2014年01月17日

実施医療機関への改善すべき事項の内訳

今週は総合機構が10月24日(東京)と10月28日(大阪)に開催した「GCP研修」の資料を見ていきます。


●平成25年度GCP研修会資料
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp



●治験を実施する医療機関における留意点
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h25gcp/chiken_ryuiten.pdf



『実施医療機関への改善すべき事項の内訳(個別症例)』が19頁目からありますが、圧倒的に「プロトコル違反」が多いですね。

具体的な内容が22頁目にあります。
     ↓
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●被験者背景がIVRS/IWRS(注)に誤って入力され、当該情報に基づき割付が実施されていた。

●治験実施計画書で定められた検査が実施されていなかった。

●臨床所見スコアが中止基準に達しているにもかかわらず、試験が継続されていた。

●検査結果を確認する前に治験薬が投与されていた。

●検査結果により治験薬の投与量の増減が規定されているにもかかわらず、遵守されていなかった。

●盲検性維持のため、治験薬投与期間中は検査項目○○は院内検査で測定しないことが規定されていたが、院内で測定していた。

●主要評価を実施するためのCT撮影が規定された撮影条件(スライス厚等)で実施されていなかった。

●臨床検査検体の中央測定機関への提出が遅れ欠測となった。

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(注)

★IVRS(Interactive Voice Response System)

・音声自動応答システム(英語対応)

ID番号と暗証番号を使って登録


★IWRS(Interactive Web Response System)

・インターネットによるWeb 登録(英語記載)






親切にも、プロトコル違反が起こった場合の対応まで紹介されています。
  ↓
【逸脱が発生した時の対応】

●被験者の安全性を確保すること。(治験の中止、追跡調査等、必要な措置を確認する。)

●他の症例において、同様の逸脱はないかを確認する。

●逸脱の原因を確認し、当該治験及び今後の治験実施における再発防止に取り組む。



「プロトコル違反」って、結構、同じ項目に集中して発生することが多いので、しっかりとチーム・組織内で「プロトコル違反の事例」を情報共有し、再発防止策に努めましょうね。




『症例報告書に関する事例』が24頁目にあります。
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●症例報告書に記載された検査値が、原資料(検査報告書)と異なっていた。

●有害事象○○が発現し、△△が投与されていたが、症例報告書に有害事象及び併用薬として記載されていなかった。

●有害事象治療のための予定外来院による診察を受けていたが、症例報告書に当該有害事象が記載されていなかった。

●治験薬の投与状況について、原資料と症例報告書の不整合が認められた。

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「有害事象」と「併用薬」についてはしっかりとSDVしましょう。

「有害事象」は治験薬の安全性に関わる項目ですし、「併用薬」は「併用禁止薬」との絡みもありますからね。



『被験者の同意に関する事例』が26頁目にあります。
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●治験実施計画書に規定された投与前検査を同意取得に先立って実施した。

●前治療薬のWash-outを同意取得に先立って実施した。

●同意文書の被験者日付欄を被験者本人が未記載であった。

●治験協力者が補足的な説明を行っていたにもかかわらず、同意文書に署名していなかった。

●説明文書を改訂したが、治験参加中の被験者に対して、文書による再同意を得ていなかった。また、新たな被験者の登録に際し、改訂前の説明文書が使用されていた。

●説明文書に記載のない再検査を行うことに関し、被験者へ情報提供し、同意を得た旨を文書に記録していなかった。

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「インフォームド・コンセント」は治験の根幹を成すものです。

しっかりとSDV等で確認しましょう。

特に治験特有の検査やウォッシュアウトと同意のタイミングについては、くどい位に事前に治験責任医師等に説明しておきましょう。(治験特有の検査やウォッシュアウトは同意取得のあとから可能。逆は不可。)





『記録の保存に関する事例』が28頁目にあります。
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●『診療録』が保存されていなかった。

●『同意文書』が保存されていなかった。

●『患者日誌』が保存されておらず、有効性評価、安全性評価項目の根拠が確認できなかった。

●『○○スコアシート』が保存されておらず有効性の副次評価項目の根拠が確認できなかった。

●『治験薬の投与時刻、採血時刻』及び検体処理が治験実施計画書に従って実施されたことを示す記録が確認できず、得られた動態解析結果の信頼性が担保できなかった。

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上記のうち『治験薬の投与時刻、採血時刻』は特にフェーズ1で注意しましょう。

