懸念すべき特別な理由がある場合や長期間の使用を目的とした医薬品の場合には、がん原性の評価も含まれる。

その他、光毒性試験、免疫毒性試験、幼若動物を用いる毒性試験、及び薬物乱用に関する非臨床試験は、個々の事例に応じて実施すべきである。

本ガイダンスでは非臨床安全性試験の必要性や実施される臨床試験との関係が示されている。

本文書は、医薬品開発において通常起こり得る状況に適用されるものであり、医薬品開発のための一般的な指針としてみなされるべきである。

非臨床安全性試験及び臨床試験の計画やデザインは、科学的かつ倫理的に適切なものでなくてはならない。





1.4 一般原則

医薬品の開発プロセスは、動物及びヒトから得られた有効性及び安全性情報の評価を行いながら、段階的に進めるものである。

非臨床安全性評価の主たる目的は、標的臓器、用量依存性、暴露との関係、及び適切な場合には回復性についての毒性の特徴を明らかにすることである。

これらの情報は、初めてヒトを対象とした治験を行う際の安全な初回投与量と用量範囲を推定する上で、また臨床で有害作用をモニターするためのパラメータを明らかにするために用いられる。

臨床開発の開始時までに行なわれる非臨床安全性試験は、通常限られたものであるが、臨床試験の条件下で現れる可能性のある有害作用を十分に明らかにするものでなくてはならない。

臨床試験を実施するのは、医薬品の有効性及び安全性を明らかにするためであり、最初は比較的低い全身暴露量で少数の被験者を対象として行われる。

引き続き実施される臨床試験では、通常、投与期間が延長され、対象患者数も増加する。

臨床試験の拡大は、先行する臨床試験で十分な安全性が実証されていることに加えて、臨床開発の進行と並行して実施される非臨床安全性試験からの追加情報に基づいて行われるべきである。

臨床又は非臨床試験でみられた重篤な有害所見は、臨床試験の継続に影響することがある。

臨床的意義を包括的に捉えた上で、これらの有害所見を評価し、追加の非臨床試験ないし臨床試験の必要性やデザインを決定すべきである。




1.5 一般毒性試験のための高用量選択

一般的に、毒性試験においては、最大耐量(MTD)までの用量を用いることにより、臨床的に意味のある影響として、どのような作用が生ずる可能性があるかを十分に明らかにすることができる。

全ての毒性試験でMTDを求める必要はない。

また、MTDと同等に適切な限界量としては、十分に高倍数の全身暴露量が得られる用量、暴露の飽和が起こる用量、又は投与可能な最大用量(MFD)がある。

これらの限界量(詳細は下記及び図1を参照)を設けることで、臨床での安全性予測に有用でない(高)用量を動物に投与することを避けることができる。

生殖発生毒性試験やがん原性試験のデザインにおいては、すでに限界量や限界暴露量が推奨されており、この考えと一致するものである(3、4)。



急性、亜急性及び慢性毒性試験での投与量の限界量は、以下で述べるものを除く全ての場合で、げっ歯類及び非げっ歯類ともに1000 mg/kg/日が適切であると考えられる。

1000 mg/kg/日の投与量での平均暴露量が臨床における暴露量の10倍未満で、かつ、臨床用量が1 g/日を超えるような場合は、毒性試験の投与量は10倍の暴露量、2000 mg/kg/日あるいはMFDのうちより低い用量を限界量とすべきである。

2000 mg/kg/日の投与量での暴露量が臨床における暴露量に達しないような稀な状況では、MFDまでのより高い用量を考慮すべきである。





一般的に、臨床における暴露量に対して50倍の暴露量(通常、母薬物の、あるいはプロドラッグでは薬理活性物質のAUCの群平均値(注1)に基づく)に達する投与量は、いかなる動物種を用いた急性及び反復投与毒性試験においても、最高用量として認められる。



限界量として50倍の暴露量を用いる場合、米国における第V相試験を実施するためには、通常、少なくとも1種の動物種で用量制限毒性を明らかにする必要がある。

そうでない場合には、1000 mg/kgの限界量、MFDあるいはMTDのうち最も低い投与量を用いる1種における1ヶ月以上の毒性試験が推奨される。

しかしながら、このような試験は、より短期間投与の試験において50倍の暴露量に達する投与量よりも高い用量で用量制限毒性が示される場合には、個々の事例に応じて不要とされることもある。



●MTD= Maximum Tolerated Dose 最大耐量


●MFD =Maximum Feasible Dose 投与可能な最大用量




遺伝毒性の指標が一般毒性試験に組み込まれる場合には、適切な最高用量はMFD、MTDあるいは1000 mg/kg/日の限界量に基づいて設定されるべきである。


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2014年08月29日

ALSの診断

●ALSの診断

鑑別診断として・変形性頚椎症・HTLV-I関連脊髄症 (HTLV-1 associated myeloathy; HAM)・脳・脊髄の腫瘍・脊髄動静脈奇形・ALS以外の運動ニューロン疾患などを除外せねばならない。


ALSと診断された後に他の治療可能な疾患と判明した例が少なくない。

このような例では治るはずだった疾患を見過ごすことになるから、他の疾患を除外することは非常に重要である。

特に上位ニューロン障害と下位ニューロン障害両方をきたす疾患として、孤発性ALS、家族性ALS以外にライム病やガングリオシドーシスであるHexosamnidase欠損症があるほか、筋力低下や筋萎縮が左右非対称に緩徐に進行する疾患として多巣性運動ニューロパチー、封入体筋炎、脊髄進行性筋萎縮症、post polio myelitisなどがあげられる。




●ALSの身体所見

線維束性収縮がある。

特に上腕と前胸部の筋肉に認めることが多い。

ただし、線維束性収縮が単独の症状として現れることはなく、必ず他の所見を伴う。

反射の現れかたによって上位ニューロンの障害か下位ニューロンの障害かを見分けられる。

初期は反射が亢進し、筋萎縮が進むと低下するという例が多い。

特にバビンスキー反射の出現は上位ニューロンの障害を強く示唆する。


徒手筋力検査で筋力の低下を見る。

筋萎縮がみられない、もしくは廃用性萎縮がある場合は上位ニューロンの障害が示唆される。

早くから高度な筋萎縮がある場合は下位ニューロンの障害が示唆される。

陰性徴候がない。

感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害・褥瘡の4つはALSの4大陰性徴候と呼ばれ、病初期の診断基準として重要である。

ただし、人工呼吸器による延命でさらに病態が進むと、眼球運動障害などが現れることもある。



●神経伝導検査

伝導の速度と活動電位を調べる。

運動線維のみで活動電位が低下し、伝導速度は運動線維・感覚線維ともに正常である。

ただし頸椎症を合併して非典型的所見を示すことも多い。



●筋電図検査

神経の障害が疑わしい部位で、電位の振幅が大きくなり、多相性電位が現れる。



●血液検査

HAMなら抗HTLV-I抗体が出る。



●ALSの治療

根治を期待できる治療法は現在ない。

グルタミン酸放出抑制剤のリルゾール(商品名リルテック)は進行を遅らせることが確かめられており、健康保険の適用になる。

他に、メチルコバラミン(ビタミンB12誘導体)超大量療法も試みられることがある。

対症療法として、呼吸筋麻痺が起こると人工呼吸器を装着する。

嚥下障害があると、栄養管理のため胃瘻や中心静脈栄養を使う。

その他、QOL向上をはかって、流涎や強制失笑に対する薬物療法を行うこともある。


●iPS細胞の援用による治療の可能性

京都大学iPS細胞研究所の井上治久准教授はALS患者から採取した皮膚細胞からiPS細胞を作り運動神経の細胞に変化させたところ変性TARDBP-43が蓄積し神経突起の成長を抑制していることを突き止めた。これに対しanacardic acidを投与すると変性TARDBP-43が減少し、突起の成長が促されることを確認した。

これは将来的なALS治療の可能性を示唆するものである。


●意思の疎通

人工呼吸器装着に伴い、会話ができなくなると、眼球運動を介助者が読み取り、文字盤を利用するなどしてコミュニケーションを行う。

また、本人の意思による筋の収縮、あるいは脳波などが検知できる場合は、重度障害者用意思伝達装置の使用が検討される。

導入効果は早期であるほど高い。

発話障害が進行する前に声を録り貯めておき、のちのちの音声コミュニケーションで生かす取り組みがある。



●ALSに罹患した著名人

毛沢東(1893年 - 1976年) - 初代中華人民共和国主席(*争議あり)

ルー・ゲーリッグ(1903年 - 1941年) - 野球選手

篠沢秀夫(1933年 - ) - フランス文学者

徳田虎雄(1938年 - ) - 医師、衆議院議員

スティーヴン・ホーキング(1942年 - ) - 理論物理学者




日本ALS協会
  ↓
http://www.alsjapan.org/jp/index.html



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2014年08月28日

ALSチャリティー、田中投手・三浦選手も氷水かぶる

今週は「エボラ出血熱」と「ALSという病気」(アイス・バケツ・チャレンジ)について見ていきます。

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●ALSチャリティー、田中投手・三浦選手も氷水かぶる

世界中の著名人を巻き込んで広がっている難病ALS=筋萎縮性側索硬化症のチャリティー・キャンペーン、アイス・バケツ・チャレンジ。

寄付をするか氷水をかぶり、次の挑戦者を3人指名するかを選択することができます。

ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手もチャレンジ。

そしてキングカズこと三浦知良選手も挑戦。

次の挑戦者に岡田元日本代表監督を指名しました。

また、政界でも参加者は続々と増えています。

参加した浅尾みんなの党代表は、「安倍総理にもチャレンジしていただきたい」と呼びかけました。

オバマ大統領も指名されたが(故ケネディ大統領の妹に)、氷水をかぶらずに100ドルの寄付をしたそうだ。

氷水はアメリカのスポーツ界では「祝福」を意味し、ALS患者のピート・フレイツの父親が元気付けたいという思いから氷水を頭からかぶっている。

ただ、氷水を頭からかぶることや寄付をすることは強制ではなく、日本ALS協会も「無理はしないよう」要請している。




●ソフトバンク孫さんも “アイスバケツ”で難病支援

孫社長が挑戦したのは、「アイスバケツチャレンジ」と呼ばれるチャリティー活動です。

治療法や薬のない難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の支援拡大を目的としたもので、アメリカから始まり、インターネットを通じて話題になっています。

参加者が次の挑戦者を指名するリレー方式で広がっていて、指名された人は、24時間以内に氷水をかぶるか、100ドルを寄付するというルールです。

氷水をかぶったうえで寄付してもいいということです。

これまでに、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏やフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏、歌手のレディー・ガガさん、サッカー界からはネイマールさんが挑戦しています。