原資料(原データ)が無いとデータの信頼性が保証できません(と言うことは、承認申請データから削除するよう機構から指示されます)。

治験依頼者から原資料の廃棄を行ってもよいという連絡があるまで、しっかりと保存してもらうようにお願いしておきましょう。

治験依頼者もその連絡(廃棄してもよい)を忘れずにしましょうね。(治験依頼者の担当者が変わると、忘れやすい。)



『被験者の選定に関する事例』が31頁目にあります。
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●スクリーニング検査の結果が選択基準を満たしていなかった。

●除外基準に規定された併用禁止薬の投与及びWash-out期間が遵守されていなかった。

●既往歴・合併症が除外基準に抵触していた。

●臨床検査値が除外基準に抵触していた。

●治験薬投与前に変更が禁止されていた前治療薬の用量が変更されていた。

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「選択基準」や「除外基準」の違反はこれまた、治験の根幹を揺るがすものです。

医師の「臨床上、問題ないから」という言葉にふりまわされないように強い意志でしっかりとクライテリアを守ってもらうようにお願いします。

日常診療ではそうかもしれませんが、私たちが行っているのは「試験」です。

そういう認識を持って頂くように日頃から注意してください。



32頁目に重要なことが記載されています。
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●選択・除外基準は、被験者保護の観点及び有効性等の情報を適切に収集すること等を目的として、治験依頼者により根拠をもって設定されている。

●治験責任医師等は独自の解釈をせずに、治験依頼者に治験依頼者としての見解を確認すること。

●モニターから回答を得た場合、モニター個人の解釈ではなく、治験依頼者として検討された見解であることを確認すること。

●上記の内容については、各自記録として残すことがリスク管理の観点からも重要。

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最後の「上記の内容については、各自記録として残すことがリスク管理の観点からも重要。」の「各自」ですが、これはもちろん、治験依頼者側のモニターと、施設側の治験責任医師等の両者で、ということですね。




33頁目以降は「医師主導の治験」の場合ですので、関係する人はしっかりと読んでおきましょう。

41頁目以降に「治験関連通知の改正点」がコンパクトにまとめられているので、復習しておきましょう。

なお、下記のページには「治験及び調査における電磁的記録の利用について」や「製造販売後調査の現状と留意点」も掲載されているので、関係者の方は必読です。

また「治験及びGCPに関する最近の動向について」では、この1年間のGCP関係の改正点が要領よくまとまっていますので、復習のために読んでおくとよいでしょう。

●平成25年度GCP研修会資料
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp



みなさん、今年も楽しく頑張りましょうね!


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2014年01月16日

治験を実施する医療機関における留意点

今週は総合機構が10月24日(東京)と10月28日(大阪)に開催した「GCP研修」の資料を見ていきます。


●平成25年度GCP研修会資料
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp




●治験を実施する医療機関における留意点
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h25gcp/chiken_ryuiten.pdf



「実施医療機関に対するGCP実地調査件数の推移」が5頁目にあります。

ここ5年間は「改善すべき事項を通知した医療機関数」の割合が減少傾向にありますね。

それでも30%程度の施設に対して改善すべき事項が通知されています。

では、一体、どのようなことが施設に対して改善するよう通知されているのでしょうか。

7頁目を見ると、「治験実施計画書」が多くて、「IRB」関連は飛躍的に減少しています。


医療機関に対する改善通知は「体制」よりは「個別症例」が多いようです。(8頁目)



「治験薬関係」がまとめて記載されています。(12頁目)
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●誤った薬剤が被験者に交付/投与されていた。