日本ではiPS細胞の山中伸弥さんや歌手の浜崎あゆみさんなどが氷水をかぶり、動画が投稿されています。


https://www.youtube.com/results?search_query=als+%E6%B0%B7

https://www.youtube.com/results?search_query=als%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%90%E3%82%B1%E3%83%84%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%B1%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8



●筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、amyotrophic lateral sclerosis、略称:ALS)は、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、運動ニューロン病の一種。

極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡する(人工呼吸器の装着による延命は可能)。

治癒のための有効な治療法は確立されていない。

MLBのスター選手だったルー・ゲーリッグがこの病気に罹患したことから、別名「ルー・ゲーリッグ病 (Lou Gehrig's disease) 」とも呼ばれている。

イギリスの宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキングも罹患している。


ICD-10ではG12.21。日本国内では1974年に特定疾患に認定された指定難病である。

1年間に人口10万人当たり1〜2人程度が発症する。好発年齢は40代から60代で、男性が女性の2倍ほどを占める。



●ALSの疫学

日本では三重県・和歌山県の南部(紀南地方)に多く発症する事が報告されており、近代以前は風土病として恐れられていた。

一時は生活習慣の改善などで減少が期待された事もあったが、1997年の調査では依然として多発地域とされている。

海外ではグアムが多発地域であるが、三重県や和歌山県の場合と異なり徐々に減少傾向にある。

90%程度が遺伝性を認められない孤発性である。

残り10%程度の遺伝性ALSでは、一部の症例に原因遺伝子が同定されている。

遺伝性ALSの20%程度を占めるとされる、常染色体優性遺伝のALS1は21番染色体上のSOD1(スーパーオキシドジスムターゼ1遺伝子)に突然変異がある。




●ALSの病理

初めて報告されたのは19世紀であり、長らく原因不明とされてきた。

グルタミン酸が興奮性の神経伝達物質として働き、運動ニューロンを過剰刺激して細胞死を起こすという説(グルタミン酸仮説)があり、現在認可されている治療薬リルゾールはこの仮説に基づいて開発された。

ヒト変異SOD1を発現するマウス(SODマウス)は筋力低下と筋萎縮を示して死亡することから、ALSのモデル動物として研究されている。

現在までに次のような病態が明らかにされた。

この他、環境因子の関与、神経栄養物質の欠乏説、フリーラジカル説などが考えられている。


1.タンパク質の異常凝集

2.異常タンパク質の分解系の異常

3.ミトコンドリアの異常

4.かつて血管拡張因子と考えられていたタンパクの機能異常

5.スーパーオキサイドの過剰産生による(周辺細胞を含む)細胞死


SOD1マウスで延命効果があった多くの治療が臨床試験に至っている。

また、近年TDP-43というタンパク質の異常蓄積によるものという説が提唱されている。

SOD1遺伝子変異のない家系の中に、TDP-43遺伝子変異のある患者が見られた。

また、非遺伝性のほとんどのALSの患者にTDP-43が神経細胞の細胞質内に異常に凝集し蓄積していることも発見されている。




●ALSの臨床像

運動系が広範に障害され、特に錐体路について上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方による徴候を呈する。

感覚系や自律神経系の障害は通常認めない(陰性徴候)。

きわめて速く進行し、症例の半数ほどが発症後5年以内に呼吸筋の麻痺を起こし、自力で呼吸ができなくなって死亡する。



下位ニューロンの障害による徴候は、頭頸部(脳神経による)・四肢(脊髄神経による)の筋萎縮・筋力低下・線維束性収縮が目立つ。

四肢筋萎縮は上肢の遠位筋に顕著である。

脳神経の障害で構音障害・嚥下障害・舌萎縮(球麻痺)が現れる。

腱反射は低下する。

典型例では下位ニューロンの障害が上位ニューロンの障害よりも先に、しかも強く現れる。



上位ニューロンの障害による徴候は、四肢の筋萎縮(上肢よりも下肢に顕著)、球麻痺、強制号泣・強制失笑、腱反射・下顎反射亢進などである。

上位ニューロンの障害が強い症例では、反射が亢進することも、下位ニューロンの障害によって消失していることもある。



古典的ALSの臨床像は典型的な場合は一側上肢遠位部の手内筋の筋力低下からはじまり、筋力低下や筋萎縮はやがて多肢におよび、近位筋や舌にも広がって最終的には四肢麻痺の状態にひろがる。

上位ニューロン障害と下位ニューロン障害が解剖学的に独立に進行するため、運動症状の経過は多様性に富む。


下位ニューロン障害はまずは一側の局所的部位から反対側へ、続いて同側の上下方向に進行する場合が多い。

上位ニューロン障害はまずは同側の上下に進行し、続いて反対側へ広がることが多いとされている。



陰性徴候として、感覚障害、眼球運動障害、膀胱・直腸障害、褥瘡がある。

すなわちALSでは通常これらの徴候が現れない。

ただし少数の症例で感覚障害や、錐体外路徴候がみられる。

認知症を併発するケースも少数にみられる。

ただし多くの患者の認知機能は正常に残存し、その為に大きなストレスの原因となる。

その他、硬く光沢のある皮膚や、発汗に異常を呈することがある。


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2014年08月27日

2014年の西アフリカエボラ大流行

今週は「エボラ出血熱」と「ALSという病気」(アイス・バケツ・チャレンジ)について見ていきます。

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●2014年の西アフリカエボラ大流行

2014年の西アフリカエボラ大流行は、2013年12月から、ギニアをはじめとする西アフリカにてエボラ出血熱が流行している事象で、2014年8月18日までの世界保健機関(WHO)のまとめでは、感染疑い例も含め2473名が感染し、1350名が死亡(死亡率55%)した。


この対策に、WHO、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、欧州委員会、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、国境なき医師団、平和部隊、赤十字社などが乗り出し、各種基金や人的支援を行っている。

流行は森林隣接地帯が中心であり、この地域の葬儀で死者に触れる習慣が流行を加速させていると国連代理人は述べている。

また、コウモリやサルなどの野生動物を食べる習慣がリスクを高めているとの推測もある。



患者は急増し、米国人の感染・死亡と同国医療従事者の感染があり、米途上国支援団体の平和部隊はボランティアの撤退を決め、CDCが渡航自粛勧告を行った。

2014年8月8日、WHOは、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であると宣言した。

感染者数、死亡者数ともに過去最悪に達し、西アフリカでの初めての流行、史上初めての首都での流行となった。



●エボラ出血熱の流行の始まり

流行は、2013年12月にギニアで始まった。

最初の感染者はゲケドゥに在住していた2歳の男児(12月6日に死亡)だとみられている。

すぐに母親、姉(3歳)と祖母が死亡したが、誰もエボラだとは考えなかった。

感染源としてはウイルスに汚染された果物を食べたり、汚染された針で注射されたこと、野生のコウモリとの接触の可能性などが疑われるが明確な原因は不明である。

またこの男児を含め、最初期の感染者の疑いがあるとされている人の居住県として、コナクリ(4名)、ゲケドゥ(4名)、マセンタ(英語版)(1名)、ダボラ(英語版)(1名)が挙げられている。


ギニア保健省は3月20日に、2月9日に初の発症例が確認された正体不明の病気が36人で確認され、うち少なくとも23人が死亡したと発表した。

その症状には発熱、下痢、嘔吐が含まれ、一部の患者には出血もみられると報告されており、ラッサ熱・黄熱・エボラ出血熱の症状に似ていた。



国際的な報道は3月19日であった。

3月22日にギニア政府は、フランスのリヨンにある研究所から病気がエボラ出血熱であるとの報告を受け、その時点での感染被疑者は80人、死亡者は59人だと発表した。

ギニア保健省からの通告に基づき、WHOは3月23日に第1報を出した。





ギニア保健省の3月25日の報告では、ギニア南東部のゲケドゥ、マセンタ、ンゼレコレ、キシドゥグ(英語版)での発生が伝えられている。

その翌日、フランスリヨンのパスツール研究所は、それがザイール株であると発表した。

ただし、その後の全遺伝子解析によって、それが新株であることが明らかになっている。


ギニアの首都コナクリでも感染が見つかった。

NGOプラン・ギニアのイブラヒマ・トゥーレは「コナクリの大部分の人々は貧しく、水と公衆衛生が不足しているため、流行が急速に拡大する危険がある。水が不足しているため、手も洗えません」と述べている。

また、西アフリカには葬儀で遺体に触れて哀悼するという習慣があり、これがエボラ流行の原因の一つになっているという指摘もある。





●エボラ出血熱の初期の対策

ギニア、シエラレオネ、リベリア各国の当局は、国家非常事態委員会を立ち上げ、エボラ対策計画を実行した。

また、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は3月末、国際的支援が必要との声明を発表した。

第44回西アフリカ政府長官会議期間中の3月30日、ECOWASは2万5千USドルの支援を発表。

シエラレオネ当局は、ギニアおよびリベリアからの入国者に対し、厳しい健康チェックを行う規定を発表した。



欧州委員会 (EC) は、ギニアとその近隣諸国での流行を抑えるため、50万ユーロを供出した。

ECは、状況評価と地方への情報伝達のため、ギニアに専門家も派遣している。

EU委員で国際協力・人道援助・危機対応担当のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ(英語版)は3月28日のプレスリリースで「我々はこの悪性の病気の蔓延に強い関心を持っており、我々の支援は保健対策に即時かつ効果的となるだろう。近隣諸国に流行が広がるのを抑えるためには、我々の素早い対応が不可欠である」と述べている。



ギニアの北隣セネガルの内務省は3月末、ギニア国境からの入国を無期限停止にした。

さらに2014年3月26日、モーリタニアは、セネガル川の上流にギニアがあるため、セネガル川からの入国口をロッソとディアマの2か所に制限した。

3月31日、アメリカ疾病予防管理センターは、ギニア保健省とWHOのサポートとして、5名のチームを派遣している。


2014年4月1日、サウジアラビアは、ギニアとリベリアからのメッカ巡礼を理由としたビザの交付を停止した。

さらに、モロッコは、西アフリカのハブ空港であるムハンマド5世国際空港の医学チェックを強化した。

これとは対照的に、ギニアとリベリアの国境は大きな対応はなされなかった。

リベリアのモンロビアに駐在しているギニアの大使は、国境の封鎖ではなく直接病気と闘う努力が効果的だと主張した。



EUが資金提供しているヨーロッパモバイル研究所(European Mobile Laboratory)は、WHO/地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)の流行対策の一環として、リスクグループ4の病原体を取り扱える移動実験室を派遣した。