・盲検期に非盲検期の薬剤を投与。

・指示された薬剤番号と異なる番号の治験薬を投与。

・治験薬は医療機関に交付されていたにもかかわらず、同一成分の市販薬を投与。

・他の治験用の治験薬を投与。

・温度規定を逸脱して管理された治験薬を治験依頼者への確認等を行わず投与。

・回収した使用済みの治験薬(バイアル)を再度投与。

・被験薬を交付すべきところ対照薬を交付。



●割り付けられた割付番号の治験薬が被験者に投与されたことを示す記録を作成していなかった。

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信じられないようなミスが起こりうるということですね。

私も実際、昔の話ですが、「二重盲検試験」と「長期投与試験(こちらはオープン)」を同時に実施していた施設で、間違って「二重盲検試験」の患者さんに「長期投与」用の治験薬が投与されたことがあります。

こんなことがあってから、「二重盲検試験用の治験薬」と「長期投与試験用の治験薬」の箱の色を変えました(片方をピンク、もう片方をブルーにし、さらに大きく「二重盲検試験用」とか「長期投与用」と箱に表示をしました。)。

工夫しましょう!







治験薬の管理に関する留意事項が13頁目にあります。
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●治験薬管理者は、治験依頼者が作成した手順書に従って、治験薬の受領、返却、被験者毎の使用状況等の記録を作成すること。

・治験実施計画書に規定された量の治験薬が被験者に投与されたことを示す記録(※)を作成すること。


※ 治験実施計画書により求められる記録は異なります。

(例)

・薬剤の割り付けが行われる場合

・体重によって異なる用量の治験薬を用いる場合

・時期によって異なる治験薬を用いる場合(非盲検期、第1期、・・・)

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モニターは施設の調査・選定の際に治験薬管理者を訪問し、治験薬管理票を確認しましょう。

もし、その管理票が当該治験に対して不十分なところがあったら、適切な治験薬管理票の見本(治験依頼者が作成したもの)を治験薬管理者に提示するといいですよね。



『業務の委託に関する事例』が14、15頁目にあります。
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●治験施設支援機関(SMO)との業務委受託契約書にGCP第39条の2第2号から第6号に係る事項の記載がなかった。

●治験の実施に係る業務の一部(○○検査)を他の医療機関に委託していたが、適切な業務委受託契約が結ばれていなかった。

●実施医療機関は、委託した業務が適切かつ円滑に行われているかどうかを確認。

●受託者もGCP基準に従って受託業務を行うことが求められています。

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施設とSMOとの契約等は施設の問題ですが、モニターもきちんと把握しておくことをお薦めします。

せっかくの症例登録がフイになる可能性もありますからね。





『治験審査委員会(IRB)に関する事例』が15〜18頁目にあります。
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●治験期間が1年を超える場合の治験継続の適否の審査(年1回以上)について、IRBは審査していなかった、あるいは迅速審査により審査していた。

●治験実施計画書の変更や安全性情報に関する情報を受けて説明文書が改訂されたが、これについてIRBは迅速審査により審査していた。

●治験依頼者から通知された安全性情報について、IRBは治験を継続して行うことの適否について審査していなかった、あるいは迅速審査で審査していた。

●治験協力者がIRB委員として審議・採決に参加しており、当該委員を除くと出席員数がIRBの成立要件を満たしていなかった。

●IRBの会議の記録が審議結果のみの記載であり、議事要旨が記載されていなかった。

●治験の継続について審査していたが、当該医療機関の長に対し、当該審査に係る意見を文書により述べていなかった。

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今更ですが「迅速審査」を実施してよいのは「軽微」な変更の場合だけですね。

以下の項目は「迅速審査」では「不可」です。(18頁目)

●治験を行うことの適否

●説明文書の改訂

●安全性情報報告(治験依頼者からの報告、自施設で発現した重篤な有害事象)による治験継続の適否


「迅速審査」の名前にだまされず(副作用の審議なんかは迅速のほうがいいと、つい思ってしまいますからね)に、しっかりと審議してもらいましょう。


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2014年01月15日

治験依頼者への改善すべき事項:モニタリング

今週は総合機構が10月24日(東京)と10月28日(大阪)に開催した「GCP研修」の資料を見ていきます。


●平成25年度GCP研修会資料
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp



●医薬品の適合性書面調査及びGCP実地調査について
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h25gcp/iyakuhin_gcp.pdf




「新医薬品のGCP実地調査実績の推移」が22頁目にあります。

最近は、だいたい、80件〜100件ぐらいの実地調査が行われているのですね。

GCP実地調査の評価結果(H24年度)では、概ね「適合(改善すべき事項なし)」ですが、12%で「改善すべき事項あり」があります。

もし、「改善すべき事項あり」があった場合、その情報を組織(会社)の中で共有しているかどうかです。

繰り返し、同じ指摘事項を受けないように組織をあげて改善に取り組みましょう。




「治験依頼者への改善すべき事項の項目別推移」(24頁目)を見ると、治験依頼者に対する指摘は減少傾向にありますね。

内訳として、たとえば「モニタリング」に関連する項目として下記があがっています。(25頁目)


●資料保管の不備

●原資料と症例報告書の不整合

●治験実施計画書からの逸脱



「モニタリング不備」の中にも「把握していない」、「把握していたが、了承をしている」、「モニタリング報告書等に適切な記録を残していない」があります。

ここで「把握していたが、了承をしている」を考えてみましょう。

たとえば、併用禁止薬の中に「フェノチアジン系薬剤」があったとします。

治験中に治験責任医師からモニターに電話があり「PL顆粒を服用しているけれど、大丈夫だよね?」と聞かれて、「はい、大丈夫です」と答えたりした場合ですね。


「PL顆粒」は配合剤であり、下記の成分が配合されています。

・サリチルアミド

・アセトアミノフェン

・無水カフェイン

・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩


上記のうち、「プロメタジンメチレンジサリチル酸塩」が「フェノチアジン系薬剤」なのですね。


併用禁止薬としては「配合剤」と「手術」が有った場合は特に注意しましょう。

手術の時には前投与で、いろんな薬が処方されますからね。




また「未知重篤な副作用情報の実施医療機関への伝達遅延」は被験者の安全性確保に多大なる影響を及ぼしますので、速やかに伝達しましょう。

「速やかに」とか「直ちに」というけれど、いったいどれくらいなの?ということは会社のSOPに記載されていると思いますので、この際、再度確認しておきましょう。

(通常、「直ちに」とは1カ月以内を指すようです。)




「医療機関種別調査対象数の推移」が30頁目にありますが、「診療所」が多いですね。開発されている新薬に生活習慣病の薬が多いせいでしょうか。


「新医薬品の海外調査」が31頁目にありますが、アメリカが多いのは当然として、欧州、アジアと各地に散らばっていますね。



最後に・・・・以下のことが最後の頁(45頁目)にあります。


リスクに基づくSDV手法:

治験の目的に照らしたデータの重要性や被験者の安全確保の観点から、当該治験の品質に及ぼす影響を考慮し、あらかじめ定められた方法に従って抽出したデータ(データ項目に限らず、症例、医師、実施医療機関及び来院時期等も含む。)を対象としてSDVを行う方法.

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2014年01月11日

新医薬品の適合性書面調査における調査結果

今週は総合機構が10月24日(東京)と10月28日(大阪)に開催した「GCP研修」の資料を見ていきます。

●平成25年度GCP研修会資料
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/kenshushiryo.html#gcp


●医薬品の適合性書面調査及びGCP実地調査について
    ↓
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h25gcp/iyakuhin_gcp.pdf



基本的なことから復習すると「適合性書面調査及びGCP実地調査によるデータの信頼性の確認」とは(7頁目)

施設から回収したCRFのデータと施設の原データとの信頼性を確認するのが「GCP実地調査」。

一方、治験依頼者側に保存されているCRF等と当局に「製造販売承認申請」した時の資料との間の信頼性を確認するのが「適合性書面調査」になるわけですね。

「原資料から承認申請資料までの信頼性を保証 (GCP、薬事法施行規則第43条信頼性の基準)」です。



ちなみに「薬事法施行規則第43条」にはこんなことが書かれています。

  ↓

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(申請資料の信頼性の基準)


第四十三条  


法第十四条第三項 後段(同条第九項 において準用する場合を含む。)に規定する資料は、医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令 (平成九年厚生省令

第二十一号)、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 (平成九年厚生省令第二十八号)、医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令 (平成十七

年厚生労働省令第三十七号)及び医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令 (平成十七年厚生労働省令第三十六号)に定めるもののほか、次に掲げるところにより、収集され、かつ、作成されたものでなければならない。