この移動実験室が採取した患者20名の血液サンプルからウイルスRNAを抽出、配列決定し、2007年にコンゴ民主共和国で発見されたウイルスと97%一致することが確認され、4月16日に発表された。

4月23日の時点で感染者数242、その内の死者142であり、致命率は58.7%となった。


8月8日、世界保健機関(WHO)は専門家による緊急の委員会を開いた上で、西アフリカにおけるエボラ拡大を、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であることを宣言した。

ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領は、国内でエボラ感染が続発している事態を受け、国家非常事態宣言をおこなった。

8月13日、ギニアのアルファ・コンデ大統領は公衆衛生上の非常事態宣言をおこなった。

8月15日、国境なき医師団は「(エボラ出血熱は)私たちが対応しきれないほどの速さで悪化し拡大している」と発表。

その声明に先立って、WHOはエボラの流行規模がこれまで「大幅に」過小評価されてきており、拡大防止のためには「異例の措置」を講じる必要がある、との見解を表明していた。



8月16日に首都モンロビアにおいてエボラ出血熱の患者が隔離されている施設がスラム街の若者数百人により襲撃され、患者17人が隔離施設から逃走したが、19日に全員の消息が判明し、別の治療施設に移送されたことが発表された。

この事件の他にもエボラ出血熱に感染した患者が、自分に感染することを恐れた他の住人に放置されるといった状況が生じている。

8月19日、リベリア政府はエボラ出血熱の拡大を防ぐため、夜間の外出禁止と首都モンロビアの1地区を含む2地域を隔離下とすることを発表した。




●西アフリカ諸国での問題意識

エボラ感染西アフリカ4か国では、エボラが公衆衛生上の大問題ではないとされ、この認識が対策が後手に回る原因となっている。

1日あたりの死者数は4カ国合計で、エボラ4人、ラッサ熱14人、結核114人、下痢404人、マラリア502人、HIV/エイズ685人であり、人材・資金・設備に乏しいのでエボラ出血熱への対策に資源を投入できていない。

特にエボラは空気感染しないため、対策の必要性が意識されにくい。

また対策が進んでいないのはエボラ出血熱の症状を見分けることが難しいことも一因となっている。


国民も政府の対策に従わない傾向があり、その理由について外交問題評議会のシニア・フェローのローリー・ギャレットは、「この地域には内戦、政府による搾取、テロが長い間続いており、それによって生まれた恐怖、貧困、猜疑心などがある。エボラは耐え難い騒音に付け加えられた一つのざわめきに過ぎない」と述べている。




●アメリカの対応

7月31日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ギニア、リベリア、シエラレオネへの不要不急な旅行を控えるように警告した。

キリスト教救援団体サマリタンズパースのモンロビアの治療センターの医療局長として活動中であった医師、ケント・ブラントリーとその同僚1人が同時に感染し、エモリー大学病院(英語版)へと運ばれた。


2014年8月6日、CDCは、流行への対応を強化するため、対応を6段階のスケールの中で最高レベルであるレベル1に変更した。

米国の保健当局は、エボラのアメリカへの広がりは避けられないと警告している。

米国務省は次の地域に勧告を出した。

8月8日、リベリア。渡航自粛勧告と大使館員家族の退避命令(館員は残る)。

8月8日、ナイジェリア北部の一部地域。強い渡航自粛勧告。ただし理由は地域の不安定さ。

8月14日、シエラレオネ。渡航自粛勧告と大使館員家族の退避命令(館員は残る)。





●EUの対応

3月、欧州委員会(EC)はギニア国内及び近隣国でのエボラ感染拡大防止のために50万ユーロの資金提供を行った。

またこの他にも現状の把握および現地医師との連絡を目的として、ギニアに専門家も派遣した。

欧州委員会の国際協力・人道援助・危機対応担当であるクリスタリナ・ゲオルギエヴァ(英語版)は「私達はエボラ出血熱の感染拡大について非常に憂慮しており、私達の支援がエボラ感染者への早急な健康支援につながるだろう。

私達が感染拡大、特に近隣国へのアウトブレイクを防ぐために迅速に行動することが重要である」と述べている。



4月には、リスクグループ3から4のウイルス病原体を扱うことが可能である移動実験室が、WHO/GOARNアウトブレイク対処の一環として欧州移動実験計画(EMLab)によりギニアに派遣された。

初めのほうに得られたサンプルはリヨンのジャン・メリューP4高度安全実験室において分析された。

ドイツの外務省は7月末に影響を受けているすべての国への渡航警告を出した。

8月2日、スペインも同様に渡航警告を発令した。




●日本の対応

2014年FORTH(厚生労働省検疫所)は、WHOアフリカ地域事務局の情報を元に「2014年03月24日更新 ギニアでエボラ出血熱が発生しています」という情報を出した。

また、成田空港などではパンフレットを置き、サーモグラフィーで入国者の検査をしている。

4月、外務省はギニアでの対策として国際連合児童基金(UNICEF)を介して約52万ドルの緊急無償資金協力を行った。

8月7日、厚生労働省は全国に、疑い患者の発生時の対応について再確認するように求めた。

8月8日、外務省は、ギニア、リベリア、シエラレオネに対し「渡航延期勧告」と「退避検討勧告」を出した。

渡航延期勧告と退避検討勧告は、3カ国の全域に対して出されている。



同時点の外務省の発表によれば、 WHOによれば、ギニアでは8月4日現在、495人が感染、うち363人が死亡。

首都コナクリ、ボッファ県、テリメレ県、ダボラ県、クルーサ県、キシドゥグ県ではエボラ出血熱が確認されており、フリア県、デブレカ県では疑い例が報告されている。

リベリアでは8月4日現在、516人が感染し、うち282人が死亡。

ボミ県、ボン県、ロファ県、マルギビ県、モンテセラード県(首都モンロビア所在)及びニンバ県で感染者が確認されており、首都モンロビアにEVLA病院及びJFK病院、ロファ県にフォヤ・ボーマ病院、ボン県にエボラ出血熱治療ユニットが設置されており、エボラ出血熱患者が収容されている。