一  当該資料は、これを作成することを目的として行われた調査又は試験において得られた結果に基づき正確に作成されたものであること。


二  前号の調査又は試験において、申請に係る医薬品又は医療機器についてその申請に係る品質、有効性又は安全性を有することを疑わせる調査結果、試験成績等が得られた場合には、当該調査結果、試験成績等についても検討及び評価が行われ、その結果は当該資料に記載されていること。


三  当該資料の根拠になつた資料は、法第十四条 の規定による承認を与える又は与えない旨の処分の日まで保存されていること。ただし、資料の性質上その保存が著しく困難であると認められるものにあつてはこの限りではない。


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実地調査や書面調査は承認申請から3〜4ヶ月で実施されているようです。(8頁目)

これまた、基本的な事項の復習ですが「信頼性調査」はまず、調査をする試験(治験)が決定されます。

普通はピボタル(pivotal)な治験が選ばれる傾向が高いので、フェーズ3が調査される可能性が高くなります。

さて、調査する治験が決まったら、今度は調査の対象となる施設(治験実施医療機関)が選定されます。

どの施設が選ばれるかはケースバイケースですね。

ここ数年間で何回も調査になっている施設よりは、まだ実施されていない施設が選ばれるでしょうし、症例数が多いとかSAEが多発している施設とか、まぁ、いろいろですね。

施設が選ばれたら、今のところ、実地調査ではその施設の全症例がチェックされるようです。(もちろん、例外もありますが、全症例だと思っていたほうがいいです。)

書面調査では1施設、だいたい20%程度を抜き取ってやっているようです。(9頁目)



昔は書面調査と言えば、CRF等を総合機構まで運びこんでやっていましたが、最近は「企業訪問型書面調査」が増えているようです。(15頁目)

ありがたいことです。



さて、「新医薬品の適合性書面調査における調査結果(H24年度)」が17頁目にあります。

「照会なし」が70%です。

「通知事項あり(結果の信頼性に影響を及ぼす事項又は改善すべき事項とされた場合)」が10%です。

「適合性書面調査の照会事項内訳(H24年度)」が18頁目にありますが、「外部委託機関における記録の保存」に問題が多いようですね(紹介事項のうち45%が該当)。


新薬が承認されるまでは原資料を「外部委託機関」に保存しておいてもらうようお願いしましょう。



「新医薬品の適合性書面調査における照会事項の事例」が19頁目にあります。

最近の治験ならではの問題もあります。

   ↓

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・電子データの取り扱い・・・監査証跡の保存の適切性

・症例報告書の署名・・・eCRFにおける治験責任医師による電子署名が保証するデータの範囲

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より具体的な事例が20頁目にあります。

   ↓

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●承認申請資料として中間報告書が提出されたが、その根拠となった症例報告書に対して治験責任医師が記名押印又は署名をしていなかった。

●中間報告書を作成する際にも、治験責任医師は症例報告書を点検し、内容を確認した上で、症例報告書に署名等してください。

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「中間報告」であっても、正確なデータが要求されますので、治験責任医師がデータの信頼性をきちんと担保する意味で署名をもらいましょうね。


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2014年01月10日

リーダーに必要は能力


●●● 今週は「問題を解決リーダーとは」を見ていきます。

4.コミュニケーション力

「三つの情報ギャップ」を防ぐ法

問題解決型リーダーの第四の経営スキルは、「コミュニケーション力」である。

すなわち、言葉を通じて情報を相手に伝える過程を意味する。

これまでの筆者の調査では、日本企業の部課長等の中間管理者は平均的に一日の時間のうち50〜60%をコミュニケーションにあて、そのうち70%が内部、30%が外部との連絡になっている。

さらに会社内部とのコミュニケーションのうち60%が部下と、30%が上司と、10%が同僚その他との対話に使われている。

職場でのコミュニケーションがいかに重要な役割を果たしているのかがわかる。



コミュニケーションでは、言うまでもなく、伝えたい情報が相手に正確に伝わることが基本となる。

これは簡単なように見えるが、実は大変難しい。

それはなぜであろうか。


一般に情報の伝達には三つの情報ギャップがあると言われている。

第一は「コミュニケーション・ギャップ」(意思伝達ギャップ)、二つ目は「コンセプチュアル・ギャップ」(意味概念ギャップ)、そして三つ目は「コンテクスト・ギャップ」(因果関係ギャップ)である。

一つ目のコミュニケーション・ギャップは、情報が言葉によって伝達される過程で、その内容の誤差が拡大していくことを意味する。

これは簡単な実験で理解できる。

たとえばあるクラスに学生が20人いたとしよう。

一番目の学生にある情報(たとえば「三人が富士山に登った」)を口頭で伝え、それを二番目以降の学生に次々と口頭で伝えるように指示する。

そして最後の20番目の学生に前の学生から聞いた内容を発表させる。

すると、富士山ではなく「富士市へ遠足に行った」というように大きくずれてしまうのだ。

この情報ギャップは伝言していく人数が増えれば増えるほど大きくなる。



二つ目のコンセプチュアル・ギャップは、対話者双方が頭に描く情報内容の違いを意味する。

たとえば「雪だるま」を日本人に描いてもらうと、ほとんどの日本人が大小二つの円を描くはずである。

ところが、同じ「雪だるま」を米国人に描いてもらうと、大中小の三つの円による雪だるまを描く。

これがコンセプチュアル・ギャップの一例だ。

つまり、「雪だるま」という単語ひとつをとっても、そこから思い描く形が日本人と米国人とでは違うため、意思疎通がうまく出来ないことになる。
 


三つ目のコンテクスト・ギャップは、物事の背景にある因果関係の捉え方の違いを意味する。

たとえば、長い間外国に滞在していた駐在員が帰国して会社の会議に出席すると、同僚たちの話している内容がよく理解できないことがある。

いわゆる「駐在員ボケ」である。

コミュニケーションでは情報が言葉どおりに伝達されても、相手がその情報の背後にある因果関係を理解(共有)していないと、正確には伝わらない。



コミュニケーションには、このような三つの情報ギャップが必然的に伴う。

したがってリーダーはメンバーとの対話において、情報ギャップをなくするような方法を意図的に行わなければならない。


コミュニケーション・ギャップを防ぐには、口頭による説明の場合、伝えたい概念を書類にまとめ、それを読みながら説明する。

また質疑応答によって伝えたい内容が伝わったかどうかを確認することは不可欠である。


コンセプチュアル・ギャップを防ぐには、伝えたい情報の中の重要な項目について、その概念を形で表すことも効果的である。

最近はカタカナで英語を表現することが多いが、カタカナ表現のあとにカッコでその意味を説明する。

たとえば「コミット(約束)する」ように表現して、こちらの意図を正確に表すことが必要である。




コンテクストについては、伝えたい情報の「背景となっている因果関係」を十分に説明して、その目的(what)を、なぜ(why)行うかという関連情報を理解させる。

これは職場のコミュニケーションでは特に重要である。

リーダーから見て、こんな初歩的なことは十分理解されているだろうと判断される内容でも、伝えたい情報に関連することは要約して説明することだ。


以上のように、リーダーはコミュニケーションにおける情報ギャップを防ぐために、細心の注意を払う必要がある。




5.人間関係力

●「人望」とは何か

問題解決型リーダーの第五の経営スキルは、「人間関係力」である。

生身の人間の「こころ」を動かすには、メンバーのほうが進んでリーダーの説明を納得し、自主的に行動を起こすようでなければならない。

たとえば、「Aさんは信頼できる人だから、あの人の言うことは間違いない」ということがある。

そこにはAさんと関係者の間に強い信頼に基づいた人間関係が存在し、Aさんには「人望」があると言われる。



いったいAさんとはどんな人であろうか。

Aさんと関係者の間に強い信頼関係があり、Aさんに「人望がある」ということは、過去にAさんと関係者間において、Aさんも満足し、そして関係者も満足した問題解決(ウイン・ウイン型問題解決)が行われた実績があることを意味している。