シエラレオネでは8月4日現在、691人が感染、うち286人が死亡している。

5月以降、カイラフン県、カンビア県、ボートロコ県、ケネマ県、ボ県および西県(首都フリータウンを含む)で感染者が確認されている。

カイラフン県とケネマ県にエボラ出血治療センター(EOC)として隔離病棟が設置されており、エボラ出血熱患者が収容されている。

8月11日、JICAは3カ国駐在の20人を隣接国に一時的に撤退させる。

8月11日、厚生労働省は、「エボラ出血熱に関するQ&A」という情報を公開、エボラ出血熱に関する基本的な知識や、流行の状況、日本の水際対策について説明している。

8月15日、日本政府はWHOなどの3機関を介し、医薬品の供給や感染予防に充てるための150万ドルの無償資金協力を決定した。




●現在エボラ出血熱に対する効果的な治療薬、ワクチンはともにない。

2014年8月6日、中央アフリカで感染が拡大しているエボラ出血熱の医療チームで感染した米国人2人に対して投与された実験用の抗体治療剤「ZMapp」の効果があったことから、この未承認薬のエボラ出血熱患者への投与承認を求める申請がWHOになされた。

2014年8月7日、アメリカ国防総省当局者は富士フイルムホールディングスの傘下企業富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬『ファビピラビル』を、富士フイルムの米国での提携相手であるメディベクターがエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、FDAと協議していると述べた。

承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通し。


2014年8月7日、新薬「TKMエボラ」を開発しているカナダのテクミラ・ファーマシューティカルズ社が、臨床試験を差し止めていたFDAの措置が変更され、患者への部分的な利用が可能になったと発表。

2014年8月12日、WHO専門家委員会は、西アフリカで感染が拡大するエボラ出血熱をめぐり、開発段階の治療薬やワクチンを使用することの是非について議論した結果、使用は倫理的との認識で一致した。


ナイジェリアのチュクウ保健相は14日、同国最大の都市ラゴスにいるエボラ出血熱患者に対して「ナノシルバー」と呼ばれる治験薬を使った治療を行うと述べた。

西アフリカの数カ国で発生しているエボラ出血熱に新たな治験薬が使われることになる。

チュクウ保健相は、この薬がナイジェリアの科学者から届くとしながらも、その名前は明らかにしなかった。

薬は現在ラゴスに向かっており、陽性反応が出たナイジェリア人8人に投与されるという。



カナダのバイオ医薬品会社テクミラ・ファーマシューティカルズは13日、西アフリカでの大量感染に対処するため、開発中のエボラ出血熱の治験薬「TKMエボラ」を使用する方法を検討していると発表した。

この治験薬は開発中で、規制当局から正式に承認されていない。

TKMエボラは米国防総省との契約で開発されており、ウイルスと闘う「RNA(リボ核酸)干渉」という技術を駆使した治療薬候補だ。


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2014年08月26日

エボラ出血熱の概要

今週は「エボラ出血熱」と「ALSという病気」(アイス・バケツ・チャレンジ)について見ていきます。

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●エボラ出血熱

エボラ出血熱(エボラしゅっけつねつ Ebola hemorrhagic fever、または エボラウイルス病 Ebola virus disease - EVD[1])は、フィロウイルス科エボラウイルス属のウイルスを病原体とする急性ウイルス性感染症。

出血熱の一つ。「エボラ」の名は発病者の出た地域に流れるエボラ川の名を取って命名された。

ヒトにも感染し、50-80%という死亡率を持つ種類も存在する。人類が発見したウイルスの内で最も危険なウイルスの1つである。




●エボラ出血熱の概要

エボラウイルスは大きさが80 - 800nmの細長いRNAウイルスであり、ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず多種多様である。

初めてこのウイルスが発見されたのは1976年6月。

スーダン(現:南スーダン)のヌザラ (Nzara) という町で、倉庫番を仕事にしている男性が急に39度の高熱と頭や腹部の痛みを感じて入院、その後消化器や鼻から激しく出血して死亡した。

その後、その男性の近くにいた2人も同様に発症して、それを発端に血液や医療器具を通して感染が広がった。

最終的にヌザラでの被害は、感染者数284人、死亡者数151人と言うものだった。


そして、この最初の男性の出身地付近である、当時のザイールのエボラ川からこのウイルスの名前はエボラウイルスと名づけられ、病気もエボラ出血熱と名づけられた。

その後エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生・流行し、感染したときの致死率は50 - 90%と非常に高い。



体細胞の構成要素であるタンパク質を分解することでほぼ最悪と言える毒性を発揮する。

カナダ保健省のサイトでは体内に数個のエボラウィルスエアロゾルが侵入しただけでも発症するとしているが、その根拠とする文献では、エボラウイルスの感染法について明確な記述はない。

そのため、エボラウィルスはWHOのリスクグループ4の病原体に指定されており、バイオセーフティーレベルは最高度の4が要求される。



「エボラ出血熱」の恐怖が知られるようになってから30年以上が経つが、これまでの死者数は1,590人(2012年12月現在)で、これは今日でも年間10万〜数10万人の死者を出しているマラリアやコレラと比較しても格段に少ない。

症状の激しさや致死率の高さの一方で、「空気感染はせず、他人に感染する前に感染者が死に至るため、蔓延しにくい」という側面もあり、その恐怖は映画や小説で描かれたイメージや、「致死率90%」という数字により誇張されているとの指摘もある。

現時点で決定的証拠は無く、関与の程度も不明なものの、ヒトの間で空気感染する可能性は強く疑われている。



●エボラ出血熱の原因

アフリカ中央部(スーダン、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、ガボン、ウガンダ)、 西アフリカ(コートジボワール(アイボリコースト、象牙海岸。輸入1例)、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア)、南アフリカ(ガボンからの輸入1例)で発症している。

またフィリピンでは、感染したカニクイザルと豚が見つかっている(サルはアメリカとイタリアに輸出され、ウイルスが発見された。)。



自然宿主の特定には至ってはいないが、コウモリが有力とされている。

サルからの感染例はあるが、キャリアではなくヒトと同じ終末宿主である。

また、現地ではサルの燻製を食する習慣があるため、これを原因とする噂がある事も報道に見える。



2005年12月1日付の英科学誌『ネイチャー』にて、ガボンのフランスビル国際医学研究センターなどのチームの調査によると、 オオコウモリ科のウマヅラコウモリ、フランケオナシケンショウコウモリ、コクビワフルーツコウモリ等が、エボラウイルスの自然宿主とされ、現地の食用コウモリからの感染が研究論文で発表されている。



患者の血液、分泌物、排泄物や唾液などの飛沫が感染源となる。

死亡した患者からも感染する。



エボラウイルスの感染力は強いものの基本的に空気感染をせず、感染者の体液や血液に触れなければ感染しないと考えられている。

これまでに見られた感染拡大も、死亡した患者の会葬の際や医療器具の不足(注射器や手袋など)により、患者の血液や体液に触れたことによりもたらされたものが多く、空気感染は基本的にない。

患者の隔離に関する措置が十分に行われていれば、感染することはない。



エンベロープを持つウイルスなので、アルコール消毒や石けんによる消毒が容易であり、大きな変異がない限り先進国での大きな流行の可能性は低いと考えられている。

なお、レストンでのサルの商業輸入に際して顕在化し、その感染流行により特定されたサルを終末宿主とする「エボラ・レストン株」(現状ではヒトに対する病原性はない)は、空気感染の可能性を濃厚に具現する例として知られているものの、エボラ出血熱の人体間における空気感染の可能性について確定的に定義付けるものとは言えない。

なお、今日の航空機においては、仮に幾許かの空気感染が起こりうるとしても、飛行中には適切な換気が行われているため、感染者より2列以外は「密接な接触」とならないとされている。


何故防護服を着た医療従事者に感染するのか、原因は解明されていない。

しかし、マラリア原虫を媒介するハマダラカが、吸血したての人の新鮮血を媒介しているという学説が浮上している。

吸血後、何時間以内に刺咬されたら感染する確率があるのか、研究成果が待たれている。





●エボラ出血熱の症状と治療

潜伏期間は通常7日程度(最短2日、最長3週間)。

WHOおよびCDCの発表によると、潜伏期間中は感染力はなく発病後に感染力が発現する。

発病は突発的で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などから、嘔吐、下痢、腹痛などを呈する。

進行すると口腔、歯肉、結膜、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死亡する。

致死率は50 - 90%と非常に高い。



エボラ出血熱ウイルスに対するワクチン、ならびに、エボラ出血熱感染症に対して有効かつ直接的な治療法は、現在に至るまで確立されていない。

現在は、脱水に対する点滴や、鎮痛剤及びビタミン剤の投与、播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する抗凝固薬等の投与が行われている。


・実験動物に対しては東京大学医科学研究所教授(ウイルス学)の河岡義裕は、エボラ出血熱ウイルスのワクチンをマウスに接種したところ、一定の効果を確認したことを米専門誌ジャーナル・オブ・バイロロジー電子版で発表した。

この実験では、ワクチンを接種せずに感染させたマウス10匹は6日後に全て死亡したが、接種した15匹は、健康な3匹のマウスと同じように2週間以上生き続けたという。

河岡は今後、サルで実験し、早期実用化を目指したいとしている。



・2010年5月29日、ボストン大学のウイルス学者トーマス・ガイスバートをはじめとした研究チームが、エボラウイルスの中でヒトに対する病原性が最も強いザイール型のエボラウイルスに感染させた中国のアカゲザルの治療に成功したと「The Lancet」誌上で発表した。

人工的に生成した低分子干渉RNA (siRNA) を基に作られた薬剤を副作用が出ないよう脂肪分子で包み、感染した細胞に直接届けることで、ウイルスの自己複製を促進するLタンパクを阻害する仕組み。

実験に使用したサルは9匹のうち7匹は6日間にわたって同じ量の薬剤の投与を受け、7匹中3匹は1日おき、4匹は毎日薬剤を摂取した。

それぞれのグループで1匹ずつは対照群として薬剤を投与されなかった。

薬剤を投与されたサルを分析した結果、エボラウイルスに感染して10日後、1日おきに投与されたサルの血中のウイルス濃度は非常に低かった。

また、毎日投与されたグループからはウイルスがまったく検知されなかった。

このsiRNA剤は特定の型のエボラウイルスに合わせて短時間で人工的に生成することが可能なため、新しい型のエボラウイルスが現れたとしても、すぐに対応できるという。




・2014年8月6日、中央アフリカで大流行しているエボラ出血熱の医療チームで感染した米国人2人に対して投与された実験用の抗体治療剤「ZMapp」の効果があったことから、この未承認薬のエボラ出血熱患者への投与承認を求める申請がWHOになされた。

薬の効果・副作用より(供給が不足する中で)「誰に投与すべきか」という倫理上の問題があったが、WHO特別委員会で暫定的に承認された。

なお、前述の米国人医師への使用で効果があったという報道については、投与と効果の因果関係がはっきりと示されておらず、仮に効果があったとしても、副作用を含めた安全性についてはまだ確証が得られていない。

米国では他にも、TekmiraとBiocryst Pharmaceuticalsの2社が政府の援助を得て新薬を開発中である。




・富士フイルムホールディングスの傘下企業富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬『ファビピラビル(Favipiravir)』はウイルスのRNAポリメラーゼの阻害薬で、疫病のマウスモデルにおいてエボラウイルスを排除する効果が確認されている。

富士フイルムの米国での提携相手であるメディベクターがエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、FDAと協議している。

承認されれば、エボラ出血熱の感染者治療で米当局が承認する初の医薬品の一つとなる見通し。




・不妊症及び乳癌の治療に用いられるエストロゲン受容体遮断薬(クロミフェンとトレミフェン)は、感染したマウスでエボラウィルスの進行を抑制する。

クロミフェンで治療されマウスの90%及びトレミフェンで治療されたマウスの50%が、テストを生き残った。

経口で利用可能であり、人的利用の歴史のあるこれらの薬は、単体で使うにせよ、他の抗ウィルス薬と合わせて使うにせよ、遠い地理的位置においてエボラウィルス感染を治療するのための候補であろう。



・WHOのキーニー事務局長補は2014年8月12日の記者会見で、2種類のワクチンが臨床試験直前の段階にあると述べた。

・カナダ保健省は約1500回分のワクチンを保有する。そのうち1000回分程度を供給する用意があると述べた。




●エボラ出血熱の生態への影響・流行

2002年4月、世界保健機関 (WHO) は、ガボン北部に生息するニシローランドゴリラの死体からウイルスを発見した。

エボラ出血熱の流行地帯に暮らす人々は、ゴリラやチンパンジーなどの野生生物を食用とする習慣があり、また実際に発症した人の中には、発症する直前に森林で野生動物の死体に触れたと証言した者もいることから、ゴリラやチンパンジーも感染ルートの一つとなった可能性がある。

翌年、隣国のコンゴ共和国でエボラ出血熱が発生した際には、人間への感染と同時にゴリラにも多数の感染例が報告され、2002年から2005年の間に約5,500匹ものゴリラが死亡したと報告した。

2007年9月12日に発表されたIUCNレッドリストでは、エボラ出血熱による激減および密猟のため、ニシローランドゴリラは最も絶滅危険度の高い Critically Endangered(絶滅寸前)に分類されている。



チンパンジーにいたっては100年前には約200万匹いたと推定されるが。商業目的で密猟や食料にされたり、エボラ出血熱の流行で、現在は約20万匹と推定され、「絶滅のおそれのある種のレッドリスト」に、絶滅危惧IB類として分類されている。



なお、人以外のゴリラやチンパンジー等の霊長類が人への感染源になっているが、ウイルスの保有宿主ではなく、人間と同様に偶発的に終末宿主になったと考えられている。



フィリピンでは2007年から2008年にかけて、マニラ北部の養豚場など数箇所でブタが相次いで死亡した。

アメリカの研究機関が調べたところ、レストン株のエボラウイルスに感染していることが確認された。

家畜へのエボラウイルス感染が確認されたのは世界で初めてである。

その後、1989年、1990年、1992年、1996年にフィリピンからエボラ・レストンに感染したサルが輸出されていたことが明らかになった。



2008年のコンゴ民主共和国での流行では、32人が感染し14人が死亡した(死亡率44%)。

2011年から2012年にかけてウガンダで流行し32人が感染し22人の死亡が報告された。



2014年2月からギニア、シエラレオネおよびリベリアにおいて、エボラ・ザイールが流行し、4月9日現在の確認死亡者は101人で、4月9日現在の感染者は157人である。

WHO、国境なき医師団などが緊急援助を行っている。

4月24日現在の確認死亡者は142人、死亡者を含む感染者は242人である。

4月下旬には収まったように見えたが、5月に入ってから流行は急拡大し、7月、WHOは2月からの死亡者が518人に、死亡者を含む感染者は844人に拡大したと報告した(ともに疑い例を含む)。

これは過去の最大年間死亡者数を上回る規模のものとなった。


2014年8月4日現在(8月6日発表)4カ国合計で感染者1711名、死亡者932名となり現地の状況から考えてさらに拡大する可能性が高いので、WHOは8月8日に「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」(PHEIC(英語版))を宣言、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は最高度の緊急体制に入った。

2014年8月13日現在(8月15日発表)4カ国合計で感染者2127名、死亡者1145名となった。

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