そして、それを基礎にして現在でも相互の信頼関係が継続している。

仮にAさんと関係者の関係がゼロ・サム関係であるとしたら、それは一般に言う「裏切られた」関係であり、Aさんとは二度と付き合いたいとは思わないだろう。

このような信頼関係は、当然、リーダーと部下との間にも当てはまる。

信頼関係のある職場環境とは、リーダーと部下との間にも当てはまる。

信頼関係のある職場環境とは、リーダーと部下との間にウイン・ウイン関係が存在し、リーダーと部下が積極的に協力関係を維持発展している関係にあることを意味する。

リーダーには、このようなエンジンを起動させるために、ウイン・ウイン関係にもとづく協力関係を維持発展させる技術が必要なのである。

これが「人間関係力」である。



6.チーム運営力

●プロ集団のチームの特性

問題解決型リーダーの第六の経営スキルは、「チーム運営力」である。

組織とは、二人以上の人間の集まりを意味する。

なぜ複数の人間が必要なのかといえば、それは一人ではとうてい解決不可能な問題を解決するためだ。

とりわけ戦略的な課題を解決するためには組織内あるいは組織横断的な「チーム」が編成される。

それは目に見える形であるか否かを問わないが、いずれにせよ、そのチームはプロの専門家集団によって構成される。


例えば、四人のチームメンバーはおのおの異なる専門領域のプロによって構成されている。

いま、このチームで非日常的な問題を解決する場合を想定しよう。

四人はそれぞれ過去に似たような案件の問題解決で取得したノウハウ情報を、チーム内のディスカッションを通じて交換する。

つまり情報共有化である。

そして、さらなる議論による情報の高度化の過程を経て、問題解決情報が創造され、そして的確な問題解決が行われる。

それによって、一人では困難な問題もチームで解決することができる。

プロによる問題解決は、それが複雑で困難な問題であればあるほど、その問題解決後の彼らの満足度は大きい。

リーダーはそのようなプロの自己実現の機会を常に提供し、チームを活性化させるような運営能力が必要となる。


そして、チームにおけるリーダーとメンバーはヨコ関係にあるため、リーダーの積極的なリーダーシップによって、リーダーと部下や部下同士の間に信頼関係が創られることが基本となる。

プロ集団を統括するチームの運営には、これまでに見た五つのスキルをすべて活用し、プロのメンバーが満足できる、すなわち自己実現が可能になるような条件設定が必要となる。



一般に、プロは自己の専門性に強い自信と誇りを持つ。

それゆえに自己主張も強く、利害関係に敏感である。

そして、その利害関係は単に金銭等の経済的条件を超えて、自己の信念や価値観を含めたより高度で複雑な側面を持つ。

たとえば「面子を失う」ような扱いを受けると、彼らは強く反発する。

自説を曲げない意固地さも持ち、時にそれは「孤立」につながる。

これは欧米でも同じだ。


「losing face」という表現があるように、たとえばリーダーがメンバーを人前で叱責したとすると、例えメンバーに責任があったとしても、リーダーは「配慮が足りない」とみなされ失格の烙印を押される。

チーム運営は不可能と評価され、リーダー交代となるのである。
 

そのようなプロ集団の運営のためにはすべてのスキルが必要だと述べたが、なかでも重要なのはウイン・ウイン型問題解決力である。

これがチーム運営を成功させる鍵となる。



●プロ集団にはなぜウイン・ウイン型リーダーシップが必要か


プロ集団を運営するためには、もちろん人間関係力は必要であるが、比較の視点からすれば、ウイン・ウイン型問題解決力のほうが優先されることがわかる。

そこに、問題解決型リーダーシップが必要とされる理由がある。

別の言い方をすれば、オーケストラの指揮者のようなリーダーシップが求められるのだ。

指揮者はまさに、楽器演奏者という、異なる専門領域を持ったプロ集団を統率するリーダーである。

オーケストラでは、各楽器が奏でる特色ある音色を指揮者が統合することによて、単独の楽器では創りえない素晴らしい音色が生みだされる。

それは指揮者と楽員間の相互の信頼関係がなければ実現しない。

このオーケストラの指揮者と楽員との関係のように、問題解決型リーダーはプロのメンバーの異なる意見を聞き、それを統合して問題解決を行う。

それにはリーダーとプロのメンバー間の信頼関係の「きづな」がないと実現しない。



posted by ホーライ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | リーダーの役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする